ゲーム専門転職エージェントって信頼できるの? どう使えばいい? プロの本音を聞き出した【同窓会が苦手】

転職エージェントって本当に信頼していいの? プロの本音を聞いているうちに、エージェントを活用する極意がわかりました。

 突然ですが、エージェントってご存知ですか? 『マトリックス』や『メン・イン・ブラック』に登場する黒服は関係ありません。転職エージェントの話です。

 転職未経験の方の多くは「聞いたことはあるけど、具体的にどんなサービスなのかは知らないなあ」といった、あいまいな認識なのではないでしょうか。

“あいまいな認識”の例。

 かくいう筆者も転職は未経験。エージェントについて知っていることといえば「1対1でキャリアについての相談に乗ってくれる」、「相談者の適正&目標にぴったりの求人を紹介してくれる」、「無料で使える」、「人間である」とかそれくらい。おそらく合っていると思います。人間じゃなかったらごめんなさい。犬や猫だったらかわいいですね。

 また、転職経験豊富な知人にエージェントのメリットを聞いたところ、以下のような答えが返ってきました。

 えっ、これで無料って使い得じゃない……? こんなオイシイ話がある……?

本当に信用していいの?

 いやいやいやいや、待ってください。転職って人生を左右するめちゃめちゃ大きなイベントです。プロとはいえ、見ず知らずの他人を簡単に信用していいものでしょうか。

 たとえば、映画に登場する殺し屋やアンドロイドみたいなエージェントが本当に実在するかもしれません。自分の報酬が第一。感情や愛情など存在しない、哀しい人材紹介マシーン……。

 そんなわけで、「エージェントって本当に信頼できるの?」という疑問を解消すべく、ゲーム関連企業を専門としている2人のエージェントにお話を聞きました。

 本音で語っていただくために、顔と名前は隠しています。職歴2年目のエージェントTさんと、その道20年のベテラン・エージェントMさんです。ただのイニシャルなのに、コードネームみたいになりました。

(運営:クリーク・アンド・リバー社)

 また、これを書いている戸部マミヤが社会人1年目の新兵ということもあり、転職経験のある企画担当が同席しています。

エージェントだってサラリーマン、自分の成績が大事なんじゃないの?

 本音を聞き出せる取材場所を模索した結果、“ちょっといい値段の居酒屋”になりました。“ちょっといい値段の居酒屋”はパワースポットなので、(お酒の力で)素直におしゃべりできるからです。

一同「「「かんぱ~~~い!」」」

さっそくで恐縮なのですが、エージェントの皆さんって、いわゆる営業職のサラリーマンじゃないですか。

はい。その通りです。

営業職って、社内でもバチバチに成績を競ってるイメージなんですけど……。ぶっちゃけ、エージェントも結局は自分の成績が一番大事なんじゃないですか?

自分の営業成績のために、求職者の意向に沿わないような企業をしれっと勧めたりするんじゃないか? ということですね。

まあ、成績は大事ですよね。ボーナスにも直結しますし。

営業ですからね。当然ですよね。

正直すぎません?

ですが、短期的な成績が“一番”ではありません!

社内評価よりも、お客様や企業からの信頼のほうが、絶対にプラスになります。成績優秀なエージェントほど、売上よりも信頼関係を重視していると思いますよ。

無理な転職をすすめて短期的な利益を得ても、長期的にはむしろマイナスだと。つまり……?

お客様の希望にそぐわない求人は、絶対に紹介しません。

というか、シンプルにめちゃめちゃ嬉しいんですよね。自分が信じて送り出した方に活躍していただけるのが。

なんて暖かみのある回答……! すみません。エージェントって、感情を消す訓練とか受けてるんじゃないかと疑ってました。

エージェントという言葉に、冷酷な仕事人みたいなイメージがあるのかもしれませんね。そんなことないですから。感情、ありますから。


くっだらない話で大笑いするTさん。めちゃめちゃぶれた。感情がない人間の動きではない。

うちの会社の場合、“転職エージェント”という肩書が世間に認知される前から使っているので、昔は同窓会が恥ずかしかったです。「仕事何やってんの?」、「え、エージェントだけど……」って。

どんな反応が返ってくるんですか?

