『ディシディア ファイナルファンタジー』開発のキーマンに訊く!

公開日時:2015-11-24 14:00:00

いよいよ稼動が間近に迫った『ディシディア ファイナルファンタジー』。週刊ファミ通2015年12月3日号(2015年11月19日発売)では、本作プロデューサーの間一朗氏、ディレクターの鯨岡武生氏、コーエーテクモゲームス・Team NINJAの早矢仕洋介氏にゲームに懸ける想いを語っていただいた。今回は、そのインタビューに加筆・修正を加えた完全版をお届けする。

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▲左から、早矢仕洋介氏、間一朗氏、鯨岡武生氏。文中では、敬称略となる。

ついに稼動を迎える『DFF

――『DFF』が稼動直前となりました。改めて、現在の心境からお聞かせください。

 ドキドキです(笑)。やはり、アーケードで作品をリリースするというのは、家庭用の作品を発売するのとは違ったプレッシャーがあります。4月に実施したロケテストは、たくさんのユーザーさんが足を運んでくださり、多くの反響をもらいました。その方々にご満足いただける作品をお届けする……それが最低条件となるので、強いプレッシャーを感じますね。

鯨岡 ロケテストの反響を見ても、ユーザーさんがしっかりと楽しめる作品を届けられそうだという、漠然とした手応えはありました。それがいよいよ本稼動となり、実際はどのように受け止められるのかは蓋を開けてみないとわからないので、やはりドキドキします(笑)。

早矢仕 アーケードの作品としては、何百回、何千回とプレイしても「まだまだプレイしたい!」と思えるような遊び応えが何よりも重要です。グラフィックも含め、ゲーム性の部分は、開発初期から意識して作っています。もちろん、最終的にはユーザーさんのジャッジにはなりますが、長く楽しんでいただけるものになっています。

――なるほど。開発を振り返って、とくにご苦労されたことはありましたか?

鯨岡 ロケテストでシステムの土台はできあがっていましたが、稼動時には14キャラクターが登場するので、バランスの調整はたいへんでした。ロケテストにはなかったEXスキルや召喚獣もいるので、キャラクターの性能も含め、本当にギリギリまで調整を加えていました。

――ロケテストで5本だったパーティライフゲージが、3本になったのもそういった理由で?

鯨岡 はい。5本の場合、ふたりが2回まで落ちても大丈夫という点はよかったのですが、決められた制限時間の中で5回敵を倒すとなると、どうしてもHPを高く設定できませんでした。『ディシディア』のバトルは、''HPが減った劣勢の状況でも、ブレイブを溜めて一
発逆転を狙えるという点が魅力''でもあります。そういった意味で、HPを高く設定できないままだと、1撃で倒されてしまう状況が増えてしまうので、ブレイブシステムのよさが損なわれているなと。ほかにも何パターンか試したのですが、キャラクターのHPを上げてライフゲージを3本にするのが、いちばんおもしろく遊べたので、現在の形に落ち着きました。

――調整を進めるにあたって、お三方の意見がぶつかり合うこともあったのでは?

早矢仕 最初に「このゲームは、こういう遊び」というイメージを共有しながら進めていたので、作り始めてからはずっと同じゴールを向いていたと思います。かなり初期から、コアメンバーの中では“こういうゲーム”というイメージがあり、そして実際にできたものについては「想像以上におもしろい!」という感じでした。なので、あまり迷うこともなかったです。

――目標となるビジョンが最初からあって、そこへ向けて進めていくのが、早矢仕さんのゲーム作りのスタンスなのでしょうか?

早矢仕 そういった進めかたは多いですが、今回はとくに鯨岡さんが明確なビジョンを持っていたので、Team NINJAスタッフもイメージを共有して作れていたんです。ですので、
開発のかなり早い段階から大枠のゲームは遊べていて……。“あとはどれだけおもしろくできるか”を、高いモチベーションで突き詰められました。

――鯨岡さんは、Team NINJAと開発を進めていくなかで、どのような印象を持たれましたか?

鯨岡 もっと文化が違うかなと思っていたのですが、それが少なかったので、自由にやれました。たとえば、テストプレイをしているとき、開発メンバーで対戦していると、「あれ? もうこんな時間なの?」って声がふつうに出てくるんです。開発側が、夢中になれる作品ができた時点で、チームとしては大成功だと思います。あとは、ユーザーさんの評価待ちですね(苦笑)。

 スクウェア・エニックス側の我々からすると、作品の盛り上がりのピークが、アーケードゲームと家庭用作品でぜんぜん感覚が違うことも印象深いです。家庭用作品は、発売日に向かって徐々に盛り上がりのピークに向かいます。ですが、アーケードは、むしろ稼動後のほうが盛り上がっていくわけですから、我々もユーザーさんの動向を見極めつつ、その熱が下がらないような運営を進めたいと考えています。

