ふしぎな会社の靴デザイン会議に出席『エミル・クロニクル・オンライン』

公開日時:2015-04-03 00:00:00

 先日、ふとラーメンを食べたくなったので福岡県に行ったのだ。

 変わった店構えのラーメン屋に入ったら、偶然にも『エミル・クロニクル・オンライン』のオフラインイベントを開催中だった。ふらっと参加してきた。

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▲とんこつラーメンひとつください。

★妖精というより妖怪に近い

 というのは嘘だ。さすがの僕もラーメン屋とイベント会場は間違えない。ピュアな読者をだましてしまい申し訳ない。信じちゃった?

 そのイベントとは“タイニー・かんぱにー全国合宿アイテム制作会議 福岡支部”のこと。サービス10周年を記念して運営チームが全国10ヵ所を回り、10種類の装備アイテムをプレイヤーといっしょに作る企画である。

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▲とくに挨拶もせずに入ったら最初は一般の参加者と思われ、少し経ってから気づかれた。

 会場全体に流れる「何でここにいるんですか?」みたいな空気。ものすごく自然に溶け込んでしまった。ふらりと現れて、いつの間にか輪に加わっている。そんな妖怪いたような気がする。

 何度か「ふだんはオーラを消してますよね」と言われたことがあるが、そもそも僕は会社員なのでオーラなんて出てない。出しかたを知らない。

 『ECO』運営チームの寺田教授とブリキング榊田さんからは「本当に来たんですね」と驚かれた。僕はおふたりから「地方イベントにも遊びに来てくださいよー」と言われたから来たのだ。社交辞令やお世辞を真に受けるタイプである。

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▲寺田教授(左)はこの日のために数年ぶりにスーツを購入。ブリキング榊田さん(右)はマイクの持ちかたがアーティストっぽい。

 僕を見たときの表情から察するに、「引っ越したので近くにお越しの際はお立ち寄りください」と同じ感覚だったのかもしれない。本当に立ち寄られて困惑している。

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▲参加者のみんなは「オンラインゲームの妖精だから仕方ないよね」と納得していた様子。

 今回のイベントでは、参加者は『ECO』内に存在する会社“タイニー・かんぱにー”の新入社員として装備デザインの制作に取り組む。社員証も配られた。

 ガンホーさんの粋な計らいにより、社員証は僕のぶんも用意されていた。いつ来るか分からなかったが(この辺も妖怪っぽい)、念のため用意しておいたのだそうだ。社会人の基本は“ほうれんそう(報告・連絡・相談)”。「福岡会場に行きます」という報告ができない僕なんかのために、ありがとうございます。

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▲就職難の時代だが、いつの間にかタイニー・かんぱにーに就職してしまっていた。IDが“832(ファミ通)”になっているのが心憎い。

 また、会社がテーマということで、あらかじめ作っておいた名刺を配って交流するプレイヤーの姿も見られた。

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▲僕も名刺を持参。おみやげとして缶バッジも作っていった。

ECO』プレイヤーにとって、僕のイメージは「ヴェネツィアンマスクとバスローブを着用して缶バッジを配ってほら貝を吹く人」だろう。なので、肩書きはCanBadgist(カンバッジスト)/HoraGuy(ホラガイ)にした。

 それぞれ“缶バッジ職人”、“ほら貝を吹く男”という意味だが、そんな言葉は辞書には載っていない。マスクとバスローブを表現する言葉は浮かばなかったので、そっちはスルーした。

※関連記事:ECO祭2014でほら貝を吹いた

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▲寺田教授たちは参加者たちと名刺交換をして回っていた。

 ここ最近はオフラインイベントで名刺交換を推奨するメーカーが増えている。シャイな参加者も多いので、交流を促すのはいいことである。ふつう会社の同僚や上司とは名刺交換しないよなーという疑問は抱かないようにしたい。

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▲僕も寺田教授と名刺交換。ミス・ユースケと申します。よろしくお願いします。

★みんな逃げないから偉い

 イベントは入社式からスタートした。全員が起立し、大きな声で社訓を読み上げる。軽くトークを挟んだ後、デザインブレスト会議に入った。

 僕が福岡会場に参加したのは、デザインテーマが“靴”だったからだ。とある大手スポーツメーカーの靴(羽や尻尾がついている)が好きなのだけど、つねづねアバターっぽいと思っていた。よく「特注ですか?」と聞かれる。

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▲オンラインゲーマーには「スピードが上がる課金アイテムだよ」と言うとウケる。

 PCオンラインゲーム業界において、派手な靴といえば僕である。そういうことにしてほしい。僕のために靴を作ってくれるのかな、という気分を味わうために福岡に来たのだ。いい気分に浸るためのアグレッシブさは超高校級のものを持っている。

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▲デザインテーマをくじ引きで決定。寺田教授が引いたのは“お出かけ・散歩”。あまり絞られてない気がする。デザインテーマって和風とかSF風とか、そういうのじゃないのか。

 ブレスト会議は5~6人ずつ7班に分かれ、用意されたデザイン用紙に描き込んでいく。僕は絵を描くのが苦手なので、こんな会議に出ることになったら逃げ出すと思う。みんな逃げなくて偉いなーと思いながら見ていた。

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▲机の上には用紙や色鉛筆、鉛筆削りなどが用意されていた。ザ・アナログ。

