中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編

立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!

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【ブログ】新アップデート、「テサラクト・アビス2」実装記念! VR剣戟ゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』キーマンインタビュー(その2)

2021-10-05 17:00:00

ソード・オブ・ガルガンチュア』(以下、『SoG』)におけるコンテンツ戦略や同作に関わる構想について、同作開発スタジオのThirdverse CSOの新清士氏と、『SoG』担当ゲームデザイナーである出島大輔氏から伺う第2弾(前回の記事はこちら)。今回は、ゲームビジネスという視点から見た『SoG』やそこから伺えるThirdverseとしての今後の展望について探っていく。

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▲ZOOMでの取材に対応いただいた
新清士氏(右)と出島大輔氏(左)

ビジネスモデルの転換で人気を維持した『SoG』



Q:これまでのお話を伺っていると、『SoG』はもはやオンラインゲームですね?

新清士氏(Thirdverse CSO、以下、新):そうなんです。開発スタッフの中にオンラインゲームの運営経験者がいるので、それが現在の『SoG』の展開に影響しています。本日、同席している出島もスマートフォンゲーム開発を経験してきたので。これらのスタッフとともにミニマムで何をすれば効果が大きいかを非常に意識しています。出島のゲームデザインはその点が優れているんです。

Q:ですが、もともと『SoG』は買い切り型ゲームを想定していたと思うのですが。

新:そういう意味では、後で運営的な機能を追加することになったので苦労しています。でも、実は発売当初から遊んでいただいているユーザーは、何度もアップデートがされているのに課金する機会がないので、是非払えるような機能を追加してほしいと言って頂いているのです。『SoG』に愛着を感じていただいているようで大変うれしいですね。実際、アイテム課金を実装するかどうかについては社内でも常に話し合っているのですが、今はどちらかというとまだハードの普及が進んでいるタイミングなので新規ユーザーに買っていただくという戦略に力点を置いて開発を進める方針になっています。OculusプラットフォームのVRタイトルでも課金で成功しているゲームは『Beat Saber』位だと思うので、現状はまだ、アイテム課金を実装するタイミングとしては早いと感じています。Oculus Quest 2ローンチの波にも乗れて新規ユーザーが増えてくれたことも大きいですね。こういった実績が、Oculusやその他のベンチャーキャピタルからも評価を頂き、結果的に今回の増資に繋がった一因になっています。

Q:アイテム課金と言えば、既に数多くの刀剣や武具が実装されていますよね。人気の刀剣や武具にはどのようなものがあるのですか?

新:ユーザーにアンケートを取ると、結果はけっこうバラバラでしたね。当然、機能の優れた武器、例えば炎のエフェクトが出る朱雀・鳳凰は人気です。でも、特定の種類に偏っているというわけではないのです。多くのユーザーが自分にあった武器を探し、プレイスタイルを確立している様子が感じられます。現在武器は140種類以上あるのですが、そのほとんどがイベントとして期間限定で提供したものが多いです。特定の間を逃すと手に入れることができないので、これらをアイテムとして売って欲しいという要望が多数来ています。

Q:ではタイミングを見計らって……。

新:そうですね。イベントを絡めて再配信ということは実際にやっています。ユーザーのアンケートを取って、希望が多かったものから再配信したケースもありました。

北米7割と海外のユーザーが過半数を超える『SoG』のユーザー層

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▲海外ユーザー層が多いVRゲームのユーザ構成はゲームとしてのグローバル対応を促進させる



Q: 現在のプレイヤー動向はどのような傾向にあるのでしょう?

新:7割がアメリカ、残りの半分を日本とヨーロッパが分けるという感じです。逆に言うと、純正な日本のタイトルにも関わらず多くの海外のユーザーに受け入れられたというのがうれしいです。

Q:海外ユーザーにより遊んでもらえるためにどのような工夫をしていますか?

新:コミュニケーションに力を入れています。特にDiscordの運用を積極的にやっており、英語と日本語の専用のスレッドをつくり、専属スタッフを配置しています。Discord経由でユーザーからの要望がかなりあがってくるので、これらの情報を整理、ピックアップして情報として蓄積しています。その情報をゲームのアップデートをする際も参考にしています。

Q:7割ものユーザーがアメリカの方の場合、日本で難易度調整をするうえで困難な点はないのですか?

