本物の下着に囲まれてからユーザーデザイン下着についてインタビュー『マビノギ英雄伝』

公開日時:2014-11-13 00:00:00

hJb8R9N73h12n6I3qcWPbis7N2i2OVE5

▲下着に興味津々。

 アクションRPG『マビノギ英雄伝』はインナー(下着)へのこだわりがすごい。

 僕も下着は好きだ。おっとりしたお姉さんに「どんな下着がお好きですか?」と聞かれたことがきっかけで、下着デザインコンテストを開催したこともある(※)。

(※詳細は「下着への情熱があふれ出すインナーデザインコンテスト」参照)

 最優秀賞を受賞した作品はもうすぐゲーム内に実装される。デザインや制作時のポイントについて、運営のネクソンさんに話をうかがった。

 本物の下着を見てから。

qIn1r4Cuy4Zo6335IJCiTSFk5EkQ8D1y

▲『マビノギ英雄伝』はアクション性とアバターのデザイン性がすごい。

oEtke3rP5SMy33765X37l87i21J9c8Ld

▲ハロウィンシーズンに実装されたヴァンパイアモチーフのアバター。

HEjBXYk8hHz359P8B5yfL5K5gI9hr422

▲2014年10月22日実装のインナー“ボニーローズ”は胸とおしりが骨の手にわしづかみにされている。当初は胸だけのはずが、上記のおっとりお姉さん・なかむーさんの希望により、おしりもわしづかみに。

★服飾系の展示会“PLUG IN”で下着の勉強

xLHE8sF3vbYDuGib7d318Z87TRTHtd93

▲もっとすごいインナーもたくさん。

 『マビノギ英雄伝』はオンラインゲームにおける下着界の上位ヒエラルキーに君臨するゲームだ。これはわりと的を得た評価だと思う。

 オンラインゲームの、下着界の、上位。局所的ではあるものの、上位にいるのは悪いことではない。今後も職人のように突き詰めていくべきだと思う。

 そんな勝手な願いから、服飾系の展示会“PLUG IN”にネクソンさんを呼び出した。目的は下着を取り扱う“Lingerie+(ランジェリープラス)”さんのブース。

 本物の下着の機能性やデザインを勉強させてもらい、あわよくば下着業界とのコネクションを作ろうという魂胆だ。よりすてきなインナー作りの下地を固めてもらいたい。

 会場に集結したのはこの4人。

Unk2qbpJ8s8BtFZsE4ibA4xTFy4J8bGP

▲後光が差しているのは4人が神々しいからではなく、日が傾いてきたからです。

ミス・ユースケ(1)
洋服好きが高じて、女子目線で下着トークができるようになった。“風と谷間のブラ(ワコール)”はジブリっぽい名前なので好き。でもジブリ作品はあまり見たことがない。

松原庄吾さん(2)
ネクソンさん所属のデザイナー。デザイナー歴は約5年。前職ではリアルのアクセサリーを作っていた。

水野太介さん(3)
ネクソンさん所属のデザイナー。デザイナー歴は約8年。こういった展示会を見学するのはほぼ初めて。

なかむーさん(4)
マビノギ英雄伝』運用チーム所属。ふわふわした雰囲気のお姉さんだが、下着について語ると止まらなくなる。

 バンドを組んだら名前は“インナースペースオーケストラ”だろうか。内面宇宙の管弦楽団。見えない部分もおしゃれしたい女子の気持ちを、“インナー(下着)スペース”という言葉で表現した。サブカルっぽい難解なパフォーマンスをしそうだ。

aAo3fF4WlQV9p5V3D3JhgsmgKT9Xujnn

▲たぶん音楽性の違いで解散する。

★罠にかかって先に進めない

 仕事の都合で、集合したのは閉場時間の少し前。あまり時間がなかったので、急いでLingerie+ブースに向かう。

 だが、見るもの全部おもしろくて、すぐに足を止めてしまう。説明を聞いては「へー」。展示された服を見ては「ほー」。このままでは下着ブースにたどり着く前に展示会が終わってしまう。カメラ担当のネクソンスタッフさんに何度も怒られた。

xJ3weeEqjv2UD6s3ux3PiFfCfVqhTKxC

▲靴が気になるなかむーさん。

JUSf2ogzoV499qCPrdvl74Ql24kuugCI

▲最近の染色技術は進歩してるんですね。

Gf8bro853TJa9128u5reaQS92RgQ9g95

▲ラインのきれいなワンピースに見とれる。

 いちばん多く怒られたのはなかむーさんだった。「急ぎますよ」と声をかけて歩き出しても、しばらくしてから振り返るといなくなっているのだ。ホラー映画か。

★セクシーな下着が迫ってくる

 30分ほどかけてようやくLingerie+ブースに到着。複数のブランドの下着が展示されていて、その光景に思わず「おおぅ」と声が出る。突如として眼前に広がる小さなエロス。

