中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編

立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!

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【ブログ】ゲームを活用した地域活性化を整理する(その1)

2021-04-12 19:00:00

 これまで、アニメや映像作品のロケ地を巡る、聖地巡礼や、群馬の「ぐんまちゃん」、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」や熊本の「くまモン」などのご当地キャラクター、秋田の「超神ネイガー」や沖縄の「琉神マブヤー」など、知的財産(英語Intellectual Property、以下、IP)と地域を結び付けた地域活性化策がここ数年、様々な形で展開されてきたが、いよいよ「ゲーム」も本格的にこの流れに入りつつある。そこで、本稿ではゲームと地域活性化をテーマに様々な取り組みを俯瞰してみた。

内発、外来、ハイブリッド

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▲これまでのコンテンツ(IP)と地域活性化の取組を整理するとこのようになる。(福田、中村、細井、2009)をもとに筆者作成(※1)



 IPによる地域活性化について、これまで筆者は、地方自治体によるテレビドラマの誘致に対する調査や、立命館大学では自身の研究室と細井浩一研究室、福田一史氏などと共同して企画を発展させた太秦戦国祭り(現太秦上洛まつり)などの経験を参与観察型研究として振り返りつつ、地域開発における内発的発展論を援用し、その取り組みを内発、外来、ハイプリッドに整理した(図1)。簡単に言えば、類型Aはご当地IPを地元のリソースで開発するケース。類型Bはご当地IPを外部の専門家に依存して開発し、その後の展開も外部リソースに依存するケースとなる。類型Cは地元にゆかりのある著名IPを地元のリソースを活用して活性化策に取り入れるケースだが、いわゆる「聖地巡礼」的イベントの多くがこの類型に当てはまる。そして類型Dは地方が「場所代」を徴収し、あとは全て著名IPホルダー側が運営するというケースだ。ただ、ほとんどの施策がそこまで明確な分類が出来ない。結果的にいくつかの類型が混合された施策を行うこととなる。これを我々はハイブリッドと称した。現在も筆者が携わっている太秦上洛まつりや、BitSummitはまさにこのハイブリッド型だ。同じように、ゲームを活用した地域活性化の取り組みも、この図のいずれかの類型に分類することが出来る。その内、今回はご当地IPとして開発されたゲームを確認していく。なお、『ごちぽん』のような懸賞品型ゲームはここでは扱わない。

2005年におけるGMOメディア『チャリンコレディース2』と大分県大分市鶴崎商店の取組み

 ご当地をテーマにしたゲームという点で、筆者が最も初期のものとして確認できたのが、2005年12月に、GMOメディアが開発した『チャリンコレディース2』だ。母親が大分市、鶴崎商店街に帰省時に、いっしょについてきた女児が三輪車で商店街を疾走するという設定で、プレイヤーは三輪車に乗っている女児を携帯電話の左右キーで操作して障害物をよけながら疾走して点数を稼ぐ。ゲームの舞台である鶴崎商店街や店舗名は実在するものが使われた。さらに喧嘩祭りの大将」「踊り子」、地元ゆかりの武将「加藤清正」なども登場。BGMも地元の祭事である「二十三夜祭」のダンス音楽だ。鶴崎商店街で精肉小売店を営む山崎商事の山崎昌彦専務とゲーム制作会社(千葉県)の代表と大学時代の学友だったことで実現、当時大分経済学部で卒業論文のためにこの商店街を研究していた、佐藤千枝氏もアイテムつくりを協力した。ゲーム配信をふまえ、鶴崎商店街連合会は携帯電話向けサイトを開設し、店舗や地域の情報、プレゼントが当たるくじ引き、メルマガ登録機能などをゲームサイトにリンクさせた(※2)。また、ミクシィが人気となった際も地域と連携したソーシャルゲームが生まれた。2010年9月にリリースされた北海道夕張郡由仁町を舞台にした農場経営系ゲーム『北海道ゆーにんふぁーむ@由仁町』(※3)がそれだ。開発・運営は食や農業活性化をテーマとした教育・サービス事業を展開してきた「ゆーにん」(現在は閉鎖)が行った。ゲーム開発にあたり、同社の契約社員が実際に5月に千葉県から由仁町に移り住み、農家の畑で朝7時から夕方7時まで研究を受けながら開発に取り組んでいる(※4)。

