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番外編 アプリ運営終了後に、前田ディレクターが運営秘話を語る
公開日時:2015-11-06 18:00:00
長らく続けてきたこの連載も、今回のインタビューでシメとします。アプリのサービス終了後に開発者へのインタビューをするというのも前代未聞な気がしますが、こういうときだからこそ、あえていろいろ話していただくのも大切だと思うのです。インタビューに快く応じてくださった、タイトーさん、そしてディレクターの前田明彦氏に敬意を表します。こんなタイミングですが、いまだから聞ける貴重な話やビジュアルもありつつ……。(インタビュー・構成/忍者増田)
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前田明彦氏
【プロフィール】
タイトー所属。『ウィズローグ』のディレクターを務める。好きな『ウィザードリィ』のシナリオは、ファミコン版『1』と『2』、プレイステーション版『5』(『ニュー エイジ オブ リルガミン』)。
●「サービスが終了しても遊び続けられるようにできませんか?」†
――拙者も『ウィズローグ』をとても楽しくプレイさせていただいておりましたので、終了は残念でした。まずはなぜ運営終了となったのかをお聞かせください。
前田 公式サイトに記載の通り、お客様に満足していただけるサービスを提供し続けることが難しくなった、というひと言につきます。熱心なお客様もたくさんいらっしゃって、すごくありがたかったんですけど、ビジネスとして継続していくことができないという判断をせざるを得なくなってしまいました。個人的にはもちろん続けたかったですし、とても残念でしたが。これまで遊んでいただいたお客様には感謝の気持ちしかないです。
――運営は順調だとうかがっていましたが、どのあたりでそういう決断をする流れになったのでしょうか?
前田 夏前くらいまではこのまま盛り上げていこうという流れだったんですけど、さまざまな問題が同じくらいの時期に重なってしまって、急にこれは運営を続けていくのが難しいなという状況になってしまいました。ちょっと詳細はお話できないのですが、僕らががんばってもどうにもならない問題もありまして……。
――『ウィズローグ』は熱心なユーザーさんが多かったというイメージがあります。
前田 すごく多かったですね。主観だけで言えば、本当に止めたくなかったです。続けられるなら続けたかったというのが本音です。
――お気持ち察します……。そういった熱心なユーザーさんからは、サービス終了が決まったときはどんなご意見がありましたか?
前田 「続けてください」とか、「サービスが終了しても遊び続けられるようにできませんか?」というようなご意見をいただきました。そんなことをおっしゃっていただけるのは本当にありがたいです。
――素敵なユーザーさんですね。誇れるファンだと思います。
前田 家庭用ゲーム機向けのゲームに慣れ親しんでいるお客様が多かった印象ですね。「スマホ以外で出ませんか?」という意見をくださったりとか。お客様サポート宛てにも、熱いメッセージをいただいています。サービスが終了してしまいますが、これはうれしかったですね。
★『ウィザードリィ』ファンとしての視点と、開発運営側としての視点とでの葛藤†
――サービス終了ということで、この機会に、『ウィズローグ』を運営されてきて、印象に残っている出来事を教えてください。
前田 「『ウィザードリィ』なら!」ということで精力的に協力してくださる方がたくさんいらっしゃったことですね。キャラクターデザインの方、ストーリー担当の方など、皆さんお忙しい中、喜んで協力してくださいました。「携われるんだったらぜひ!」という方が多くてありがたかったです。
――いまさらながら『ウィザードリィ』の求心力を感じますね。
前田 そうですね。コラボもいくつかさせていただいたんですけど、コラボ先のご担当の方も『ウィザードリィ』好きだったりして、とても深いネタを提案してくれたりもしました。本当に、今回の仕事で、『ウィザードリィ』の魅力、求心力の強さを再認識させられました。
――『ウィズローグ』を作っていての反省点、やり残したことなどがありましたら教えてください。
前田 そもそも、ひとりでじっくり遊びたいゲームだったんだなというのが、いま一番の反省点です。というか、そこを軸に仕組みを考えないといけなかったんだなというのがすごくありますね。そしてそれとは別に、ストーリー周りの演出に、もう少し力を入れておけばよかったです。ストーリーがきちんとしたものだったので、そこを表現しきれなかったのがもったいなかったと思っています。
――逆に、ストーリーのおもしろさには手応えを感じていたということですね。
前田 はい。個人的にはランジーとメッツの掛け合いが最高だったと思っています。ああいうキャラクターの魅力をもっと深く掘り下げていく演出ができればよかったですね。
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▲強烈な個性で物語を盛り上げてくれたメッツ。 |
――たしかにメッツは強烈なキャラクターでしたね。
前田 そうですね。ストーリー上で最初に手に入るキャラクターは、ふつうなら美形とかかわいいキャラを先に出すと思うんですが、「ドワーフで女で、しかもこのキャラか!」という意外性は狙ってました。
――いままでにないキャラクターだったと思います。拙者はとても好きでしたね。個人的に、全登場人物で一番印象に残っていますから。ほかには思い残すような部分はありますでしょうか?
