それはPSP版の遥か先の物語――『ディシディア ファイナルファンタジー NT』間P&鯨岡Dのインタビューを全文掲載

公開日時:2017-06-19 13:55:00

ディシディア ファイナルファンタジー』は、アーケード(以下、AC)からPS4へ。AC版とPS4版の両タイトルを手掛けるプロデューサーの間一朗氏と、ディレクターの鯨岡武生氏に、PS4版発売の経緯やPS4版ならではの要素について訊いた。AC版との連動についても触れているので、AC版のプレイヤーもチェックしてほしい!

※本インタビューは、週刊ファミ通2017年6月29日号(6月15日発売)に掲載されたものです。

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▲間一朗氏(左・文中は間)と鯨岡武生氏(右・文中は鯨岡)。

新展開を指す記号としての“NT”

――AC版の発表時から、PS4版をリリースする可能性については触れられていましたが、改めて、PS4版が制作されることになった経緯をお聞かせください。

鯨岡 AC版は、タイトーさんから「『FF』シリーズをACで出しませんか?」というお話をいただいて、そのときちょうど『ディシディアFF』の新作を作ろうとしていたこともあり、タイミングがかみ合って制作が始まりました。

 そのときからAC版だけでなく、家庭用のことも含めて考えてはいたんだよね。

鯨岡 そうですね。ただ、最初にAC版を作るにあたって、筐体用の基板だとグラフィックパワーが足りないという問題がありました。そこで間が「PS4を使うことはできないか」って言い出したんです。あれが、間のいちばんの仕事でしたね。最高に神懸かっていました。

 そこがピークだった、みたいな感じを出すのやめて?(笑)。当時、ゲームセンターで稼動しているゲームで、PS3をベースとした基盤を使っているものはあったんですが、PS4ベースの基盤に関しては実績がなくて。ソニーさんには本当に多大なご協力をいただき、PS4での発売についてもお話をさせていただくようになりました。

――AC版の稼動から1年半になりますが、このタイミングでPS4版を発表したのには理由が?

 本当は、稼動から1年くらいで形にできていればと思っていたんです。

鯨岡 ところが、AC版はバージョンアップやイベントといった運営的な側面で、想定よりも苦労して(苦笑)。ただ、『NT』の発売は2018年初頭なので、『FF』シリーズが30周年を迎える今年のあいだに発表できてよかったなと。僕たちの30周年はまだ終わらない!(笑)

――(笑)。ところで、タイトルの“NT”はどういう意味なのでしょうか?

 “NT”は、本作のクリエイティブプロデューサーであり、キャラクターデザインを担当する野村(哲也氏)が付けた、サブタイトルの頭文字を取ったものとなります。弊社のローカライズを担当する部署に相談したところ、そのサブタイトルは“新しい物語”、“新しい挑戦”、“新しい試練”といった、いろいろな意味を連想できるとのことで、野村と再度話をし、『ディシディアFF』のさらなる展開を指し示す記号としての意味を込めて、“NT”としました。 

鯨岡 さらなる展開はもちろんですが、PS4版を指す記号が欲しかったというのもあります。AC版と区分するためですね。

――では改めて、PS4版のセールスポイントを教えていただけますか?

鯨岡 AC版は、『ディシディアFF』のバトルの部分をがっつりフィーチャーしていますが、PS4版に関してもバトルが主軸になるのは変わりません。PS4版は、そこに世界観やストーリーなどを盛り込んでいます。AC版をやっている人もやっていない人も楽しめるものをご用意していますよ。

――ストーリー専用のモードがある?

鯨岡 いえ、あくまで対戦がメインで、バトルを重ねていくことで自然とストーリーが紐解かれていくようになっています。

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――今回のストーリーは、ロゴにも描かれている女神マーテリアと男神スピリタスが軸になるのでしょうか。

鯨岡 この2柱の神が核となることは間違いありません。今回の物語は、PSP版での戦いのはるか先の出来事です。PSP版で物語は完全に終わっているのに、なぜAC版で“神々の闘争”(マーテリアとスピリタスによる争いのこと。AC版における期間限定のイベントの名称でもある)が起きているのか……そういったことが明かされていきます。また、PSP版の続きなので、キャラクターたちは初対面ではなく、“再会”という形になります。

