ノクティスとルナフレーナをイメージしたアレンジ曲も!“Piano Collections FINAL FANTASY XV -夜に満ちる律べ- CONCERT”リポート

公開日時:2017-05-22 13:30:00

 2017年5月3日に東京・キリスト品川教会グローリア・チャペルにて、『ファイナルファンタジーXV』のゲーム内楽曲をピアノソロで演奏する同作初の公式コンサート“Piano Collections FINAL FANTASY XV -夜に満ちる律べ- CONCERT”が開催された。

 全12曲+αを演奏するのは、サウンドトラック『Piano Collections FINAL FANTASY XV -夜に満ちる律べ-』で楽曲のアレンジに参加しているピアニート公爵氏。さらに、メインコンポーザーの下村陽子氏がゲストとして駆けつけトークを披露し、ルナフレーナ・ノックス・フルーレ役の声優を担当した北川里奈さんがMCを務めた。

 なお、コンサートは昼の部・夕方の部の2部制。本記事では夕方公演の模様をお届けする。最後に掲載するお三方へのインタビューもお見逃しなく。

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ピアノの旋律と演出が融合したコンサート

 開幕を告げたのは、『FFXV』メインテーマのピアノアレンジ『晦の夜の夢 -Somnus-』。その後、下村氏、北川さんが登場し、オープニングトークがスタートした。その中で下村氏は、10年以上前に、最初に制作した楽曲が『Somnus』であり、長い時を経てもしっかりと作品にはまる楽曲になっていることに自分でも驚かれたという。また、ピアノアレンジをする際には、“ピアノらしさ”の出る楽曲にすることを心掛けたそうで、演奏の技巧やアレンジならではの空気を、ピアニート公爵氏の演奏で味わってほしいと語った。

 オープニングの後には、フィールドの楽曲として冒険の旅を思い出させる『月華の円舞曲 -Valse di Fantastica-』、悲しいイベントシーンで流れた『遠ざかる日々のこと -Sorrow Without Solace-』、激しい戦闘曲の『曉の幻影 -Stand Your Ground-』を続けて披露。演奏中は観客正面の壁面に月夜などのイメージ映像が投影され、会場が教会であることも相まって、神聖で厳かな空気に満ちていた。

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 その後、下村氏、北川さんと、ピアニート公爵氏を交えてのトークパートへ。下村氏は、北川さんに今回のピアノアレンジ楽曲の選考理由を尋ねられると、「ピアノで演奏することで輝く楽曲を直感で選んでいったんです」と回答。また、本公演前、下村氏がメイクをしているときに、ピアニート公爵氏の練習演奏がしっかりと聴こえてきたそうで、メイクさんが「こんな豪華なBGMでメイクしたことはないです!」と感激していたエピソードを語り、会場からは大きな笑いが起きていた。

 続いて、ノクティスをテーマとした、優美でありながら一方で切ない『ピアノのための幻想的夜曲 -NOCTIS-』、PVやバトルなどに使用された楽曲を迫力たっぷりにアレンジした『裁きと啓示 -OMNIS LACRIMA-』を披露したところで、第1部は終了となった。

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 休憩時間を挟んだ後は、軽やかな『綺羅星円舞曲 -Starlit Waltz-』から第2部がスタート。続くトークパートでは、『Piano Collections FINAL FANTASY XV -夜に満ちる律べ-』のジャケットイラストについての話題に。イラストの草案は下村氏によるもので、直筆のラフイラストが教会の壁に映し出されると、会場の皆さんは思わず大爆笑。下村氏は、このラフからジャケットイラストを仕上げた『FFXV』のアーティスト・松澤雄生氏による再現力に感嘆しつつ、ジャケット背面のイラストについて「(写真を持つ)あの手は誰のものか、想像して楽しんでほしいんです」と、イラストに込めたテーマも明かしていた。

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▲このラフが……。

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▲こうなった!

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▲さらにこのラフも……。

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▲この仕上がりに!

 その後は、『水面に揺れる月 -Disquiet-』、『闇に染む饗宴 -Veiled in Black-』、『月夜に謳う君 -LUNA-』が3曲連続して披露され、ファンを再び魅了。その後、来場者たちから事前に頂いた質問や感想に応えていくコーナーに突入した。ドイツから来られたという観客から“ドイツでもピアノコンサートをお願いします”とお願いされると、下村氏は「では、スクウェア・エニックスさん、よろしくお願いします(笑)」と答え、会場からも拍手と笑いが。続いては、“ピアノアレンジ楽曲に付けられた日本語名のタイトルを、ほかの曲にも付けるとしたらどんなものが良いですか?”という質問。下村氏は、「不思議ですが、ピアノアレンジが完成したときにタイトルが思い付くんです。今後すべての曲をピアノアレンジできるよう、ぜひスクウェア・エニックスさんは……」と、続けざまのお願いをくり出し、観客たちも笑いに包まれていた。

