●優れたコンピュータエンターテインメント制作技術の開発者を称える
2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。
開催2日目となる2011年9月7日、CEDEC AWARDS 2011の5部門の最優秀賞が決定し、表彰式が行われた。
CEDEC AWARDSは、2008年に第1回が開催され、本年で4回目。本賞は、ゲームソフトなどのタイトルそのものでなく、コンピュータエンターテインメント開発の進歩へ顕著な功績のあった技術にフォーカスし、技術面から開発者の功績を称え表彰することで、開発者全体の士気高揚を図ると同時に、開発技術の普及・啓蒙とコンピュータエンターテインメント産業全体の発展を目指したものだ。また、各部門の最優秀賞の授賞式に加えて、先日発表されたCEDEC AWARDS 2011 特別賞と、ゲーム関連書籍の著者に贈られる著述賞の授賞式も行われた。
■著述賞
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中嶋謙互氏
授賞理由:オンラインゲーム開発技術を取り扱った、本格的な技術書の著述
コメント:個人でオンラインゲームの開発をやっています。本日はすばらしい賞をいただいて本当にうれしく思っています。『オンラインゲームを支える技術 壮大なプレイ空間の舞台裏』は、ゲームの開発の本なんですけれど、発売してからWeb業界やエンタープレイズの開発の方からも大きな反響をブログやTwitterでいただいています。いろいろな方々にリアルタイムのWebの開発に興味を持っていただいて、ゲームの技術を自分たちの分野でも活用できると感じていただいたというのが、今回CEDECの“CROSS BORDER”のコンセプトに一致したから、賞をいただけたのではないかな、と思っております。今後も引き続きオンラインゲーム開発の技術を磨いていきたいと思います。
■特別賞
田尻智氏(ゲームフリーク代表取締役)
石原恒和氏(ポケモン 代表取締役社長)
授賞理由:遊びの本質を見失わず、かつ、たゆまぬ進化を続ける本格的なゲームデザイン
コメント:
『ポケットモンスター』を作って15年ほどになります。『ポケットモンスター』というゲームは、ゲームの歴史の中で名作を残したいという思いから、ゲーム以前の体験、少年時代に昆虫などを採取した体験を原点に、通信という15年ほど前はあまり見られなかった、いまに通じる要素を使ったゲームを作ったことが、今回の光栄な賞をいただいた理由だと思っています。ありがとうございました。(田尻智)
私にとって何よりうれしいのは、田尻智さんといっしょにこのような賞をいただけたということです。私自身は開発の中心にいたわけではなく、作り手を支える立場、プロデューサーとして、ディレクターの田尻さんをいかに支えるかというのを15年間やってきました。開発技術者ではない私が田尻さんとこういった賞をいただけるというのは、本当に光栄に思っています。ありがとうございました(石原恒和)
■プログラミング・開発環境部門
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“Unity エンジン”開発チーム(Unity Technologies)
授賞理由:アマチュアからプロまで、モバイルからハイエンドまで幅広い範囲で使える洗練されたゲームエンジンを提供。プラットフォームの多様化が進む中、習熟しやすく、かつ移植性の高い開発環境を提供することでアプリケーションの可能性を広げ、また、開発者のすそ野を広げることに貢献している。
コメント:日本のオフィスを開いたばかり。このような賞をいただきありがとうございます。誰にでも3D、インタラクティブなゲームを作れるようにするためにがんばってきました。ゲームは、プログラムを動かすだけでなく、楽しんでもらうものを形にするもの。そこに集中できる時代がきました。我々もそれに参加できているのかな、と思います。
■ビジュアル・アーツ部門
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『ストリートファイターIV』シリーズデザインチーム(カプコン)
授賞理由:NPRの中でも単なるトゥーンレンダリングではなく水彩表現をリアルタイムグラフィックスで実現した、高いレベルのレンダリング技術と緻密なシルエットデザインがされているモデリング技術のバランスが生み出す効果の集大成を評価。
コメント:『ストリートファイターIV』の現場は職人芸で戦っていきたいと思っています。(2Dのファンが多くいる『ストII』を3Dにする際、イメージムービーから製品版になるまでグラフィックについてブレずに開発を進められたのか? というプレゼンターの問いに)初期段階はブレまくりで、いまの形に落ち着いたのも奇跡だと思います。ただ、コンセプトとして絵を動かしたい、というのがありました。あと、ドット絵を2008年に公開した映像に近付けていくにはどうするのがベストか、ということを考えていきました。絵を動かすということについては、ブレずに進めていきました。その結果が受賞につながったのかなと思っています。
■ゲームデザイン部門
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日野晃博氏(レベルファイブ)
授賞理由:テレビアニメ番組と同時進行でゲームを展開させる『イナズマイレブン』『ダンボール戦機』。書籍をゲームの一部として利用させるプレイスタイルを実現した『二ノ国 漆黒の魔導士』など、ゲーム内容に則すメディアの特性を最大限に活用した、メディアミックス前提のコンセプトワークを評価。
コメント:このような光栄な賞をいただき、たいへんうれしく思っています。僕は、つねづねゲームを作るということは、プログラムを組むだけではなくて、それを最終的に楽しむことも含まれると思っています。その意味では、この賞がいただけるのはうれしく思っています。これからもゲームをエンターテインメントの世界で認められるようにがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
■サウンド部門
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「CRI ADX2」開発チーム(CRI・ミドルウェア)
授賞理由:ゲーム開発で要求される音質・サイズ・デコード負荷全ての要求を満たす圧縮フォーマットを、マルチプラットフォーム対応ミドルウェア「CRI ADX2」として優れたサポート体制と共に提供、共通フォーマット/コーデックとオーサリング環境の提供による作業負荷軽減を実現することでゲームの品質向上に寄与している。日本製のミドルウェアとして、世界レベルの存在。
コメント:このような賞をいただけるとは思っていませんでしたので驚いております。黒子のような存在として、15年愚直にやってきたのが評価されたのかなと思います。我々のプログラムを最初に使っていただいた『グランディア』から、ゲームのサウンドは変わりましたが、皆さんの情熱を支えられてここまでこれたのかと。これからもゲーム作りのお手伝いができればと思っています。
■ネットワーク部門
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Amazon EC2/S3(Amazon Web Services LLC)
授賞理由:ハードとソフトとネットワークを仮想レベルで連結する技術により、ゲームの開発やネット上での提供に必要なCPU能力、ストレージ、ネットワーク等を、高い性能、信頼性、スケーラビリティでオンデマンドに提供するクラウドサービスを実現。世界規模の展開を推進する中、2011年3月からは東京データセンターを開設、日本国内でのクラウド利用のハードルを大幅に下げた。
コメント:クラウドというのは実態が見えないものかと思いますが、皆さんが「こういうのがあればいいな」と思ったときに、お手伝いできるのではないかなと考えています。競合他社が出てくると客さんの要求が高くなりますが、それにいかに応えていくか、だと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
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