乾いた笑いです。


冗談言ってすべったみたいな空気になってる。

エージェントの目にゲーム業界はどう映る……?

 どうやら、筆者が危惧していたような、求職者よりも成績を優先するエージェントは少数派なようでした。ですが、まだ不安材料が消えたわけではありません。

 それは、いくら親身になってくれたところで、志望する業界のことを知らなかったら役に立たないんじゃないの? という懸念です。

“ファミキャリ!”のエージェントさんはゲームとかされるんですかぁ~~? 紹介先の商材もわからない人に、最適な転職先を紹介できるとは思えないんですけどぉ~~?

めんどくさい奴だな。

ゲーム好きは多いですよ。もちろん「ゲームを遊ぶ時間がない……」という人間もいますが、勉強のためにトレンドは追うようにしています。

ちなみに、おふたりは。

私個人の話をするなら、『人喰いの大鷲トリコ』とか『ワンダと巨像』が好きですね。あとは『いっき』についてなら数時間語り尽せます。しゃべっていいですか?

(Mさん、“好きなことをしゃべるときに早口になるタイプの人”だ……! シンパシーを感じる……!!)

すみません。お恥ずかしながら、わたしは勉強中で……。でも、“ゲームを愛でる女子の会”って活動に参加してます。メンバーの誰かがゲームをプレイして、お酒を飲みながらみんなで眺めるという。

え~、楽しそう。どんなゲームするんですか?

バイオハザード7』とか。グロテスクバージョンの。

活動名とのギャップがすごい。


『バイオ7』しながら女子会。強い。

おふたりから見て、ゲーム業界はどうですか?

めちゃめちゃ盛り上がってますよね。建前じゃなくて、本当に。2017年もシリーズの歴史を塗り替える大作がどんどんリリースされましたし。

個人的には、各プラットフォームがインディーゲームに注力しているのがうれしいですねー。小中規模のデベロッパーが、オリジナルタイトルを開発しやすい環境が整っている気がします。好きなんですよ、初期のプレイステーションみたいな怪作。

いまの時代、そうした情熱はソーシャルの分野でも発散できますし、選択肢はとても広くなってると思いますよ。


 その後もゲーム愛あふれるトークをたっぷり聞かせてくれたおふたり。とくにMさんは、さすが20年のベテランということで、業界の裏話が出るわ出るわ。「『××』が発××止になったのは××が××を××したせい」とか「『△△』には△△△が消△する△△”が存在している」とか。

 書けねえよ。

「“録(と)れ高”、大丈夫ですか? いまの話って記事にできませんよね」と急に冷静になるMさん。

不安な人ほどエージェントを使え!

お話を聞いて、エージェントの皆さんが求職者と真摯に向き合っていることは理解できました。

ありがとうございます。

ですが、私のような“コミュニケーション苦手な奴”にとっては、そもそも人と会うのが億劫なんですよね。面接とか受けたくない。家から出ずに転職したい。できることなら、働かずに飯を食いたい。

それはもう大人としてダメじゃない?

戸部さんは、面接のどういうところがお嫌いなんですか?

自己PRが苦手なんです。得意な分野でも「これくらいみんなできるのかも……」と不安になってしまう。「特技はイオナズンです」ってアピールしたら「当社はイオグランデ必須なんで……」って笑われるかもしれない。それが怖いんです。

なるほど。むしろ、そんな方にこそエージェントを活用していただきたいです。

イオナズンが使える人に?

そっちじゃないと思う。

そもそも前提として、エージェントのカウンセリングは、採用面接ではありません。求職者が納得のいく転職先を見つけるためのお手伝いなんです。

自己分析だけで自分の強みを過不足なく把握しようというのも難しい話です。エージェントとの面談を通して、自分の客観的な価値を知っていただければ、自信に繋がるんじゃないでしょうか。

転職活動してるときって、視野が狭くなりがちなんですよね。そんなとき、ひとりで考え込んでいると、どんどん深みにはまってしまいますから。“誰かに相談できる”ってだけでも、大きな意味があると思いますね。

