C4 LANは砂場であり楽しい学級崩壊でありゲーム界のサグラダ・ファミリアでもある

公開日時:2018-01-31 20:30:00

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“C4 LAN 2017 WINTER”が閉幕して1ヵ月以上も経つというのに、いまさら記事を書きました。

 
 多くのイベントを取材してきた僕が、唯一と言っていいほどリポート記事を書きたくないイベントがある。それが“C4 LAN”だ。

 それはなぜか。居心地がよすぎるからである。体にフィットするソファが人をだめにするように、C4 LANというイベントは取材する人をだめにする。

 一応、この記事は2017年12月15日から17日にかけて開催された“C4 LAN 2017 WINTER”リポートだ。考えがまとまったら書くつもりだったのだけど、そうこうしているうちに次回の開催概要が発表されてしまった。

【C4 LAN 2018 SPRING概要】
開催日:2018年5月11日(金)~13日(日)
会場:ベルサール高田馬場
公式サイト:http://2018s.c4-lan.com/
 

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 本来なら「次回のC4 LANに参加しよう!」と書くべきなのだろうけど気が引ける。僕自身、よくわかっていないからだ。

 C4 LAN 2017 WINTERの様子を振り返りつつ、その魅力を整理する。これを呼んで次回参加に向けてイメージトレーニングをしたらいいと思う。
 

★★★よくわからないイベント、C4 LAN★★★

 まずは居心地がいいと取材したくなくなるメカニズムから解説する。

 C4 LANは“LANパーティー”と呼ばれるタイプのイベントだ。みんなが思い思いのゲームやゲーム機、PC本体を持ち寄り、昼夜を問わず遊び倒す。

 そう、ただみんなで集まってゲームを遊ぶイベントなのだ。いや、イベントと呼ぶのも少し違う気がする。そういう“場”としか言えない。

 ステージ企画もあったりするが、あくまで添えもの。C4 LANの空気を求めて数百人が有料チケットを買い、大好きなゲームを持ち込む。そして、ただただゲームをする。

 冷静に考えると「何それ?」だと思う。だって、ゲームやるんだったら家でもいいから。LANパーティーはおもしろいのかと聞かれたら迷わずイエスだけど、明確な理由は思いつかない。何となくである。
 

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会場には300席以上が用意された。

 
 大会みたいに熱狂するかと言えばそうでもないが、会場にいる間は100点満点中60~70点くらいのテンションが持続する。

 みんな自分勝手に遊ぶので、会場中を取り巻く強い一体感があるわけではないが、「ああ、ここにいる人はみんなゲームが好きなんだな」という薄い仲間意識みたいなものは生まれる。

 他者とのコミュニケーションがすごく活発なわけでもない。もちろん積極的に話しかけて自分が好きなゲーム沼に引きずり込もうとする人もいるが、ひとりで黙々と遊ぶのも悪くない(そういう人もわりといる)。

 何なんだろう、これ。
 

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キーボードで格ゲーをプレイする人もいた。

 
 理由を探せば探すほどぼんやりする。このぼんやり感こそ、C4 LANが発する独特の空気なのだと思う。取材すると第三者としてその空気を見ることになるが、それは少しさみしい。

 できればその空気に混ざりたい。仲間に入りたい。この国で暮らしたい。だから取材したくないのである。

 堂々と仕事放棄。
 

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アナログゲームも盛り上がる。ジェンガをやっている人たちがいるなーと思ったら、Wargamingの関係者&プレイヤーたちだった。

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World of Tanks』や『World of Warships』の運営チームに所属する加持太郎さん。

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彼は初対面の『World of Warships』プレイヤー。こんなにいい顔でジェンガやる人見たことない。CMかよ。

★★★開会の儀でほら貝を吹く★★★

 ここまで読んできても、LANパーティーに参加したことがない人にはピンと来ないかもしれない。大丈夫。僕もよくわかっていない。たぶんずっとわからないのだろう。

 それでも何だかんだで3日間とも顔を出した。理解できないものはおもしろい。ふれるたびに理解が深まっていく気がする。

 初日の2017年12月15日は金曜日。来場受付は昼から始まっていて、ある程度落ち着いた夕方に開会の儀が行われた。
 

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会場は東京流通センター Eホール。倉庫ビルの中にある展示ホールだ。

 
 前回の“C4 LAN 2017 SPRING”取材で、すでに楽しさは知っている。今回はとにかく関わりたかった。単なる取材者ではなく、少しでも参加者に近い立ち位置でいたい。

 その答えがこれだ。
 

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 私物のほら貝を吹かせてもらった。

 聖火ランナーならぬLANNERがLANケーブルを挿す演出で、C4 LANは幕を開ける。そのときにほら貝を吹いたら出陣みたいでテンションが上がるかなと思ったのだ。

 勝手に吹いたわけではなく、事前に全体統括のtaharasanさんには話を通しておいた。返答は「いいっすよー」。ノリが軽すぎる。
 

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苦難を乗り越えてきたLANNERが会場に到着。宣誓の後にPCにLANケーブルを挿す。

