ディレクターとコスプレ女子5人に物語へのこだわりを聞いてきた『箱庭のフォルクローレ』

公開日時:2013-11-08 00:00:00

 ここ最近のPCオンラインゲームはアクション性が高いものが多い。僕自身、そういったタイトルは好きだ。スピーディーな戦闘、仲間との連携。おもしろい。

 腰を落ち着けてMMORPGをプレイする機会は昔に比べて減っている気がするけど、久しぶりに“ザ・ファンタジーMMORPG”的なゲームを遊んだら、これもすごく面白かった。

 そうだ、僕は子どもの頃からRPGやアドベンチャーでお話を読んで空想するのが好きだったのだ。34歳のおじさんにだって、おとぎ話のなかでふわふわする権利はあるはずだ。もっとシンプルに物語を読めるゲームはないものか(小説読めよ、という声は聞こえないものとする)。

 あった。ハンゲームさんの『箱庭のフォルクローレ』だ。

★シミュレーションRPGというよりアドベンチャー

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▲キャラがかわいい。

 このブログはいつも前振りが強引な気がするが、それはさておき、『箱庭のフォルクローレ』だ。

 本作は『白雪姫』や『シンデレラ』といった童話のキャラクターが登場するシミュレーションRPG。ストーリーを読み進めていくと戦闘が発生し、勝利すると物語が進行していく。

 ゲームの目的は“歪んだ童話を修正すること”。歪んでいるから、性格や様子の異なる童話のキャラクターがたくさん出てくる。たとえば、2013年11月7日に実装された桃太郎は主要キャラが全員女子だ。誰の趣味なのだろうか。

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▲ひとつの童話は4つのストーリーで構成。それぞれ異なる視点で描かれている。

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▲ストーリー部分はテキストアドベンチャー風。

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▲戦闘はあらかじめ設定しておいた部隊がセミオートで行う。

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▲部隊には英雄(童話の登場人物など)と英雄に従う兵士を配置。

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▲英雄は戦闘で勝ったりするともらえる銀貨(ゲーム内の通過)を使って集める。

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▲強い兵士を配備するには資源が必要となる。資源は都市開発をして貯めることもできる。

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▲実装されたばかりの桃太郎。ショートパンツのボタンは留めない派。手前が表の桃太郎で、奥が裏の桃太郎。僕はどっちも好きだ。

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▲犬猿雉は擬人化&女性化。衣装はエプロンドレス。

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▲“のじゃ”系の赤鬼と大人しい青鬼。大人しかったりおっとりしている女子は胸部に非凡な才能を秘める傾向にあるようだ(犬もおっとりタイプ)。

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▲ディレクターの星野忠行さん。

 ストーリーが柱になっているが、シミュレーション要素やコレクション要素もしっかり用意されている。どちらにウェイトを置いたゲームなのだろうか。ディレクターの星野忠行さんに、「いちばん注目してほしい部分を教えてください」と聞いてみた。

星野さん「馴染みのある童話を別の角度から描いている部分です。キャラクターの性格付けもビジュアルもクオリティーが高いと思います。ゲームシステムは非常にシンプルで、お話の部分を重視した作りですね。テキスト量はアドベンチャーゲームかと思うくらいありますよ。ここまでストーリーに振り切ったオンラインゲームは珍しいのではないでしょうか」

 やっぱり物語だった。となると、コンテンツの消化スピードが気になる。物語のボリュームはどれくらい用意されているのだろう。

星野さん「ひとつの童話に対して4つのカテゴリーがあって、それぞれ1~4章みたいな形になっています。シンデレラを例に挙げると、1章はみなさんがよく知っているシンデレラがベースなんですが、2章は継母から見たお話になっています。別の切り口でシンデレラの世界観を追体験していただければ。それを毎月1話ずつ実装していく予定で、半年ぶんはスケジュールも決まっています」