出島大輔(『SoG』担当ゲームデザイナー、以下、出島):海外ユーザーのプレイの動向を意識しながら調整しています。まず、爽快感を早くに体験してもらいたいので、最初はかなり簡単に進めるようにしています。そして、先に進むにつれて、難易度を高くするという形式にしています。

新:Thirdverseはアメリカにも拠点があるので、専属ではないにせよ海外スタッフにもプレイテストはおこなってもらっています。

Q:経営者としてこういった、様々なユーザー行動の変化を分析できることにどのような印象を持っていますか?

新:面白いですね。ユーザーがいろんなテクニックを使ったり、中には開発陣でも再現が難しい技を目の当たりにすることが何度もありました。これに対し、作る側としてどうすればより楽しんでもらえる環境を提供出来るかを考えながらいろいろと施策を実施していけるからです。『SoG』はユーザーに育ててもらったゲームだという意識をいつも持っています。

Q:では、『SoG』の今後の展開についてはどうですか? まずはゲームデザイナーとしてどのような事をやってみたいか教えてください。

出島:いままでプレイしてきた人にとっては「こんな方向に行くんだ」といった驚きがあるような企画を進めているので、その点では期待してもらえればいいのかなと思います

Q:事業展開という点ではどうでしょうか?

新:いまは一言も言えないのですが(笑)、発表したらビックリすることを準備していますとしか言えないですよね。まあ、発表したときは、以前お伝えしたオアシス構想につながるワールドをどう『SoG』が形成し、次の段階的なものに繋げていこうとしているかを理解いただけるようになると思います。

VRとブロックチェーンで第3の経済圏をつくりあげる

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▲ユーザーコミュニティも非常に濃い『SoG』はサードバース・コミュニティの先鞭となるか



Q:Thirdverseの戦略的な部分についてお伝え出来ることまで教えてもらえますでしょうか?

新:Thirdverseにおけるマクロの話をすると、別途でプロジェクトも動いており、それに向けて採用も進めるなど強固な開発体制を作るべく動いているところです。アメリカでも開発プロジェクトが進んでいます。なので実際としては、我々も含めプロジェクトが3つ動いていることになります。これらを通して、我々は世界トップのVRゲーム開発スタジオになるという目標を掲げています。なお、国光がgumiを離れてThirdverseに入ってきた最大の理由は主力分野をVRとブロックチェーンに絞ってリードしていきたいという想いがあるからです。

Q:ブロックチェーンに関連していうと、VRゲーム開発スタジオとしてNFTの可能性はどう感じていますか?

新:現状提供されているNFTの多くのものは、サーバーへのアクセス権を得るという形で提供されているのが大半なので、まだまだ、ゲームの中に応用するには用途が限定されるという印象です。まだ、どのようにVRゲームの中に組み込むとうまく機能するのかが見えない状況ではあると思います。ただ、もう少し技術のハードルが下がってきた段階で、組み込める段階は来るだろうとは見ています。

Q:では、ブロックチェーンについてはどうでしょうか?

新:ブロックチェーンをどうThridverseに組み込むかという具体的な話は、将来的なものを見据えながら検討しています。VRとブロックチェーンの2つを意識しながらThridverseは動いていきます。なので、ある段階で、ブロックチェーン的なものが『SoG』にも実装されていく可能性は高いです。VR空間内に経済圏を生み出すというのがThirdverseの大きなゴールの1つなので。その中で『SoG』にとって何が出来るかを考えていく必要があります。

Q:現在アメリカスタジオも強化しているとのことですが、各VRプラットフォームとの関係は今後、どのような戦略をお持ちなのでしょうか?

新: Oculusとは非常に距離が近いです。日本のスタジオの中でもかなり近い。実績も出しているので高く評価いただいています。なので日本のメーカーとしてはかなり有利な位置にあると考えています。

Q:ありがとうございました。では最後に『SoG』ファンに一言ずつよろしくお願いします。

出島:今後もアップデート自体は続けていくので公開されるたびに驚いてもらえるように頑張っていくのでよろしくお願いします!

新:明らかにいえるのは『SoG』を2年にもわたり大きくアップデート出来た要因としてユーザーからの支援があったのは間違い無いです。コミュニティから意見をいただいたり、提案を受けたり。非公式にはなりますが、VRChatでオフ会をやっていただいた方もいらっしゃいました。こういったユーザーさんがいてくれてこその『SoG』だと思っています。ここに対してはいつも感謝しています。今後もアップデートは継続していきます。また、まだ、『SoG』を触ったことが無い方にもこの機会に是非プレイしてもらいたいと思っています。VR用HMDも今後、さらに進化すると思いますがその中でとにかく最先端で位置づけられるようにしてきたい。なので、今後も『SoG』を意識していただきたいなと思っています!