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せっかくなので正装で。いきなりほら貝を吹いても受け入れられるイベントなんて、そうそうないぞ。

 
 服は『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)を意識している。

 『PUBG』は映画バトル・ロワイアルにインスパイアされたゲーム。最大100人で生き残りをかけて戦うバトルロイヤルFPS/TPSだ。

 上の写真で僕が着ているジャケットは、同映画の制服の色違いである。17年くらい前に買って、いまでもたまに着ている。こんなところで役に立つなんて思わなかった。

 なお、そのジャケットのブランド名をBA-TSUと言う(僕と同世代の原宿っ子たちが膝から崩れ落ちる音)。
 

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もしタイムスリップしてきた過去の自分がこの状況を見たら、将来に不安を覚えるだろうな。

★★★ステージ企画がイベントの主軸ではない★★★

 開会の儀を終えた後は自由だ。会場の様子をふらふら見て回る。やはりというか何というか、『PUBG』をプレイしている人が目立った。

 C4 LANでは参加者ひとりにつき1席持つのが基本だ。自分ん家みたいにPCやゲーム機をセッティングしている人が多くておもしろい。

 遊ぶゲームやそのコミュニティー単位でまとまっている参加者もいる。大量のオフ会が同時多発的に発生しているようなものだ。

(3日分の写真を適当に並べます)
 

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アメリカ人ゲーマーの家に迷い込んでしまったのだろうか。

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PCの上に『PUBG』のフライパンとヘルメットが置いてある。

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会場端にダーツ台を置いている人たちがいた。

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グループ席を取って参加していた名作RTS『StarCraft II』勢。

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オリジナルのカスタムキーボードがかわいい。

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この部分は、

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StarCraft II』のキャラがモチーフ。

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前回の取材で顔を覚えてくれたらしく、ノリがよかった。

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いろんな意味でフル装備。

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好きなフィギュアが目に入る位置にあると落ち着きますね。

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いま話題のアニメに出てくる短い子と長い子。

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かっこいいPC。愛機を自慢するのもいい。

 
 さっきステージ企画は添えものと書いたが、正確には“遊ぶための手段のひとつ”である。

 ステージ企画の多くは参加者が主動。大々的にやったほうがおもしろいことや人に見てほしいことのアイデアがある人は、事前に主催者側に相談しておくと、ステージを貸してもらえる。

 ステージでは参加者が考えた『PUBG』、『StarCraft II』、『Overwatch』などの企画のほか、協賛各社のイベントも実施された。ゲームを遊ぶうえでは協賛メーカーも参加者も平等なのである。
 

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最初のステージイベントは『StarCraft II』。

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協賛メーカーによるオークションなども開催された。

 
 ポイントは“みんながみんなお行儀よくステージを見ているわけではない”ということ。C4 LANはみんなが自由に遊ぶイベントであり、ステージもその延長だ。

 ステージ中心のイベントには何となく見ないといけない雰囲気があるが、C4 LANは少し違う。ステージ企画と個人の遊びの比重が同等だからだ。

 おもしろそうだと思ったら見たり参加したりすればいい。そうじゃない場合でも邪魔しない程度に配慮すればオーケー。誰かの“好き”を押し付けられない空間って珍しい気がする。
 

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ステージ上の音声が爆音過ぎないのもよかった。大声を出さなくても会話ができるのはありがたい。

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まとまりがないのに成立する不思議なイベント。こんなに楽しい学級崩壊はない。

 
 C4 LANは3日ぶっ通しのイベントなので、深夜もノンストップである。深夜帯は“ミッドナイト・フリーダム”と称され、わりと自由にステージを使えるらしい(主催側への相談や申請や必要)。

 「いいらしい」と曖昧に書いたのは、僕自身は一度も深夜までいたことがないからだ。そろそろ深夜の雰囲気を経験したい気もする。せっかくだからステージを借りるのもいいかもしれない。

 ちなみに、東京流通センターの近所には24時間営業のスーパー銭湯がある。深夜を回ったらお風呂に入り、仮眠してから戻る人もいたそうだ。ゲーム→お風呂→ご飯→仮眠→ゲーム。そんな循環に取り込まれたら抜け出せないぞ。悪魔か。
 

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初日は編集部の工藤エイムも連れて行った。

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上の写真で工藤エイムが撮っているのは、INTELさんとNVIDIAさんの共同ブースで配られていたGeForceカラーのジュース。たぶんメロンソーダ。

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INTELさんはコーヒーを配布。なぜコーヒーなのかと言うと、新CPUの開発コードネームが“Coffee Lake”だから。

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アイ・オー・データ機器さんは液晶ディスプレイやキャプチャーユニットを展示。