 また、ピアニート公爵氏はいちばん好きな楽曲を尋ねられ、「最初に弾かせていただいたこともあり、『月華の円舞曲 -Valse di Fantastica-』が優雅でいちばん好きですね」と答えていた。北川さんにも“もちろん一番は『LUNA』だとは思いますが、ほかの楽曲ではどれが好きですか?”という質問が寄せられ、「『Piano Collections』には収録されていない楽曲ですが、サントラの初回限定特装盤のボーナスディスクに収録されていた『Relax and Reflect』がお気に入りです」とにっこり。ちなみに、この曲が今回のコンサートで演奏されなかった理由について下村氏は、「じつはピアノアレンジの時は即興で演奏してくださっている曲で、譜面が存在しないんですよ。それをピアニート公爵さんに、耳コピ(聴いた楽曲を、その通りに演奏したり、譜面に起こすこと)してくださいとお願いするわけにはいかないですから(笑)」と、明かしていた。

 楽しい質問コーナーの後は、ピアニート公爵氏が自らアレンジを担当した『心に降りつもる雪 -Melancholia-』、そしてクライマックス感に満ちた『漆黒の黙示録 -APOCALYPSIS NOCTIS-』で全12曲の演奏が終了。すべてをひとりで弾ききったピアニート公爵氏が、「12曲のコンサートというのは大変だと思っていたのですが、終わってみるとすぐに終わってしまって……まだまだやりたいですね」とコメントすると、下村氏も「いつも思うのですが、観客席で聴きたかったですね(笑)」と、舞台の袖ではなく観客として楽しみたいという思いを明かしていた。

 鳴りやまぬ拍手に応えて、アンコールでは『NOCTIS』と『LUNA』がミックスされた、このコンサートのためにアレンジされた楽曲がお披露目された。途中、それまで壁面に映し出されていたジャケットイラストがフェードアウトしたかと思うと、ゲームのクライマックスを彷彿とさせる背景が壁面いっぱいに映し出されるサプライズ演出によって、コンサート会場があの場面を再現したかのような空間に変貌。それを見て、思わず涙を流すファンも……。そして感動冷めやらぬ中、本コンサートは終了し、檀上の3名には大きな拍手が送られた。

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出演された3名にインタビュー

 ここからは、コンサート終了直後に下村氏(文中は下村)、ピアニート公爵氏(文中は公爵)、北川さん(文中は北川)へ行われた、囲みインタビューの模様をお届けしよう。

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▲左から、北川さん、ピアニート侯爵氏、下村氏。


――まずは、本日の公演を終えての感想をお願いいたします。

北川 MCという大役を務めることができて、とても光栄に思っています。観客の皆さまから、『FFXV』と楽曲が本当に好きなんだなという気持ちが伝わってきて、温かい気持ちでゆったりとMCができました。演奏はもちろんのこと、ピアニート公爵さん、下村さんからも、いいお話や面白いお話が聞けて、最高のコンサートになったのではないでしょうか。

公爵 レコーディングから『FFXV』に関わってきましたが、僕の中では今日のコンサートがひとつの区切りになるのかなと思います。それを僕ひとりで演奏することや、お客さんが楽しみにしていらっしゃる気持ちも感じてプレッシャーに感じていました。ですが、弾いていてとても楽しい曲ばかりなので、非常に幸せな時間を過ごさせて頂きました。

下村 簡潔に2点の感想を言いたいです。ピアニート公爵さんのピアノがすごい! 北川さんがかわいすぎる! ……という感想だけでは、やっぱりダメですよね(笑)。『FFXV』単体でのピアノコンサートが、どれだけ成功できるのだろうという不安があったのですが、最後に大きな拍手を頂き、皆さまに喜んでもらえたようで、感謝の気持ちでいっぱいです。……ですが、重要なのは最初のふた言です(笑)。

――アンコール曲では、会場全体が感動に包まれる楽曲と演出に驚かされました。あのアンコールは、どういった経緯で決まったのでしょうか?

下村 まず、ピアノアレンジ曲を演奏し尽くしていたので、アンコール用の曲が正直なかったんですよね。そこで最後にあのサプライズ演出をするという話があったので、『FF』のメインテーマを弾こうという案もあったのですが、『FFXV』バージョンのメインテーマはピアノコンチェルトになっているので、ピアノ一台で演奏するアレンジにするのが難しいと思いましたし、『FFXV』のコンサートですから、やはり『FFXV』の楽曲でセットリストは固めなきゃいけないと思ったんです。そこでふと思い出したのが、イギリスのアビー・ロード・スタジオでコンサートをした際に、私が『NOCTIS』を演奏するかどうか相談していたとき、何気なく『NOCTIS』を弾いていると、『NOCTIS』のサビが『LUNA』に繋がることに気付いたことです。そこで、このコンサートの終わりには、あの流れを交えたふたつの曲を披露するのが相応しいんじゃないかなと思えたんですね。それで自分でアレンジを行った後、ピアニート公爵さんに少し“飾り”を付けて頂いて、今回披露することができました。

――ピアニート公爵さんは、その“飾り”をどのように付けていったのでしょうか?