GPS機能が標準搭載されたことで、生まれた数々のご当地ゲーム

 地方発のゲームとして活況を究めたのは、携帯電話に全地球測位システム(GPS)が標準搭載されるようになってからだ。2010年10月、SCRAPが京都で「平安女学院誰がドラゴンを殺したか」でGPSを活用した携帯による謎解きゲームをリリースした。さらに2011年4月、『東京迷宮パズル』及び『京都迷宮パズル』がこれに続く。これらのゲームは謎を解きながら、鍵となる場所に訪れGPSでその場所を確認することで、さらに物語を展開させるというゲームメカニクスで、対象となる地域を自然に散策させることが特徴のゲームだ。これらのプロジェクトにプロデューサーとして携わっていた殿岡康永氏が独立。京都で、Supernovaという会社を設立し、以降、立命館大学映像学部中村研究室や、京都府、京都商工会議所、太秦戦国祭り実行員会などと協力しながら、『京都迷宮ドリル』、『「うじゅのぱわ~すぽっとめぐり!」古都のほっこり嵐電つあ~』、『京都妖怪絵巻』、『仮面ライダーウィザードGPSエンターテインメント』、『ロケナゲ』など2011年~2014年10月まで様々なGPSゲームを開発していった。その後、同氏は一旦、東京の広告系企業に転職後、自身の故郷である群馬県桐生市に戻り『2116 feel and color ~それでもここにいる理由~』で、Beacon(ビーコン)を用いた位置情報ゲームサービスを2017年3月から数ヵ月程展開している。この他、JAPROが開発し、鳥取県NPO法人 大山中海観光推進機構が提供した『建国のレジェンド』(2012)(※5)などもあるが、これらご当地との連携を前提とした(『ロケナゲ』を除く)サービスの場合、サービス期間を1ヵ月程度に限定することが多く、結果的に集客という面では限界がある。前述のサービスの中で最も集客が図れたのは『仮面ライダーウィザードGPSエンターテインメント』の3000名であった。また桐生市で展開した『2116 feel and color ~それでもここにいる理由~』(以下、『2116 feel and color』)に関し、桐生市商工振興課の金子氏によれば(※6)、同サービス享受者は1000名ほどだったという。ただ、これらのサービスは、従来人が来ない場所に誘導することが可能であることから、謎解きを通して得られた物語によって、その場に対するトリビア(例えば妖怪に関する逸話など)を盛り込むことでその場所に対する価値の転換を起こすことも可能だ。そのような視点からいうと、3000という数は決して小さい数ではない。また、地元にゆかりのある企業が新たなサービスを展開して技術を検証するという点や、地域のクーポンや、地元の商店街に導線を張れるという点を検証するという点でも意義がある。例えば桐生市の場合、前述の金子氏によれば、もともと『2116 feel and color』はビーコンを用いた地域の情報化に関する検証も兼ねており、各店舗の情報サービスの展開といった汎用的な活用例の検証も出来たことから、集客以上の効果があったと答えている。また、こういった先端技術を取り入れたエンターテインメントコンテンツは地方自治体や公共機関も民間に受託開発を依頼しやすいようだ。たとえば、スマートフォンがAR・VR技術が対応しはじめた2014年ころから、スマートフォン上のAR、VR技術を活用したコンテンツの開発を地方自治体や、博物館などの公共機関が民間に委託開発するようになる(※7)。

ご当地ゲームの台頭

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▲井桁屋による『ローカルディア・クロニクル』がここ数年の間に生まれた地域創生RPGの原点



