SNKの人気対戦格闘ゲーム『
THE KING OF FIGHTERS XV』を中心に活動するプロゲーマーK2選手のインタビューをお届けする。
取材・撮影:とよまん 文:あみだ
公開日時:2023-07-26 16:45:00
SNKの人気対戦格闘ゲーム『THE KING OF FIGHTERS XV』(以下、『KOF XV』)で活躍するトッププレイヤーのインタビュー企画第3弾は、プロゲーマーのK2選手。ゲームプレイだけではなく、クオリティーの高いコスプレでも会場を沸かせるK2選手のルーツに迫る。
Twitterで話題になった“仕事を辞めてプロを目指す”ことについての意見から、意外な初コスプレの思い出までいろいろ語ってもらった。記事の最後にはK2選手の写真コーナーもあるので、ぜひ最後まで目を通してほしい。
対戦会、イベント、コスプレ。K2選手の原動力は“対戦への飢え”†
――まず始めに格闘ゲームとの出会いを教えてください。
K2 小学生のころに兄が家で遊んでいたネオジオの『餓狼伝説』や『KOF』を見たのが最初の出会いです。ただ、そのころプレイはしていなくて、RPGや『ロックマンX』などのアクションゲームが好きなゲーム少年でした。
本格的に格闘ゲームを始めたのは大学生のときです。ただ、当時は格闘ゲームがあまり流行っていなくて、まわりに格闘ゲームの話がわかる友人がひとりもいない孤独と戦っていました(笑)。
――大学から格闘ゲームデビューというのは、僕らの世代からすると珍しいですね。
K2 大学ではテニスサークルに入って、ゲーマーではないふつうの学生を目指していました。でも、肌に合わなかったのか、かなり精神的に疲弊してしまったのです。そんなときに、ちょうどニコニコ動画が盛り上がっていたころだったので、たまたま『KOF』の配信を見かけたんです。「兄が遊んでいたゲームだ!」と思って見ていたら、当然視聴者たちはゲーマーばかりで、配信上ではありますが“同じ趣味を持つ人たち”と過ごすのがとても心地よく感じました。同時に「もっと同じ趣味の友だちが欲しい」という思いも生まれて、本格的に『KOF』をプレイし始めたんです。
――きっかけはニコニコ動画の配信だったんですね。
K2 はい。ところが当時住んでいたのは長野で、ゲームセンターに人があまりいなかったんです。それでもオンライン上なら同じ趣味の人と関われたので、配信をずっと見ていました。でも、あるとき我慢できなくなってしまって、就活という名目で東京へ行き、中野TRFというゲームセンターで初めて対戦の味を知りました。
――就活という名目で東京に行ったんですか(笑)。
K2 大学を出てからは、実家の岐阜から近かったので愛知に就職して活動を続けていました。でも、愛知のゲームセンターにもあまり人がいませんでした。名古屋を中心に活動していたおえっぷさんに相談しながら、BOX.Q2(現在のBOX.Q3)に企画を持って行って『KOF ’98』の対戦会を何年か開いていました。並行して、三重県の四日市で『KOF XI』がいちばん流行っていたので、何回も遠征に行っていましたね。
――何タイトルも並行してプレイするとは、すごくエネルギッシュですね。
K2 昔から格闘ゲームをやっている人は、いろいろなゲームを並行してやるのはそれほど苦ではないと思います。『KOF』の場合、ジャンプなどの“共通して強い行動”があるので、1タイトル遊べればほかのタイトルも遊びやすいと思います。
――とはいえ、社会人として働きながらゲームを複数タイトルプレイするのはたいへんだったのでは?
