ニューヨーク プレスカンファレンスリポート(1)現実に根ざしたリアルティー溢れる設定

文・取材・撮影:古屋陽一

公開日時:2016-02-29 18:01:00

●いかに『ディビジョン』の設定は事実に基づいているか?

 2016年2月上旬――ニューヨークにて、世界中のメディアを招いての“『ディビジョン』プレスカンファレンス”が実施された。『ディビジョン』クローズドベータテストの直後に行われたこのプレスカンファレンスでは、開発陣がいままで謎のベールに包まれていた同作の概要を紹介。あわせて、クローズドベータと同等のビルドが試遊可能だった。さらに会場では、クリエイターへのインタビューも適宜可能と、充実の内容だったわけだが、ここでは、まずはプレスカンファレンスの冒頭で行われた、クリエイター陣によるパネルの模様をかいつまんでご紹介しよう。『ディビジョン』の概要を把握するうえで、大いに参考になるはず。パネルの登壇者は以下の通り(発言順)。

マーティン・フルトバーグ氏 IPディレクター
ナフィーズ・アルメッド氏 ジャーナリスト
ジュリアン・ゲリティ氏 アソシエイト・クリエイティブ・ディレクター
テリー・ガイ氏 モノレックス創始者
マグナス・イェンセン氏 クリエイティブ・ディレクター
アレックス・アーヴァイン氏 作家

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▲左から、司会者をおいて、マーティン・フルトバーグ氏、ナフィーズ・アルメッド氏、ジュリアン・ゲリティ氏、テリー・ガイ氏、マグナス・イェンセン氏、アレックス・アーヴァイン氏。
※写真はユービーアイソフトから提供された動画からのキャプチャーです。

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▲ニューヨークプレスカンファレンスの試遊の模様から。

■「バイオテロリズムは現実的なものである」

 IPディレクターであるマーティン・フルトバーグ氏が語ったのは、『ディビジョン』の世界観について。もっと具体的にいうと、いかに『ディビジョン』の設定がリアリティーに富んでいるかを説明するものだ。

 引き合いに出されたのが、2001年にアメリカ政府により実施された“ダーク・ウィンター”という演習。天然痘を使用してのこの演習は、バイオテロの攻撃に対する国家の事前シミュレートなどを目的としたもの。調査では、天然痘が国内3箇所に撒かれた場合、13日以内に警察、消防、病院など各機関の機能が停滞し、ウイルスの直接的影響だけではなく、その後の社会的混乱によって多くの人命が失われ、社会機能の停止によって加速度的にさまざまな崩壊が起こることがわかったという。「大規模な核攻撃を除けば、唯一このような攻撃がアメリカの国家存続を揺るがす脅威であるというのが、“ダーク・ウィンター”の結論だった。いかに深刻な問題として認識されていたがわかります」と、フルトバーグ氏。

 この“ダーク・ウィンター”の演習に影響を受けて設立されたと推測されるのが、“大統領令51号”。同行政命令は、国家存続のために立案された政府緊急時対策案としては最新のもので、2007年にブッシュ大統領(当時)によって署名。最高機密書類であるため、閲覧はごく一部の要人に限られ、一般人は項目しか見ることができない。「この行政命令が“ダーク・ウィンター”における演習結果の影響を受けており、今日明白かつ現存する危機として、パンデミック(感染症の世界的流行)および、バイオテロリズムが認識されていることは推測できます」とフルトバーグ氏は続ける。

 さらにフルトバーグ氏は、バイオテロリズムがいかに現実的であるかについて、元CIA大規模破壊テロリスト・ユニットチーフであるチャールス・バデス氏のコメントを援用する。「バイオテロリズムはサイエンス・フィクションが描くファンタジーではなく現実的なものであり、いつ起こるかわからない。これによって引き起こされるものは想像を絶する」という。なお、バデス氏は『ディビジョン』のシナリオ作成に協力してくれているとのことだ。

 「いま話したことはすべて事実であり、本作のゲームの基礎は現実に根ざしている」とフルトバーグ氏は力強く語る。

■ニューヨークを取り戻すための最後の砦“ディビジョン”

 さて、ここからが『ディビジョン』のストーリーとなる。本作は、“ブラック・フライデー”にニューヨークで人工ウイルスが放出されるところから始まる。“ブラック・フライデー”は、クリスマス商戦開始の日(11月第4木曜日の翌日)にあたり、アメリカでは1年でもっとも買い物が行われる日と言われる。媒介に使われたのは、紙幣。実際のところ、アメリカの紙幣には3000以上の病原体が付着しており、その80%の正体が不明という研究結果まであるという。“ブラック・フライデー”では、アメリカ人の50%が現金を使うという調査結果も出ており、ウイルスの付着した紙幣は、多くの人の手に触れることとなった。これによってマンハッタンでは多くの人命が失われ、さらに毎日ニューヨークから外へ移動する何千人もの人たちによって、ウイルスが持ち出される事態となった。

 アメリカ政府は、猛威を振るうウイルスの拡散を抑止するために、ニューヨークを隔離。ニューヨークは数週間のあいだに完全なカオスに陥ってしまう。一方で、ニューヨークを閉鎖するもウイルスの拡散は防ぎ切れずに、国家は大混乱に陥ることに……。大統領は“大統領令51号”を発令させざるを得なくなる。

 「ここで、“ディビジョン”という機関の存在が大統領令に含まれているのではないかと推測できます」とフルトバーグ氏は語る。「“ディビジョン”は、“ダーク・ウィンター”での演習などを踏まえて組織されており、ほかの政府組織に規制されることなく自主的な活動ができます。活動開始にルールはなく、状況に応じて対応できるんです」。

 平時は一般人として生活しつつも、緊急事態になると政府のために活動を開始する――このコンセプトも、じつは物語のための創造というわけではない。“ディビジョン“の元になったのは、第二次世界大戦に際してイギリスで生まれた“ステイ・ビハインド”で、ナチスによるイギリス占領の危険性を危惧して、ゲリラ活動を準備。これには、警察官やハンター、農民、医者、エンジニアなどが参加したという。“ディビジョン”は、この“ステイ・ビハインド”をベースにしており、「来るべき有事のシナリオに沿って訓練された、独自に行動できる人たちの集まりです。各地に住んでいて、友人や隣人もこのようなプロである可能性があるんです」とフルトバーグ氏。

 “ニューヨークを取り戻すための最後の砦”。それが、“ディビジョン”であり、プレイヤーだ。

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