 ご当地ゲームアプリの中でも、とりわけ商業的に成功しているのは2012年5月4日にリリースされた『ぐんまのやぼう』だろう。同作は群馬県出身のチームRucKyGAMESが、群馬県の認知度が最下位だったとのテレビ番組での情報を契機に開発を決意。「ご当地アプリ」を開発しようと思い立ったという(※8)。 ゲームとしては、群馬県で生産される特産物を収穫してポイントをため、群馬周辺から日本全体の都道府県を「せいあつ」するというシンプルなもの。そこに駅名を活用したすごろくや、群馬市町村しわけといったゲームが収録されている。てがき、ひらがなとカタカナのみが用いられたインターフェイスとそのゆるさが話題となり、リリースしてから10月までで70万ダウンロードを達成している(※9)。また、この話題性が評価され、同年夏には観光特使に選ばれている(※10)。ただ、この段階では、行政が話題性を意識して、プロジェクトを「公認」するのみにとどまっている。

 その後、前述のようなGPSゲームやAR/VR型コンテンツの登場をはさんで、2015年8月31日、京都市や、市内12の商店街からの協力、賛同を経てメディアインパクトがブラウザーゲーム『京都田の字クエスト』をリリースした。同作は京都市内の「田の字地区」と呼ばれる中心的な繁華街をテーマとしたロールプレイングゲームだ。グラフィックやサウンドともに、16bitゲームの時代を彷彿とさせるレトロなテイストで抑えたが、物語は現代の「ボク」が街中を歩きながら、町の人たちと会話を重ねることで、地域のトリビアを探索し、その後、クイズに挑んでレベル上げを行うというもの。道中では「足の疲れ」や「突然の眠気」とバトルするといったシーンも。1~2時間でゲームクリアが出来る主にライトユーザーを意識したつくりだ。また、ユーザー参加型を謳っており、希望する人は特定のフォームに応募すればゲームに登場することが出来る。メディアインパクトの宮嶋社長によれば、同作は、現在までに累計で4万回ほどプレイされているという。また2016年12月24日には英語版がSteamから配信されロシア、アメリカなどからもダウンロードがされている。

 一方、2016年5月3日、さいたま市及び川越市をテーマとした本格的なRPG、『ローカルディア・クロニクル』が井桁屋からリリースされた(※11)。井桁屋代表取締役の高久田氏によれば、累計ダウンロード数は45万にも及ぶ(※12)。ゲームとしては『京都田の字クエスト』と同様にピクセルアートをベースとしているが、主要シーンには、最新トレンドをおさえたキャラクターのキービジュアルがインサートされるようになっている。また、BGMをリッチにし、主要キャラクターのボイスを挿入、クリアに45~55時間を要する本格的なつくりになっている。これに加え、ゲーム上のマップは対象となる地域とほぼ同形とし、名称についても例えば、スタート地であるノースノース王国は「北区」、お姫様がいるとされるラージ・シュライン王国は大宮区と、ファンタジー世界が舞台でありながら、現実世界とリンク出来る施策を導入。また、クーポンを取得出来たり、所定の場所でGPSを機動することで特別なアイテムが入手できるといったスタンプラリー的機能も加えたりすることで、ゲーム性と地域活性化施策の両立が行われた。

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▲香川県丸亀市観光協会は職員自ら『まるがめクエスト~囚われの12姫』



