愛に満ちたイベント“CFLE”で『クロスファイア』とお別れ。大切なのはゲーム愛。

公開日時:2018-04-10 20:45:00

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 上の写真は2018年3月21日に開催された“Crossfire Last Event”のものだ。PC用オンラインFPS『クロスファイア』のイベントである。

 このイベントの特徴は、

・公式ではなくユーザー主催のイベント。
・参加費は3000円。安くはない。
・80人ほどが参加。けっこうな盛り上がり。

 そして、特筆すべきはこの1点。

・『クロスファイア』は2018年3月31日をもって日本でのサービスが終了。

 公式でもない、無料でもない、ゲーム内アイテムがもらえるわけでもない。加えて10日後にサービス終了。「最後だから行ってみるか」と考える人は別として、お世辞にも集客できるイベントとは言い難い。

 それなのに、会場のアイ・カフェAKIBAPLACE店は多くのプレイヤーであふれた。なぜか。その答えは往年の名作CMのコピーに隠されている。

 愛だろ、愛っ。
(サントリー ザ・カクテルバーCMより)
 

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要は、みんな『クロスファイア』が好きなのだ。

★★★『クロスファイア』愛に包まれた空間★★★

 『クロスファイア』は2008年3月に正式サービスを開始した。日本のesports史において重要なタイトルだ。

 たとえば、プロゲーミングチーム・DeToNatorのYamatoNくん、delaveくん、siorinくんは『クロスファイア』出身。『クロスファイア』がなければ、いまの彼らの活躍もなかったのである。
 

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YamatoNくん(左)とdelaveくん(右)。

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ふらりとやってきたsiorinくん。

 
 当時、YamatoNくんとdelaveくんはVaultというトップチームに所属。自費で強豪国ベトナムに渡って練習に励むなど、本気で『クロスファイア』に取り組んでいた。

 本イベントではVaultの5人が集結。故郷とも言える『クロスファイア』を楽しむ姿を見て、目頭が熱くなる。
 

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Vaultの5人でチームを組んでエキシビションマッチに参戦。さすがに腕は衰えていたようだが、ぎゃーぎゃー騒ぎながらプレイする様子が楽しそうでよかった。

 
 本イベントはYuryiさんというプレイヤーによって企画された。彼女はこれまでにも多くのイベント運営に関わっており、中でも『クロスファイア』への思い入れが強かったみたいだ。

 企画・運営するだけでも頭が下がるのに、わざわざプロのカメラマンにイベント中の写真撮影を依頼。フォトブックを制作し、参加者にプレゼントするのだという。

 愛が深い。
 

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Vaultメンバーのkasumiくん(左)と、中心となってイベントを切り盛りしたYuryiさん(右)。

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イベントは即席チームでのトーナメントが中心。

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ゲーム仲間との会話が何よりのコンテンツである。

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え、YamatoN、こんなにTwitchのフォロワーいんの?

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まじで!?

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イベントのラストで終盤、運営会社UtoPlanetさんによるメッセージ動画が先行公開。泣ける。

★★★ゲーマーはゲーム愛に突き動かされる★★★

 この表現が適切かどうかはわからないが、Crossfire Last Eventは『クロスファイア』を愛したプレイヤーによる追悼集会のように感じた。

 “葬儀は残された人のための催事”という考えかたがある。故人の思い出を語り、別れを受け入れて送り出す。本来、葬儀とは前向きなものだ。

 故人が立派な人なら、それだけ式への参列者は多くなる。Crossfire Last Eventも同じだ。『クロスファイア』は愛されていたから、最後に多くの人が集まった。
 

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散り際に立ち合いたい気持ちはすごくよくわかる。

 
 いつだってゲーマーはゲーム愛に突き動かされる。好きなゲームを楽しむために、自分で考え、行動する。自発的な活動が各地で興れば、いつか大きなうねりになる。それこそが僕の夢見るゲームやesportsの未来だ。

 『クロスファイア』を愛するプレイヤーたちの姿は、esportsの未来と重なって見えた。ちょっと大げさか。

 この際だ。もう少し書いとこう。葬儀のようなイベントをきっかけに未来の話をする。そういうの、何かいいじゃないか。
 

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微妙に目を閉じてる瞬間になってごめん。

 
 本イベントの参加者からは“『クロスファイア』が好き”という空気が伝わってきた。しばらく離れていた人もいるかもしれないけど、主催者も参加者も全員もれなくゲーム好き。幸せな空間だ。

 青くさいことを言わせてもらうと、大小さまざまな大会やイベントはすべて同じような気持ちで作られていてほしい。“esportsを盛り上げる”なんて立派な信念は掲げなくていいから、関係者各位にはただゲーム好きであってほしい。単なる僕の希望なのだけど。

 ゲーマーにかぎらず、いわゆるおたく的な性格を持つ人たちは、自分の仲間かどうかに敏感だ。仲間じゃない人が作ったものには微妙に乗り切れず、違和感を覚えてしまう。「この人たちは本当にゲーム好きなのかな」と、疑問が頭をよぎることもある。

 “ゲーム好きかどうかもわからない人の企画で盛り上がりたくない”みたいな意地もあるだろう。理にかなっていない感情論だが、人ってけっこうそんなものだし、僕はそういう曖昧な気持ちを大切にしたい。

 僕はもういい大人なので、きれいごとだけでやっていけるほど世の中は甘くないことくらい知っている。それでも、あらゆる文化の中心には“何となく好き”という曖昧で不可侵な感情があるべきだと思う。

 日本のesports界にはヒーローが必要だという声がある。大規模な大会が必要だという声もある。たしかに重要だ。とはいえ、いちばん必要なものは何かと問われたら、やはりこれに尽きる。

 愛だろ、愛っ。
 

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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