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ジャーナリスト ナフィーズ・アルメッド氏に聞く シナリオはリアリティーがあって秀逸
公開日時:2016-03-10 18:30:00
●『ディビジョン』のシミュレートは研究者の先を行っている†
2016年2月上旬にニューヨークで行われた『ディビジョン』プレスカンファレンス。会場にて、ジャーナリストのナフィーズ・アルメッド氏に話を聞いた。アルメッド氏は直接『ディビジョン』の開発に携わっているわけではないが、危機管理のエキスパートで、パンデミックなどに対する造詣も深い。アルメッド氏は『ディビジョン』の世界観をどう見たか?
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――『ディビジョン』にはどのような形で参加されているのですか?
ナフィーズ 私は研究者・ジャーナリストであり、社会の危機的状況やそこから発生する暴力の問題を専門にしています。ゲームの開発そのものには関わっていませんが、シナリオについての意見を求められました。現実の社会が持つリスクに沿って、いかに本シナリオが現実に起こり得るものであるかを検証しました。ゲームに取り入れられたデータや要因の作りからなどを入手可能な科学的研究に照らしあわせたところ、非常にリアリティー溢れるものだとの結論に達しました。
――実際に起こり得るものであると?
ナフィーズ 世界のさまざまな地域での社会の脆弱性や人々の疾病に対する弱さを見れば、いかにパンデミックが現実的に起こり得るものであるかがわかります。それはジカウイルス感染症の例を見れば、一目瞭然ではないかと。さらには豚インフルエンザ、鳥インフルエンザなどの例も過去にはあります。国際機関や政府機関の調査では、既知のウイルスが一定の形で伝染し、それが一定の性質を持っていれば、パンデミックに至る可能性があるとされています。そして、社会の一部崩壊や中枢サービス機能の停止に至ることもあるんです。実際にある科学データにもとづいて見た場合、『ディビジョン』は極めて可能性のあるシナリオですね。
もっとも懸念されるのは、今日の文明が、脆弱性をさらに悪化させるような側面を持っているということです。具体的に言うと、社会の相互依存性の高さですね。たとえば流通の流れひとつとってもそうです。ひとつの流通が停止すれば、より多くの流通に影響を与える。グローバル化した世界の弱い部分です。これは、数百年前にはなかったことです。
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――『ディビジョン』の世界観を見て、とくによくできていると思うところは?
ナフィーズ 研究者の目から見ると、ゲームの環境は科学者がテストに利用できるものだということは興味深いですね。現実社会の耐久能力をテストできる。ニューヨークの場合は、都市のマップや人口、医療インフラなどを取り込んで、崩壊がどう起こるのかをシミュレートしているので、非常に現実的なものになっています。シナリオを見ることで、人々がどのような選択をするかを、検証できるんです。科学者のリサーチツールとしての役割を果たせるかもしれないですね。これは、ゲームでは極めて珍しいことだと思います。もちろんあくまでもゲームなので、エンターテインメントとしての側面が強いことは忘れてはいけません。本作では異なる立場の勢力が抗争をくり広げますが、それはエンターテインメント性を高めるためのフィーチャーです。とはいえ、ベースとなるメカニズムは、なる社会でのさまざまなシミュレーションに使えるほど、信頼性の高いものだと思います。科学者はこれに追いつかないといけないですね。
――ゲームユーザーに『ディビジョン』をプレイしてもらって、パンデミックに対する理解を深めてほしいと思いますか?
ナフィーズ エンターテインメントはリアルじゃないとおもしろくありません。とはいえ、映画もそうですが、逆にあまりに現実的でもうまくいかない。バランスが取れていないといけないんですね。ゲームには多くの人々を惹きつけており、影響力のあるメディアです。ふだんはあまり気にしない問題でも、ゲームなどのエンターテインメント系のメディアで取り上げられることで、プレイした人のあいだで現実の課題についての認識が高まり、話題にされます。『ディビジョン』を通してパンデミックに興味を持っていただくことは、とても有意義なことだと思っています。
――ちなみに、『ディビジョン』ではパンデミックによってニューヨークが危機的な状況に陥ってしまうわけですが、このような事態にならないために、私たちはどのようなことを心掛ける必要があるのでしょうか?
ナフィーズ パンデミックの恐ろしいところは、遠方で起きてもすぐに影響を受けるというところです。パンデミックのための準備をして対応するには、いっしょに行動しないといけません。さまざまな危機の中でパンデミックがユニークなのは、協力体制が必要だということです。ジカウイルス感染症を見ていると、リスクがもっとも大きいのは、医療サービスを受ける手立てのない、貧困層だということがわかります。パンデミックについて言えることは、人間として対応しなければならないということです。自分も他人も同じだと考えなければいけません。それは、私たちが“ひとつの世界に生きている”ということを教えてくれます。
考えてみると、“ひとつの世界に生きている”ということをしっかりと実践しているのが、まさに『ディビジョン』のエージェントなのかもしれないですね。『ディビジョン』では、プレイヤーはほかのエージェントと協力して社会や医療のインフラを再構築し、弱い人々を助ける努力を重ねます。ゲームでは努力を強制はしていませんが、これが成功する(ゲームをクリアーする)唯一のやりかたであることは間違いありません。パンデミックが起きたとしても世界は終わるわけではなく、社会が崩壊しても助け合う方法はいくらでもあります。『ディビジョン』の世界は、そんな可能性を見せてくれます。
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――もし、ナフィーズさんが『ディビジョン』の世界に投げ込まれたらどうします?
ナフィーズ うーん(笑)。穴に入って隠れるかな(笑)。『ディビジョン』の世界では撃ち合いが行われているわけですが、そうはならないことを祈っています。隣人などのコミュニティーと協力して、リソースを共有するように努力し、崩壊した流通を徐々に再構築しますね。私は、私の得意とするところを提供して、コミュニティーの手助けをしていきたいと思います。他人を撃つことは、危険が迫ったときの最後の砦です。『ディビジョン』にはアクションとバイオレンスの要素が含まれていますが、ゲームがもっともフォーカスしているのは、エージェントとして世界を平和に導くということです。私自身は、そういった資質は持っていませんが、ほかにできる人はいます。もっとも大切なことは、平和を取り戻したときにどうなっているかだと思います。どうしたら新しい社会を作るために協力できるのか、人々の需要に応えられるのか……。そのへんが『ディビジョン』のもっともおもしろい部分だと思いますね。
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