中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編

立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!

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【ブログ】ポノス、Happy Elements、テクロスが挑む、コロナ禍における産学連携の新しい取り組み

2020-08-06 14:00:00

ポノス、Happy Elements、テクロスが挑む、コロナ禍における産学連携の新しい取り組み

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▲オンライン・インターンシップは配信機材をポノス本社からつなぐ形でおこなわれた。


 新型コロナが全世界において猛威を振るう中、アーケード施設などのようなロケーション・ベース・エンターテインメントがその対策に追われる一方で、家庭用ゲーム機向けゲームやゲームアプリなどは、インドアエンターテインメントの王道コンテンツとして癒やしや、ささやかな楽しみを提供する数少ないコンテンツとして享受されてきた。このように、なんとか厳しい環境に対応してきたゲーム業界だが、それでも苦境に立たされざるを得ないのが人事関連の活動であろう。実際、筆者研究室の学生の間でも、とりわけ2020年3月~4月ごろは会社説明会が中止になってしまったり、学生の知人が内定を取り消されてしまったりする状況にも遭遇したという。

 このような中、『にゃんこ大戦争』などで知られるポノス、『あんさんぶるスターズ!!』などで知られるHappy Elementsならびに『神姫PROJECT』で著名なテクロスが、京都の立命館大学映像学部と連携し、オンラインによる合同インターンシップをおこなった。ゲーム業界に興味のある大学2年生及び3年生を対象におこなわれたプランナー職ならびにプロモーション職に関する一連のイベント、「のぞいて!オンラインターンシップ from京都」がそれにあたる。

 「のぞいて!オンラインターンシップ from京都」はインプット編とアウトプット編で構成され、インプット編では2020年7月12日、ポノス本社にある、「スナック歩乃寿」(とよばれるお酒やドリンクなどを気軽に飲める休憩施設)にて、前述の京都に所在するゲームスタジオ3社に属する、ゲームプランナーやプロモーション担当者がZOOMで参加している学生からの質問に答えるという形でそれぞれの職種について語った。

 さらにアウトプット編はゲームプランナー職の希望者とプロモーション職の希望者に分かれ、プランナー職のオンラインインターンシップは2020年7月26日に、プロモーション職向けのインターンシップは2020年8月2日に開催された。本稿では、これらをまとめて紹介しよう。

ZOOMで初対面の学生たちがチームとなり、現役プランナーをメンターとして課題に挑む

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▲左から浅野氏、堀内氏、川本氏


 2020年7月26日に開催されたプランナー職向けのインターンシップでは「複数人で遊べるはやるゲームを企画せよ」というお題が提示された。ここからインターンは3グループに分かれ、各グループにポノスからは浅野有加理氏、Happy Elementsからは堀内征匡氏、そしてテクロスからは川本哲也氏と現役のプランナーがメンターとしてつくという形でおこなわれた。なお、ポノス担当グループは「大学生向け」、Happy Elements担当は「中高生向け」そして、テクロス担当のグループは「普段あまりゲームをしない大人向け」とターゲット層を分けたうえで企画立案が進められた。これにより、アイデアにバラエティが生まれるのを期待してのことである。メンターは定期的にアドバイスをしながら、立命館大学映像学部の学生たちの手によっておこなわれたライブ配信にもゲストとして参加し、学生たちが投げかけた質問に答えていった。

プランナー職はプログラミングスキルは必要なくともゲームに対する情熱は必須!

 まず「出勤から退勤までの流れは」との質問だがこれについては、一般的なデスクワークに近いと皆が口をそろえた。ただ、タスクができてないときやリリース直前などはやはり通常時間外勤務もあるとのこと。だが、「どんなに遅くても22時をまわることはない」という点は皆が口をそろえた。また職場の雰囲気も「残業時も仕事が終わった後に一緒に食事にいくぐらい仲が良い」(川本氏)とのことなので非常に和やかな雰囲気で仕事をしていることが明らかとなった。