 この試みに注目した埼玉県行田市が観光予算を活用してゲームアプリ開発を同社に委託。2018年2月23日にリリースされたのが『言な絶えそね-行田創生RPG』だ。同作はリリース2日で18000ダウンロードを記録し、クーポンの利用回数は1200回を数えたという(※13)。総合政策部企画政策課の栗田氏によれば、基本的に担当者1名が、企業側に要望を伝えながら開発を進めたという。また、GPSを使ってボタンが押された回数もリリース5日で3600回を数えたことから、認知度向上に加え、インバウンド効果という視点からも当初の目標を達成できたとのこと(※14)。このような行政によるユニークな試みは国内行政関係者の間での伝聞される傾向にあるが、その取り組みに着目したのが、南淡路市長の守本憲弘氏だ。当時、淡路島が日本遺産に認定されながらそれを十分に活用出来ていないという現状を憂いていた守本市長はこれを淡路市・洲本市・南あわじ市の3市共通の課題であるとし、それぞれの意見をまとめあげて、淡路島日本遺産委員会としてゲームを開発することを決定。井桁屋の高久田氏によれば、開発する際の条件として「国生みの島・淡路」を構成する31の文化財をストーリーに落とし込むこと、キャラクターボイスとして淡路島出身の興津和幸氏を最も適切と考えられる役がある場合は入れるようにとの条件が提示されたという。同社はそれを承諾し、提示された予算の中から開発を進め『はじまりの島 -淡路島日本遺産RPG-』が2019年4月6日から配信された。なお、県外の案件を受け入れたはじめた最中、2019年2月27日(水)~2019年3月1日に開催されていた、地方創生エキスポに、井桁屋は「地方創生RPG」を銘打って初出展。これを契機に、千葉県 佐倉市のベンチャー企業、株式会社equo(エクオ)と知り合った。そこで、エクオが全額出資しつつ、佐倉市も巻き込んで、地元の商店街などの協力を得た産公連携が実現。2020年3月20日に『天倫の桜』がリリースされた。一方、2021年3月31日にリリースされた『キズナファンタジア ~海辺の国の大聖典~』の場合は、石巻市市役所の職員が、2019年7月28日~10月20日まで開催されたいしのまき政策コンテストで最優勝賞を獲得した高校生チームの「アプリを活かした街づくり」という街おこし政策を実現するためのパートナーを探している中、行政や公共機関の前例的取組を視察する中で、井桁屋にたどり着いたという。高久田氏によれば、開発前に石巻市に関する特徴的なものをキーワードとして提示され、それを活用するようにとの指示を受けたのに加え、ボイスの配役には同市のチャリティ活動で多大な協力を得た方々に広くお声がけした結果、スケジュールのつく山口勝平氏や新田杏樹氏から出演承諾をしていただいたという。なお、開発時にはモンスターデザインや魔法名を公募し、348点のうちから31体を、呪文・魔法は129点のうちから6点を部分的に採用するなど開発プロセスにおいても地元の人達を巻き込む施策が石巻市側の主導で採用された(※15)。

 なお、高久田氏によれば、これら地方創生RPGは開発費用を可能な限り抑えたこともあり、主要キャラクターデザインなどの著作権は井桁屋側が保持するということで契約を結んでいる。もっとも「自分でビジネスをするためというよりは、IPをつくる当事者として、著作権管理をすることが目的」と同社社長の高久田氏。「実際、淡路島の担当者から文化財に関するパンフレットやクリアファイルなどでのキャラクターの使用について相談を受けていますが全てご使用くださいと伝えています」(同氏)。なお、同社が委託業務として受けたプロジェクトについては全て同様の条件になっているという。「それにより開発費を自治体の想定する予算内に収めることが可能です」(高久田氏)。

 一方、大手ゲームアプリ会社もこの流れに動いた。当時『にゃんこ大戦争』で累計4000万ダウンロード(現在は5800万)を達成していたポノスが、京都府商工労働観光部ものづくり振興課および公益財団法人京都産業 21全面協力のもと、京都を舞台としたタワーディフェンスゲーム『京刀のナユタ』を開発し、2018年8月31日にリリースした。『にゃんこ大戦争』で培ったタワーディフェンスジャンルのノウハウを活かしたゲームに加え、AIBeaconを活用して位置連動を実現し、「京刀イベントスポット」を京都府市の複数の拠点に設置。独自シナリオの展開や、レアアイテム出現といったイベントを準備した(※16)。同作はこのような連携施策を繰り返しながら、2020年6月30日で惜しまれながらサービスを終了している。

