●アニメ専用のツールを作成

 2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。開催2日目の2011年9月7日に行われたサンライズの小高忠男氏によるセッション“セルアニメスタイルのCG制作”は、小高氏が手掛けたTVアニメ『SDガンダム三国伝Brave Battle Warriors』の制作事例を紹介するというものだ。

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 これまで数多くのCG作品を手掛けてきたという小高氏。『SDガンダム三国伝Brave Battle Warriors』を制作する上で伏線となったのは2002年〜2004年に放送されたTVアニメの『SDガンダムフォース』。フルCGアニメとして制作された同作は、「ヌルヌルした動きとセルアニメルックの違和感」や「ローポリゴンゆえのポリゴン感」、「アウトラインのがたつき」などが小高氏にとっては気になったという。CGアニメという点では、その後制作された『Freedom』の存在も大きかった。これにより“作画スタイルのCGアニメ”の可能性に気づき、さらに2009年の『SDガンダム三国伝PV』で、TVシリーズへの対応を模索したとという。2010年4月〜2011年3月までテレビ東京で放送された『SDガンダム三国伝Brave Battle Warriors』は、その流れの中で生まれた作品で、デジタル作画とCGのハイブリッド、メインはCGでそれ以外は手描き、そして最終的な仕上げもアニメを踏襲するというスタイルで制作されたものだ。

 『SDガンダムフォース』での経緯を踏まえて、小高氏が導入したのが『SDガンダム三国伝』専用のツール。これにより作業の効率化が大いに図られた。具体的には作画スタイルのワークフローをできるだけサポートするといった機能や色換え、“三国伝掲示板”の開設などだ。“三国伝掲示板”の開設は、同時進行する複数のCGチームでいかに情報を共有するかを考慮した結果だ。

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 専用ツールの存在もあり、『SDガンダムフォース』で見られたようなシェーディングの汚さやアウトラインの汚さは解消。結果として『SDガンダム三国伝Brave Battle Warriors』は小高氏も満足のいくものに仕上がったようだ。「作画素材とのマッチングもおおむね良好で、リミテッドアニメ独特のメリハリのあるアニメーションを実現できた」(小高)という。ちなみにリミテッドアニメとは、手描きのラフ原画やタイミングに可能な限りあわせてCGアニメーションを作成する制作スタイルのことだ。一方で、さらなる問題点もあった。それは、「作画とCGを何度も行き来する今回のハイブリッドスタイルは、工程が煩雑」、「手作業での修正が多かった」といった点などだ。こちらに対しては、さらなる進化が図られるのではないか? アニメ専用のツールを作成するなど、サンライズはCGアニメに対して積極的だ。そのノウハウはゲーム業界でも大いに活かされるのではないかと思われたセッションだった。

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▲線画によるラインテスト動画、実際のCGチェック動画(中央)、撮影動画(右)の3段階を経てカットが制作される。ちなみに手すりが手描きとなる。

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▲記者がとくに興味深かったのが、CG上ではカメラワークを使わないということ。横にパンすることを想定して、大判で制作するというのだ。いかにもCGらしい発想なのでは。

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▲ダイナミックな構図を再現するために、CGでも“くずし”や“うそパース”を駆使する。ただし、デフォルメを多用すると遠近感が崩壊する可能性があるので注意が必要とのこと。

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▲モデルの色換えが容易に図られるのも、専用ツールならではのメリット。

▲表情のパーツなども用意されている。口パクにも対応。

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▲技術の革新を求めての、クリエイターたちの挑戦は続く。