 PSP版ではみんな、原作の世界の記憶を失った状態でこの世界にやって来ました。今回は原作の世界の記憶も、PSP版の出来事も覚えていて、さらにほとんどのキャラクターが本編をクリアーした後の状態なので、自信満々なんだよね(笑)。

鯨岡 ぜんぜん迷ったりしていませんね。PSP版では原作のオマージュをたくさん取り入れたかったので、クラウドがセフィロスのことを引きずっていたり、ティナはケフカに操られている状態だったりしたのですが、改めて似たようなことをやらなくてもいいかなと。それで今回は、PSP版であまり描けなかった『FF』キャラクターの掛け合いや個性を強く出し、『ディシディアFF』の世界観で、しっかりと1本のストーリーを紡ぐ形になるかと思います。

――キャラクターはクリアー後の状態とのことですが、クラウドの場合、『FFVII アドベントチルドレン』(野村哲也氏が監督を務めた2005年公開の映像作品。『FFVII』の2年後の出来事を描く)より前ですか? 後ですか?

鯨岡 『FFVII アドベントチルドレン』の後になります。そうした設定なので、クラウドを含めて、一部のキャラクターのストーリー中の衣装はAC版と異なっています。

――ちなみに、AC版とPS4版は、同じ世界という認識でいいのでしょうか。

鯨岡 同じ世界ですね。AC版でユーザーの皆さんが闘っていることについても、物語的な理由があります。このあたりも、楽しみにしていただければと思います。

8月から怒涛のキャラクター追加

――本作では、何名のキャラクターが操作できるのでしょうか。

 リリース時点でAC版に登場しているキャラクター、ステージ、EXスキルなどはすべて『NT』にも実装します。それがどこまでというのは、鯨岡ディレクターが、ね?

鯨岡 えーと……。ストーリーを語るうえで必要なキャラクターがたくさんいるのですが、まだAC版でも実装されていないので、今後の発表にご期待ください!! AC版は、夏の大会期間中はバージョンをロックしますが、8月以降はドドドドドンと、怒涛のキャラクターリリースが待っていますよ。

 怒涛すぎて笑っちゃうよね(笑)。

――AC版、PS4版ともに鯨岡さんがディレクターを務めるわけですよね。そのスケジュール、大丈夫ですか!?

 大丈夫大丈夫ぅ~! 鯨岡はやれる男です。

鯨岡 ……(苦りきった顔)。現在、コーエーテクモゲームスさん側のスタッフも増員していただいており、順調に開発が進んでいます。当然ながら、PS4版の制作があるからといって、AC版をないがしろにするようなことはしませんし、両タイトルとも全力でやります。

 それに、弊社側でも企画職のスタッフなどを増やしたんですよ。鯨岡をいい形でサポートできる体制は整えています。

――安心しました。しかし、連続でキャラクターをリリースされるということは、AC版の“神々の闘争”は……?

鯨岡 イベント期間がコンパクトになります。ちなみに、PS4版では“神々の闘争”はありませんので、何かしらの形でオンラインイベントを実施できるよう、検討しています。

 お客様どうしでも盛り上がってほしいし、我々もいっしょに盛り上げていきたいよね。

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PS4版ならではのモードも制作中

――そもそものところで、プレイするうえで、ネットワーク接続は必須なのでしょうか。

鯨岡 必須ではないですが、オンライン対戦や、AC版と同時並行でのアップデートもあるので、推奨ではあります。アップデートは基本的にAC版が先行し、その後、一定期間を置いてからPS4版に反映されます。

――対戦アクションというジャンルだけに、通信によるラグが心配です。

鯨岡 PlayStation Network(PSN)を介しての接続になりますが、コーエーテクモゲームスさんと弊社をつなげてテストを重ねている中では、とくに問題はありません。さすがに海外とのマッチングは、回線状況的に難しいと思いますが……任意でつなぐこと自体は可能にする予定です。

――バトルは、ブロンズ、シルバー、ゴールドなどのクラスに応じたマッチングを行う、AC版と同じ形式になるのでしょうか。

鯨岡 そうですね。クラスマッチがメインになります。ボイスチャットでほかのプレイヤーと会話しながらバトルを行うこともできますよ。ほかに、クラス変動のないバトルも楽しむことができるよう、各モードを揃えていきます。そのあたりの制作を、いままさに行っているところですね。

――対戦が苦手なプレイヤー向けのモードなどもありますか?