 この間、京都府宇治市は2017年3月にあくまでも話題性をとるために制作した、横スクロールアクションゲームのプレイ動画風PR映像『宇治市 宇治茶と源氏物語のまち』が予想以上に話題となったことから、2019年12月2日~2020年1月30日までクラウドファンディングを実施。338人から6341000円を集めた。なお、同ファンディングはふるさと納税にも対応している(※17)。この基金に、宇治市のもともとの開発費をあわせて850万円程の予算で2020年3月までに開発を終了。その後、新型コロナ禍で発表が延期されたものの、2020年7月10日から配信を開始した。宇治市秘書広報課の田中副課長によれば(※18)この施策はPR動画時代から賛否両論あったという。ただ、もともと、認知度向上に加え、宇治市への移住を検討してもらうことも目的だったので、その主要層であった、30~40代男性を想定して生み出した企画であったことを踏まえると、当初の目標をはさせたと田中氏。GPSによるスタンプラリー的機能もあらかじめ盛り込み、これをきっかけに宇治市に興味を抱いた人のために備えた。また、2021年3月1日~15日まで第1回 宇治市のゲーム やりこみ選手権を開催し、リアルタイムアタック(Real Time Attack)映像を募集したところ、32人から52もの動画が送られた(※19)。田中氏によれば、ゲームもリリースから累計ダウンロード数が3万程になっているという。宇治市はアニメによる聖地巡礼の場としても知られているが、ゲームを展開することで、これまでと違った層に注目していただけたことが良かったと田中氏は本施策を評価した。

 一方、新型コロナ禍という状況を逆手にとって、観光協会の職員が市販ソフト『RPGツクールMV』用いてご当地RPGを開発してしまったというケースが2021年3月21日に配信を開始した丸亀市観光RPG『まるがめクエスト~囚われの12姫』だ。制作したのは、香川県丸亀市観光協会の職員3名(※20)。通常業務の合間に開発をしたといこともあり、11ヵ月を要したと、そのうちの1名である柴坂氏は答えた。実は、ゲームを作るというアイデアは4年ほど前にも協会内で提案されたものの、明確な費用対効果を提示することが出来ず、自ら却下せざるを得なかったという。だが、転機は新型コロナ禍で訪れる。あらゆる企画が困難となる中、新型コロナ禍が明けた後に集客を図れるのではとの理由で隙間時間を用いて職員が開発に着手。重要なのは、作品の肝となる、12姫のキャラクターデザインだが、これについては、過去に実施してきたコンテンツ政策がここで活かされることとなる。メロンブックスと丸亀市観光協会がタッグを組み「丸亀城と12人のお姫さま」というご当地キャラクターを2018年から展開してきたからだ。「著名な絵師にお願いして素晴らしいキャラクターが出来上がったのでゲームでも活用させていただきました」と柴坂氏。ゲームリリース時はダウンロード数の目標値を10,000と設定していたところ、当日はあまりのアクセスにサーバーがダウン。以降、アクセス数は落ち着きを見せつつ、ダウンロード数は累計3万に達しているのに加え、プレイヤーの何人かは、新型コロナ禍が明けたら絶対にいくと連絡をくれたと柴坂氏は嬉しそうに答えた。

