E92M1: グラフィティアクション『Bomb Rush Cyberfunk』はジェットセットラジオへの強烈なラブソングだ!

ジェットセットラジオシリーズに多大な影響を受けまくっているアクションゲーム『Bomb Rush Cyberfunk』を、ゲーム側であえていちいち説明されないノリなども含めて紹介。
文:BRZRK 編集:ミル☆吉村

公開日時:2023-08-22 12:00:00

 ドモー。うだるような熱い夏が続くから外に出るのが億劫になっているBRZRKです。ちょっとした買い出しすら熱くてシンドい気候なうえに水不足気味ってのがねぇ。

 今回紹介するのはあの『ジェットセットラジオ』(JSR)シリーズを超リスペクトした“真”の精神的後継作と断言できる『Bomb Rush Cyberfunk』(PC/Switchで配信中。PS4・5/Xbox版は9月予定)だ。

 JSRは自分もずっと遊んできたシリーズだからレビューのために旧作をやり直して備えたりしてたんだけど、遊んでみたらやっぱり強いリスペクトというか愛を感じたね!

ストリートのチャレンジに応え、グラフィティをボムれ!

 さてその内容は、ライバルクルーとの縄張り争いに身を投じるグラフィティライター(グラフィティを描く人の意)となって街中を暴れまわるアクションゲームだ。

 インラインスケート、スケートボード、BMXといったスポーツギアを駆使して街中を駆け回り、ライバルクルーのグラフィティを自分たちのグラフィティでBOMB(上書き)していき、ストリートの王者を目指すのだ。

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 グラフィティスポットは普通に移動するだけでは到達できないような高所にあることも多く、新たなグラフィティの図案、BGM、コスチューム、エリアのマップデータなどが手に入るアイコンもさまざまな場所に用意されていて、それらがまた絶妙な配置にしてあったりする。

 「次のクエストはあそこだっけ……」と軽く街を流している時にそれらがふと視界に入るとどうやれば取れるのかが気になりはじめて、本来の目的そっちのけで収集しようとしてしまいがち。おかげでクリアまでに余計な時間がかかってしまった次第である。

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REP(支持)を稼いでライバルクルーとバトれ!

 主人公はニューアムステルダムのグラフィティチーム“BOMB RUSH CREW”(BRC)の新メンバー。とある事情で失った“自分の頭”の手掛かりを手に入れるため、最終的に仲間とともに街を牛耳るクルー“オールシティ”となることを目指す。

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 街の5つのエリアはそれぞれ別のクルーが支配しており、BRCクルーは自分たちのテリトリーが無い最底辺の状態からのスタート。テリトリーを手に入れるバトルを受けてもらうために必要なのがグラフィティによる挑発だ。

 とりあえずライバルクルーの縄張りにあるタギングされたグラフィティをBRCのグラフィティでボムると、ストリートの支持“REP”が加算されていく。

 先に少し書いたけど、グラフィティは「ここに描いたのスゲーだろ?」という誇示でもあることが多く、それを上書きするために到達するルートを探すのが結構楽しい。

 時にはまっすぐに、時には逆方向から「この壁の看板をこっちの方向にウォールランして……」と試行錯誤しながらパズルを解くようにルートを探す楽しさとでも言えばいいかな? 目的地への移動手順が予想とバッチリハマったときの気持ちよさは最高。

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 さて、そうやってREPが溜まっていくとライバルクルーが街中に姿を表わし、「お前はコレできんのかよ?」と直接勝負を仕掛けてくる。それらの対決もクリアーすると縄張りを賭けたチームバトルへと発展。両クルーのメンバー全員がコンボを決めまくる時間制バトルとなり、それに勝利すると次のテリトリーへ……といった感じだ。

生き延びる術も遊びもストリートから見つけだせ!

 ただ、グラフィティを書きまくっていると迷惑行為というかそもそも非合法ということもあり、警察が取り締まりのために出現。この警察官、最初は弱そうな装備なのでガン無視できるのだが、徐々にHEATと呼ばれる取り締まりレベルが上昇し、最終的にスナイパーやヘリまでがプレイヤーの邪魔をしようとする。

 中でも特にウザいのがタレットで、地面からせり上がってきたかと思えば、プレイヤーを拘束する鎖付きの追尾ミサイルを撃ってくるんだけど、射程が長いわ連射してくるわでかなりイライラ(一応ブーストで鎖を振り切ったり体当たりでタレットをボムってダウンさせられる)。

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 しかし、マップ内に複数設置されている簡易トイレ(便宜上こう呼ぶ)に入って服装を変更するとHEATレベルをリセットできる。ただ、トイレは一度使用するとしばらく利用できなくなるので、HEATが厄介なレベルに上がる前に簡易トイレがどこにあるのかをしっかり覚えてから行動するといいだろう。

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 上記以外にもマップ上にはちょっとしたお遊び要素も存在していて、あまりゲーム側でいちいち説明されないので、自分で見つけ出す必要がある。そういった中でも筆者が気に入っているのがハイタッチシステムだ。

 これは、マップ上にハイタッチできる回転式看板が複数設置されていて、コンボを切らさずに全部タッチできると地下シェルターのような場所への入り口が開き、グラフィティの図案やコスチューム等の報酬を手に入れられるというもの(中にはハズレみたいなのもあるけど)。

 ハイタッチのルートは結構難度の高いものが多くて、やっぱり「ここからああいって、今度はこっち?」という事前の観察が重要。そして実走するとミスって、気付けば顔を真赤にしながら繰り返し挑戦したり。こちらも時間ドロボーですわ。

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トリックをキメてクールにヤロウゼ!