K2 大学生のころはお金もないですし、学業の方もありましたが、社会人になり金銭的にも時間的にも余裕が出てからは相当のめりこんでプレイしました。いま思えば、僕のモチベーションは“飢え”でしかなかったと感じます。ゲームをやりたいという思いがただただ強くて、それゆえに対戦会の開催などをしていたのだなと。
――対戦欲が爆発した感じなんですね(笑)。
K2 そこから時間が流れて、『KOF XIV』が発売されて家庭用で遊べるようになりました。当時はまだ現在のようにオンライン対戦が盛んではなく、オフライン対戦が主流だったので、場所を借りて『KOF XIV』の対戦会も引き続き開催していました。『KOF XIV』のアーケード版が出てからはゲームセンターをメインに活動していたプレイヤーも合流してきて、名前を聞いただけでも興奮するようなレジェンドプレイヤーたちと対戦できたのはうれしかったですね。
――どのタイトルでも、ご自身で環境を作りながら対戦を続けていったのですね。
K2 対戦環境に恵まれなかったので、やりたいなら自分で作るしかなかったんです。それだけ対戦に飢えていました(笑)。僕がもし関東にいたなら、対戦環境を作るという発想にならなかったかもしれません。あば男さんもそうですが、“飢え”ている人は自分で環境を作ってでもやりますし、プロになる人はそういう人だと思います。
――そうやって自分から行動を起こせる人がプロになっていくのかもしれませんね。ちなみに、東京へ出てこられたのはいつごろですか?
K2 いまから4~5年前、タイトルで言うと『SAMURAI SPIRITS』が発売されるよりもまえですね。流れとしては、『KOF XIV』のときに自分の腕試しがしたいと思ってアメリカ・ラスベガスで開催された世界大会のEVOに参加して、9位タイという成績を残すことができました。さらに、活動の幅を広げるためにウェルプレイド・ライゼストに所属させていただき、その後に全国大会で優勝することもできました。東京進出を決めたのはそのあとですね。
――それでいまのGEEKSへ?
K2 中部で活動していた“当時の勤務環境”でのプロ活動の両立に限界を感じ、グローバルセンス代表の工藤さんに相談したところ、「ゲーマーが働きながらゲームできる環境を作っちゃえばいいじゃん」と言われ、いまのGEEKSを我々で創立することになりました。こうしてみると何もかも自分で作りながらのプロ活動だと思います(笑)。
――確かに、ご自身でイチから作っていることが多いですね。実際にGEEKS所属後の活動はいかがですか?
K2 8時間の勤務時間があるので専業のプロゲーマーに比べるとプレイ時間は少ないですが、土日祝日がしっかり休みなのでゲームのイベントに参加しやすいんですよ。それに平日にイベントが行われたとしても不自由なく有給休暇の調整ができます。一般の会社ではゲームを理由とした有給休暇の調整は難しいと思うんですよね。仕事とゲームを両立する環境を作っていくというのは気の遠くなるような話ですが、現実的に可能なことだと思っています。
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K2選手おなじみのコスプレは実は罰ゲームがきっかけ。初コスプレは意外なあの子†
――K2選手といえばクオリティーの高いコスプレの印象がありますが、きっかけはどういったものだったのでしょうか?
K2 『KOF XI』を始めてすぐの時期に、なぜか10本先取の試合をすることになったんです。当然ボコボコにされて、その罰ゲームとして『アマガミ』の七咲※のコスプレすることになってしまいました(笑)。
※2009年発売のPlayStation 2用恋愛シミュレーションゲーム『アマガミ』に登場するキャラクター。K2選手は彼女と同じクラスの美也も好きなキャラクターなのだとか。
それが初めてのコスプレだったのですが、思ったよりみんなが喜んでくれて(笑)。クオリティーもそれなりによかったと思います。そこでコスプレのおもしろさに目覚めて、大会に出るときはコスプレをするようになりました。『KOF XI』の全国大会や京都のゲームセンターa-choで毎年開催されていた“Duelling The KOF”などもコスプレで参加しました。僕はゲーマーが集まる空間が好きだったので、みんなが盛り上がってくれたり、楽しんでくれたりすることに、自分としても喜びを感じています。
――最初から格闘ゲーム関連のコスプレが多かったのですか?
K2 最初の方は格闘ゲームに関係ないコスプレが多かったですね。そのときに流行っているアニメや漫画のコスプレを多くやっていました。その経験から独学でコスプレを学びつつ、格闘ゲームの腕前も上がってきたので「格闘ゲームに関係したコスプレをしたほうがより盛り上がるのではないか」と思い、『KOF XIV』くらいから格闘ゲーム関連のコスプレをメインにするようになりました。僕は背が高かったのでそこは活かすべきだと考え、EVO Japan 2023の時のハイデルンのように、高身長のキャラクターや僕がやって似合うキャラクターをメインにコスプレしていますね。
――衣装はご自身で製作されているのですか?
