中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編
立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!
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中村彰憲
立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。
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【ブログ】2015年のゲーム業界、トレンドは「王道コンテンツ」としての「ゲーム」の躍進
2015-01-20 15:36:00
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2014年は「モンスターストライク」、「白猫プロジェクト」などゲーム性の高いスマホ向け作品が躍進し、携帯ゲーム機向けゲームをはじめ、アニメ、玩具とあらゆるものの連動で引き起こされた「妖怪ウォッチ」の社会現象化は一般社会にあらためゲームの力を示す形となった。
この他、「Oculus Rift(オキュラスリフト)」や、位置情報ゲーム「Ingress」の台頭、そしてゲーム実況のさらなる発展など、「ゲーム」と呼ばれる領域の拡大が一般層にも実感として伝わる1年だったとも言える。そこで、年初の寄稿である本稿も例年にちなみ、今年のトレンドを以下のとおり占ってみた。
ボーン・グローバル型コンテンツとしての日本ゲームの復権
国際経営学で「ボーン・グローバル型企業」という概念がある。これは「創業間もない段階から、一定のニッチ層に対し世界中から収益が上げることが出来る企業」を指すが、この概念をコンテンツ展開に援用すると「生まれながらにして多国籍での成功を狙える作品」を「ボーン・グローバル型コンテンツ」と言い換えることが出来よう。あらためて振り返ってみるとゲームは黎明期以来「スペースインベーダー」を皮切りに、生まれながらにして多国籍で社会現象化を実現した作品が実に多い。
改めて検証をする必要はあるものの80年代~90年代のアーケード時代における日本製作品のほとんどは「ボーン・グローバル型コンテンツ」であったのはないか。そのような意味で2015年は、往年の時代を想起させる日本製ゲームタイトルのグローバル規模での成功を目の当たりにする年であるような気がしてならない。
世界各地でプレイヤーが、家庭用ゲーム機の買い替えが進む中、キラーコンテンツとして再確認されるであろうタイトルの多くは日本製となるだろう。「メタルギア ソリッド V ファントムペイン」や、Wii Uで開発されている「ゼルダの伝説」。マルチで発売予定の「DARK SOULS II(ダークソウルII) SCHOLAR OF THE FIRST SIN(スカラー オブ ザ ファースト シン)」。世界から絶賛された、フロムソフトウェアによる新作「Bloodborne(ブラッドボーン)」。「キングダム ハーツIII」や「Mighty No9」などが2015年もっとも期待される作品として上がっている。さらに、まだ発売日が決まってないのにも関わらず2015年中にリリースされるのではとの期待とともに「ファイナルファンタジー XV」もあげられていた。
今年は、日本人としてゲームがプレイ出来ることに心から幸せに感じられる1年になるだろう。つまり、据え置き機は今年が買い時、ということだ。
拡大された領域でのさらなる進化の先に生まれる新たな「ゲーム性」の活躍
2014年は、HMDや、GPSといった、デバイスの優勢性を巧みに取り込んで話題となったゲームやゲーム的サービスが目立った。「東京ゲームショウ」で大きくメディアが取り上げたのは、まだ開発キットの段階でしかないゴーグル型端末の「オキュラスリフト」や、「プロジェクトモーフィアス」だった。また11月には、位置情報ゲーム「Ingress」の大規模イベントがおこなわれ、5000人が日本中から集まった。だか、これらはまだ新たなムーブメントの一端に過ぎない。
スマートフォン向けのゲームがそうであったように、新たなデバイスが媒体端末としてのその可能性を示すと、その端末を通してコンテンツを提供していこうという動きが必ず生まれてくる。そして最終的にはこれらの端末に対し「最適なコンテンツ」が提供されるようになるのだ。
「Ingress」は媒体か?といった点は議論になりうるが、同コンテンツを提供したNiantic Labsは将来APIを公開するとしており、それが実現すれば基本技術を応用したサービスが続々と誕生する。その中には元祖である「Ingress」が本質的にもつ課題を解消した新たな何かが生まれていることも考えられる。いずれにしてもこういったデバイスやサービスが示した可能性がより波状的な広がりを実感できるのが2015年なのだ。
新規IPのコアを生み出すコンテンツとしての「ゲーム」の位置づけ
「妖怪ウォッチ」が社会現象化したことの本質は、ゲームに加え、マンガ、玩具、TVアニメ、劇場用アニメといった複数のコンテンツや商品がシームレスに組み合わさりシナジーを発揮しているという点を疑う人はいないだろう。「神撃のバハムート」もカードコレクション型ゲームで描かれたキャラクターや行間に示された世界観を生かし、ハイクオリティなアニメ「神撃のバハムート GENESIS」へと昇華している。前述の「Ingress」も「GPS機能を活用したグローバル規模の陣取り合戦」と思わせるだけの圧倒的な世界観構築が様々な媒体を通して「物語」を重層的に折る事で、ある種のリアリティをプレイヤーに体感させている。すでに欧米では、その世界観をノベライズしたものが発売されていて、さらに世界規模でこのムーブメントが広がれば、さらなるマルチメディア展開が行われても不自然ではない。
つまり、マンガ、小説から生まれた作品を「原作」としてマルチメディア展開するという流れの戦略が採られていたように「ゲーム」が優れた新規IPを大々的に展開するうえでのコア、まさに「原作」的な位置づけを果たしうることがコンテンツ業界の経営陣にそろそろ浸透していると考えられる。さらにグローバル規模で収益を得るために「ゲーム」の存在が欠かせない。ハリウッドの世界戦略に対抗しうるオルタナティブとして「ゲーム」の果たす役割がこれまでに以上に脚光を浴びるようになるのが2015年なのだ。
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