鯨岡 本作はバトルがメインではありますが、対戦が苦手なプレイヤーさんも楽しめるようになっています。コンピューターとの対戦では難易度を選べたり、PS4版ならではのモードも用意して、オンライン、オフラインともにバリエーションを増やせたらいいなと。

――たとえば、どのような?

鯨岡 パーティーゲーム感覚で遊べるようなものなど、ふつうの対戦とは異なるいくつかのルールを実装したモードを、プロトタイプとして制作中です。

 自分はまだ触っていないんですが、それがおもしろいらしいんですよ!

鯨岡 現在制作中のものでは、基本的な操作はそのままに、通常のバトルとはだいぶ違った感覚で遊べるルールを採用しています。テストプレイ中にいちばん厄介なのが、“アルテマ”(相手の位置に爆発を起こす遠距離HP攻撃)持ちのスコールです(笑)。あと、“挑発”(一定時間、対象のターゲットを強制的に自分に向けるEXスキル)が超優秀。従来の技も、対戦とはまた違った有用性があったりします。こうしたモードは、数こそ多くはできないと思うんですが、しっかり楽しめるように作りたいですね。

――息抜きによさそうですね(笑)。そのほかに、練習用のモードなどは?

鯨岡 対戦するキャラクターや強さを自分で設定できる、シングルプレイのモード……AC版で言うミッションモードのようなものは用意すると思います。格闘ゲームばりの細かなトレーニングモードについては、有無を含めてまだ検討中ですね。

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――それから、AC版はキャラクターレベルが上がるとHP攻撃やコスチューム、ボイスチャットなどが開放されますが、PS4版も同じシステムになるのかも気になるところです。

鯨岡 ちょっと変えようと思っています。ただ、AC版を遊ばれているユーザーさんが改めてキャラクターレベルを上げたり、衣装を入手し直したりするのは面倒だと思うので、何かしらの形でプレイヤーデータを反映できないか、検討しています。

――AC版とPS4版の連動要素ということでしょうか。

鯨岡 そうですね。ただ、あくまでもAC版からPS4版への一方通行です。PS4版をプレイすることでAC版にアドバンテージがあるというのは、いまのところ考えていません。

 連動要素にしても、BGMであるとか、そうした部分であればゲーム性に影響するものではないので、いいかなと。

――一方で、AC版のプレイヤーと、PS4版から始めるプレイヤーで、腕の差が大きくなるのではという懸念もあります。

鯨岡 そこは上記の連動ができれば、マッチングの仕組みか何かしらの形で調整を行うことも視野に入ると思います。たとえばPS4版でプレイを始める際に、AC版のデータを参照して初期クラスを設定できるようにするとか……。いい形に落ち着くよう、検討したい部分です。

――では現在、開発状況的には……?

鯨岡 バトルの仕組みはできていますからね。そこを抜かしたPS4版独自の部分で言うなら、40%でしょうか。

 待ちきれないという方は、ぜひAC版を触ってみてください。バトルはそのままのものが体験できます(笑)。

――確かに(笑)。『NT』で、さらに『ディシディアFF』の世界が広がっていきそうですね。

 今回は北米、欧州、日本、アジアなどで同時期発売になるので、それも“新しい挑戦”です。ぜひ国や性別、年齢に関係なく、幅広い方に触れてもらいたいですね。PSP版の『ディシディアFF』で『FF』を知ったという若い方たちが、いま大学生や社会人になってAC版を楽しんでいてくれたりする。『NT』がそういうキッカケになってくれていたらうれしいし、『FF』が好きな人にも改めて「やっぱ『FF』っておもしろい!」と言ってもらいたい。そして「俺もそう思う!」と返したいです。

鯨岡 PSP版でもAC版でも、対戦ゲームとして友だちと遊び始めて、そこで『FF』のキャラクターを知った、という方たちがいました。『NT』でも、対戦という部分に魅力を感じて興味を持ち、そこから『FF』の世界に入ってきてくれる方がいるといいなと。また、PS4のスペックを活かした、高精細なビジュアルとフルボイスで展開する『FF』としても、ファンの方に楽しんでいただけると思います。このオールスター『FF』で、シリーズの新たな一面を見ていただきたいですね。

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