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▲英雄の強化はやり込みコンテンツのひとつ。

 かなりのボリュームが用意されているみたいだが、ユーザーのプレイスピードはとにかく速い。運営側の想定をはるかに上回る速度でクリアされるなんてことはザラだ。いわゆるやり込み要素はどういう部分に設定しているのだろうか。

星野さん「いまのところ、やり込み系のコンテンツは少ないです。戦闘の難易度にはイージーとノーマルの2種類があって、イージーをクリアするとノーマルが開放されます。敵の強さは10倍ほどに跳ね上がるので、そこでキャラクターを育成していただきたいなと。今後はさらに上の難度を追加予定です」

 コツコツひたすら自分の好きなキャラクターを育成したい人もいるだろう。僕もそういうのは好きなほうだ。

星野さん「丹精込めて育成したキャラクターの使い場所は、たくさん用意していきたいと思います。属性の要素を追加したり、PvPやGvGのシステムを追加したり」

 コンテンツを作るうえで、絵本が大切な資料だと星野さんは語る。仕事中に絵本を読むなんて保育士さんくらいだと思っていた。

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▲仕事中に絵本を読む大人。

 本作にでは、童話は原作にアレンジを加えた形で登場し、キャラクターの性格付けにもこだわっている。複数のキャラクターが作品の垣根を越えて共演したら楽しいと思う。

星野さん「季節ごとのイベントなんかでは、いろいろな世界の住人が入り乱れます。11月7日までハロウィンイベントを開催していたのですが、これは文字数にすると約1万文字。けっこうなボリュームです。こういうイベントは日本独自に作っていて、毎月1本ペースで提供する予定です」

ユースケ「イベントの企画・開発が大変そうですね」

星野さん「やりがいはありますよ。シナリオライターさんから“主要キャラには専用の衣装を用意してほしい”とお願いされることもあります。開発会社に描き下ろしてもらったら、さらにやる気を出していただいて。資料としてキャラの表情パターンを渡したら、原稿に表情指定まで書き込まれてきたり」

ユースケ「イベントの原稿を溜め込んでおいて、あとで何かに使ったりしないんですか?」

星野さん「いつかやりたいですね」

ユースケ「じゃあ、『箱庭のフォルクローレ』が大ヒットしたら、うちにノベライズをやらせてください」

星野さん「考えておきます(笑)」

★男子の目線と女子の目線

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▲白雪姫。ふわっとしたドレスがかわいい。

 この手の取材では相手に好みのタイプを聞くようにしている。

ユースケ「星野さんは誰が好きですか?」

 “どのキャラが”ではなく、あえて“誰が”と聞くのがポイントである。学生の頃は「誰が好き?」なんて恥ずかしくて聞けなかったが、大人になって躊躇がなくなった。

星野さん「うーん……白雪姫ですかね」

 インタビューに同席していた男性陣にも意見を聞くと、白雪姫の人気が高かった。女性広報さんは赤ずきんと眠り姫。男女ではっきり意見が分かれている。僕は桃太郎派なのだけど。

星野さん「男性人気が高いのは白雪姫なんですけど、女の子は眠り姫や赤ずきんを選ぶんですよ。やっぱり男女で感性が違うんでしょうね」

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▲眠り姫。バラの模様がきれい。

▲赤ずきん。レース付きの裏地が特徴的。

 何となくだが、『箱庭のフォルクローレ』は女子人気を意識したタイトルだと思う。その感性の違いをいかに受け止めるかが大切だ。

星野さん「イラストをパッと見て白雪姫がいいと思ったので、バナーに白雪姫を使ったんです。そしたら効果が薄くて。赤ずきんに変えたら一気によくなりました。勉強になりましたね。やっぱり私たちの好みだけでやっちゃダメだなと(笑)」

