E47M2: 2018年は'90s FPSの20年ぶりの豊作年かもしれない! 突発的'90s FPS特集(後編)

公開日時:2018-03-16 10:37:00

 ドモー、気付けば今年のE3まであと3ヶ月。今年はどんなミリタリーFPSが出てくるのかなと思いますが、もうあのシリーズで近未来の世界観でやるのは勘弁してくれ。といった感じで、前回から引き続き2018年になり激アツの展開を迎えている、インディーの'90s FPSまわりの話の後編イッテミヨー。(前編 / 中編 / 後編

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ミル☆吉村(以下、M): というわけで『Ion Maiden』、『Amid Evil』と新作90’s FPSトークを続けてきたわけですが、3本目はNew Blood Interactiveの『Dusk』(Steamでの配信ページ)。これは今年の1月からPC版がアーリーアクセス中(実はそれ以前から「予約特典」という形でエピソード1を遊べたりもした)。

BRZRK(以下、B):『Dusk』も遊んでみたんだけど、これは『Quake』(1996。本連載で数回にわたり紹介。1/2/3/4)、『Blood』(1997、本連載でも紹介)、『Redneck Rampage』(1997)のいいとこ取りみたいなゲームだね。王道FPSとカルトFPSのミックスって感じ。
M: 『Blood』は僕の人生で一番好きなゲームなんで嬉しいですよ。『Quake』とかidのゲームはストイックな世界が多いけど、『Blood』や『Redneck Rampage』とかBuildエンジン系のゲームは、本当に裏街道のカルトという名前がふさわしい。ドロドロに暗いイッちゃってるテーマが多かったんですね。それは『Dusk』が見事に継承してくれた。

B: あー、確かにね。『Dusk』の世界観というか舞台はモロに『Redneck Rampage』に見られた南部の閉鎖的な地域っぽい。「Howdy?」(おっす)って言われそう。
M: チェーンソー! KKK!! オーバーオールとネルシャツ! カルトっぽい教会! って、テキサスい感じなんだけど……。
B: それが本当に敵として出てくる。なんか閉鎖的なコミューンってことで『Farcry5』にも通づる世界観だよね。

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頭陀袋被ったチェーンソー男、KKKっぽい三角帽野郎、バケモノ鹿、カカシのクリーチャーといった感じにアメリカの暗部が大集合。

M: そしてあっちは最新技術で美麗な田舎を作り上げてるわけですが、こっちは初代『Quake』みたいな歪んだローポリ3Dだし、世界が実に汚い(笑)。しかも低画質化オプションが最強に豊富という。
B: 「高画質化を目指さないで低画質化を目指す」っていうのが頭のおかしさを醸し出していて素晴らしい。というか、ガビガビの低画質にしていくと、320x240くらいの解像度かつソフトウェアレンダリングで遊んだ『Quake』っぽい画面になってすげぇウケる。
M: ちなみにこれを読んでる人、『Blood』とか『Redneck Rampage』は当時ですらメジャーじゃないんで知らなくても大丈夫です。「アメリカのゲーム系ライターでも、もう今は伝わる奴がそんなにいないんだよね」って関係者が言ってました。

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M: ゲームプレイは、まずは結構移動が速いっすよね。
B: キャラクターの制御に関しては完全にBuildエンジン系の動きで、なんか移動速度早いしジャンプも飛び出しから着地まで早いのに高く飛べる。90’s FPSにありがちな挙動。
M: 一方で、スケーティング(ダッシュからスライディングのように滑り込む挙動)とかジャンプパッドでの大ジャンプとか、元ネタになってるあたりのゲームにはなかったものもある。開発チームが「それヤバいじゃん」って思ったら取り込みまくってるんですよね。主人公がガンプレイ(銃をぐるぐる回すテク)できたり、最強武器として“石鹸”が入ってたり、無駄な要素も入ってるぐらいだから(笑)。

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DUSK』では当然のようにトイレまわりが充実しているのだが(トイレを流せたりシンクを使えるのがお約束)、最強武器のひとつとして石鹸まで置かれている。