――稼動に先駆け、ゲームセンターのスタッフに『DFF』の公式研修を受けてもらい、初心者のサポートを目指すという施策についてもたくさん応募が来たとか。

 ありがたいことです。『FF』シリーズや『ディシディア』が好きなユーザーさんが、安心してゲームセンターに行けるように、今回この施策を実施しました。ゲームセンターに10年ぶりに訪れる方や、初めての方、「NESiCAって何?」と疑問に思う方などを、お店の方にサポートしていただき、安心して遊べる環境ができるといいなと思っています。

02

奥深い対戦環境の実現を目指して

――ここからはゲームの内容についておうかがいします。まずはゲームモードについて、詳細をお聞かせください。

鯨岡 大きく分けると、“全国対戦”(ソロ出撃、パーティ出撃)、“ミッション”、“チュートリアル”、“カスタマイズ”になります。カスタマイズのみ、その後に別のモードを遊ぶことができます。

 未登録のNESiCAでプレイを始めた場合、100円でチュートリアル+1プレイが遊べる施策を導入しています。これは、ゲームセンターやアクションゲームに慣れていない人にも、低いハードルでゲームを遊んでほしいと思って導入しました。

――チュートリアルは、かなり丁寧な作りですね。

鯨岡 ゲーム初心者の方でもわかるように、そこは意識して作りました。また、『FF』らしく、オープニング用のイベントなども挿入しているので、ぜひ見てください。

 作品のキモである全国対戦は、ひとりで出撃するほか、同店舗の3人でパーティを組めるパーティ出撃も行えます。全国対戦の戦績に応じて、プレイヤーの実力をブロンズやシルバーなどのクラスに振り分け、より実力が近い者どうしがマッチングするようになっています。

鯨岡 クラスは個々のキャラクターに紐付いているので、たとえばクラウドを使用してクラスが上がっても、ほかのキャラクターのクラスはクラウドといっしょにはなりません。ただ、いちばんクラスの高いキャラクターに応じて、そのほかのキャラクターのクラスもある程度までは自動的に引き上げられるので、いわゆる“初心者狩り”が起きにくい仕様にしています。

――このクラス分けのシステムはうれしいですね! クラスが全キャラクターでいっしょだと、操作キャラクターを変えるのにも勇気がいりますし。

早矢仕 クラスのシステムは、“そのキャラクターをどれだけやり込んだのか”がわかりやすい形のほうがいいと鯨岡さんから提案があったので、開発の序盤から現在の形にしようと思っていました。

鯨岡 本作は、基本的な操作系統は全キャラクターでいっしょなので、積極的にキャラクターの乗り換えをしてほしいと思っているんです。“クラスが下がるのが嫌だからキャラクターを変えられない”という風にはしなくなかったのと、やり込んでいるプレイヤーがキャラクターを変えたときに下位のクラスのプレイヤーとマッチングするのはいかがなものかという両面から、現在の形にしました。

――クラスについて、もう詳しくお聞かせください。

鯨岡 ブロンズ、シルバー、ゴールド……と徐々に上がっていき、同じクラスの中にもブロンズEやブロンズDといった細かい階級が設定されています。イメージ的には弊社の『ロード オブ ヴァーミリオン』に近いですね。

――なるほど。そうした細やかなクラス分けがあって、同じくらいの腕の人とマッチングしやすくなっていると。

早矢仕 なお、パーティ出撃どうしは優先的にマッチングするようになっています。

鯨岡 時間帯などのさまざまな要因で、ソロ出撃とパーティ出撃がマッチングすることもありますが、そこはご容赦いただければと……。状況を見つつ、ポイント補正などのフォローを入れたいとは考えています。

――初心者やひとりで遊んでいるプレイヤーを、大事にしているのですね。

 鯨岡は、“ひとりでゲームを楽しみたいユーザーさんを大事にしたい”と、開発の初期から言い続けています。稼動後の様子なども見て、細かくケアしていきたいです。また、カスタマイズの機能は、稼動と同タイミングでオープンするプレイヤーズサイトでじっくりとできるので、活用してもらえるとうれしいですね。

――なるほど。ちなみに、対戦中にラグが発生しないかが心配なのですが……。

早矢仕 すでにテストで、東北、九州、東京の3拠点をつないで対戦を行っていますが、まったく問題なく遊べました。ネットワークは店舗さんの通信環境にも依存するため、ラグが発生する可能性は否定できませんが、基本的には快適にプレイできる環境になっています。

――早く遊びたくなってきました! キャラクターの成長要素に関しても、お聞かせください。

鯨岡 対戦の結果に応じて入る経験値で、レベルアップし、HP攻撃やEXスキルの種類が増えていきます。また、これらとは別に、召喚獣も徐々に習得していきます。

――そのほかに、たとえばキャラクターのHPが上昇するなどのメリットはありますか?