 僕はファッションの一部としての下着が好きだし、なかむーさんも女子だからこういう光景には慣れているだろう。一方、男性デザイナー陣は最初は遠慮がちだった。

CINdfLYy2pi68MX59UiBsnXu1lo7v2Fs

▲マネキンからしてすでにセクシー。というか、攻撃的だ。

 一部のブランドは撮影NGだったが、見たり話を聞いたりする分には自由だ。呼吸を整え、冷静を装い、目を見開いて下着を見る。文字に起こすと変態みたいだが、そういうことではない。

 ニューヨーク発のランジェリーブランド“hanky panky”コーナーを見ていたら、スタッフさんがいろいろ説明してくれた。

 “hanky panky”はタンガ(Tバック的なショーツ)が有名なブランド。おしりの筋肉やプロポーションを保とうという意識を刺激できるので、多くのモデルが愛用しているのだとか。ブラもショーツと同じく、きつくホールドしないデザインになっている。

 胸やおしりの形を整えるだけが下着の役割ではない。そういう考えかたもあるということか。

MsLJ3W4fzvrxt2SD4ARzHDmbaYKE8cg8

▲熱く語る男性スタッフさん。来世が女子だったらhanky pankyのタンガはきます。

 『マビノギ英雄伝』のインナーには度を越してセクシーなものも多い。ただ過激なだけでなく、きちんと“そういうデザインである理由”があれば説得力が増す。

 たとえば、ベラ(女剣士)。「足腰&臀部の筋肉の動きを意識するためにタンガを着用している」となれば、「だから下着の面積が小さいのか」と納得することもできる。

 男性陣のおふたりも興味深そうに話を聞いていた。デザイナーとしてのスイッチが入ったのだ。

dMGsiEE218a6KMz32Xgxl4hvtWSq3744

▲「そうなんですね。すごく参考になります」

vX9QxZ6P5b9I852VFA6mqr35TzH14km5

▲この後、スタッフさんと名刺交換しました。僕も。

 やけに好意的だなと思ったら、下着以外の取り扱いブランドでゲーム系のコラボをやったこともあるらしい。なるほど。

 後日、カタログまで送ってくれて、至れり尽くせり。だが、布地面積が小さい商品が大半なので、会社のPCでデータを開く前に後ろに誰もいないことを確認した。

AvebVB9wDNcocAgh185A64q3BE4QtbDf

▲お隣りの“AROMATIQUE JAPAN”さんコーナーは上品な肌着を多数展示。レースがきれいだったので思わず凝視。こりゃいいものですわ。

 女子のみんなに言っておく。少し値段が高くても、下着は体型に合った上質なものを着けよう。そのほうがスタイルがよくなるし、健康にもいい。ゲームメディアに書くことではないが。

MIWgka8uEBsAi4lpRXg1v7KqmE46G2TQ

▲全部すてきだったね。

★ようやくユーザーデザインインナーの取材を始める

 多数の下着に囲まれて我を失ってしまったが、ここからが本題である。会場隅のスペースに腰を落ち着け、ユーザーデザインインナーについてお話を聞く。

qaS6c2tC54K6EJMJ5a4svZu832HJoK7D

▲取材前に展示会の感想を述べ合う。将棋でいうところの感想戦だ。

【女性キャラクター用 最優秀賞】

DLt1c2CEfceyFtCE1vUKYt6KHgz26Dv9
YRQ6rp31n1m72S2x4v6p753pUh9I817E

 誰が見ても全体的な完成度が高く、細かな指定が書き込まれたこだわりの一品。

 可能な限り指示通りに再現したいため、水野さんによると「ふだん制作しているインナーより時間をかけました」だそうだ。

 最大のポイントはふんだんに使われたレース。どうやって再現しているのかと思ったら、なんと手描きである。パターンを描き起こしたうえでテクスチャー用に調整している。

 投稿者からはレース遣いに関する指定もあった。

OD4M9F5Y56fL1cM83FQYr79mw712775g

▲レースを紐で編み上げるイメージ。

 水野さんも松原さんも、“レースの穴に紐を通す”という作りには苦労したらしい。だが、こういう細かい部分こそがこだわりだ。松原さんは「最初は完璧に再現できるかどうか不安でした」と言っていた。

