要は男と男のPvPです。『WoWs』プレゼン大会で声優のすごさを思い知る

公開日時:2017-12-12 18:30:00

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声優さんが『WoWs』ファンに向けて企画のプレゼンを行っている様子。

 こんにちは。ミス・ユースケです。僕は少し怒っている。

 ウォーゲーミングジャパンさんはオフラインイベントのステージで来場者に向けたプレゼンをやっているらしい。プレゼンとは、聴衆の前に立って製品や企画を紹介すること。ビジネスの世界でおなじみのあれだ。

 ネタをプレゼン風に見せるのは一種のフリップ芸である。デイリーポータルZさん(読みものサイト)やスーパーササダンゴマシンさん(プロレスラー)あたりが、ネット界隈で浸透させたのだと思う。

 手法自体は定番だとは思うが、対象が『World of Tanks』(以下、WoT)や『World of Warships』(以下、WoWs)となると話は別だ。元ネタこれじゃない?

※関連記事
白石稔さんに『World of Tanks』と戦車の魅力をプレゼンしてみた

 ウォーゲーミングジャパンさんは僕の企画をパクっている可能性がある。心穏やかにはいられない。“(C)ミス・ユースケ”と明記すべきではないか。
 

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服の彩度が高すぎて合成みたいになった。

 証拠をつかむため、大阪にやって来ました。

★★★この人ほんとに声優なんだろうか★★★

 ウォーゲーミングジャパンさんは、2017年12月9日にオフラインイベント“WG Friendship Day 2017 in Osaka”を開催した。『WoWs』や『WoT』ファンとの交流イベントである。
 

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参加型の変則ルール対戦はなかなか盛り上がる。

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ホワイエで交流する人も多数。

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艦艇のコスプレということでよろしいか。

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7対7の本気試合もおもしろかった。『WoWs』はesports的な見せかたが成熟していないが、見るたびに伸び代を感じる。

 『WoWs』と『WoT』両方の部で、来場者が参加する対戦企画の合間に“-出張版- Wargaming On Air in Osaka”というトーク中心のコーナーがあった。『WoWs』の部のテーマはこれ。
 

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これはパクりなのでは?

 配信番組“Wargaming On Air”用の持ち込み企画をプレゼンし、来場者と審査員の心をつかんだ人の勝ちというもの。プレゼンターと審査員はこちら。

【プレゼンター】
声優・井澤美香子さん
WoWs』プロダクトスペシャリスト・畑井翔さん
運営チーム・加持太郎さん(Taro_JP)

【審査員】
ミリタリーアドバイザー・宮永忠将さん
番組プロデューサー・三輪木大さん(Dai_JP)
 

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声優・井澤美香子さん。

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運営チーム・加持太郎さん(左)と『WoWs』プロダクトスペシャリスト・畑井翔さん(右)。

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番組プロデューサー・三輪木大さん(左)、ミリタリーアドバイザー・宮永忠将さん(右)。

 プレゼンターの3人は発表を恐れているようだった。「さぁ、おもしろい話をしてください」と放り出されるわけだから当然である。

 笑いを取るにはある程度の変化球が不可欠だが、変わった企画はたいていすべる。来場者は『WoWs』の話を聞きたいわけで、そこから逸れるとぽかーんとされるのだ。おもしろさ以前の問題である。

 ネタのクオリティーは元より、大切なのは堂々とした態度。すべる前提で構わないので、自信を持って言い切る鋼鉄の精神力。「そんなにおもしろくないんですけどね」みたいな雰囲気を出して遠慮がちにしゃべるのは悪手である。
 

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最初にプレゼンすることになり、ステージ下に逃げる井澤美香子さん。「こんなに質の悪い緊張は初めてです」とのこと。わかる。

