E68M1: 『The Medium』現実世界と精神世界を並行して進む“二重現実”ホラーADV

一人称視点ホラーを追求してきた海外スタジオが三人称視点での新たなホラー表現に挑む、ホラーアドベンチャーゲーム『The Medium』を紹介。
文:BRZRK 編集:ミル☆吉村

公開日時:2021-01-28 05:24:00

 ドモー、そろそろ新しいPCの購入を検討しないと厳しいかなと思い始めたBRZRKダヨ。グラボがGeForce GTX 1080だから少しパワー不足になってきたのと、CPUもCore i7-7820xなんでそろそろキチィなと。竹藪に1億とかオチてないもんだろうか(※編注:むかーしそういう事件がありました)。

 今回紹介するのは『ブレア・ウィッチ』や『Layers of Fear』、『Observer』といった一人称視点のホラーアドベンチャーを世に送り出したBloober teamが新たに三人称視点のホラーゲームに挑む『The Medium』だ(PC/Xbox Series X|S、Game Pass対応 公式サイト)。

●ふたつの世界を並行して活動するパズルアドベンチャー的要素も

 物語の舞台は1990年代のポーランドにあるクラクフ。主人公のマリアンは葬儀社を経営していた養父の遺品を整理していたところ、マリアンの正体を知るという人物から電話があり“ニワ”と呼ばれる場所を訪れるように言われる。この電話に何かを感じたマリアンはニワへとバイクを走らせることに……といった内容だ。

The Medium

 マリアンは特殊な能力を持っていて、思念が残っているオブジェクトを念視することで情報を読み出したり、物質世界(現実世界)とは異なる精神世界でも"並行"して活動することが可能だったりする。

 この並行というのが本作のミソで、例えば物質世界ではマリアンの目の前に閉ざされた扉があったとしても、精神世界側で遮るものがなければその先を探れたり、オブジェクトに対して働きかけることが可能だ。

The Medium
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●ベクシンスキーやサイレントヒル的な空気感。ただし非戦闘ステルス系

 マリアンが能力を使い活動することが可能な精神世界は基本構造こそ物質世界と同じなのだが、その様相は大きく異なる。

 具体的にどういう感じなのかというのは説明が難しいのだが、ポーランド出身の芸術家、故ズジスワフ・ベクシンスキー氏に強く影響を受けたデザインで、終末や閉塞感、トラウマといった人の持つ負の琴線をタップ撃ちしそうな暗い雰囲気が感じられる。でも、そのグロテスクかつ恐ろしさと対比するように何故か美しさも感じられる不思議な世界と言ったところだろうか。

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 ゲームの雰囲気はどことなく『サイレントヒル』シリーズにも似た印象ではあるが、鉄パイプを振り回したり銃を撃ったりといった攻撃手段は存在しない。なので、基本的に敵と遭遇しても身を隠しながら脱出を試みるといった感じだ。ドンパチを期待していた人は注意しておくといいだろう。

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●プレイヤーの誘導や物語を見せる構造は流石の出来

 探索型の3Dアドベンチャー・ゲームは割とウロウロして詰まりやすいんだけど、本作はカメラのアングルや視線誘導に長けていて、ほぼ迷わず進むことができる。要所で展開されるパズルも特に難しいという印象はなく、あまり頭を使わずとも攻略可能だ。

 ただし、最終盤のとある施設で排水用タンクを操作することになるのだが、最後の最後で電源を切り忘れると進行不能になってしまった。筆者の見落としている何かがあるかもしれないのだが、直前のデータをロードし直したことで事なきを得た。電源のレバーには注意しておくといいかもしれない。

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 ゲームを進めていくと、少しずつニワとマリアンの関係性が明らかになってくる。それだけではまだ不明な点も多いのだが、マップの様々な場所に落ちている文章を読み取っていくことでより物語の側面を見ることができるようになるので、ぜひとも収集して欲しいところだ。

 また、物語の途中でインターバル的にマリアンがひとり語りをしている演出が数回挿入されるのだが、このシーンの意味を知った時は「おぉすげぇじゃん!」と素直に関心。物語を見せる構造は本当によくできていて、プレイヤーをガッツリ引き込んでくれると感じた。

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 物語を彩るBGMについても力が入っており、「サイレントヒル」や「BEATMANIA」などで楽曲を手掛けた山岡晃氏とBlooberの作品ではお馴染みのArkadiusz Reikowski氏の楽曲がビジュアル面と合わさりプレイヤーの琴線に触れ、より物語への没入はもちろん、マリアンに感情移入させてくれる。

 個人的に最終盤の某所にあるラジオから流れる曲が印象に残りすぎて、もしサントラや単体でデジタル販売されるのであれば買っておきたいなと思った次第だ。(※編注:PC版の予約特典にデジタルサントラが含まれていたりする)

 最終的に行き着くところはBloober節とも言える悲哀一色な感じだったけど、スタッフロール後の流れを見るとまだまだ先がありそうなので期待してしまう。クリアまでの時間は約8時間といったところで、プレイ中は物語にグイグイと引き込まれ没入することができた。

 儚く醜く美しく哀しいといった相反する要素を持つ本作、万人受けするわけではないが、ほぼ迷わず素直にゲームを進行させることができアクションやパズルが苦手な人でも苦なく物語をじっくり味わえると思うので、気になったら遊んでみてはいかがだろうか? Game Passにも入るしね。

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)