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映像作品『キングスグレイブ FFXV』がついに完成――野末氏と田畑氏に聞く制作秘話【E3 2016】
公開日時:2016-06-15 04:00:00
『ファイナルファンタジーXV』(以下、『FFXV』)の冒頭で、主人公ノクトが旅立った後、王都インソムニアで起こった出来事が明かされる『キングスグレイブ FFXV』。2016年7月9日より全国ロードショウとなる劇場用作品を制作した、ディレクターの野末武志氏と、プロデューサーの田畑端氏にお話しをうかがった(聞き手:本誌編集長 林克彦)。
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▲ディレクターの野末武志氏(左)と、プロデューサーを務める田畑端氏(右)。 |
エンターテイメント性の高いアクション映画として、『FF』ファンはもちろんすべての層を視野に†
――『キングスグレイブ FFXV』は新しいトレーラーが公開されました。進捗はいかがでしょうか?
野末 じつは昨日、完パケしました。かなりの満足度になりました。
――おお、ついに。7月9日から全国ロードショーですから、もうすぐですもんね。試写会もやるんですか?
野末 やります。プレミア、メディア、そして一般の方の試写会を予定しています。映像作品なので、ネタバレになるようなストーリーのことはお話しできないんですけど。
――なるほど、そうですよね。『FFXV』と『キングスグレイブ FFXV』が密接に絡んでいることもあるでしょうし。
田畑 『FFXV』と『キングスグレイブ FFXV』は、もちろん関係性は深いですが、それぞれが独立している作品です。これがお互いに依存しているものだと、「両方とも観なきゃついていけないの?」と思ってしまいますが、そうではないことは改めてアピールしたいですね。どちらか片方だけ体験してもいいですし、独立しているからこそ、それぞれから垣間見えるつながりがすごく楽しいものになっているんです。それから、今回のE3で公開したトレーラーにもそのシーンがありましたが、ノクトたちは映画の舞台となっているインソムニアという街に戻ってくるんですよ。そうやってロケーションとしてもつながっているところもおもしろいと思います。
――コアなファンではなく、ゲームになじみがない人が、映画から『FFXV』を知る流れができるとうれしいですね。
田畑 確かにうちの奥さんは、“映画をゲームにした”と思っていますね。先に映画が公開されるから。「なるほど、ゲームファンではない人はそう思うんだ」って(笑)。これはいい効果だなと。
野末 そうした方にも認知が広がっているのは、綾野剛さんや、忽那汐里さんに声をあてていただけたのが大きいと思います。
――綾野さんや忽那さんの起用は話題になりましたね。今回、どんな方針でキャスティングを行ったのですか?
野末 まず『FFXV』の実写映画化に挑むような視点で、“人間の感情表現をギリギリまで突き詰めよう”というのが僕らのスタート地点だったんです。『キングスグレイブ FFXV』は海外版を軸に制作を進めてきて、多くの映画だったりドラマで演じられてきた方々が声を当てています。それは彼らが、人間の感情を、映画というものの中で最大限表現できるからなんですね。それで日本版のキャストも、そういうスタンスで選考していきました。
――映画を制作する視点でのキャスティングなんですね。
野末 はい。綾野さんを始めとする今回のキャスト陣は、外画の吹き替えを経験されている方が多くて、レギス役の磯部さんはショーン・ビーンさんの吹き替えもされています。綾野さんも忽那さんも、声での表現が映画的ですし、山寺さんも声優としてだけでなく、俳優としても活躍されています。また、キャスティングにはいろいろな方から助言をもらっていたりもして、聞く人が聞いたら「おっ」と思う人が揃っている、かなり豪華な方々になっているんじゃないかと。それでようやくこの前、日本語版のSEが付いたものをチェックできたんですけど……めっちゃおもしろいですよ(笑)。
――めっちゃおもしろいですか!(笑)
野末 めちゃくちゃ新鮮です。純粋な吹き替え版とは違う、別のコンテンツのようです。
田畑 別のコンテンツに思えるくらいおもしろい、っていい表現だね。キャストは本当によかった。綾野さんと忽那さんは、うちの開発にも来てくれたんですよ。『キングスグレイブ FFXV』を観たり、ゲームもやったりして。とくに綾野さんは『FF』シリーズのプレイ経験があったようで、興味を持っていただけたみたいです(笑)。
――綾野さんは『FF』がお好きみたいですね。
田畑 タイタンを見て「すごい!」と言ってくださいました。
――すばらしい(笑)。収録は順調だったんですか?