 結論から言うと、井澤美香子さんがいちばんすごかった。トークの流れにメリハリがあり、プレゼン自体がうまいのだ。しゃべりのプロなのだなあと感心することしきり。

 プレゼンの主題は“女性ファンの獲得について”。オンラインゲーム運営会社にとって永遠の課題だ。
 

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スッとプレゼンモードに入る。

 井澤美香子さんのプレゼンは「みなさん、右を見てください! 左を見てください! 雄ばっかり!」という語り掛けから始まった。

 ただアイデアを述べるだけでは共感を得にくい。聴衆に向けてしっかりアピールし、最初に改善するべき点を共有。プレゼンのテクニックのひとつだ。
 

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問題点を挙げつつ、女性プレイヤーが増加した際のメリットも書いてある。

井澤美香子さん「女性は共感能力が高い生きものです。勝ったときはうれしい気持ちを共有し、悲しいときは励ましあう。コミュニティーが結束し、活性化していくのではないかと思っております」

 いきなりプレゼン資料とトークの完成度が高いぞ。
 

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WoWs』を女性に勧めたい理由。

 『WoWs』には女性が考える“こわい”がない。ミリタリーのゲームではあるが、グロテスクな表現がないのが好印象なのだとか。『WoWs』の特性をもとに、感情に訴えかけている。

 3つ目も絶妙である。『WoWs』で勝つためには後方支援も大切だ。「女性にもおすすめ」ではなく「女性だから活躍できる」という言いかたにくすぐられる人も多いのではなかろうか。
 

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“おもかわオペレーション”は“おもしろくて、かわいい”オペレーションだそうです。

 ここから女性ファンを獲得するための具体的な施策に入る。かわいい動物を選べるようにしたり、艦艇をデコれるようにしたらどうかという提案だ。

 もとから艦艇が好きな人は別として、そうでない人には艦種の違いがわからない。要は何かしらの形で愛着を持てるようしてほしいのだという。
 

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「軍艦をスウィーツに見立てたらかわいいんじゃないかな」だそうです。

 プレゼンのストーリー立てが見事だ。人によって内容の好き嫌いはあるかもしれないが、間違いなく一定の説得力はある。この人、何なんだろう。やり手のキャリアウーマンだろうか。

 『WoWs』の伸び代を提示したところで、「どんなに素晴らしいコンテンツでも、知ってもらわないと意味がありません。導入口を作ることが大切ですよね」と、プレゼンはつぎのステージへ。

 ここで井澤さんは「『WoWs』を作っている会社の名前、わかりますか?」と来場者に語り掛けた。ハートをつかむタイミングがうまい。
 

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「せーので言ってくださいね。せーの、うぉーげいみんぐ!」。

井澤さん「この中には、すでに女性の好きな要素が隠されていることを発見しました!」

 興奮を隠しきれないかのごとく、笑顔で声を張る井澤美香子さん。これもまたプレゼンの高等テクニックである。大きな声で断言されると「たしかにそうかもなぁ」と思ってしまうものなのだ。
 

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勝手に「プロジェクト始動ー!!!」と言い切ったのもよかった。強引さもプレゼンには大切だ。

 つまり「男性同士の過度の友情を描いたアニメを作りましょう」ということである。

 ネタとしてはいきなり「アニメを作りましょう!」でもよかったのだが、それだと『WoWs』と結びつかないので説得力に欠ける。「女性ファンを増やしたい」という前ふりを入れることで、理論の筋道を通したのだ。
 

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この笑顔である。「みなさん、あーあって顔してますけど、最後まで諦めずに聞いてください」。

【あらすじ】
 記憶喪失になった宮永忠将は、アイドルプロデューサーを自称する三輪木大という男に保護された。彼の口車に乗せられるまま、忠将は軍艦を擬人化したアイドルグループ“ユニカム”のセンターを務めることに。
 最初はアイドルなんてやる気がなかった忠将だが、軍艦の素晴らしさを伝えることが楽しくなり、アイドル活動に真面目に取り組むようになる。プロデューサーの笑顔が見たい。もっと喜んでもらいたい。そんな大への恋心が後押ししていることに、忠将自身は、まだ気づいていない……。

 井澤美香子さんがあらすじを読み上げ、「要は男と男のPvPですね」と晴れやかに言い切ったところで、鳴り止まない拍手が起こった。見える! 涙ながらにスタンディングオベーションをする観衆が見えるぞ!
 