 また、「企画書作成時におけるKPI(主要業績評価指標)を如何に示すか」との質問に対し、ポノスの浅野氏は「中間目標」であるとし、対象のゲームに定められた目標にどう到達するのかを示すのが重要であるとした。また、Happy Elementsの堀内氏も「数値目標」としたうえで、どのくらいの人が、どの程度の時間プレイし、何人がゲームを続けるかまでを示す必要があるとした。

 これに対し、テクロスの川本氏はまず、対象となるゲームが売り切り型なのか、基本無料で一部アイテムを販売するのかといった基本仕様で指標も変わってくるとしたうえで、それらを理解したうえで数値を示すことの重要性を説いた。

 この他に就職活動における戦略についてもディスカッションがおこなわれている。例えば、面接時、コミュニケーション能力以外に必要な能力はとの質問に対しては、「注意力」と浅野氏。プランナーは、様々な部署の話を聞いて、取りまとめることが多いため、集中しながら、状況を把握することが重要であるとした。一方、堀内氏は、「基本的な部分ができているか」を自問する必要があると回答。これは、面接官などとのやりとりなど、様々な要素が含まれる。これに対し、川本氏は「コミュニケーション」としてうえ、「コミュニケーションが取れない」とは「正しく質問に答えられないこと」だと定義し、面接官からの質問が何を意図して提示されているかをしっかりと考えたうえで答えることが重要だとした。また、全員共通の解答としてあがっていたのが「やる気」。それは誰も「やる気」や「熱意」が無い人とともに仕事をしたいと思わないからと答えていた。

 なお、学生時代にどの程度ゲームをプレイしていたかとの質問に対しては、浅野氏は「衣食住を犠牲にするぐらいハマっていた」と回答。Happy Elementsの堀内氏は「年間、ジャンルを問わず100本~200本」と回答。しかもすべてのゲームをプレイすることは不可能なため厳選してもこれだけの数をプレイすることになったと答え、参加者を驚かせた。プレイしたゲームはもともと好きだったコンシューマ向けゲームだったという。また、じっくりプレイするタイプで、チュートリアルだけでも300時間は費やしていたとのこと。一方、川本氏は、「家にいる時間の全てをゲームに費やした」と回答。PCでのプレイをメインに過去の名作などからプレイしていたという。ということで今回、メンターについた現役プランナーは全てバリバリのゲーマーであることが明らかとなった。

 また、プランナーになるうえでプログラミングに対する知識は、少なくとも新人として入ってくるうえでは必要性は低いとの見解が示された一方で、ゲームに対する知識は重要であると皆が答えていた。例えば浅野氏は、様々なジャンルのゲームを遊び、何が楽しいか、苦手か、好きなゲームをどう企画に活かしていくかを考えることが重要であるとした。これについては堀内氏も、「嫌いなジャンルがあったとしても分け隔てなくプレイし、幅広くゲームに対しての理解を深めることが重要」と答えた。川本氏もこれらの必要性に同意であると答えた。

 このようなトークショーが時折進む中、学生たちはグループや企画立案に取り組み、15時からはメンター及びオンラインによる視聴者のもとに、自身の企画案についての発表がおこなわれた。企画案についてはその企画に至る背景や、ゲームメカニクスにおける訴求点などしっかりと練りこまれた案が提示された。質疑応答時は、各メンターから質問が投げかけられたが、これらについても的確に解答していた。

プロモーション編では昨今の時代を感じさせるテーマに6人の学生たちが挑んだ

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▲左から富山氏、八代氏、石橋氏



 一方、2020年8月2日におこなわれた、プロモーション職のオンラインインターンシップも同じ手法がとられた。課題は「子どもにゲームを遊ばせるということに対してハードルが高い、親世代にどういうゲームを扱ってどうプロモーションしていくか」といった時勢を反映したような内容。これに6人の大学生が一丸となって取り組んだ。今回協力した3社から、ポノスからは富山美波氏が、Happy Elementsからは八代慎也氏、テクロスからは石橋敬三氏が参画した。それぞれ宣伝、プロモーション関連の部署に所属している。このインターンシップにおいても学生たちが企画立案に取り組んでいる中、ゲーム業界におけるプロモーション職についてライブ配信がおこなわれた。

