中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】5600人以上が集結! 『イングレス』の最新イベントShonin~証人~が京都で開催
2015-04-06 18:03:00
京都で2015年3月28日、ナイアンティック・ラボによる位置情報ゲーム『イングレス』の大規模公式イベント「XMアノモリーShonin~証人~」(以下、Shonin)が開催され、国内外から登録者だけでも5600人以上ものプレイヤーが集結。古の都である京都を舞台に青の陣営「レジスタンス」と緑の陣営「エンライテンド」が、それぞれの覇権をめぐって競い合った。
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Shoninの開会式は、11時30分に円山公園音楽堂にておこなわれた。
筆者はそれより1時間ほど前の10時に到着したが、その時点で会場の8割がたは埋まっていた。にもかかわらず会場外は長蛇の列が続き、地域では異例の熱狂に包まれた。会場内は、青の陣営と緑の陣営に分かれて着席。さらにグループごとに独自のユニフォームを着用してきたエージェント(『イングレス』におけるプレイヤーの総称、以下、エージェントとする)も多数存在し連帯感をあらわしていた。レジスタンス側は、青が陣営カラーでさらに京都が舞台ということで、多摩出身のエージェントたちが新撰組をモチーフとしたユニフォームで集結。京都在住のエンライテンド陣営のひとたちは独自のゆるキャラで参戦するなど、戦いの前から思わぬ方向で接戦が進んでいた。
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そこにいよいよ満を持してナイアンティックのUX/Visual Artist、川島優志氏が登壇。爽やかな朝をたたえつつも、これまで京都で様々な天下分け目の戦いが行われてきた歴史について言及。ただ、そういった戦いが無くなって久しいことにも触れ、「今日のために京都は待っていた!」と宣言。客席からの喝采を浴びた。これに続き、ジョン・ハンケ氏が「コンニチワ」と軽やかな日本語で登場。「今日のこの美しい日を忘れることは無い」とジョン氏。また、「京都は、『イングレス』をするのにパーフェクトな都市だ」と京都を絶賛。その瞬間、会場は拍手で包まれた。実は、京都は『イングレス』を開発するうえで重要な役割をはたしたとハンケ氏。というのも数年前、プライベートで家族とともに京都に来た際の経験がゲームをつくるうえでのインスピレーションになっていたとのこと。
また、「京都は、天皇家、時の将軍たち、哲学者、高僧など様々な人たちが住んだ歴史ある場所なのでプレイを通し是非、歴史を学んでほしい」とエージェントにうったえた。またスピーチの最後は松尾芭蕉の「日々旅にして旅を栖(すみか)とす。」を引用し、勝敗よりも旅を楽しんで欲しいとの思いを述べて締めくくった。この後、記念撮影でのちょっとしたハプニングが。皆が集まって待機している中、ジョン氏だけが見当たらなくなったのだ。実は、この時間、ジョン氏は会場を抜け出し、中に入りきらなかったエージェントにAXAシールド(敵から拠点を守るための防御デバイス)ダウンロード用カードを配りまわっていたのだ。ジョン氏の人柄が見えた瞬間だった。
巨大フィールドが入れ替わりする中、京都市内で激戦を繰り返したエージェントたち
その後、いよいよ、6000人近くの人たちが京都市内4箇所を舞台に激戦を繰り広げていった。道中では、ポーランド、スイス フランス、台湾(3チーム)といった数多くの国際色豊かなチームに巡り合った。また、東海から来たレジスタンスは70人の団体で来るなど、かなり大きなグループで参加するエージェントもおり、イベントとしての巨大さをあらためて示す形に。「Shonin~証人~」のルールは特定エリアで特定の時間、エリア内の拠点がどちらの陣営に属しているか、またはリンクならびにフィールドが形成されているかで点数を競うというもの。
4箇所で競われたが、そのエリアというのが、第一エリアは平安神宮付近、第二エリア二条城付近。第三エリアは京都御苑付近、そして最終エリアは下鴨神社付近といずれも日本を代表する名勝古跡がエリアとして選ばれていた。これはいかにも京都らしい。
実際、一方、円山公園から、平安神宮にたどりつく道中で山桜に遭遇したり、平安神宮の巨大な鳥居の下で記念撮影をするエージェントもいたりと、戦いだけでなく京都をしっかり満喫したエージェントも多数いたようだ。
一方で大規模オペレーションは、2014年12月13日に東京で開催されたDARSANA以上に熾烈に。オープニングの後、12時40分ごろには京都一面が水没。だが、2時ごろからは青に緑が重ねられ青緑に……。その後、青陣のリンクが切られ、今後は全面緑にと、京都市内での静かな、しかし熾烈な戦いの背景でも想像以上の戦いが行われている様子だった。
京都市長、「京都は『イングレス』のために準備されてきた」と宣言
熾烈な戦いの後に、最後はアフターパーティのために国立京都国際会館へ。会場では、ゲームデザイナーの飯田和敏氏率いるDOUKA Pによりパフォーマンスがエージェントを迎えた。頒布会では、同人誌とともに手鏡や、Tシャツや、ポーランド製の公式ダイスなども両陣営向けで販売されていた。このような形で、会場が温まったところで最終結果が発表される前にスポンサーなどによる各賞の授与が行われた。
この中で一番サプライズだったのが京都市長賞だろう。門川大作市長が壇上にあらわれると、5000人以上の観客による拍手喝采の嵐に。そこで、京都は神社仏閣が2000以上あるというおなじみの説明から入ったものの、これらの蓄積は「イングレスのために準備されてきた」と述べ会場の笑いを誘っていた。さらに、これまで片側二車線だった四条通を片側一車線とし、歩道を倍にする条例を通したことを伝えたうえで、「歩いてこそ京都」、「食べてこそ京都」「泊まってこそ京都」としたところに「戦ってこそ京都」を付け加え、会場から歓声を浴びていた。
その後、各スポンサーからの特別賞が授与された後、いよいよジョン・ハンケ氏から得点発表が行われ、エンライテンド陣営の勝利宣言が行われた。だだ、エージェントにとって重要だったのはなのは、勝敗ではなく『イングレス』プレイヤーとしてその場をともにできたという一体感だろう。
それは最後の記念撮影でも表れていた。「これだけ多く人たちが記念撮影で笑顔を見せているのは、はじめてみた」という参加者の声を耳にした。それがすべてを物語っている。
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京都を1日の熱狂に巻き込んだ『イングレス』。これから一体、世界のどの場所をどのようにして興奮の渦に巻き込んでいくのだろうか? 今後の動向にも注目だ。