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全6話のサブタイトル。単語のセレクトが『WoWs』っぽい。

 大いに盛り上がったところで、井澤美香子さんは畳み掛けた。全6話分のあらすじも考えてあるというから抜かりない。

宮永さん「福岡の夜は二連装ってなんですか?」

井澤さん「福岡の夜は二連装。福岡遠征ライブの宿泊先では、忠将と大は相部屋だった。しかも、お風呂はスケルトン。仕方がないと主張する大に対し、反論できない忠将。早く記憶を取り戻したいと焦る一方、心の煙幕は広がり続ける」

三輪木さん「ツッコミが追いつかない」

井澤さん「大さんは気になる回はありますか?」

三輪木さん「えーっと、やっぱり最終話。-未来-への船出?」

井澤さん「お目が高いですね。いろいろあって、ライバルが現れたりするんですけど、最終的に何だかんだで結ばれます。
 ふたりはオープンカーでドライブをしていた。目的地は海。運転する大。横で眠る忠将。そんな幸せそうな寝顔を見ながら、忠将が海を見てはしゃぐ姿を想像して、大は口元を緩ませる。
 そんな幸せもつかの間。目的地の海を見た瞬間、忠将は過去の記憶が甦ってしまったのである! 葛藤する忠将。しかし、忠将は……」

三輪木さん「若干、気になるじゃねーか!」
 

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あらすじが紹介されたのは2話分だけだったが、この調子だと残り4話の内容も考えてあったに違いない。入念な準備はプレゼンの基本である。

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ネタだけでなく、きちんと予算面への言及があったのも好印象。いまは1話あたり1300万円ほどが相場らしいので、だいたい合ってる。

 関係者ふたりのBLネタをやりきった井澤美香子さん。来場者は『WoWs』ファンばかりなのだから、内輪受けネタを選んだのは正解だろう。

 三輪木さんは裏方の人だが、宮永さんは人前に出ることも多く、『WoWs』や『WoT』の顔として認識している人も多い。ホームの環境だからこそ、内輪受けが深く刺さったのだ(なお、この手のプレゼンネタをアウェイの環境でやるのは本当にたいへん)。
 

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右のふたりの顔色が悪い。

 じつを言うと、ほかのふたりのプレゼン内容をあまり覚えていない。完全に井澤美香子さんに持っていかれた。スライドの写真は撮ってあるので、何となく並べる。

【畑井翔さんのプレゼン】
 友情・努力・勝利をテーマとしたオフライン型の対戦企画。チームを組んで船に乗り込み、所持コインを賭けて対戦を行う。戦闘を通じて友情を育みつつ、貯めたコインをアイテムやリアルグッズと交換するのが目的だ(たぶん)。
 

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一部の文字が赤くなっているが、とくに意味はないそうです。

【加持太郎さんのプレゼンスライド】
 要素のひとつひとつを見る限り、『WoWs』は女性の支持を得る余地はある。そこで、女性ウケを狙えるアニメを作ろうという企画。井澤さんとネタがかぶったのが残念。アニメの内容はこっちのほうが一般ウケすると思うけど。
 

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スライドはもっと凝ったほうがいいと思います。

 プレゼンには自分の意見と聴衆が聞きたいことをリンクさせる技術が必要だ。井澤美香子さんはそこが飛び抜けているばかりか、ネタの作り込みも丁寧。内容はともかく、プレゼン技術が会社員より高いってどういうことだ?

 いいものを見られて満足ではあるが、出典を明かさずにパクるのはよくない。今後、ウォーゲーミングジャパンさんがプレゼン企画をやっていたら「ミス・ユースケのネタに影響されたんだな」と心に刻んでいただければ幸いである。
 

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肩の荷が下りていい笑顔。

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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