公爵 下村さんが作ってくださった元の楽曲が、非常にシンプルながらも感情の波が激しく感じられるような、美しいアレンジだったんです。ただ、メドレーみたいに曲と曲が挟まっているような状態だったので、そこを1曲の楽曲として繋がるような、『NOCTIS』と『LUNA』が重なり合うようなアレンジを付け加えました。しっかりとした会場とピアノもありますし、技巧的には特別なことはしていません。そこにニクい会場の映像演出が加わって、皆さんの心に何か訴えかけることができたのでは、と思っています。

――それをお聴きになった北川さんはいかがでしたか?

北川 ルーナの曲は穏やかな曲で、ノクティスの曲は優しい中にもはつらつとしたイメージがあります。それが寄り添う形で、いっしょになったのがすごく素敵でした。本編を最後までプレイしたからこそ、会場の演出も相まって感動していましたね。ゲームをプレイするとき、プレイヤーの皆さんは、きっとノクティスの気持ちになっていたと思います。ルーナ役の私も、プレイ時にはノクティスとして旅をしていたので、そのときの気持ちが蘇り、いろいろな感情が込み上げてきました。

――ちなみに、アンコール曲に日本語名のタイトルを付けるとしたらどんなタイトルですか?

下村 うーん、難しいですね。きっと“月”と“夜”が入るんだろうな。でも、それはほかの曲名にもあるし安直なので、もう少し捻りたいですね。今回のコンサート用の曲で、もともとタイトルを付けていなかったので、今後また演奏する機会があったときのことを考えて、タイトルは考えておかなきゃいけませんね。

――今後、やってみたいコンサートはありますか?

下村 よく言っていますが、やっぱり生オーケストラをやりたいですね。今回の映像投影の演出も、オーケストラの場合、管楽器とかにも反射してきっと綺麗だと思うんです。あ、でも私自身がそれを観客席で見るために、私じゃなくて、誰かに開催してほしいですね(笑)。

公爵 また参加できたらいいなと思っているので、ピアノコンチェルトをやってみたいです。今回遠くて来られなかった方もいらっしゃると思うので、いろんなところで演奏ができればと。今後もし、僕が関われることがありましたら、ぜひお願いいたします。

北川 私はオペラがすごく好きなんです。『FFXV』ってボーカル入りの声楽的な楽曲がたくさんあるので、それをぜひ生で……聞いてみたいです。

下村 生で……歌いたいっていうお話かと思いました! 『Song of the Stars』という、ルーナの小さいころをイメージした歌があるので、それを歌ってくれるのかなと。

北川 えっ、歌っていいんですか!?(笑)。ぜひそういう機会があれば、お願いいたします!

――大阪公演も同じプログラムで演奏されるのでしょうか?

下村 はい、同じです。ただ、演奏されるのは中山博之さんですので、ピアニート公爵さんとはまた違ったアレンジや演奏を楽しめると思いますよ。会場も今日とはまた雰囲気も変わりますし。

――それでは最後に、読者とファンの方々へメッセージをお願いいたします。

北川 ゲームは発売から時間が経っていますが、そこからダウンロードコンテンツや、こういったイベントでゲームの世界がまだまだ続いていくのが、本当に素敵なことだと感じています。今回は教会という会場でしたが、大阪公演はコンサートホールで演奏をされるので、また違った雰囲気で楽しめるのではと、私自身も楽しみですね。大阪公演にご来場いただく皆さんには、もう一度ゲームをプレイして頂いて、楽曲が使われているシーンなどを予習しておくと、より楽しめると思いますよ。

公爵 僕は大阪公演では演奏しませんが、楽曲ひとつひとつが本当にピアノらしい楽曲になっていますので、いろいろな奏者の演奏を聞いてみる楽しみがあると思います。楽曲単体としても楽しめる作品だと思いますので、音楽からゲームをプレイし始める人がいたりしてくれると、本当にうれしく思います。

下村 実家が大阪にありますし、私の中で大阪は特別な場所です。大阪公演ができることが本当に恵まれていると思いますし、いずみホールという、とても素晴らしいと耳にするコンサートホールでできること、そしてそこに初めて訪れることができることが、非常に楽しみです。しかも、そこで初めて聴くのが自分が作った曲という……こんなに贅沢なことはないですよね。ぜひ、その時間を皆さんと分かち合えたら幸いです。ゲームファンの方々に楽しんで頂くのはもちろんですが、やはり楽曲としてもひとつの作品として完成させたいという思いは、つねに持っています。大阪公演でひと区切りがつきますが、またこういった機会がありましたら、今後もそこを目指していきたいですね。

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