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『キングスグレイブ FFXV』主人公・ニックス役の綾野剛さんにインタビュー【後編】
公開日時:2016-07-07 11:00:00
『FFXV』と世界設定やキャラクターを共有し、2016年7月9日に全国ロードショーされるフルCGの映像作品『キングスグレイブ FFXV』。同作品において、ニフルハイム帝国との戦いで矢面に立つ、ルシス王国・レギス王直属の特殊部隊“王の剣”の中核メンバーである主人公ニックス・ウリックの声を担当するのは俳優の綾野剛さん。映画にテレビドラマ、舞台、CMなど、多方面でその才能を発揮している綾野さんは、いかにニックスを演じ、この作品をどう解釈したのか。インタビュー後編です。前編は→こちら
▲綾野剛 |
▲ニックス |
――せっかくなので、ゲームのお話もうかがえればと。『FF』のシリーズ作品は、どれくらいプレイされているのでしょうか?
綾野 『FF』ファンの方は全作やっていると思いますが、僕は『FFI』から『FFVII』までをクリアーしています。
――それ以降の作品はいかがですか?
綾野 ゲームの世界は本当に特別なので、僕の場合、どうしてもほかのことがおろそかになってしまうんです。クリアーするまで家から出ないことも当たり前のようにあり、役者という仕事に支障が出る恐れがあったので(笑)、一度断ち切りました。『FFIII』や『FFIV』はニンテンドーDSで出ているので、持っています。たまにまたやりたくなって、気分転換にプレイしています。
――熱中しすぎてしまうと危険と(笑)。シリーズは、『FFI』からプレイしていったのですか?
綾野 僕は『FFIII』から始めたんですよ。『FFIII』から『FFIV』、『FFV』にいって、『FFI』、『FFII』という流れで。そこから『FFVII』ですね。ご存じの通り、当時のハードはセガサターンとプレイステーションの二大巨頭がありましたが、『FFVII』がやりたいがために、何の迷いもなくプレイステーションを買いました。『FFVII』発売前に映像を見て、「こんなことになってんの!?」とワクワクしましたね。いま見ても、あの魔晄都市の世界観などはすばらしいなと思います。
――選ぶのは難しいとは思いますが、とくに思い入れが強い作品はありますか?
綾野 ラスボスで印象的なのは、『FFIII』からスタートしたこともあって“くらやみのくも”で、「(“はどうほう”がきびしいので)急いで倒さなきゃいけない!」という緊張感がありましたね。『FF』は待ってくれないんです(笑)。すごくピリピリしている精神状態でやっていましたね。“手に汗を握る”というのはまさにこういうことだな、と。そのターンの中でどう勝負をくり広げていくかというおもしろみは、いま思えば社会に似ています。時代や時間はつねに前に進んでいって、待ってはくれない。
――瞬時の選択が要されるという意味では同じですね。
綾野 『FF』では選択していかないといけないので、おかげで僕はぜんぜん優柔不断じゃなくなりました(笑)。絶対に『FF』の影響はありますね。それとドラマ性で言えば、『FFIV』はRPGの枠を超えていて、主人公が暗黒騎士からパラディンになったり、パロムとポロムが主人公を守るために犠牲になったり、そういった要素がダントツに重かったように思います。そしてシリーズでも、やり込めばやり込むほどおもしろさが増していったのは『FFV』なんじゃないかなと思いますね。『FFV』って、なんとなく『FF』が好きな人からしたら、もしかしたら物足りない作品だったかもしれないんですよね。でも、そんなことはぜんぜんなくて。『FFV』はほかの作品に比べて森がすごく多いんです。進むに連れてその森の退廃した感じだとか、サボテンダーなど強烈なキャラクターがどんどん増えてきて、非日常性がさらに強くなっていく印象です。『FFVI』も、かなり名作だと思いますね。魔導アーマーやティナという主人公など、世界観も独特で。じつは『FFVI』は、物語の記憶がほとんどないんですよ。強烈すぎて、拒否反応が出たのだと思います。まずあの魔導アーマーの退廃感からして、怖かった。『FFIV』では、月に行ってから音楽も含めてすごく退廃感がありましたけど、その感じをさらに強烈にしたのが『FFVI』だった印象です。
――がっつり遊ばれていますね! それらの作品に触れたのは、綾野さんがおいくつのころのお話でしょうか?