 街中の移動中はスケボーなどで空中でポーズを決めたりするトリックを繰り出せ、連続で決めるとスコアが加算されていく。

 このスコアはライバルクルーとのバトルでも勝敗を分ける指標となるため高得点を出したいところだが、そこで大事なのが、柵や手すりの上のレールを滑る”グラインド”と着地時にコンボを切らさない”マニュアル”(BMXの場合はウィリー、インラインスケートだとスライディング)でコンボを継続させること。

 スケボーゲーだとマニュアル走法のときにバランス操作のミニゲームが入ったりするが、本作はそれがなくタイマーが切れるまでに次の技に移行できればコンボが継続される仕組みだ。つまり柵や手すりが離れていても、ジャンプトリック→マニュアル→グラインドといった具合にマニュアルを挟めばコンボを繋げられるって寸法。

 そして同じぐらい大事なのが、看板へのウォールラン(壁走り)とグラインド中の姿勢入力で増えていく倍率ボーナス。グラインド中に急カーブを曲がる際、姿勢入力(曲がる方向にスティックを入れるだけ)をすると倍率がどんどん上昇して獲得スコアが大きく伸びる。

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 ただし同じトリックを連続でやらないように別の技へと切り替えたり、グラインド中にジャンプトリックをキメていくといった配慮も必要。まぁ同じ技ばっかだとダサいので多彩かつクールに立ち回るように心がけることだね。

 筆者はグラインドからのトリックをキメながらジャンプ中にグラフィティを書くってのがお気に入りなムーヴだったりする。

 ちなみにゲームを進めていくと初期装備のスケボー以外のギアがアジトで選択可能になる。同じギアだと飽きるなぁなんて思った人には丁度良いシステムだと言えるだろう。他のギアを得意とするクルーメンバーと交代することも可能なので、気分を変えたいという場合はチェンジだ。

ジェットセットラジオへの強烈なラブソング

 といった感じの本作なのだが、JSRファンとして見てみるとどうなのか語ってみよう。まずグラフィック周りについては、“ローポリ&トゥーンシェード”という見た目で分かりやすい部分だけでなく、町並みのライティング具合などもそのまんまというか、"忠実に再現"されている。

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 そしてアクション周りのテンポについても同様にこだわり抜いていて、トリックの連続入力をしたときの感覚がまったく同じ。良い悪いは置いといて、ジェットセットラジオを遊んでいたときに微妙にキャラコンが難しかった部分まで再現されているのは素直に凄いなと思った。

 アクションとかはフレーム単位で寄せていたり、プレイヤーキャラクターとカメラの位置関係などもまんま。そこまで寄せていくのは正直普通の執念じゃないわけで、制作者がどれだけジェットセットラジオを愛しているのか強く感じる作りだ。

 それと、個人的に『ジェットセットラジオフューチャー』で廃止されたグラフィティコマンド(方向入力のミニゲームでグラフィティを入力する操作)が本作では採用されている点が嬉しかった。当時はスティック入力が煩わしく感じたこともあるのだが、今こうしてやってみるとグラフィティを“描いている”感触があり、コレはコレで良いもんだなぁと認識を改めた次第だ。

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 そして忘れてはならないのがゲームを彩るBGMだ。本作にはシリーズに楽曲を提供していた長沼英樹氏も参加しており、ジェットセットラジオっぽさがにじみ出ている。

 全体的には本作のタイトルにも含まれているファンキーなビートの印象が強いがもっと今どきのローファイ寄りなヒップホップ系もあるし、多種多様なジャンルを抑えている。ただ、アップテンポなBGMが少ないのはニューアムステルダムという葉っぱでチルな環境ゆえ抑えめなんだろうか?

 関係ないけど、ジェットセットラジオフューチャーで知って好きになったGuitar Vaderは2007年に解散済みで、もし今も活動していたら本作に参加していた世界線もあったのかなぁなんて思ったり。まじかるがぁ〜る。

寄り道しながら楽しめ!

 そんな感じの本作。筆者はイロイロ脇道にそれながらもプレイしていたのだけど、クリアにかかった時間はもろもろ込みで10時間ほど。ストーリーだけゴリゴリに進めるならもっと短い時間でクリアできるんだろうけど、寄り道したりウロウロするのも本作の遊び方のひとつなんで、気張らずチルしながら遊ぶといいかな。

 個人的に残念だったのはクリア後に街中をフリーロームしているときにも警察がモリモリと湧く点。クリアしたんだから制限なしに探索させて欲しいけど、やっぱポリスが凄く邪魔なんだよなぁ……。アプデでクリア後はノーポリスにしてほしい。

 あ、街中をウロウロしているとクルーになってくれそうな人が居たりするので探してみるといいかも。

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著者近況:頭痛がシンドい
編集者近況:「テキサス・チェーンソーやってボムラッシュやってBlasphemous 2レビューしてSea of Starsもチェックしなきゃ」という8月に『Starfield』のレビュー版が届いちゃって大変

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)