中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】京都ミライマツリ2019に見るリアルタイムな温故知新とアンビエントに溶け込んでいくゲームたち
2019-05-16 17:30:00
ここ数回、なぜかメディアアート的インスタレーションのリポートが続いている。今回は、2018年11月に耐震補強工事を終え新開場した、日本最古の歴史と伝統をもつ劇場として知られる京都・南座にて、2019年5月12日に開催がはじまったばかりの京都ミライマツリ2019 Supported by SUNTORYについてフィーチャーする。
京都の南座と言えば、歌舞伎の公演をする場所として400年以上もの間、知られてきただけに、どうしても歴史や伝統というイメージが先立ってしまう。それが観客層の固定化につながってしまうのは疑いようのない事実だ。
そういった、いわゆるステレオタイプを破っていこうというのが今回の試みだと言えるだろ。そして、その中心に鎮座するのがプロジェクション・マッピング、AR、インタラクティブ・インスタレーションといったデジタルテクノロジーの数々なのだ。
伝統的な南座を最新デジタルテクノロジーが飾ることで21世紀ならではの「お祭り模様」が実現
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▲左は、Hyper射的、右は、YO-YO釣り |
同イベントは、鴨川の「納涼床」をイメージした昼マツリ‐HIRUMATSURI‐(11時~17時半まで)と、DJが多様なビートを流す中で、グルーブに酔う夜マツリ‐YORUMATSURI‐(18時半~22時まで、金土日は23時まで)で構成される。
だがそのいずれにおいても共通しているのが、食とデジタルエンターテインメントを楽しむ空間となってといるということ。例えば、屋台で展開されている一般的なお祭りでもおなじみの遊びの数々は、全てデジタルテクノロジーで工夫がこらされた仕掛けがあるのだ。これらは全て空間全体を演出するクリエイティブカンパニー、NAKED Inc.によって企画・演出が行われたもの。
例えば、「HYPER射的」はデジタル投影されたオブジェクトに、素手を銃のようにして構え、その指先をオブジェクトに向けて「バン!」と叫ぶと射的よろしくそのオブジェを倒すことができるといったものだ。
また、「Oh!メーン」はスマホを所定の場所に置き、数々のお面が並べられているデジタル屋台の中ですいているところに自分の顔を入れて撮影すると、画面が「お面」から動的に転換し「縁日のわたあめ」や「金魚につつかれるシチュエーション」を始め、様々なコミカルなシーンに自分の顔をはめ込めるといった仕掛けのインストレーションだ。
さらに「YO-YO釣り」はミニプールの中に入っている金具付きのボールに針をひっかけてヨーヨーを「釣り上げる」と、「Yo! Yo!」という掛け声とともに上部のミラボールから光が投射されるというもの。そのいずれもちょっとした遊び心が入っている。お祭りらしいたわいもない遊びとデジタルが自然に融合している一例と言えるだろう。
歌舞伎×AR、南座×クラブシーン、様々な連鎖が新たな体験を生み出す
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▲イベント中、楽しむことができるグルメなメニューの数々 |
もちろん、ARも楽しむことができる。「歌舞伎×AR石川五右衛門」はHoloLensを被ると、そこには片山愛之助氏演じる石川五右衛門が。これまでも様々なMR/AR系コンテンツは楽しんできたが、伝統的な歌舞伎をこのような形で体験できるとその驚きもひときわだ。
前述のとおり、屋台と言えば、食。だが、これも由諸正しい南座ならではの仕掛けが。HANA吉兆、楽仙樓、イル ギオットーネ、京都 祇園・侘家古暦堂など京都で名をはせる食べ処による「屋台」が軒を構える。来場者は様々なゲームを楽しみながら、小腹がすいたら料理をつまみにいき、床席や2階座席で御飯を食べながらメインステージで定期的に映し出される幻想的な「滝ジェクションマッピング」を楽しむこともできる。
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▲夜マツリの雰囲気はまるでクラブ |
これが夜マツリになると雰囲気がガラッと変わる。
中央に配置されるのがDJブース。そこから、最新鋭でヒップなサウンドが常に流されるのだ。来場者はそのグルーブに酔いしれながら、まるでクラブのような雰囲気を味わうことができる。中央には、観客が集まって盛り上がるための空間があるが、南座はジャンプが禁止されているため、ビートに対するノリもかなり違ってくる。もしかしたら南座発のジャンプレスなグルーブが新たなスタイルとして生まれてくるかもしれない。
ということで、かなり「攻め」に出た伝統文化の聖地、京都・南座。同イベントは、5月25日まで(夜マツリは24日まで)開催中なので、足を運んでみたらどうだろうか?