プロモーション職は様々な部局の人たちと仕事ができることが魅力

 まず業務全体の質問として「プロモーション職の魅力」について語られた。ポノスの富山氏は、「いろいろなポジションのひとと話すことができる」ことをあげた。同社におけるプロモーション業務は比較的開発チームと近いところでおこなわれているのに加え、マーケティングは別部門になっていることから、様々な人たちと話し合いながらゲームを推し進めていくことが楽しいと感じているとのこと。Happy Elementsの八代氏は「幅広くいろいろな案件に関わることができる」ことが魅力的だとし、その具体例として、動画制作やCMづくり、そしてゲーム専門誌での新規タイトル紹介などを挙げた。

 テクロス石橋氏もこれらの意見に賛同しつつ、自身として最も魅力を感じる点は「奥が見える」という点。もともと別の業界から転職してきたということもあり、テクロスのプロモーション職に就任してから広告の見方ひとつとっても変わってしまったとのこと。たとえば、「ランキング1位」といったうたい文句が広告に出ていても、これが1日を指しているのか、数時間だけ指しているのかという点も注目するようになったとのこと。「職業病的に分析してします」と石橋氏。

 また、限られた時間で会議をおこなう秘訣についても示された。まず、ポノスの富山氏は「ゲームの企画会議では話が膨らみがち」としたうえで、「目的を見失うと本末転倒なので、引き算的な考え方を導入するべき」と答えた。「コアな部分は残し、その他は可能なかぎりそぎおとし、シンプルにすると話し合ってきた内容が明確になる」と富山氏。

 八代氏は、「会議の目的を明確にすること」と回答。同氏によれば、会議は主に3つの目的で行われる傾向にあり、それは、(1)可能な限りたくさんのアイデアを出すため、(2)何らかの決定を下すため、(3)情報を共有するため、であると分析。そのうえで、多くのアイデアを出すことが目的なのであれば、自由に話し合いができるような環境を整え、情報を共有する場合は決められた時間内に何を共有するのかを明確にすること、何らかの決定を下すのであれば、何を決定するのかを明確にする必要があると述べた。

 一方、石橋氏は、進行役の重要性を説く。今回はインターンシップなので、冒頭、皆、誰が進行を担当するのかでとまどっていたが、時間内に話し合いをするのであれば、早めに進行役を決定し目標の絞り込みが必要と答えた。

 なお、コロナ禍となり、リモートワークが重要となった現在に意識していることに関し、富山氏は「あいさつをしっかりすること、タスクを明確に示すこと、また業務を終了する際も当日の成果を細かく報告し、チャットで共有するようになった」とのこと。これにより、お互いの職場としての距離が離れていても状況が一目で分かるのに加え、業務終了時の内容が共有されることで、退社時間も分かるようになったのが良かったと答えた。

 これについては、八代氏も賛同し、朝は、担当しているゲームの営業指標を確認しているのに加え、当日のタスクについてはしっかりとチェックするようになったとのこと。

 また、石橋氏は、朝のニュース番組を確認しているという。これによって日本の社会がどのような状況になっているのかを確認することができるからとのこと。これらをふまえつつ、通勤時は自社のマーケティング的なことをさらに調べ、日々の業務に活かしていると答えた。

 さらに、プロモーション職として重視していることに関し、富山氏は、「思っていることの5倍ぐらい時間がかかると考えるようにている」と回答。これについては、ゲームデザイナーは非常に手をかけてゲームを開発しているため、概算を図る際もクリエイターに寄り添いながら考えるようにしていると答えた。

 八代氏については「本来の目的から離れないように努力する」とし、企画を考えている中で様々なノイズが紛れ込んでくるが、目的から漏れていく傾向にあるので、常に目的が何かに振り返って考えるようにしているとのこと。

