ゲーム業界の枠を飛び越えて開発者どうしの交流を!CEDEC運営委員会、吉岡直人氏に聞く【CEDEC 2011】

CEDEC 2011の手応えを、CEDEC運営委員会 委員長を務める吉岡直人氏に聞いた。

●“Cross Border”を実現した基調講演に手応え

 2011年9月6日〜9日の3日間に渡って開催されたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が幕を閉じた。ゲーム開発者の技術交流などを目的として開催されるCEDECは、クリエイターの開発スキルの底上げを図るという意味からも、いまCESAがもっとも力を入れている事業のひとつ。13回目を数える今年、どのような成果があったのか? CEDEC運営委員会 委員長を務める吉岡直人氏に手応えを聞いた。

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CEDEC運営委員会 委員長
吉岡直人氏

――今年のCEDEC 2011はどのようなテーマで取り組んでいたのですか?

吉岡 今年はキャッチフレーズにもある通り“Cross Border”というのがテーマでした。ゲームがサイエンスであったり、テクノロジーであったり、エンターテイメントであったりと、いろいろなものの複合体であるということは、皆さん異論がないと思います。であれば、ゲームを作るにあたって、まったく別のビジネスフィールドの方々の知見を教わったほうがいいと思うんですよ。ソフトウェアひとつをとってみても、コンピューターソフトウェアの世界はゲームよりも遥かに広いわけですから。一方で、ゲームが出てきて30年くらい経って、産業として成り立つに至りました。今後は、どこかほかのところに貢献できるだけのノウハウやスキルが溜まっているハズだと思うんです。これからは、そういったものを外の世界に出して行ってほしいと思っています。取り入れる動きと出す動き、そのふたつを狙ったのが今年のCEDECでした。CEDECの名称を“CESAデベロッパーズカンファレンス”から、“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス”に変えたのもそのためです。

――まさに“Cross Border”ということですね。それは取りも直さず、ゲーム業界から一歩踏み出すということでしょうか?

吉岡 はい。象徴的なのが、Co-located eventです。CEDECでは今年、初の試みとして、コンピュータエンターテインメント開発に関連のある技術分野で、専門性の高い3 つの分野(数学、ソフトウェアテスト、CG)に関するミニカンファレンスを実施したのですが、いずれのセッションもほぼ満席でした。Co-located eventを目当てにいらっしゃった多くの方もCEDECの講演を聞かれて、「ものすごく刺激的だ」とおっしゃっていました。逆に、CEDECの登録者もけっこうな数がCo-located eventに参加して、勉強していただいています。

――今年は例年に比べ、異業種の方のセッションが多いのもそのためですか?

吉岡 おっしゃる通りです。

――基調講演が3名とも異業種の方というのも象徴的でしたね。昨年までだと“ゲーム業界の中の人”、“周辺の人”、“外の人”という人選でしたが……。

吉岡 CEDECそのものが、ゲーム業界の枠を超えていこうという方向性なので、“中の人”という考えかた自体が変わっていると思うんです。聴講者の方も刺激的な話に熱心に耳を傾けていたように思います。

――“Cross Border”ということでは、ソーシャルアプリ系のセッションも増えましたね。

吉岡 僕は、彼らがCEDECに来ることにはまったく不自然さは感じないです。ゲームの形もどんどん変わっていると思います。ゲームというものが、お客様に幸せな時間を過ごしていただいたり、あるいは何かの役に立ったりするコンテンツだとしたら、いわゆる“ゲーム業界”はもちろん今後もゲームを提供していくわけですが、“ゲーム業界”からしかゲームを提供してはいけない、ということにはならないと思うんです。ましてや、CEDECは開発者のためのカンファレンスです。いわゆる従来の“ゲーム”がどうなるかを占う場所ではないんです。それはむしろ東京ゲームショウの役割かもしれません。

――なるほど。

吉岡 さらに、今年“キャリアセッション”で、セガの石倉力さんにお話をしていただいたのも象徴的だったかもしれません。なぜ彼にお話してもらったかというと、彼はすでにテレビのコメディアンとして一時代を築いた人です。にも関わらず、彼はそこを抜けて、いまはゲームのディレクターをやっていらっしゃる。私は、そこがすばらしいキャリアパスだと思ったんです。まさに“Cross Border”ですよね。ただ、本音を言うと、逆の事例も求めています。つまりゲームで活躍して、まったくゲームではない職種に移られる方にCEDECに来て話してもらいたいです。でも、まだ見つけることができていません。それっていわゆる“ゲーム業界”が社会とつながっていないということかもしれません。“震災復興支援技術セッション”を企画したのも、そこがきっかけです。これだけの圧倒的な現実に対して、さまざまな分野の人々がどんな取り組みをしたのか、ということをシェアしようというのが狙いですね。

――たしかに非常に意義深いセッションでした。

吉岡 正直、我々が被災地の支援を直接できるかというと、それは難しい話だと思うんです。いまコンピュータプログラムなどで何か具体的なことができるかというと、そういったステージではないということはちょっと考えればわかることだと思います。ただ、技術者を育てていくということは、将来的にはそういう支援に必ずつながっていくと思います。何1000人と集まるCEDECで、ああいう事例をシェアすることに意義があるのだと思います。

――CEDEC 2011で、とくに手応えを感じたのは?

吉岡 今年はやはり基調講演ですね。基調講演に関しては、もしかしたら「これはゲームとは関係ないんじゃないか?」と言われるのではないかという不安が、正直なところありました。ところが、いらっしゃった方々の顔を見ればわかるのですが、皆さんものすごくエキサイトしてお帰りになっている。質問もどんどん出ましたし。基調講演の人選に関しては、“開発にどんな刺激を与えていただけるか”ということで選ばせていただいたのですが、参加者の皆さんには大いに刺激を受けていただけたようで、何よりでした。

――たしかに皆さん非常におもしろい講演でした。

吉岡 あと今年よかったところでは、ショートセッションですね。60分の中に複数のセッションを入れて、テーマは同じながらも、それぞれまったく独立の話ということで講演してもらったんです。手前味噌かもしれませんが、その形式がものすごくうまくいきました。皆さん違うことをおっしゃるので、その差異自体が情報になるんです。質問もものすごく積極的に出るようになりましたし。

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――ちょっと気の早い話かもしれませんが、今後に向けての課題などはありますか?

吉岡 それは明確にあると思っています。ひとつめは、CEDECは規模が拡大しているのですが、部屋のキャパシティーとかプログラム構成などが、それに対応し切れてないという点です。列が長くなったり待ち時間が増えたりと、皆さんにはご迷惑をおかけました。そのほか、細かいオペレーションの部分できちんとやれていないところがあるので、これは継続的な改善事項です。

――なるほど。運営上の問題は改善の余地ありということですね。

吉岡 ふたつめが、セッションの公募のやりかたに関してです。これは、他業種の方にとっても、もっと魅力的なやりかたにしたほうがいいのではないかと思っています。じつはここに関しては、委員会の中でもう議論が始まっているところです。

――“Cross Border”をさらに推し進めるために、異業種の方もさらに公募でセッションに参加できる仕組みを整えるということですか?

吉岡 はい。もっとやりやすい仕掛けを考えています。今年に関しては、一定の成果を挙げることができたと手応えを感じているのですが、来年に向けて、CEDECをますます充実させていきたいと思っています。ご期待ください。

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