早矢仕 そこに関しては、鯨岡さんといちばん議論させていただきました。鯨岡さんはゲームバランスに影響しない程度に、RPG感が味わえる成長要素を加えたいとおっしゃっていたのですが、今回はやめましょうと、私のほうから強く主張しました。

――それはなぜ?

早矢仕 勝敗が決まったときに、自分の腕がすべてであると、プレイヤーさんに感じてほしいからです。パラメーターの増減があると、それを勝敗の理由にしたくなっちゃいますからね。HP攻撃が増えるのは選択肢が広がるだけで、たとえば後半に覚えるHP攻撃が強いというわけではありません。

鯨岡 結果として、ゲームの横幅が深くなったかなと思います。成長要素を減らす代わりにEXスキルを増やしてもらったりしたので(笑)。

――キャラクター固有のEXスキルのほかに、汎用のEXスキルは何種類程度あるのでしょうか?

鯨岡 20種類以上は用意しています。ロケテストなどでは、効果がわかりやすいEXスキルを揃えていましたが、製品版では“死の宣告”などの特殊な効果のものも用意しています。

――“死の宣告”! 何だかとても強そうな響きなのですが……。

鯨岡 効果はまだ秘密ですが、ゲームバランスが崩壊するようなスキルではありません(笑)。また、“死の宣告”を受けた側のプレイヤーが、“死の宣告”を使ったプレイヤーを時間内に攻撃できれば、効果が解除されるようになっています。

――う~ん、気になりますね(笑)。HP攻撃の種類はどうなのでしょう?

鯨岡 基本的には全キャラクターは4種類で、ヴァンだけもう少し多いです。今後のバージョンアップで、HP攻撃の種類は増やしていきたいと考えています。

――キャラクターが出揃い、ロケテストのときと比べてもそれぞれの個性が際立っている印象を受けます。本作を遊ぼうと思っている人へのアドバイスとして、初心者の人にオススメのキャラクターはいますか?

鯨岡 近距離タイプならウォーリア オブ ライトやクラウド、ジタンなどは、素直な性能のキャラクターかなと思います。遠距離タイプならティナが個人的にはオススメです。

――逆に、腕に自信がある人に触ってほしいキャラクターはいますか?

鯨岡 癖が強いキャラクターは、フリオニールですね。それとオニオンナイトやバッツのように戦闘中に成長していくタイプは、やや玄人向けかなとは思います。

 まずは、自分の好きなキャラクターを使っていただき、そこからバトルスタイルや触り心地がよさそうなキャラクターを選んでいただければうれしいです。

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稼動後の展望を語る

――気が早い話ですが、今後のアップデートやキャラクター追加も気になります。

 対戦環境なども見つつ、キャラクターは定期的に追加していこうかと思っています。どうしても徐々に……にはなりますが。

鯨岡 ユーザーさんどうしの勢力戦も、今後のアップデートで追加する予定です。

 最初から全国対戦に加えて勢力戦まで入れ込んでしまうと、要素を詰め込みすぎではという話になりまして。まずは、14キャラクターでの対戦をじっくりと楽しんでいただければ。

鯨岡 明確な時期は断言できないのですが、ゆくゆくは衣装や武器の着せ替えなども採用したいです。特定の条件を満たすと手に入る称号のシステムは、稼動直後から導入しているのですが、アーケードでは、自分をアピールできる要素は少しでも多いほうがいいので。

――楽しみです(笑)。大会などの予定は?

鯨岡 稼動してからしばらくは、ライトユーザーさん向けの初心者講習会のようなものは定期的にやりたいと考えています。大会の開催ももちろん考えていますが、まずは『ディシディア』をアーケードに根づかせることが優先ですね。

 ライトユーザーとヘビーユーザー、そのどちらもが楽しめるように運営していきます。大会は必ず開催するので、そこはご安心ください。

――ますます稼動が待ち遠しくなってきました。最後に今後の意気込みもお聞かせください。

早矢仕 私の世代は、まさにゲーセンが大きく盛り上がった時代を体験していて、『ストリートファイターII』や『バーチャファイター』を見ているだけでも楽しい……そんな時代でした。そんな当時のワクワク感を、ぜひとも本作でいまの皆さんに、味わっていただけたら幸いです。

鯨岡 ゲームとしておもしろいものを、ゲームセンターに届けようということを第一にやってきました。演出やBGMからも『ファイナルファンタジー』らしさを感じられると思います。ぜひ一度プレイしてみてください。

 奥深い対戦が楽しめるのはもちろんですが、好きなキャラクターを動かして、技を出しているだけでも楽しい作品に仕上がりました。ゲームセンターの敷居の高さを感じずに楽しめるので、心配せず足を運んでくれるとうれしいです。

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