ロックスター・ゲームスの最新作『レッド・デッド・リデンプション2』を、世界のメディアはどう評したのか? スペシャルなトレーラーとともに、本作を開発段階から追い続けてきた“洋ゲー冒険家”マスク・ド・UH氏が、いまだからこその視点でその革新性を語る!

 衝撃の発売から早2ヵ月半……そろそろ『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、『RDR2』)を総括して語る時期が来たと感じる。ゲーム本編のストーリーモードをクリアーしたプレイヤーも多いだろうし、『レッド・デッド・オンライン』も(2019年1月時点では)ベータ版であるが、無事にリリースされている現状を踏まえつつ、『RDR2』が追求した世界、ロックスター・ゲームスが目指した究極のオープンワールドとは何か? 2018年度のゲーム・オブ・ザ・イヤー獲得も射程距離に入る傑作に仕上がった『RDR2』だが、本稿では、メディア評ではあまり触れられていない、筆者が注目したポイントを交えつつ、『RDR2』という芸術的なまでに完成度の高いビデオゲームについて、改めて解説を試みたい

さまざまなメディアから絶賛の嵐

 『RDR2』は、その壮大な世界観、美しいグラフィック、細部にまで異常にこだわったディテール、そしてそれらすべてが融合したゲームデザインが軒並み高い評価を得ている

「PLAYSTATION 4とXBOX ONE史上 最も評価が高いゲーム」
「最高傑作」(IGN スコア10/10)
「最高のオープンワールドのゲーム」(週刊ファミ通 39/40)

 歴史観の違う日本では、西部劇の世界は身近なものではないが、欧米からしてみれば『RDR2』に描かれている世界、ドラマは100年前のリアルである。その時代の法律、常識、意識があり、いま現在とは大きく異なる倫理観に支配されていたし、そこでは目を背けたくなるような陰惨な場面に出くわすこともあるだろう。

 ロックスター・ゲームスの看板タイトルである『グランド・セフト・オート』(以下、『GTA』)シリーズと比較されがちな『RDR2』だが、両者が似ているのはオープンワールドというゲームデザインだけで、実際に目指しているところは真逆であると筆者には思えてならない。

 そう、『RDR2』は徹底的なまでに物語がシリアスなのだ。『GTA』シリーズは現代アメリカ社会への皮肉であり、ストーリーも含めて全体的にギャグ度が高い。もちろんシリアスな流れもあるが、どこか笑ってしまうクレイジーさが強調されている。特に『GTAV』はそこが顕著だったと感じる。

 対する『RDR2』において描かれているのは、銃と暴力にまみれたアメリカ合衆国のダークな歴史そのものであり、単なる無法者たちの逃避行に終わらない物語に仕上がっている。逃亡奴隷の子どもと奴隷制の問題、先住民に対する差別と虐殺、法に守られることなく大切な存在を失ったからこそ無法者になったという人生模様、登場人物たちに重くシリアスな背景があるから、そこにエキサイティングなドラマが生まれるのだ。

 グラフィックやマップの広さばかりが取り沙汰されているが、『RDR2』の本当にすごい部分はシナリオにあると思った次第であり、それは前作も同じである。ゲームメディアではない一般誌の『USA TODAY』が「圧巻の世界観」と本作を評したのは、そういったドラマ性は時代背景の部分ではないだろうか?

奇人変人大集合~「見知らぬ人」たちとの邂逅

 しかし、シリアスすぎても気持ちが重くなっていけない。ヘビーな物語性にも、しっかりロックスター流のギャグが散りばめられているのは、さすがである。

 マッド・サイエンティストたちの野望(モデルは同時代に実在したニコラ・テスラとトーマス・エジソン)、おかしな猛獣サーカス団とサイド・ショウ芸人、はたまた『悪魔のいけにえ』真っ青の殺人鬼ファミリーや謎の連続殺人犯、廃村に暮らす世捨て人や迷信を信じる村人などなど、メインミッションとは直接関係ないが、おかしな人々が暮らすこの世界は狂気と笑いに満ち溢れている。よくアーサーが正気を保てているな、と感心してしまう。前作にも奇人変人は多数登場したが、今回はそのクレイジーっぷりが大幅にグレードアップしている。

 一般誌の大御所メディア『NEWSWEEK』は『RDR2』を「桁違いに美しい」と評しているが、薄汚い面があるからこそ、その美しさは際立つ。おかしな人々と対峙し、戦いを制した後のアーサー(筆者)はひとりで小高い丘に登り、高級タバコの煙を燻られながら、みずからの行いを悔やむ。その眼下を滑空するコンドルと夕日の美しさは、確かに筆舌しがたい。

 ただ単にミッションを順繰りにクリアーするのではなく、このようなプレイヤーそれぞれの思い入れが具現化できる、まさしく“もうひとつの世界”が作られている''のである。

現代最高レベルのゲーム

 マップに関しても触れておこう。マップというと簡潔だが、実際は高低差と気候が盛り込まれた広大すぎるフィールドと呼ぶべきである。単に荒涼とした大地や緑が延々と広がっているのではなく、エリアごとに特色があるのだ。

 泥だらけの田舎町、雪深き森林地帯、赤土が舞う南部、蒸し暑くどう猛な生物が潜む湿地帯、文明社会の大都会サン・ドニ、荒れた鉱山町、鬱蒼としたジャングルなどなど……。広さだけではなく、それぞれの特徴を活かしつつも細部まで執拗に作り込まれているマップは、「まさに現代最高レベルのゲームがここに」と『THE HOLLYWOOD REPORTER』が評したのも、うなずける。

 自然環境を再現するといっても、ここまで徹底的に再現するとは思ってもみなかった。300種を超える動物たちの営みがその代表だが、重要なのは動物だけではない。

 突発的に発生するアクシデントや行き交う人々の生活スタイルまでもが多重構造で盛り込まれており、レア衣装を入手するためにミッションを放り出してひたすら狩猟に明け暮れたり、用意された多くのチャレンジをコンプリートすべく、列車強盗や恐喝に励んだり、野草摘みから武器収集まで、とにかくやれることが多い。多すぎる。

 おまけに、ストーリーの分岐やアーサーに設定された名誉レベル……その高低差によって受託できないサイドミッションが存在するなど、このゲームはサクサク終わらせて「ハイ! つぎ!」ではなく、作り込まれた世界を何度でも楽しめるように設計されている。老舗の鰻屋のタレのように積み重ねた歴史と技術が盛り込まれて奥深い味わいを醸し出し、熟成された真の大人向けビデオゲームタイトルに仕上がっているのだ。

 バイオレンスな表現もあるが、そこも含めての大人向けであり、成熟した大人どうしだからこそ表現できる恋愛の事情と男の孤独、女の寂しさ。深く複雑な人間関係と葛藤、悲しき別れと新たなる希望と引き継がれる魂。それらすべてが凝縮されたデータとなり、我々の手元にいま届いている。

 ほかのビデオゲームとは一線も二線も画した『RDR2』は、ロックスター・ゲームスの執念と意地と誇りを感じさせる、恐るべき完成度を誇っている。何度でも、何年も遊び続けられる。そんなゲームと出会えることは滅多にない。筆者は、いつまでもあの荒野で暮らしていたいのである。