中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】日本の優れたIPを中国へ~アクセスブライト柏口之宏氏
2016-06-21 18:30:00
『ファミ通ゲーム白書2016』がいよいよ発売された。今年も筆者は、中国市場と新興市場を担当したが、どうしても誌面の関係で書ききれなかった部分もある。そこで、ここから数回にわたり、その中でもとりわけ重要だと筆者が感じたキーマンの言葉をお伝えしたい。今回は、アクセスブライト代表取締役、柏口之宏氏の談だ。同社は、日本のコンテンツ企業の優れたIPを中国展開する企業。現在は、中国の優れたコンテンツを日本に紹介するというビジョンとともに『西遊記ヒーロー・イズ・バック』の日本国内展開を目下準備中だ。そんな柏口氏に現在の中国市場について話を伺った。
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『ロボットガールズZ』ローンチに向けてあらゆる手を尽くした2015年
当社は2015年『ロボットガールズZ』の本格的展開を中国国内で進めた。同年夏にクローズドβ、10月29日にオープンβをおこない、2016年1月18日からAndroid版の配信を、1月28日からiOS版の配信をスタートした。
本作は中国において主流の横スクロールアクションに豊富な格闘要素を盛り込み、打撃感を増してより爽快なバトルを可能にした。IP面でも同ジャンルのゲームと比べて優位だと言える。現在ユーザーからは「バトル以外のお楽しみ要素を増やしてほしい」、「登場キャラクターを増やしてほしい」といった要望が出ている。『ロボットガールズZ』の登場キャラクターは往年のスーパーロボットをモチーフにしているが、その認知度は年齢層によって異なる。70年代生まれ及び80年代生まれの一部には『マジンガーシリーズ』に親しんでいるユーザーもいるが、全体からすると数はあまり多くない。当時中国ではテレビの普及もそこまで進んでおらず、多くの中国ユーザーは『ロボットガールズZ』で初めて『マジンガーシリーズ』に触れたというケースが多い。85年代以降に生まれたユーザーの多くは、『ガンダムシリーズ』を通じてスーパーロボット系に慣れ親しんできた。
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このような状況を踏まえ、我々は“ロボットガール”というコンセプトからスタートし、中国版Twitterで言われる微博や微信(wechat)などのソーシャルサービスや各メディアを通して、ゲーム及びアニメ『ロボットガールズZ』とスーパーロボット系との関係性を紹介してきた。本ゲームのメインユーザーの構成は、『マジンガーシリーズ』のファンを中心に、アニメ『ロボットガールズZ』のファンと“萌え擬人化”に興味のあるアニメファンを取り込んだものになっている。
中国において認知度向上を図るうえで重要なのがオフラインイベントだ。当社も2015年6月に上海国際会議センターでアプリ『ロボットガールズZ』発表会を開いてメディア露出、7月に上海新国際博覧センターで開催されたChina Joy及び同時期に開催されたCGBC中国ゲームビジネス大会で特別講演とラウンドテーブルを行い、ゲームユーザー及び業界関係者に弊社と弊社コンテンツに対して広く周知を図り、11月開催のComicup17ではコスプレ大会を開催、アニメファンに向けて本アプリの魅力を紹介してきた。
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一方、オンラインイベントやキャンペーンは、中国モバイルアプリで一般的に行われてきている販促キャンペーン、キャッシュバックキャンペーン、新規登録プレゼントキャンペーンなどに加え、知識クイズやキャラクター当てクイズなどのイベントを実施。このようなイベントはアニメファンのユーザーから特に評価が高く、広告やメディアの宣伝などから入ってきたユーザーはそれ相応の反応を示した。
ゲームデザインについてもアニメファンを引き付けるデザインを意識した。ゲーム内のキャラクターボイスは全てオリジナルアニメの声優陣が担当、これは本コンテンツの売りの一つであり、評価も高い。宣伝の中でも声優の名前やイメージを適度に強調することで、アニメファンを強く引き付けることに成功している。
なお、中国においては、『ロボットガールズZ』並びに続編『ロボットガールズZプラス』の双方が既に配信されているが、世界観・キャラクター設定は忠実にオリジナルを再現、ゲーム内でキャラクターが使う技に関してもアニメに登場する技をモデルにデザインし、ユーザーの情熱を掻き立てるつくりにしたうえ、東映アニメーション制作のムービーを豊富にゲーム内に組み入れ、“アニメの中で遊べる”ゲームにすることでアニメファンも取り込めるようにしているようにした。
2016年は中国のApp Store有料課金トップにランクインした『ロボットガールズZ』に加えサンリオキャラクターを利用したコンテンツも
有料配信を開始してからは、中国市場に合致したイベントを実施、勝利や栄誉を重視する中国ユーザーに合わせ、課金・競争・名誉の連動イベントなどを用意した。また課金イベントによってより強い力を手に入れたユーザーは、競争イベントで他ユーザーとしのぎを削り、ランキングを上げていき、高位になると特別な褒賞を得るといったシステムも考案した。このような競争はヘビーユーザー向けであり、大部分のユーザーにとってはあまり参加感がないため、我々は別途ユーザーコンテストイベントを実施し、ゲーム界におけるスター的位置付けのユーザーを選出。これにより、一般ユーザーの参加感を高めるとともに、ヘビーユーザーの栄誉感を強めるシステムを実装した。このような努力もあり、2月13日には中国のApp Store有料版で第一位を獲得するなど中国ユーザーの反応は良好だ。
なお、今後の展望だが、弊社は東映アニメーション様、サンリオウェーブ様との提携を非常に重要視しており、ビジネスを共に出来ることを光栄に思っている。従って、弊社は代価を惜しまず中国国内最高峰且つIPに対して真に情熱と愛情のある開発チームを選び出しハイクオリティの作品を作り出すことに尽力している。更に多いでは二週間に一度程度、定期的に版元様と連絡をとり、開発の進度や開発内容について意思の疎通を行い、ほぼ全てのデザイン内容及びビジュアル素材について版元様の監修を受け、開発の全段階で高い透明度を維持できるようにした。更に、ゲームの配信・宣伝に関しても、宣伝戦略、宣伝内容、宣伝素材選定などにおいて版元様の共同参与をお願いし、IPブランドの保護に努めている。
さらに弊社は中国映画市場にも注目している。2015年の累計興行収入は440億元を突破、前年比48.7%増で進んでおり、その後も2-3年は同様の成長が続くと言われている。
このような背景のもと、弊社は日本の漫画アニメ業界に対する理解を活かし、中国で最も有名な映画製作配給会社であるエンライト・メディアと提携、ハイクオリティな日本の作品を二次改編して中国に広め、両国の文化交流を促進するとともに、日本の漫画アニメ業界で培ってきた貴重な経験を中国の業界関係者に伝え、また日本の漫画アニメの素晴らしい内容を中国の観衆に提供するべく努めている。事実、エンライト・メディアと手を組み、手塚治虫先生の傑作『ブラック・ジャック』のドラマ化、映画化に向けて動き出しており、既にドラマ化の制作前期準備段階に入っている。この他、日中両国の文化理解を活かし、両国で人気を集める小説や漫画、アニメ作品に関しても、エンライト・メディア及び優秀なその他の映画制作配給会社と協力し、劇場用アニメ化や実写映画化などの共同制作に向けて順調なスタートを切っている。今後これらの取り組みは順次発表出来るようになることだろう。