 また、石橋氏は、「アンテナをはる」と回答とした。マーケティングやプロモーションにおいて必要な情報を日々得る努力をし、休日でもアンテナをはることが重要と答えた。

 また、「好きな事を仕事にする」ことに関し、「もう一度、仕事先を選べるならもうしたくない」と富山氏、決して、現在の職場環境に不満があるわけではないことを強調しつつも、ゲームはキャラクター設定やゲームバランスなど緻密に練られている事実を、本職を経て改めて学んだとし、開発プロセスに対して理解を深められるのは楽しいもののもう一度就活をできるのであれば、別の職種を選び、ゲームは遊ぶ側に回りたいと答えた。

 八代氏は仕事としてゲームに関わるといことは、ゲームの楽しさとは直結していない項目についても仕事としてやりとげなければならないとしたうえで、「遊びとしてやることと仕事としてやることの間にしっかりとした線引きが必要」と答えた。

 石橋氏の解答は「覚悟」。この理由として、もしゲームを好きなひとがゲーム以外を仕事に選んだ場合ゲームは単なる趣味になるので、普段つらいことがあってもゲームに癒やされることもある。だが好きなことを仕事にすると切り替えがあいまいになってしまうことがデメリットであると答えた。だが、好きなことに長時間関われることとなるのがメリットでもあるとし、だからこそ、好きなことを仕事にするには「覚悟」が必要となるとあらためて強調した。

 このようなトークショーを経て15時からいよいよインターンによるプレゼンとメンターによる講評が行われた。「子どもにゲームを遊ばせるということに対してハードルが高い、親世代にどういうゲームを扱ってどうプロモーションしていくか」という課題に対し、学生チームはコミュニケーションを鍵とした、企画案を提案してきた。さらに、プロモーションプランとして、教育機関との連携や、忘年会でのフリープレイといった案を提示し、ハードルの高さを下げるための施策が示された。こういった提案に対し、ゲーム企画については素直に評価しつつ、プロモーション案については高く評価した案でも具体的な展開策が練られてない点を明確に指摘するなど現場の人たちならではの適格なフィードバックがおこなわれた。

参加学生に対しては現役プランナーもプロモーション担当も高く評価

 イベント終了時に、メンターにこのインターンシップ企画について改めて確認したが、一様に高く評価していたのが印象に残った。まず、1日インターンという短時間でグループとして企画を考えるためそれぞれが協調しあいながら解を導きだしていた点を評価していた。また、そもそもこのような企画を探し出し、参加したこと自体を評価した方もいた。また、全員が対等に意見をぶつけ合っていた点も好評価だった。

 参加した学生からも現場の第一線で活躍している方からメンターとしてアドバイスをいただいた点や、企画を考える際、誰目線でどう伝えるのかという点を改めて学べたことが勉強になったとコメントする学生もおり、「オンライン」、「ワンデー」といった制約の中でもそれぞれの学びがあったことが明らかとなった。

 さらに、改めて言及したいのはこのイベントを取りまとめたポノス 管理部の桜木慎也氏と、マーケティング担当の村山章氏の学生引率力だ。オンライン・インターンにおける企画内容やライブ配信、プロモーションなどは全て立命館大学映像学部の学生が担ってきたが、その運営について裏で支えてきたのがこの2名だったからだ。もともとは「カジュアルな業界研究型のリアルイベント」を構想していたが、新型コロナ蔓延で状況は一変。学生との会議をすべてオンラインで実施せざるを得なくなった中で、就活生や就職志望者がより切実な状況にあるという事実を学生が察知し、それが企画の具現化への契機となった。

 だがその実現化を進めるうえで、前述の2人による現実的且つ実現可能なアドバイスがなければこの企画実現には至らなかっただろう。桜木氏と村山氏のゲーム業界での経験と学生が察知したニーズがしっかりと融合されて今回の企画へと落とし込まれたのだ。そのような視点から改めて学生スタッフの様子を見ると、4か月にもわたり企画立案から実行まで、2人の強力なメンターのもとおこなった学生たちにとっても、本イベントは唯一無二の貴重な経験になったに違いない。コロナ禍という状況の長期化が決定的となる中でも、学生や企業人の不断なる努力と積極的な協力体系のもと、新たな気づきや付加価値の萌芽が生まれていく。今後のそれぞれの活躍にはこれからも注視していきたい。