B: あとマップの作りもクラシカルかな。スプライト表示全盛期のFPSってマップの外周を同じテクスチャの並びで無理やり壁にして行動範囲を定めてたじゃない? 林のテクスチャだったりとかさ。あれがそのまんま生きてて、気付いたときはさすがに笑った。
M: 『Ion Maiden』と違って、各レベル(面)のサイズ自体は小さめで、場所によっては広い地下エリアがあったりもするんだけど、レベル(面)を結構細かく区切ってる感じ。

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困ったら遠景は壁か林でも置いて囲っておけというスピリッツを継承。それにしても空が汚い。この色の潰れっぷりったらもう。

B: 目に見えて存在しているシークレットエリアとかあるね。眼前にあるのにどうやってそこに行けばいいか分からなくてヤキモキさせられたりとかさ。こういう、昔のFPSによくあった手法をガンガンぶち込んでくれているのはオッサン歓喜じゃない? チョイチョイくだらないイースターエッグもあるのには気付いた?
M: Dave(パブリッシャーであるNew Bloodのボス)の写真とか?
B': そんなんあるの?(笑)。いや、このゲームってマップごとにゴールする場所が当然決まっているんだけど、ドアなんかのオブジェクトに触れたりゴールのエリアに入ることがトリガーとなるじゃない?
M: まぁそれ自体はよくある設計ですよね。
B: でも、オブジェクトに触れないように特殊な操作で加速してジャンプで飛び越えた先に開発者のメッセージで「お前はここ居ちゃあかん、どっか行け」って書かれてたりする。これ、割とBuildエンジン系のゲームに多かったイースターエッグ的な遊びだよね。そこに来るのがわかってて仕込んでおくという。

M: 前の回で「昔のFPSの探索要素が射的の部分より好き」って言いましたけど、要はレベルデザインを通じた会話をそこに感じてたんですよね。「よくこれ見つけたな」とか「想像してたと思うけどもちろん罠だよ」ってレベルデザイナーが話しかけてきてるのを、プレイを通じて感じられる。
B: 最近のゲームだと、そういうのって減ってる感じがして少し寂しいな。

M: そして『Ion Maiden』とか『Amid Evil』にはまだついてないんですけど、『Dusk』にはマルチプレイ対戦がついてるんですよね。
B:『Dusk World』っていうモードなんだけど、かの『Quake World』(初代『Quake』のネットワーク最適化版)の名前そのまんますぎてグッジョブ。

M: 『Quake』古参プレイヤーとして遊んでみてどうでした?
B: いや、ぶっちゃけ普段は『Dusk World』を遊んでるプレイヤーが全然いないから対戦が成立したことないんだよね。Discordとかで有志を募るか、それこそDiscordのNew Bloodサーバー(discord.gg/NewBlood)の『Dusk』チャンネルに入ればたまに対戦会をやってるみたいなんで、それに混ざるしかないんじゃない?
M: Dusk Worldがお披露目されたテキサス州ダラスのQuakeCon 2017に行ったら小学生がプレイしてて笑いましたよ。キミ当時生まれてないだろと。でもQuakeConに連れてくるような親の子だから超うまいんですけどね。テキサスは怖いところです。

M: では、'90s FPSを特に知らん人がこのゲームをいきなり遊ぶとしたらどうでしょう?
B: 最近の若者にはハードルが高く感じるんじゃないかな? ゲームのテンポもストーリーも見えにくい90’s FPSの特徴が全面に出てるから感情移入しにくいと思う。でも『ハーフライフ』以前のFPSってほぼそんなもんだったじゃない? 爽快感メインでストーリーは二の次みたいなさ。
M: それはわかるかも。曖昧なストーリーとかも、ハイテンポな操作の中で自分を没入させて、その上で雰囲気から体感していくというものだったし。「これどうすればいいの?」って置いてかれると確かにキャッチアップしづらいかもなぁ。