各地域における積極的な姿勢が独自のノウハウの蓄積とご当地ゲームの発展につながる

 このようにご当地IPは冒頭で示したところの類型A、B、またはそのハイブリッド型となる傾向にある。その特徴は多様性だ。完全に内部で開発する場合はもちろん、外部に委託する際も関係者が地域の特産品などの特徴的なものを事前に伝え、議論を重ねたうえでリリースすることが出来れば、たとえゲームそのもののつくりがオーソドックスなものでも、ゲーム内のアイテムや魔法攻撃、モンスターなどに、これらの特産品をモチーフとして取り込むことで、地元の人ならクスりとさせられ、外部の人にとってはそれらがこのゲームのユニークなものとして捉えられる可能性があるのだ。結果的に各社各様の施策が、ご当地ゲームというジャンルにおける取組の多様性につながっている。さらに重要なのはこのプロジェクトに取り組んだ人たちが総じて、それぞれのプロジェクトに手ごたえを感じており、展望も明るいという点だろう。例えば、香川県丸亀市観光協会も柴坂氏は、もともと、12人の姫のプロデュースを依頼した際は、二次展開についてメロンブックスに容認することを条件に先方にデザイン費は負担してもらったこともあり、ゲームでの認知度拡大を契機に本格的なメディアミックスが展開出来ればと語っている。

 井桁屋の場合、2021年初頭から地域活性化を目的としたRPGの可能性について示す「地方創生RPG」というサイトを立ち上げ、より積極的に自治体のニーズに対応するべく動きを速めている。「様々な自治体やベンチャー企業との連携で実現したゲーム制作のノウハウをビジネスモデルとして整理しました」と高久田氏。その後の反応も上々のようだ。「自治体もそうですが、社員訓練用のRPGや教育のゲーム化という点でも引き合いをいただいています」(同氏)。

 このように関係者自体がモチベーションを持って次への展開を望んでいること自体、これらの施策が有効に機能している証左と言える。IPは技術というよりは生き物に近い。作り手のモチベーションや強烈なビジョンの先にIPとしての「存在としての強さ」が生まれ、それを中心に事業展開におけるノウハウの蓄積と「次への戦略」が生まれることになるからだ。



※1 福田一史、中村彰憲、細井浩一「コンテンツ活用型地域振興の類型化に関する比較事例研究」 「立命館映像学」 (3), 71-87, 2010

※2 大分合同新聞「鶴崎商店街を女児が疾走! 携帯電話のゲームに登場」
(2006年5月4日にアーカイブされたサイト)

※3 公式サイトのアーカイブ(2012年1月13日)に基づく

※4 伊藤克彦「由仁町――農業体験ゲームで町PR、担い手育成もめざす(地域発未来へ)」「日本経済新聞 地方経済面 北海道」(2010/08/31) :p1

※5 建国レジェンド公式JAPRO実績ページから 
 
※6 2021年4月2日の電話インタビューに基づく

※7 Xeen及びSkeleton Crew Studioの開発実績に基づく

※8、9 「「ぐんまのやぼう」の開発者・RucKyGAMESさんにお話を聞いてきました!(前編)」「スマホト.jp」

※10 【個人開発者のやぼうとげんじつ】第5回:比類なき才能と配信力“RucKyGAMES”

※11 地方創生RPGの事例については、DiGRA 2020での小野憲史氏(東京国際工科専門職大学)による論文が詳しい。小野憲史(2021)「地方創生ゲームの現状と展望」「日本デジタルゲーム学会第11回年次大会予稿集」:pp113-116

※12 2021年4月9日の電話インタビューによる。

※13 地方創生PRGの可能性 ー 有限会社井桁屋代表取締役・高久田洋平さん ー 埼玉県さいたま市の地域活性化を考える勉強会 第11回

※14 2021年4月2日の電話インタビューによる

※15 石巻市地方創生RPG「キズナファンタジア  海辺の国の大聖典」

※16 京都物語型タワーディフェンスゲーム「京刀のナユタ」にて、現実の京都と連動した「京刀イベントスポット」機能を公開!

※17 宇治市観光アクションゲーム「宇治市~宇治茶と源氏物語のまち~」を制作

※18 2021年4月2日の電話インタビューによる

※19 第1回 宇治市のゲーム やりこみ選手権(結果発表)

※20 2021年4月3日の電話インタビューによる