中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】太秦上洛まつり、限定販売でも本格始動。ポストコロナ時代におけるイベントのあり方を展望する
2021-11-26 11:00:00
▲900人を安全に動員するために更衣室を増やすなど様々な工夫を凝らした |
2007年3月を皮切りに12年も途絶えることなく京都太秦で開催され続けてきた歴史系コンテンツイベント(旧称太秦戦国祭り、2013年の京都幕末フェスティバル in Uzumasaをはさみ、2014年以降、現在まで太秦上洛まつり)。
新型コロナに打ち勝つこと叶わず、急遽オンラインイベント、太秦上洛祭り-幻-が開催されたのが2020年。そして今年、世界が新型コロナとの戦いに一進一退を繰り返す中、2021年11月20日、21日の実施を決定し、7月9日に正式リリースを出した。
第5派の到来にともなう緊急事態宣言発令時は、1月末への延期も検討せざるを得なかった。だが、その時期が極寒期であることや、第6派到来の可能性もあり得ることを踏まえ、11月の予定は維持することに決めた。
本イベントは例年、学生インターンが授業の一環として参加していることもあり、この段階で全員に保険をかけるなどの措置を施すことは既に決定。東映太秦映画村では、既にテーマパーク全域に対し抗ウィルス・抗菌コーティングを実施、コスプレ運営を担うCOS-PATIO グループのチームもすでに東京などで3密回避などを前提としたコスプレイベントのノウハウを蓄積してきた。これらに加え、今回は、チケットもオンライン限定とした上で上限を設けたのに加え、更衣室も大幅に拡大し、参加者が3密を回避しながら着替えができるための対策も万全なものとして備えていたものの、第5派最盛期でのこの判断には若干の不安も残った。
だが、幸いにも第5派は収束に向かい、感染者数の減少傾向が続いたまま開催日を迎えることが出来た。結果的に、2021年11月20日と21日、京都太秦映画村において、太秦上洛まつり雅-Miyabi-が開催されたのは絶妙のタイミングであったと言える。
チケットは発売数日で予定販売数を超え、枠を可能な限り拡大してからも売れ続け、イベント当日までにはほぼ完売。2日間の動員数は、コスプレイベントが900人、全体でも5,500人を達成した( ※ 京都府のイベント開催要請 にもとづき1日あたり人数5,000人以下遵守)。感染症対策を万全にした上でのこの動員数は映画村という場所ではマックスだろう。
テーマパークを出展会場とすることで従来とは違ったユーザー層への認知度獲得を促進
▲今回出展していた4つのブース。お通り男史(左上)、ライデンフィルム京都スタジオ(右上)、東方Project (左下) 神田明神(右下) |
今回は、ブース出展も健在。まずは京都発で2018年にキャラクター展開が始まり、今年、ライトノベルが発売された『お通り男史』。「碁盤の目」で有名な京都の路には邪気や悪霊から道を守る「通神(とおりかみ)」が存在するという設定から京都の人たちによっても馴染みのある路の通神が軒並み展示された。京都からはこの他にもライデンフィルム京都スタジオが『かぎなど』を出展し、複製原画や書き下ろし色紙などが今回のために掲示された。これらに加え、東方Project×太秦上洛まつり「博麗神社~冬祭り2021」ブースはキャラクターパネルを大胆に設置。そして、神田明神1300年事業 ブースでは、神田明神に関する歴史などを紹介していた。当日はコスプレイヤーも参加しているが、一般客も来場しており、その多くがファミリー層であったことから、通常のゲームやアニメファンが集まるファンイベントでは接することが出来ない層(子供たちなど)がこれらのブースのキャラクターパネルをじっくり眺めたり、年配の方が神田明神の歴史パネルをガッツリ読みこむといった様子を伺うことが出来た。
▲それぞれが楽しみながら、新しい仲間とも出会えるのが太秦上洛まつりの醍醐味 |
一方、今年のコスプレ参加者の多くは2019年と同様に『鬼滅の刃』や『刀剣乱舞』、そして『FGO』などが多く、そこに例年一定規模参加する『銀魂』や『るろうに剣心』のコスプレが加わった。これら2作は映画村が実写版の聖地であることから、ファンにとっては一石二鳥のロケーションといえよう。
これらに加え、今年は『ワンピース ワノ国編』(以下、『ワノ国編』)や『原神』のキャラクターたちが新たに加わった。『ワンピース』は21日、ちょうどアニメの第1000話が放送されるという特別な日、『原神』については、7月21日に和をモチーフにしている新エリア「稲妻」が実装されたことからこれらの作品における昨今の話題性、人気を反映する形で集まったといえる。
全体的な印象だが、ほとんどの人たちにとって久々のリアルイベントであったことは間違いないだろう。快晴が続いた2日間、映画村のさまざまなロケーションで撮影出来たことは非常に意義があったと思われる。これに加え、初日は特別に20時まで営業をしていたことから、夜の撮影が可能だった。夜の吉原通りと隣接する明治通りは『「鬼滅の刃」遊郭編』を彷彿とさせるような雰囲気があり、ところどころで主要キャラクターのコスプレをした人たちが撮影していた。
ただそれだけではない。これまでともに撮影をしていた仲間に加え、これを機に新たに出会った人たちとも撮影し合いながら互いのコスチュームをリスペクトし合い、場合によって全員で改めて撮影をするケースも見受けられた。つまり、映画村は歴史系コスプレのコミュニティとしての役割を果たしているのだ。初めての人にとっては全てが新鮮に見えるのに加え、映画村のスタッフもフレンドリーに対応していることから写真撮影がしやすく、常連にとってもセットが若干変わっていたり、コスプレをするキャラクターによって撮影場所を変えることで新たな発見があることから、さまざまなコスプレ層に対して訴求できるという点が長期にわたって支持される理由なのだろう。ポストコロナに向けて動き出した日本。Go To トラベル事業の再開もささやかれる中、今後、太秦上洛まつり実行委員会がどのような次の一手を講じてくるのかが注目される。