K2 じつは作れないんですよ。基本は既製品を使うことが多いです。似たような服を探してきて、ウィッグを切ったり、テープでマークを付けたりといった微調整をする感じですね。右京の服も似たような着物を買って加工したものです。ただ、ゲームへの愛はあるので、写真撮るときのポーズなどにはこだわっています。衣装が80点であれば、あとはキャラクターへの愛のほうが重要だと思っています。
話題のプロゲーマー専業or兼業問題について、K2さんに聞いてみた†
――昨今、“仕事や学校を辞めてプロゲーマーを目指す”ということに対して、ネットを中心に話題を呼んでいます。兼業プロゲーマーであるK2選手としてのご意見を伺ってもよろしいでしょうか?
K2 前提から話すと、金銭的な問題や家族の理解など、挑戦できる環境が整っているならいいのではないかと思います。そういった勝算やリスクヘッジもなしに“パなす”のは、格ゲーマー的にも弱い人なのかなと思ってしまいます(笑)。
――環境が整っていれば挑戦するのもアリということですか?
K2 若さもその“環境”の要素としてあると思います。もし環境がない場合は、兼業で働きながら力をつけていくほうがいいかなと。力をつけてからチャンスが来たときに挑戦すべきだと個人的には思っています。
――兼業プレイヤーの中には、プレイ時間が少なくなってしまうことを悩みの種とする人もいますが、この辺りはいかがでしょうか?
K2 きびしいことを言うようですが、プレイ時間が少ないから強くなれないと考えてしまうのは、単純に実力不足なんだと思います。個人的な意見としては、そういった方はプレイ時間を増やしても強くなるのは難しいし、専業になってもプレイ時間はあまり増えないと思います。専業になったとしても配信活動やPR活動など、やらなければならないことはありますからね。
――なるほど。兼業よりもプレイ時間は増えるけど、専業だからといって練習に集中できる時間は大幅に増えるわけでもないと。
K2 そもそも、専業になったからといって、プレイだけに集中できるような恵まれた環境を最初から整えることは不可能ですよ。収入も安定しないのでなかなかゲームに集中できる心持ちになれないはずです。現実的な筋道を立ててプロになれないなら、強くなる筋道も立てられませんから、しっかりとしたプランニングが大切だと思います。
屈指の『KOF』好きに聞くシリーズの魅力とEVOへの意気込み†
――EVOの開催が迫ってまいりました。意気込みをお聞かせください。
K2 『SAMURAI SPIRITS』の開催も発表されたので、『KOF XV』と合わせて出場するつもりです。いま『KOF XV』だけに集中してやり込んでいる人は少ないはずなので、今回のEVOはチャンスだと思っています。僕は以前から『KOF XV』でEVOに出ることを決めていたので、ほかに新作ゲームが出ても、『KOF XV』一本に絞ってやり込んでいます。その分、シルヴィやゲーニッツといった最近登場した追加キャラの練度も上がっていますし、対戦経験もほかの選手より深いところまで詰めています。ぜひ結果を残したいですね。
――K2選手はKOFプレイヤーの中でも屈指の“KOF愛”を持っていると思いますが、『KOF』シリーズの魅力は何だと思いますか?
K2 キャラクターの魅力と、ゲームのスピード感ですね。『KOF』のキャラクターは、中二病的なスカした要素とスマートなカッコよさを両立していて、あれがすごく刺さっています。このカッコよさは『KOF』にしかありません。草薙京なんか主人公なのに不真面目で、あまり練習しないじゃないですか。ライバルの庵もあんな感じでしょう(笑)? そういう、僕にない要素がすごく魅力的に感じます。
スピード感に関しては、小さいころに遊んでいたアクションゲーム『ロックマンX』シリーズの影響かもしれません。『KOF』は対戦格闘ゲームなのにアクションゲームのようにキャラクターを動かしていて気持ちいいんですよ。僕がやり込んでいた『SAMURAI SPIRITS』も一見ジリジリしたゲームに見えますが、地上の動きは意外と機敏でスピーディーなので、気持ちよく楽しめました。
K2選手フォトギャラリー†