 本作では“PR大使”として5人の女子にプロモーションを手伝ってもらっている。彼女たちの感覚や意見を参考にすることも多いそうだ。

星野さん「男性とは目線が全然違いますね。たとえば、桃太郎や犬猿雉を見たときに、男性は“へー擬人化なんだ”や“セクシーなキャラだね”みたいな反応ですけど、彼女たちは腰元のブローチに注目したりしているんですよ。そういうのはヒントになると思います」

 男子は英雄の育成や戦略性を楽しみ、女子は好きな英雄を集めて物語を楽しむ。もちろん逆のタイプの人もいるだろうけど、そういう傾向はたしかにあると思う。

星野さん「今後はスマホ展開も予定しています。そこで女性人気はしっかり狙っていきたいと思います」

★ゲームの外の今後の話

 この流れで、今後の展開の話を聞いてみよう。

 オンラインゲームである以上、本作にもギルドやチャットといったコミュニティー機能がある。今後、どういう方向に強化していくのか。

星野さん「先ほども申し上げたとおり、今後はPvPとGvGの実装を予定しています。対戦もコミュニケーションの1種ですが、一部のユーザーに深く刺さる要素だと思います。ですので、ひとりでコツコツ遊べるような要素も提供したいですね。レイドボスを実装して、刹那的に協力し合うとか。ライトな交わりかたを強くしたほうが、箱庭系が好きなお客様には合っているのかなと」

 これは助かる。僕はどんどん内面に入っていくタイプなので、コミュニケーションを強制されると困る。最近はほとんどコミュニケーション要素のないゲームがヒットしていたりもする。適度な距離感が大切だ。コミュニケーションを図りたかったら、Twitterでもfacebookでも外部のSNSを使えばいい。

 つぎはゲーム外の話題に。今後のプロモーションも気になる。

星野さん「PR大使の女の子たちはしっかりゲームを遊んでくれています。お客様から彼女たちに何をやってほしいか意見を集めたりして、双方向でコミュニケーションを図りながら、立ち位置がユーザーに“近い”PR大使として活動してもらいます」

 やはり女子の目線、女子の感性は大切ということか。

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▲オリジナルキャラのロゼッタ。彼女中心のストーリーもあったらおもしろいと思う。

星野さん「あとはコンテストですね。『箱庭のフォルクローレ』ほどシナリオコンテストに適したゲームはないと思います」

 なるほど。ベースの部分は誰もが知っているし、アドベンチャーゲーム風の見せかたができるので、実装もそれほど難しくはない。イラストや装備デザインのコンテストはよくあるが、シナリオコンテストは珍しい。

星野さん「声優コンテストもできますし、新しいキャラに限定すればイラストコンテストも可能です。3部門でひとつの作品・イベントを仕上げられるのでおもしろいのではないかと思います。ニーズを探りながらやっていきたいですね」

 シナリオコンテストには僕も参加したい。ハードボイルド三匹の子豚とか書きたい。

 ちなみに、このインタビューにはプロデューサーさんも同席していた。開発会社は台湾のメーカーなのだが、あちらでは日本の童話はけっこう浸透していて、話が早いそうだ。

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▲第1章で登場するシンデレラは視点の違いがわかりやすく描かれている気がする。

 桃太郎の開発でプロデューサーさんが出したオーダーはひとつだけ。“桃太郎を女性にしてほしい”。最初の疑問が解決した。あなたの趣味か。

星野さん「やるからにはインパクトを出したいです。いずれ実装されるであろうピーターパンでは、ティンカーベルがマッチョな男だったりしたらおもしろいですよね(※)」

 かわいい衣装で飛び回る2メートル超の大男。夢に出てきそうな光景である。

(※インタビューの場で出てきたアイデアで、開発が進んでいるというわけではないです)