Ko2pQ9zzMWyOf8U653pK287Y6Tv26Vzo

▲わざわざ図解するほどの熱意。

 なかむーさんが気にしたのはショーツ部分。「大丈夫そうですか?」と念入りに水野さんに確認したそうだ。絶妙なたゆみを守るために必死である。

 だが、心配は不要だった。松原さんが「水野さんはここに相当こだわって指示書を書いてましたよね」と言うと、水野さんは「そうですね。布が大きくなるとイメージが違ってしまいますから」と真顔で返す。

 キャミソールが白+レースでかわいい作りなのに、ショーツは面積が小さくてセクシーな印象。こういうギャップが大事なのだ。「いいよいいよ!」とセコンドみたいな声援を投稿者に送りたい。

 タンガについて話を聞いた後だから分かる。このインナーを着用する女性キャラクターは、きっとおしりの形がきれいだ。

nC6jV9zUsav6cu8p2LEQ9oLn8tRdUWhy

▲今回の展示会見学が生きている。

 投稿者は女子だと思うのだけど、僕個人としては女子ならではの書き込みがおもしろかった。ガーターベルトの仕組みについて解説していたり、タイツの厚さは40~50デニールと指定があったり。

dh2I5EFD3UFSWp1p9L8I6hFygKr4r6O8

▲ガーターベルトは単なるサスペンダーではないのだ。

 厚さについて男子たちに解説しておくと、だいたい20デニールまでがストッキング、一般的なタイツは60~80デニール、冬用のあったかタイツは110デニール以上である。


【男性キャラクター用 最優秀賞】

eP1ILpAd3sQ5e1LFfQ7A6weWnm7NEpmG
QYxOpdL3PD7EGLPK6pi1P62ZO1811ug8

 男性用インナーは赤いビキニパンツに丈の短いオーバーパンツを合わせたデザイン。こちらはわりとすんなり制作が進んだ。

 女性用とは異なり生地や細部の指定がないので、デザイナー陣で補間しながら制作。

 投稿者はわざわざ体に色を塗ったり筋肉を描き込んでいるくらいなので、精悍な体つきに似合うようにしてほしかったのだと思う。

 オーバーパンツは“使い込んだレザー風の素材”と推理し、わざと汚して色ムラやダメージを表現。さらにゆったり目のシワを入れてタイトにならないように調整しているという。

 水野さんは「きれいに作るのは、少し違うかなと思いまして」と語った。

NjOs5df4Ga62qGB7l4L2M6JMjr6Q7BYJ

▲想像力もデザイナーにとって重要な要素である。

 「運用チームでは質感をどう解釈していいか分からなかったので、デザインチームに丸投げしました」とは、なかむーさんの弁。また、「ベルトとビキニの隙間がすごくセクシーですてきだと思います」。

wK9ftD7t2cGXQSu9vxW2x7xs9S5d6TxA

▲ここをなかむーゾーンと名づけよう。

 この隙間、もとのイラストにはないのだ。「2枚のパンツを重ねばきしているということは、動くと隙間ができるはず」と、理論に沿って微調整を施している。

CNAPYoV8Bze8YeH6c38BFo8wYO9wX726

▲最後までわりと真面目に話を聞いてしまった。

★デザイナー陣も楽しく制作

LJ7yAbWUTxRNt8NeGe9168aHA4XHe6MQ

▲こんなに下着に真剣に向き合ったのは初めてだ。

 投稿者のデザインを100%再現したいが、仕様上の制約もある。たとえば、リボンやフリルなどの飾りはふんわりした感じを出しつつも、キャラの体に吸着させなければならない。

 水野さんたちがデザインを考えるとき、問題が起きやすい箇所にディテールを入れるのを避けがちだ。結果、無難にまとまったデザインになってしまう。

 松原さんは「こういう機会がないとトライできないので、すごく勉強になりました」と喜んでいた。デザイナー陣のスキルアップにもつながっている。

 なお、受賞作の発表はニコ生番組『月刊ファミ通feat.』内で行っており、その際にほかの2作品も高評価を獲得している。

Gr1ZbktD6fzcrxQ2PAT3Mh5g8wYMkm4x
MR9Bpr7Ij42XhpZrkshTDzJ5NAWF3V3t

 なんと、最優秀賞の2作品だけでなく、いちご柄の女性用インナーも実装を検討中らしい。続報に期待だ。

 カニの男性用インナーは大人の事情と格闘中だそうだ。なかむーさんたちは実装したいと考えているのだろうか。正気か?

『マビノギ英雄伝』公式サイト

Copyright (C) 2011 NEXON Korea Corporation All Rights Reserved.
Copyright (C) 2011 NEXON Co., Ltd. All Rights Reserved.


—————

Twitterやってます。フォローミー。
→僕のアカウントは@satoukousenです。

この記事の個別URL

ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

『PCオンラインゲームのブログ まいにちがβテスト』ブログ