中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】京都国際マンガアニメフェア2016で見つけたゲームたち
2016-10-13 16:30:00
TGS会期中の9月17日~18日の間、京都ではコンテンツに関する祭典、京都国際マンガアニメフェア2016(京まふ2016)が開催されていた。今年で5回目を迎える同イベントは、期間中に45000人弱を動員し、西日本では「マチアソビ」に続く動員数を誇るイベントへと成長している。そのような事もあり、ここ数年は、イベントに冠されているマンガやアニメの他にゲームアプリや、ゲーム企業による出展も進んでいる。そのよう中で今回、筆者が会期中に注目したゲーム的コンテンツについてフィーチャーする。
京都市公式アプリデビューやライトノベル展開など活躍の幅を広げる「地下鉄に乗るっ!」キャラクター
まず注目するべきだったのは、ここ数年、京都を中心に話題となっている、イメージキャラクター太秦萌を中心とした「地下鉄に乗るっ!」をフィーチャーしたアプリの登場だ。
京都市公式アプリ「Hello Kyoto」は京都市広報局がプロデュースした、京都市に関わる、行政、イベント、生活、観光、交通などあらゆる情報を網羅したポータルアプリ。
より若いひとに京都について関心をもってもらおうと企画したのが、「地下鉄に乗るっ!」のイメージキャラクターを主人公にしたコミックの掲載。2016年のゴールデンウィークごろからはじまったという。同キャンペーンで誕生した初期キャラクターである女子高生の3人、太秦萌、小野ミサ、松賀咲を主な登場人物とした4コママンガで、現在9話まで展開されている。
制作は、京都精華大学の学生がおこなっているということで、人材育成にも一役買っているようだ。一方、きょうと動画情報館には太秦萌の姉という設定で2015年により新たなに紹介された太秦麗の声優決定記念限定ムービーが掲載され、こちらも好評を博しているという。
さらに講談社からはこれまで、「地下鉄に乗るっ!」のキャラクターを主人公としたライトノベルが発売されている。1冊目の売上も好調であったことから9月にその第2弾が発売された。
京都を中心に販売拠点を持つ大垣書店の担当者によると、同作の販売は概ね好調であるという。過当競争と成長率の鈍化に伴い淘汰の時期へと突入したライトノベルジャンルにとって、本作は風穴をあけられるのではと期待を見せる。
この他にもクラウンドファンディングサイトから1000万円以上の募金を得た魚雷動画は、5分程度のアニメ作品を制作中だ。これまで 15秒間のコマーシャルアニメに限定されていた同キャラクター群にとって、ストーリーを含む(と想定される)短編がリリースされるのは今回が初めてとなり、ファンの注目を集めている。京都発、京まふをきっかけにアニメファンを中心に認知度を高めた同作がさらにどう成長していくかに期待がかかる。
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プロダクションI.Gが提供した、目下究極とも言えるVR映像体験
数ある、アニメの中で、唯一、VRコーナーを展開していたのが、プロダクションI.Gブースだ。同ブースでは、Oculus Rift DK2を用いて、短編映像『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』(以下、『攻殻機動隊VR』)を展開。
筆者は、この展示をTGS2016でも見かけたが、長蛇の列となっていたため、体験が出来なかった。京まふ2016においても予約がいっぱいになっていたものの、最終日の午後になんとか体験することが出来た。
プロダクションI.Gはバンダイナムコが10月10日までお台場で展開していた、VR ZONEの『アーガイル・シフト』においても世界観やストーリー設定で協力しているなど、アニメスタジオとしては、VRに対し積極的に取り組んでいる。そして、まさにVR世界と親和性の高い「攻殻機動隊」をテーマとしたVR体験を開発していたのだ。
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驚いたのは、実装時で活用した、ハードが開発ツールであるOculus Rift DK2だったのにも関わらず、体験としては、仕様がより高い商品版Riftとそこまで動画品質における違いを感じなかったという点だろう。冒頭、いきなり目の前で、草薙素子の全身義体が構築されるシーンからはじまり、テロリストが操るメカとの戦闘シーンが従来の映像体験では考えられないほど肉薄する形で眼前に展開された。
わずか4分弱の映像体験でありながら、360度確認できるリアリティに圧倒される。ゲーム的インタラクティブ空間ではないものの、目線、顔、首を動かしても視線に世界が広がるということで、観客はインタラクティブに空間と接することが出来るのだ。一般的なゲームスタジオが開発するVRコンテンツとは違いゲーム的なインタラクションはないものの、観客の視点を一点に注目させる工夫や、ダイナミックなズームインやズームアウトによる没入感溢れる絵づくりというのはまさに「映像体験のプロ」ならではの演出であり筆者がこれまで体験してきたVR ZONEやその他のゲーム体験とは一線を画すものであった。
これまでHDMを活用したリニアな映像体験は、VRシアターで展開される劇場での鑑賞さながらの没入間というものは売りだったが、今回の作品はその一歩先、ゲーム的リアリティとVR型映像体験の中間をいったような体験であり、そのような意味でも次世代を感じさせる体験であった。本作は現在もプロダクションI.Gが渋谷マルイにて運営する、I.Gストアで体験できる。しかも、専用のVR4Dシステム搭載型ボールチェア「TELEPOD」で体験するため、より映像世界に没入することが出来るようだ。
京都でも花開くゲームアプリ/VR
以上、京まふでも実感できた、ゲーム的コンテンツをひととおり紹介した。この他にも京都に拠点を構えるアプリ会社、Happy Elementsなども大きなブースを構え、そこに長蛇の列がならぶといった状況も確認でき、ゲーム関連のプレゼンスがより一層高くになっているように思われたが、これらについてはいずれ取材を重ねていきたい。
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