 まずはざっくばらんにアイデアを出し合い、最終的に各班の代表作を決定する。ウケ狙いのやつはあまりなくて、みんな本気で自分がほしい靴を書いていた。寺田教授は「いまリアルでスニーカーがほしいんです」と言っていたが、それは自分で買ってください。

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▲寺田教授とブリキング榊田さんは各班の様子を見てまわっていた。

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▲事前にいくつものパターンを考えてきた人もいた。打ち合わせ当日にあわあわ言いながら資料を用意する僕とは違う。

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▲散歩のうきうき感をバネで表現。同じ班の人が「スプリング(春)にもかかってる」と言っていた。なるほど。

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▲羽付きのブーティー。かわいい。僕が女子だったらこの靴ほしい。

★講評&質問タイム

 入魂の作品が仕上がったところで講評の時間がやってきた。開発会社であるヘッドロック所属のブル高橋さんとアルマジロンTさんから、ゲーム内で再現可能かどうかの意見をもらう。

 おふたりは東京のオフィスで待機しており、講評はテレビ会議形式で行われた。福岡出張ならちょっとした旅行気分も味わえるが、これではただの休日出勤である。おつかれさまです。

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▲おふたりが映っている場面は撮れてなかった。すみません。

 作品をスキャンしてデータをヘッドロックさんに送付。準備が整うまで質問タイムが設けられた。

 いちばん印象に残っている質問は「パンツに力を入れてデザインしてるって本当ですか?」だった。なお、質問者は女子である。友だちから「『ECO』オフィシャルデザインワークス(※)のインタビューページに載っていた」と聞いて気になっていたのだそうだ。

(※『ECO』オフィシャルデザインワークス:弊社から発売された本。僕が担当しました)

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▲最初に手を上げた女子がいきなりパンツの話を振る。回答は「人によりますね。情熱のある人もいます」。

 このやり取りを見た寺田教授は、「おしゃれって表面だけじゃないですよね。とくに女性は」などと語り出した。プロデューサーが下着について熱弁をふるうイベントに参加したのは初めてだ。

 当該の本にはデザイナー陣のインタビュー(座談会)が4ページぶん載っている。見えない部分へのこだわりトークが止まらず、想定ページ内に入りきらなかったため、めちゃくちゃカットしたのはいい思い出である。

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▲ざわざわ(見えないこだわりか・・・)。

 肝心の講評結果はというと、大半は「靴ではなくブーツとしてなら再現できそう」だった。『ECO』では靴(くるぶし丈)とブーツ(ひざ丈)は別ものとして扱われているのだ。

 今回のテーマはブーツではなく、あくまで“靴”。ブーツよりも面積が小さいので要素を盛り込みにくいが、下半身用の装備と干渉しにくいという長所がある。

 デザイナーのおふたりはどうやって再現するか本気で考えていたようで、「丈を短くする」、「いっそのことライドパートナー(いわゆる乗りもの)扱いにすればいいのでは?」など、思い切った意見も出てきたのがおもしろかった。

 各班の作品は公式レポートを参照してください。

※アイテム制作会議 福岡支部レポート

★神出鬼没感を高めていきたい

 これらの意見を取り入れて制作されたアイテムは、後日本当に実装される。どれかをベースにするのか。全部乗せにしてしまうのか。楽しみだ。

 アイテム制作会議は残り9ヵ所で開催される。小規模イベントは交流を図りやすいので『ECO』仲間を増やしたい人は参加するべきだ。僕もまた機会があれば参加したい。

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▲イベント終了後は時間ぎりぎりまで交流タイム。寺田教授、大人気。

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▲ブリキング榊田Tシャツを着て参加した人もいた。ブリキング3兄弟。

 僕はよくイベント参加者に“僕に関するいい噂”を流すようにお願いしていて、このとき知り合った数人も拡散してくれた。「神出鬼没のミス・ユースケはいい人らしい」という漠然とした噂だけを浸透させ、数百年後には各地の民話に登場できたらうれしい。

 「いい子にしないとミス・ユースケに怒られるよ!(ふだんは優しいけど怒ると怖いという意味)」と、言うことを聞かない子をたしなめてほしい。

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▲メシテロ画像も盛り込んだ。

 エイプリルフールネタの裏話でもしようか。

 2015年のエイプリルフールで、『ECO』はいろいろな嘘ゲームを制作すると発表。僕は記事を2本ほど寄稿した。別件の打ち合わせが終わった後に、寺田教授から「嘘の記事を書いてもらえませんか?」と頼まれたからだ。

 寺田教授は「嘘記事をお願いできる記者さんって誰だろうと考えたとき、ユースケさんしか思いつかなかったんです」と言っていた。あの、僕、記事では嘘つかないんですけど。

 頭の中では「ユースケさんならおもしろい記事を書いてくれるから」と変換した。ビジネスの場ではこういう勘違いも重要である。あと、愛想笑い。

 記事は楽しく書いてチェックも完了。ガンホーさんのWebサイトに載ることをうちの会社側(上司や広報担当)に報告した。

 後日、広報担当から「エイプリルフール企画の件、了解しました」とメールの返信があり、中に「カポエイラのくだりがおもしろかったです」というひと言も添えられていた。真面目に目を通されたのだと思うと恥ずかしい。ふだんは真面目な記事も書いてますからね。

 文面までしっかり読むなんて、うちの広報担当は仕事熱心だな、と思った。

“タイニー・かんぱにー全国合宿アイテム制作会議”特設サイト

『エミル・クロニクル・オンライン』公式サイト

(C) BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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