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E54M1: ビデオカメラ片手に魔の森を進め! ブレアウィッチ伝説に新たな1ページを加える一人称視点ホラー『ブレア・ウィッチ』
公開日時:2019-09-30 07:00:00
ドモー、TGSも終わりましたけど相変わらず微妙に暑くて萎えてるBRZRKです。
今回ご紹介するのは、モキュメンタリー(ドキュメンタリー風に架空の物語を作り上げる手法)のホラー映画として一世風靡した『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の舞台を題材にした一人称視点ホラーアクションゲームの『ブレア・ウィッチ』だ(Steam / Xbox One)。
原作はかつて一世風靡したホラー映画シリーズ†
というわけで、まずは原作である『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を知らない人に簡単に説明しておこう。物語の発端は、曰く付きの“ブレアの森”にまつわるドキュメンタリー映画を撮影しに行った学生3名が森で行方不明になったこと。
“失踪からしばらくした後に学生たちが撮影していたと思われるビデオテープが発見され、それを遺族が映画監督に依頼して1本の映像に纏めて公開した”……という体で1999年に公開された。
本編を構成する“発見された映像”は、手ブレ機能が付いていない時代のビデオカメラで撮影されているため、キャストが激しく走り回るとカメラがグワングワン揺れるので映画館で気分が悪くなる人が続出。
しかし、解像度が低く映像が乱れやすい時代のビデオテープからは、必死に“何か”から逃げ回るキャストの迫真の演技と、ワケがわからないうちに追い込まれていく緊迫感と焦燥感が克明に描かれており、新たな恐怖の伝え方が世に出たような印象すら得られた。そのため、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の公開以降は似たようなフォロワー作品が死ぬほど氾濫し、どれもそれなりに酷かったのを覚えている。
シリーズで重要な場所となる“ラスティン・パーの家”†
その舞台となる“ブレアの森”には多くの曰く付きの場所があり、中でも最重要とも言えるのがラスティン・パーの家だ(編注:2000年代に海外で出た『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のサバイバルホラーゲーム三部作の第1部の舞台でもある)。
これも長い話なのでザックリと説明すると、森の奥深くで隠遁生活を送るラスティン・パーという人が自分の家で7人の子供を犠牲に謎の儀式を行のの、その様子を見させられ生き延びた8人目の子供による証言が決定打となり死刑に。
後に儀式の行われた家は焼き討ちされたのだが、なにかの因果でここにたどり着いてしまった人は……。という感じだ。
ちなみにラスティン・パーの事件については、『バーキッツヴィル7』という2000年の続編『ブレアウィッチ2』のリリースに向けて作られたモキュメンタリー作品で掘り下げられており、こちらを見ると「本当に悪いのは違う人物なのではないか?」と思わせる面白い内容となっているので、未視聴なら是非。
(編注:シリーズにはさらに2016年の映画『ブレア・ウィッチ』などがある)
影のある元警官の主人公と、頼れる相棒犬†
それでは本作どういう作品か見てみよう。主人公のエリスは元警官で、ブレアの森に迷い込んだと見られる少年を探すために少年の捜索隊に無理やり参加するのだが、自分の有用性を証明しようとする少々痛い雰囲気が出ている。
彼には相棒となる警察犬がおり、指示を出すことで主人公が見落としがちなアイテムを探してくれたり、精神を安定させるための役割を果たしてくれる。なにより、エリスによく懐いていて可愛いんだよなぁホント。
プレイヤーはエリスを操作して行方不明となった少年の手がかりを探していくことになるのだが、いかんせん木々の生い茂る深き森ということもあり、なかなか手がかりは見つからない。なかば焦りを感じながらも、起死回生の手柄を得るために無理やり森の奥へと進んでしまい、そのまま深みにハマっていってしまうという感じだ。
なおマップはエリアごとに作られているタイプで、プレイヤーの進むべき方向に対しての視線誘導がかなり上手に組み込まれているため、意外にもあまり迷わずゲームを進めていくことが可能だったりする。それに、相棒が頻繁に手助けしてくれるので、ほとんど詰まることなくプレイできるだろう。
ビデオテープによるギミックと、バイノーラル録音による生々しい音響演出†
道中ではブレアウィッチ作品で重要なキーアイテムとなるビデオカメラを手に入れ、(要所で都合よく落ちている)ビデオテープをヒントに物語を進めていくことになる。
入手したビデオテープには様々な事柄が記録されているのだが、その使い方が面白い。例えば、倒木によって進行不能となっている場所があるとする。どうにも進みようがないので何か手掛かりはないかとビデオテープを確認してみると、そこを通った誰かが前に撮った、木が道を塞ぐ前の様子(や、まさに木が倒れてきて道を塞ぐ様子)が写っていたりする。