そうですね。転職を“現状からの脱出”ではなく“キャリアアップのチャンス”とポジティブ捉えてもらえたら嬉しいです。

必要以上に身構える必要はないと。

それに、いくら周囲から反対されても、自分が大丈夫だと思えば推薦します。書類を見ただけじゃ気付かない長所ってありますから。求職者の人となりをしっかり把握するための1対1カウンセリングなんです。

エージェントは“相手に信頼される努力”はもちろん、“相手を信頼する努力”もしているんですね。

長くこの仕事を続けていると、以前担当した方から2回目・3回目の相談をいただくことがあるんです。「ちゃんと信頼関係を築けたんだなあ」と嬉しくなっちゃいますね。


 自分と向き合うという作業は、ぐるぐると堂々巡りに陥りがちで、誰かに話を聞いてもらいたくなることもあります。まして、転職のような生涯のキャリアに関わる問題ならなおさら。

 そんなときは、思い切ってエージェントに相談してみるのも有用な手段。

 「登録したら必ず転職しなきゃいけない」なんてことはありませんし、「明確な目標やビジョンがなきゃいけない」なんてこともありません。エージェントというサービスは、もっと気軽な気持ちで使っていいんだそうです。

エージェントも悩んでる

実際にお話してみてわかりました。エージェントは確かに信頼できます。……でもそうなると、今度はエージェントのお悩みなんかを聞きたくなってきちゃいますね。人ひとりの人生を左右するわけで、心労も多いんじゃないですか?

うーん、悩みですか。

先ほどMさんが「書類を見ただけじゃ気付かない長所もある」とおっしゃってましたけど、逆に、実力以上の内容を盛り盛りにアピールする人もいますよね。こんなに脚色したら、もはや嘘じゃん! みたいな。

まあ、いますね。

ああいうのって、見抜けるもんなんですか?

……

黙った。

いや、見抜けているはずです!

まあ、正直なところ怖いですよ。送り出した方が、内定先とトラブルになったらどうしよう……って。内心めちゃめちゃビビってます。なので、その方のことを本心から信頼できるように、可能な限りお話を聞くようにしていますね。

肩書とか業績を100倍にして話す人とか、たまにいません? 自称“○○統轄責任者”とか。

たまに、というか、あるあるです。まれにエグゼクティブを騙る人も見かけます。

量産型エグゼクティブですね。

かっこよくするな。

あとは……悩みというか、切ない話なんですが。私が推薦した方が、面接で酷評されてしまったことがあって……。


当時40代くらいの、ゲーム開発の現場で、デザイナーとしてずっと戦ってきた方なんです。受けたのはITベンチャーだったのですが……、若手の敏腕マネージャーから「考え方が古いですよ」ってボロクソに言われてしまった。相当落ち込んでました。

ソーシャルとコンシューマでは、求められるスキルセットが180°違ってきたりしますから。

適切なマッチングができなかったことをしばらく引きずりました……。どうしても求職者に肩入れしてしまって。

たしかに切ないなあ。企業とは方針が合わなかったかもしれないけど、求職者ご本人は長年培ってきた相当なスキルをお持ちなわけですものね。

ゲーム業界は、非常に流れが速い業界です。求められるトレンドも急激に移り変わっていきます。能力のある方が、そのスキルを遺憾なく発揮できるためにも、まずは我々が業界をしっかり俯瞰しなきゃいけないな、と。心の底から反省しました。

 転職エージェントもまた、我々と同じように悩み、葛藤するひとりのビジネスパーソンでした。単なる便利なサービスとして利用するのではなく、心を開いて信頼関係を築くことが、エージェントを使った転職のコツかもしれません。

 何十人、何百人ぶんのキャリアを見続けてきたエージェントの知識と経験は宝の山です。いっしょにキャリアプランを組み立てたり、自分の適正に太鼓判を押してもらったり、あるいはただただ悩みを相談したり……。そうした“人 対 人”のコミュニケーションだからこその強みを活かせたなら、ずっとポジティブな転職活動を送れることでしょう。

 続く後編では、ゲーム業界で転職を考えている方むけに、より実践的なアドバイスをお聞きします。お楽しみに。