中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編

立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!

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【ブログ】UNREAL FEST WEST、京都で開催。700人が見た、UE4の最前線とは!(その2)

2018-05-11 13:30:00

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エピック・ゲームズ・ジャパンの河崎高之社長も登壇

 京都コンピュータ学院 京都駅前校にて4月21日、ゲーム開発用ミドルウェアUnreal Engine(以下、UE)に関する国内最大規模のカンファレンス、“UNREAL FEST WEST 2018”が開催された。京都で開催されたのは昨年に続き、今回で二回目。来場者は700人にも上り、多くの人々が、終日にわたっておこなわれた全7セッションにもわたる講演に対し熱心に耳を傾けた。今回はその中からいくつかを紹介する。

(その1)はこちら。

『ドラゴンボールファイターズ』に見るUE4で実現したアニメ表現の最適化

 エピック・ゲームズ・ジャパンの講演に引き続き、株式会社ロジカルビートのテクニカルディレクター家弓拓郎氏と、同プログラマー笹目浩貴氏が登壇し、『ドラゴンボールファイターズ』(発売元:バンダイナムコエンターテインメント、開発元:アークシステムワークス)の制作事例が語られた。開発元のアークシステムワークスでは『ギルティギアイグザード』(以下、『GGXrd』)の際から、Unreal Engine3(以下、UE3)を採用しており、 『ドラゴンボール ファイターズ』では、UnrealEngine4(以下、UE4)を採用してゲーム開発に臨んでいることから、UEにおいてアニメ的表現をつくりあげるエキスパートということが出来る。講演では、『ドラゴンボール ファイターズ』開発時に、UE3で培ったアニメ的表現に関する技術を如何に移行させたのかについて語られた。

UE3で培われた技術とノウハウをUE4へ

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左から
株式会社ロジカルビートのプログラマー 笹目浩貴氏
同テクニカルディレクター 家弓拓郎氏

 まず、この技術的ノウハウの移行は、比較的にスムーズに行われたとのことだが、実は、『GGXrd』プロジェクトが終了してからしばらくの間、UE3で培われた技術をUE4へ移行する実験を行っていたというのだ。これが『ドラゴンボール ファイターズ』開発の際にも有効だったのは言うまでもないだろう。実際、本格的に技術の移行を進めて1ヵ月から1.5ヵ月でそれなりに格闘ゲームの骨組みが動くようになったという。

 ただ、今回、特に意識したのが『ドラゴンボール』シリーズならではのアニメ的表現。もともと『ドラゴンボール』シリーズに対して愛情をもった開発スタッフに恵まれていたこともあり、同作アニメでの表現に可能なまで近づけるための工夫が凝らされたという。まず、シェーダーだが、UE内製のライティング機能はほぼ使わずに、Unlitマテリアルで、計算結果をEmissiveに接続し、それをパラメータ管理する手法を採ったという。ポイントライトもすべて自前での計算だ。ライトの向きもパラメータとし、マテリアルパラメータに設定して管理した。これにより、開発者の意図通りにライトをつけることが可能となった。例えば、格闘対戦ゲームの場合、2体のキャラクターを左右対象に表示する必要がある。だが通常のライトでは、光源のシミュレーションでは陰影を左右対称とするのがほぼ不可能だ。だが今回の措置を講じることで、それぞれのキャラクターに個別の向きでライトをあてるといった特殊な仕様にも対応させることが出来るのだ。

 なお、カットシーンのライティングは、よりドラマチックにすることを意識し、デザイナーによるライティングの演出をそのまま使っているとのこと。その一方で、エネルギー弾の影響で照射される光の具合が変わるといったエフェクトにおけるポイントライトは光源情報をゲーム上で管理している。光源はパーティクルのColor OverLifeモジュールから発生できるように拡張し、キャラクター側から見た最優先の光源を探し出しそれをマテリアルパラメータに設定した。

独自の手法でアニメっぽく且つ立体感のある砂煙を実現

 一方、シェーダーについては、計算した法線に基づきアウトラインメッシュの押し出しをおこなっている。これによって、キャラクターモデルにおける細部のパーツまでアニメ的なアウトラインを表示することが出来た。

 この他に主な砂煙などの表現には連番メッシュを採用した。これは、連番でメッシュを切り替えることでアニメーションを表現する方法だ。個別のメッシュは3Dで表現されていることから、カメラの動きに伴う描画角度の変化をリアルタイムに反映出来るからだ。これで砂煙などが立体的に表現できるようになった。UE4では、この表現をSubImage Indexを改造して実現している。

 また、アニメにおいておなじみの戦闘中における地形崩壊も、ゲーム中に表現しているが、これは、あらかじめ隆起させた地面を作成しておき、気弾やエネルギー弾などがあたったところにマークをつけ、その部分のみを隆起させたメッシュを表示し、マークされていない箇所の頂点を平たんにしてブレンドしている。このように、ゲームの状況に応じて特定の部分をターゲットにするのは、ターゲットとなったワールド座標をCanvasの2D座標と変換して色を塗ることで実現した。また、隆起させる方法としてはマテリアルでレンダーターゲットをテクスチャとして参照して実現している。 

 なお、イベントシーンの作成は『GGXrd』の開発された独自のスクリプトシステムを『ドラゴンボール ファイターズ』でも活用しているとのことだ。このように、UE4の様々なフィーチャーとUE3の時代からが蓄積してきた、アクションアニメ的表現のゲーム上での再現や対戦格闘ゲーム開発に関わる独自技術が見事に融合してはじめて、『ドラゴンボール ファイターズ』のような作品が生まれるというのが明らかとなった。

日本のお家芸的技術もUE4を活用することでより効果的にゲームに実装が可能に

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700人もの受講者で会場が熱気に包まれる

 これら、本稿で示した講演の模様からも明らかなとおり、UE4は現在、従来日本のお家芸と思われてきた、格闘ゲームにおけるアニメ的表現や、トレインシミュレーター型業務用筐体など実に多様な用途に対して活用されている。またこれらの利用方法はUE4に自社独自の手法をうまく組み合わせることによってコンテンツ開発における高度な最適化が行われていることが明らかとなった。この適材適所による汎用型ツールと自社ツールの組み合わせはより大規模なプロジェクトを日本で実現するうえでの方法として定着していくことだろう。

 そして、こういった手法がより多くの企業で実践されている背景に、エピック・ゲームズが日本に拠点を構え、技術サポートなども臨機応変に対応できる状況にあることも無関係ではないだろう。今後の日本企業による、さらにダイナミックなUE4の活用方法に期待したい。

 なお、本稿は主に大規模プロジェクトに関する講演を取り扱ってあつかってきたが、当日は、UE4で運命を切り開いた個人クリエイターや、インディーズ・スタジオによる発表もおこなわれた。これらについては、5月12日、13日に迫っているBitSummitなどと絡めつつ次回リポートする。