それだけなら何の役にも立たないのだが、そのビデオカメラを片手に倒木のある場所まで行ってテープを再生し、木が倒れる前の状態で一時停止させてみると、不思議な力が干渉して、現実でもテープの中の状態、つまりまだ木が倒れていない状態まで“空間を巻き戻す”ことが出来てしまうのだ。
そして、探索型ホラーゲームで重要な要素となるのが音周りだ。本作はなんとバイノーラルによる空間表現が採用されており、いいヘッドホンやイヤホンなどでプレイしていると、本当にその場に居るかのような臨場感を得ることが可能だ。
中でも特に驚いたのが、森の中の環境音。さわさわと風に葉が晒されている音や、遠くで木がパキッと破裂音を出したり、川べりでタポンタポン浮かんでいる丸太といった音が、気持ちが悪いほどリアルに表現されている。
こればかりは実際にプレイしてもらわないと感じられないと思うが、凄まじいレベルであることは確かなので、是非その耳で臨場感を味わってほしいと切に願う。
フラッシュライトで邪を追い払うか、ステルスで回避するか? ゲームは非戦闘系の作り†
さて、ただ探索するだけではホラーゲームとは言い切れない。当然、本作でも主人公に害をなす謎のモンスターが登場する。一般的なFPSやTPSだと、こういったモンスターに対してハンドガンやライフルといった銃火器を使用することで対抗できるのはご存知だろう。
しかし、本作の主人公は元警官のはずなのにそういった装備を持っておらず、序盤から手にできるのはフラッシュライトと前述したビデオカメラぐらい。
一応、遭遇したモンスターはフラッシュライトの明かりを向けることで追い払うことができるのだが、実は戦闘を避けてステルスで逃げ回りながら進むことも可能だったりする。まぁこのへんのやり込み度を上げることで後々に見られるエンディングが変化したりもするので、実際に自分で試してみるといいかもしれない。
さらに物語を進めていくと、少年は自ら森に迷い込んだのではなく、何者かによって誘拐されてしまったらしいことが判明する。その痕跡をたどりながらエリスはさらに森の奥深くへと足を踏み入れることに……。
“家”は映画『ブレア・ウィッチ』(2016)に準拠†
そして、ブレアウィッチシリーズのファンなら気になるであろう「ラスティン・パーの家は出てくるのか?」という疑問については、最終的に行き着く場所であると答えておこうと思う。
かの家は続編映画の『ブレア・ウィッチ』(2016)にほぼ準拠した構造となっている。映画を見た人であれば、その再現度には凄く驚くのではないだろうか? 実際シリーズのファンである筆者は感動すら覚え、ゆっくり屋内見学させて欲しいと思ったくらいである(まぁ、ゲーム中はそんな余裕一切ないんだけどね)。
主人公の抱える闇には感情移入できないが、“ブレア・ウィッチのホラーゲーム”としては中々の出来†
といった感じでネタバレを回避して本作を説明するとこんな感じだが、あえて少しエリスについて触れておこう。
なぜ彼が無理やり少年の捜索に加わっているのかというと、実はエリスは過去に多くの人の生死に関わる大きな問題や人間関係にまつわるトラブルを起こしていて、それでも自分の有用性を認めさせたいという承認欲求が強くあり、それが原因で本作の冒頭へとつながってくるのだ。
あくまで筆者の所感だが「こいつヒデェ野郎だ」という印象であり、そんな因果応報を見届ける作品といったところだろうか。つーことで、エリスに共感はもちろん一切の感情移入ができないかな。
しかしブレアウィッチシリーズの重要な要素である、“魔の森の中を彷徨いながら酷い目に合う”という点についてはしっかりと表現されているため、確かにブレアウィッチを題材にしたゲームとしては成立しており、筆者はシリーズのファンとしても十分に楽しむことができた。
クリアーまでは、どのエンディングでも恐らく4~5時間ほどでクリアが可能だろう。慣れてくると一直線に目的地まで行けるようになるので、恐らく2~3時間くらいといったところだろうか。
ただシリーズをあまり知らない人からすると、起きている事象についての説明が一切ないため、不親切と感じる事もあるかもしれない。またぶっちゃけて言えばベストエンドの条件が結構厳し目でステルス縛りになったりするので、本作をしゃぶり尽くしたいと思っているなら難度が少々高いことを覚悟しておくべきだ。
なお、本作の日本語ローカライズは発売当初は問題を抱えていたが、現在は修正されている。今は基本的にあまり気にすることなく遊べると思うが、(正式にバグなのか不明だが)まだ一部日本語訳が表示されないこともあるので、今後のアップデートでの修正を期待したいところだ。
ホラーゲームとしての評価はまずまずなので、ヒリヒリとした気味の悪さを味わいたい人は遊んでみるといいだろう。それと、シリーズ作品のファンであるならば恐らく楽しめるのではないだろうか。
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著者近況:Skateの新作はまだでしょうか?
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