野末 日本の声優さんでも一部そういうアプローチの方がいらっしゃいますけど、その場で本当に演じるんですよね。海外はそれが多いんですが、マイクの前で、たとえば走ったり、アクションをしたり。綾野さんや忽那さんも、マイクの前で演じられていて。激しい動きが全編通して多くて、最終的に忽那さんは立てなくなるくらいでした。綾野さんも、収録が終わってブースから出てきたら、汗だくなんですよ。全力でやっていただいたからこそなので、すごくうれしかったですね。
――ルーナはゲームと映画で配役が違うんですよね。そのあたりについてもお聞かせいただければ。
野末 基本的には、さっきお話したコンセプトの通り、より実写的な、映画的な表現をするためというところが大きいです。両作品でキャラのモデルも違いますが、これは『キングスグレイブ FFXV』では、感情の表現をより研ぎ澄ましていく必要があるため、それに適したハイディテールモデルにしているからです。
――人間の感情を、もっとも繊細に表現するためだと。
野末 では、なぜ声優は同じではないのか。僕はゲームの表現力を数値で表すと、昔が3ぐらいなら、いまは7くらいだと思うんです。その残りの3を埋める技術を持った方が、声優さんだと思っていて。ゲーム側で表現しきれないものを補える職業だと捉えている部分があります。ゲームだけでなく、2Dのアニメーションでもそうです。あれだけキャラクターが生き生きとしているのは、声優さんたちの幅の広い演技のおかげだと思います。一方で『キングスグレイブ FFXV』は、ビジュアルはほぼ実写に近く、数字で言うなら9.5ぐらいまできています。だとしたら、キャラクターを人間として見たとき、その感情を映画的なアプローチで表現することのできる方にお願いしようと。
――0.5を補うだけでなく、さらに上乗せしていくイメージでしょうか。それに適していたのが綾野さんと忽那さんだったと。
野末 そうですね。ちなみに、ルーナは“高貴な出自であり、芯の強い、自分の意思を持った女性”なのですが、忽那さんの資料を拝見したとき、そういう印象を持ったんですよ。いろいろな映画で新人賞を獲られていたり、ベルリンの映画祭に参加されていたりもして、英語が堪能なこともあり、ルーナというキャラクターを理解して演じていただけるのではないかと思いました。
――ビジュアルのインパクトは相当なものがありますし、そこまでの演技が上乗せされているなら、ゲームに興味のない方も興味を持ちそうです。
野末 たまに、「なんでフルCGにしたんだろう」と思いますけどね(笑)。表現しようとしていたことはできたんじゃないかなと。中身を削ぎ落として言うなら“ヒロインを救うエンタメ映画”なので、どんな方でも観やすいですし、そこから『FFXV』に興味をもっていただけたらうれしいです。
田畑 やっぱり『FF』の映画でもあるから、CGのほうが『FF』らしさはあるよね。積み重ねてきたノウハウをもって、ずっと『FF』を作ってきたメンバーが手掛けているという部分で、表現としてプラスアルファがあると思います。
――『FF』らしさというところで言うと、魔法などの要素もそうだと思いますが、アーリマンなど敵もおなじみのものが出てくるんですよね。デザインなどは新しくなっているのでしょうか。
野末 『FFXV』に出てくる敵と同じものも出てくるんですが、『キングスグレイブ FFXV』オリジナルも含め、長谷川(朋広氏。『FFXV』アートディレクター)がデザインをしてくれました。おなじみのモンスターが“この世界にいたらどう見えるか”をコンセプトにデザインされています。アッと驚くモンスターもたくさん登場しますので、『FF』ファンの方にはそちらも楽しんでいただけるのではないかなと。
――そういう部分でも共通項があるのですね。完成が近いとのことですが、最終的な上映時間はどのくらいに?
野末 スタッフロールを入れて115分です。
――延びてますね(笑)。前回は110分とおっしゃっていました。
田畑 延びたな~。
野末 延びました(苦笑)。最後におまけコンテンツも入れたので。
――ちなみに、主題歌みたいなものはあるんですか?
野末 日本版はないですね。海外版は調整中です。
――本編の前に劇場映画で『FFXV』に触れられるまでもう少し。非常に楽しみです!
野末 本当にカジュアルな作品になっていると思うので、気軽に観に行ってみてください。映像表現に驚くもよし、アクションシーンに驚くもよし、『FF』に興味がなくても理解できます。劇場に足を運んでいただくのがいちばん環境的にもいいですが、後日始まる配信や、ディスク版でも構わないので、とにかく観ていただきたいですね。
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