綾野 中学から高校にかけてです。そのころに『サガ フロンティア』や『聖剣伝説』、ゲームボーイの『魔界塔士 Sa・Ga』まで戻ってやっていたりしました。
――そうした多感な時期にプレイしたゲームだからこそ、余計に印象深いのかもしれませんね。
綾野 『サガ』なんかもう、基本的に敵がエグすぎましたからね。精神的に落ち込むような作りに、自尊心や自立心みたいなものが啓発されたのを覚えています。『FFVII』になってからは、クラウドとセフィロスですよね。『FFVII』が発売された当時は1990年代(※『FFVII』は1997年発売)で、“21世紀”が具体的に見え始めた瞬間だったのではないでしょうか。21世紀のさらにその先にあるのは、こういう退廃していて、貧富の差が大きい環境だということが見え始めていて、僕はセフィロスにシンパシーを感じていました。あの人が、ある種の正義だったりするという意味で。
――“ある種の正義”というのは、具体的にどのような?
綾野 僕は、セフィロスは闇の中に隠れている光だと思っています。僕たちは自分たちの正論や正義を大義名分として、セフィロスをやっつける。けれど、セフィロスを倒したところで、地球汚染は変わらないし、どんどん悪化していく。そういったメッセージがセフィロスには込められていたと思っています。僕たちは牛や豚、魚など生き物を食べ、クマに襲われたらクマを撃ち殺してしまう。クマから見ると、自分たちの領域に入ってきた人間を襲うのは、自分たちの同胞や生活を守るためにやっていることであって、クマにはクマの正義があるわけです。それをセフィロスは体現していたな、と。
――なるほど、別の視点から見た正義ということですね。
綾野 正義と正義の戦いだから、最後の物語“ファイナルファンタジー”なんだろうな、と。終わりがないんですよね。地球の環境問題がRPGに組み込まれたのは、『FF』が初めてじゃないかな。スクウェア(現スクウェア・エニックス)という会社が環境問題や社会問題に対して啓発していたように思えて、『聖剣伝説』もマナの樹――緑を絶やすことに対する懸念がありますし、『サガ』もパーティーを組む仲間がどんどん変わっていく。どういう組み合わせをするかによって、まったく違うパーティーになって戦っていかなきゃいけないですよね。人を信じる力だとか、人とのつながりだとかを、非常に注意深く、かつ啓発的に教えてくれたことをよく覚えています。
――さて、綾野さんはすでに『FFXV』を触られたとのことですが、印象はいかがですか? ナンバリングタイトルは久々になりますね。
綾野 根本的に違いすぎちゃって……(笑)。「タイタンってこんなにデカかったんだな」とか(笑)。そりゃそうなんですが、モルボルも記憶よりもデカすぎました(笑)。ベヒーモスも相当デカいので……。アルテマウェポンなんて出てきちゃったら、どんなサイズになるのかな、とか。『FF』の世界観を実写化することをテーマにして、主観性をすごく大事にしているゲームだという印象を持ちました。ですので、実際に自分が見えている範囲、周辺視野でのサイズ感を明確に感じましたね。『FFIV』なんて、モルボルが3匹出てきたりするじゃないですか。あんなのが実際に3匹出てきちゃったら、このスタジオ(※インタビュー収録はかなり広いスタジオで行われました)が埋まっちゃいますよ(笑)。
――リアルなサイズ感を実感したと(笑)。進化を遂げたいまでも、やはり『FF』らしさは感じられましたか?
綾野 もちろん感じました。やっぱりキャラクター設定が秀逸ですし。『FF』の憂いやきめ細かさは健在で、往年のシリーズ作品以上に選択肢があると感じました。スタートボタンでゲームの進行を止められるじゃないですか。あれはなくしてしまえばいいのにと思うくらいリアルで、ストイックさを感じたのと同時に、日本のゲーム産業における、圧倒的なポテンシャルを見せつけられましたね。『FF』ファンでよかったなと改めて思いました。
――最後に、『キングスグレイブ FFXV』を楽しみにしている『FF』ファンへ、意気込みをお聞かせいただけますか。
綾野 『FF』シリーズはすべてにおいて“光と闇”というものを基本のテーマにしていますが、『キングスグレイブ FFXV』でも、ゲームと連動することによって、より本質的な“光と闇”が表現されています。ゲームから見ると、映画は“エピソード0”にもなっていますし、ゲームのその先の未来にもつながっている作品なので、この作品を観ていただいた後にゲームをプレイしていただきたいです。ぜひ劇場でご覧ください。
スタイリスト:富田 彩人 |
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