 桃太郎が実装されたということは、そのうち金太郎も登場するのだろうか。あの衣装のまま女性化するようなことがあったら大変だ。そういうのも期待しておく。

★PR大使にも話を聞く

 せっかくなので、PR大使を務める女子たちにも話を聞かせてもらった。キャッキャしながら取材現場の会議室に入室する女子たち。

 テーブルを挟んだ向こう側にかわいらしい5人の女子が立つ。周囲には大人たち。新手の圧迫面接だろうか。

 この日、白雪姫担当の橘結衣奈さんはノドを痛めていたようで声があまり出なかった。たぶん役作りで毒リンゴを食べたのだと思う。すばらしいプロ意識。

シンデレラ:アイシスさん
担当以外で好きな童話:三匹の子豚

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「シンデレラはいちばん最初のストーリーで、誰でもすぐに遊べて、すぐに会える女の子です。フォルクローレの世界だと妄想癖が激しくて、キツいことを言われてもニコニコしている心優しい娘です。ずーっと「シンデレラをやりたいー!」って言っていたら、シンデレラになれてうれしいです。妄想癖が自分とそっくりで、大好きなキャラクターです!」

眠り姫:荒木奈々さん
担当以外で好きな童話:親指姫

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「眠り姫はたくさん祝福されて甘やかされて育ったので、すごくわがままです。呪いで100年の眠りについてしまうんですけど、呪いが解けたあとも寝てばかりで、起こそうとするとかんしゃくを起こします。なるべく起こさないでください(笑)。眠り姫が登場する第3章は敵が強くなってくるので、しっかりレベルを上げてから挑んでください。私はまだ3章に進めていないんですけど、英雄召喚で眠り姫ちゃんに会えました。でも、Bランクだったので戦場には出せず、愛でるだけの存在になっています」

ロゼッタ:有川知里さん
担当以外で好きな童話:ジャックと豆の木

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「魔法使いロゼッタは童話のキャラではなく、フォルクローレのオリジナルキャラです。“湖の乙女”という施設で英雄を召喚したり強化をしてプレイヤーの手助けをしてくれて、童話の中でも魔女役で登場したりします。英雄としても出てくるので、いっしょに冒険して、好感度を上げてイチャコラボイスを聞いたり、ぜひ愛でていただけたらと思います」(有川知里さんはロゼッタのボイスも担当)

赤ずきん:叶恵まそらさん
担当以外で好きな童話:塔の上のラプンツェル

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「赤ずきんちゃんは無邪気で素直な笑顔の愛くるしい12歳の女の子です。素直すぎるところがあって、周りの人に心配されちゃうくらいホワホワしています。裏の面もあって、禍々しい凶器を振り回したりするんですけど、中身はホワホワなままで、そのギャップがかわいいんです。赤ずきんちゃんは眠り姫ちゃんのつぎの4章で登場します。会うのは少し大変かもしれませんけど、ホワホワ具合を楽しんでください」

白雪姫:橘結衣奈さん
担当以外で好きな童話:人魚姫

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「白雪姫ちゃんはすごくみんなに優しいお姫様。いつもニコニコしているんですけど、それは全部計算で、すごくあざとい性格の女の子です。容姿端麗なのに性格が悪くて。そういうところがすごく私好みで、本当にかわいいんです」

 みなさんしっかり『箱庭のフォルクローレ』を遊んでいるようで、話を聞いているうちにテンションがどんどんヒートアップ。“女3人寄ればかしましい”と言うが、この場には5人も集まっている。そりゃ盛り上がるだろう。

 トークは童話のアレンジについても発展。“三匹の子豚”では狼も子豚も女子で百合百合してくれるとありがたいそうだ。また、狼さんはボンキュッボンがいいとのこと。個人的には、狼がお姉さんだったら子豚は少年がいいと思う。

 今度、“PR大使企画会議”みたいな企画をやったらおもしろいのではないでしょうか。

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▲有川知里さんはことあるごとに僕にプレイするように勧めてきた。取材中に7~8回ほど。PR大使根性ですね。今後、桃太郎役のPR大使を選ぶことがあったら、選考委員に僕を加えていただけると助かります。あと、王子レイ役のPR大使が必要ならいつでも声をかけてください。

『箱庭のフォルクローレ』公式サイト

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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