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「下にいる何かがわしらを呼んどるだ」当時のゲームはカットシーンで毎度ストーリーをダラダラ語る余裕はあんまりないので、こういう背景ネタとかで状況を察してもらうのがメイン。『フォールアウト』シリーズとかのオブジェクト配置芸はこの辺の手法の延長上にあるかも。

B: でも慣れれば変わってくるポイントがあると思うんで、トライしてみて欲しい。あと、ひたすら撃ちまくる内容なんで、日頃の溜め込んだストレス発散には良いと思うよ。ヘヴィなサウンドもなんかこう「KILL! KILL! KILL! KILL!」ってテンションを上げてくれるし最高。
M: サウンドはAndrew Hulshultって人で、この人もまたNew BloodのDaveと同じくらい90’s FPSリバイバルでは重要な人なんですよね。『Dusk』以外に前回紹介した『Amid Evil』や、『Doom』のMODの『Brutal Doom』のサウンドなんかもやってる。
B: この人、YouTubeのチャンネル名(nukdukemfornever)も『Duke Nukem Forever』のもじりだからね。そういや、この人がカヴァーしてる『Quake 2』のQuad Machineて曲がすげぇイカスのでオススメ。

M: '90s FPSスタイルの新作は他にもいろいろあるんで、そっちも軽く触れときますか。まずは『Devil Daggers』(Steamの配信ページ)。これは初期『Quake』っぽくて、安いしダークなクリーチャーとか雰囲気も最高なんだけど、実は面クリアー型ではなくて、円形のステージで周囲から押し寄せる敵を倒し続けるというタイムアタックに特化した内容。
B: これ俺も遊んでみたんだけど、あまり合わなかったかな。確かにローレゾで昔っぽいけど、それ以前になぜ俺がこれを遊んでいるか疑問に思えてきて……。
M: レトロゲームのスピードランとかタイムアタックの文化を受けた設計で、ストイックすぎるから競技性にノレないとそうなりますね。好きな人は好きだろうし、実際DraQuとかガチのスピードランナーの人もやってました。

B:そういや、まだ発売もアーリーアクセスもされてない90’s回帰なFPSがまだまだ控えてるんだよね?
M: ちょっと変わり種になりますが、『Hellscreen』というのがKickStarterでクラウドファンディング中です。絵面がなかなかキてる。

B: すげぇ目にクルっつーか、サイケになった『DOOM』とか『QUAKE 2』って感じだねこれ。資金集まりそう?
M: 現時点で達成はちょっと厳しそうなんで頑張って欲しいところ。同じくちょっとグラフィックが変わり種なのだと、『Project Warlock』(Twitter)というのも注目ですね。

B: これはドット絵感が強いというか、N-Gage(携帯電話メーカーのノキアが出した携帯ゲーム機。『Duke Nukem 3D』などが出ていた)にありそうなFPSだね。ゲーム的には『Serious Sam』っぽいかな。あとは爆弾もった奴が叫びながら突っ込んでくれば最高。
M: 多分、「スプライトFPSのスプライトを、よりドット絵に寄せてみたら」みたいなマッシュアップなんじゃないかと。意外となかった組み合わせですね。厳密にはFPSではないんですが、『Arthurian Legends』(公式サイト)という一人称視点アクションもオールドスクール感バリバリでヤバいですよ。これは2018年に出る予定。

B: なんだこの3DOとかJaguarにありそうなゲーム。中途半端に実写取り込み感があってすげぇ好き。なんつーかこの、高解像度で取り込まず、微妙ボケる解像度の質感が『モータルコンバット』ぽくて好きだわ。
M: 実写からスプライトを作るのはFPSってよりアドベンチャーゲームっぽいやり方ですけど、まぁどっちみち90年代でほぼ消えた手法ですよね。今こうやって見ると、実写の生々しさが残りつつ非現実感があってなかなかいい感じ。
B: そんな感じでイロイロ見てきたわけだけど、まだまだ'90s FPSは絶賛育ち盛りってところかな? この続きは30年後にやるってことで。どんなタイトルが出てるか楽しみだ。

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著者近況:ソース焼きそばが食べたい(ただしマヨネーズは不要)

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)