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休憩時間中にスタッフさんもふつうに遊んでた。ゲーム好きな人は好感が持てる。

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サイコムさんとエムエスアイさんは共同でブース出展。

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前回に引き続き、C4 LAN名物・ゲーミング足湯もあった。

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キャスターの岸大河くんも大満足である。

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DXRACERさんのブースで『つっぱり大相撲』を遊ぶ。

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写真がブレるほど激しくガッツポーズをする僕。

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「eスポーツ!」と叫びながら盛り上がった。

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協賛社がピザの差し入れをするとめちゃくちゃ盛り上がる。

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プロゲーミングチーム・DeToNatorもブース出展していた。さすがの人気。

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オリジナルグッズを販売したり配布したり。

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ファンとコミュニケーション。DeToNatorに会うためにわざわざ有料チケットを買ったファンもいた模様。

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サイン会的な。

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プレイ面でガチのアドバイスを求める若者もいた。いいぞ。

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コスプレイヤーの古宮彗。さんもブース運営を手伝っていた。

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運営統括のtaharasanさんがDeToNatorのTシャツを買ってた。僕はベースボールキャップを購入。

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DeToNatorのメンバーが女子からちやほやされているのを見て奥歯を食いしばる。くやしい。

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そんな女子ファンのためにメンバーの写真を載せておきます。

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自分の顔がプリントされた缶入りのパンをむさぼるDeToNator代表の江尻氏。

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グッズやスポンサーの製品などがもらえるじゃんけん大会。

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安定のSaih4tEスマイル。

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集合写真。右下のふたりが指でハートを作っているのは僕の指示だ。

★★★C4 LANはでかい砂場だ★★★

 全体的に正解がわからないということは何となく伝わっただろうか。

 楽しいかどうかは参加者の想像力しだい。これはきっとでかい砂場だ。どう遊んでもよくて、何を作っても否定されない。RPGで言えばクエストタイプではなくサンドボックスタイプ。最近の流行りである。

 僕はプレイヤーが自分でゲームの遊びかたを考えるのがいちばん幸せだと思っている。ある意味、僕の理想ともいえるイベントだ。
 

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狩歌』というアナログゲームがすごく気になった。

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J-POPでよくある歌詞が札になっている。音楽を流しつつ、出てきた歌詞を取るというもの。そんなの盛り上がるに決まってる。

 
 また、チケットが有料というハードルはあるものの、コミュニティーイベントとしてはひとりでも参加しやすい部類に入ると思う。考えようによっては。

 コミュニティーイベントに参加する場合、いちばん心配なのは馴染めるかどうかだろう。その手のイベントは大半が小規模なので、全体に一体感が生まれやすいが、その輪に自分だけ入れなかったらと思うと本当につらい。

 大規模だとそんなことはない。全体でひとつの輪になるのはほとんど不可能だし、自分以外のぼっち参加者もわりといる。ぼっち仲間がいるのに、ぼっち同士で無理に仲よくする必要もない。そういう安心感ってあると思うのだ。
 

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すばらしい自分ん家感。こんなに散らかしたらお母さんに怒られるぞ。

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新発売のゲーミングデバイスだろうか。

 
 C4 LANは未完成のイベントだ。席数も、協賛ブースの作りも、各種の企画も、すべて伸び代がある。というか、正解がないので試行錯誤しながら変えていくしかない。

 作っても作っても完成しない。サグラダ・ファミリアみたいだ。そういう曖昧さも含めて愛おしいと思う。

 運営のtaharasanさんと話したところ、現状に満足しているわけではなく、まだ実現できていないアイデアもたくさんある様子。参加ハードルの高さも何らかの形で改善したいとのことなので、期待したいところだ。
 

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時間が経てば経つほどハイになるため、終了間際のじゃんけん大会は異常な盛り上がりを見せる。

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これらの協賛各社に対して、

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「ありがとうございましたー!」とみんなでお礼を言う。

 
 2017年12月17日の昼過ぎ。C4 LAN 2017 WINTERの閉幕が近付く。

 片付けを始める参加者たちを見て“この時間が終わってほしくない”という気持ちがわいてきた。子どもの頃から祭りの後の空気が苦手だった。寂しくて泣きたくなる。

 付き合いたてのカップルみたいな気分のままクロージングセレモニーを迎えた僕は、数分後に大きな声を上げることになる。
 

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わざわざエンディングムービーを作るなんて粋だなあ。

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お?

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うおー!

 
 エンディング映像に乗せて、次回の開催が発表された。このときは時期だけだったが、後日、場所と日程が公開。場所はベルサール高田馬場。開催日は2018年5月11日(金)~13日(日)。

 規模はもう一段階大きくなるみたいである。もっとメジャーになってほしいような、このままでいてほしいような。複雑だ。

 一通り書き終わったけど、やっぱり正体をつかみ切れていない。よくわからないけど、つぎもきっと遊びに行くんだろうな。
 

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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