前田 開発中、『ウィザードリィ』をよく知らない方が遊ぶことを考え過ぎたのもよくなかったと思っています。最初にこのゲームに興味を持ってくださる方は熱心な『ウィザードリィ』ファンなわけですから、もっと『ウィザードリィ』が好きな人が喜ぶ方向にできたんじゃないかなと。ですので、皆さんの思う『ウィザードリィ』のテイストに、もう少し歩み寄れたんじゃないかなという反省があります。一方で、『ウィズローグ』のシステムでは歩み寄るのが難しかったかなというところもありました。そういう、僕のいち『ウィザードリィ』ファンとしての視点と、現実的にそれができるかどうかという開発運営側としての視点とで、とても葛藤がありました。やりたいけどやらないという判断をしたところは少なからずあります。
――本当にさまざまな判断が難しかっただろうと思います。個人的には、『ウィザードリィ』っぽくないと言われても、これは『ウィズローグ』だしなあ……という部分はありました。
前田 増田さんは以前からそう言ってくださっていたのでありがたかったですけど、やはり多くの方から見ると『ウィズローグ』も『ウィザードリィ』のひとつだという認識になりますよね。とくに昔の『ウィザードリィ』を知っている方ほどそうなんだろうなと。
★制作予定だった貴重なフィギュアを公開!†
――こんなタイミングでなんですが、いまだから話せることなどありましたら……。
前田 モンスターを、テスト的に3Dプリンターで出力したりもしていました(と言って2体の人形を取り出す)。
――おお、これは!
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▲3Dプリンターで出力されたガスドラゴンとレッサーデーモンの試作フィギュア。 |
前田 表面処理したところで止まっていますが、ゲームで使っている3Dデータの元データを使って、実際に3Dプリンターで出してみたモンスターです。3Dプリンターで十分出せるほど解像度の高いモデルを最初に作っていたので。ただ、そのままのデータでは出力に適していなかったので、ガスドラゴンなんかは翼に穴が空いていたり、角がなかったりしています。
――なるほど。これが実現しなかったのは、いちファンとしても残念です! ではきっと、ほかにもモンスターを作る予定だったんですね。グレーターデーモンとか。
前田 そうですね。試作としてこの2体を作っただけで終わってしまいましたが。そのほか、当初はこういうフィギュアを作って、イベントでお客様にプレゼントしたいよねと話していたんです。ユーザーさんとの『ウィズローグ』仮装イベントをやろうという話も出ていました。MCは増田さんにも出ていただいて。
――本当ですか。そんな話が出ていたとは光栄です。ユーザーさんとの仮装イベント、ぜひ参加させていただきたかったですね。
★キミは気づいていたか!? モンスターモチーフの女性キャラの数々†
――ほかには何か裏話的なものはありますか?
前田 裏話とまで言えるかはわかりませんけど、最後にグレーターデーモンモチーフのキャラを出しましたが、それ以外にもじつはモンスターをモチーフにしたキャラをいろいろ投入していました。「この娘はこのモンスター」などと明言していなかったので、伝わらないまま終わってしまったのが非常に残念でした。
――そんなことが! それは気づかなかった拙者としても反省点です……。
前田 たとえば、クラウディアはガスクラウドがモチーフですし、ローザはファイアドラゴン……。これは、チームでアイディア出ししているときおもしろかったです。
――では、いまここで、種明かしとしてそれらモンスター娘の貴重なイラストを掲載します! いずれもモデル作成用のラフイラストとのことです。
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▲バニー(ボーパルバニー)。定期投入を考えた最初のモンスター娘。ボーパルバニーだからバニーガールでクリティカル能力という安易な思いつき。(前田氏談) |
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▲ララ(ララ・ムームー)。シリーズ最強モンスター、ララ・ムームーを擬人化して登場させようというのが発端で、このころはまだ定期的に投入するつもりもなかった。ララ・ムームーの特徴をそれぞれララとムームーに分けて、というところや、衣装の色使いは原作を意識した。(前田氏談) |
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▲クラウディア(ガスクラウド)。ガスクラウドなので雲のイメージだが、ノームでモコモコした感じが「羊か!」というツッコミ待ち。なので、持っている杖も“羊飼いの杖”に。(前田氏談) |
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▲ローザ(ファイアドラゴン)。ファイアドラゴンのコスプレをした女戦士であって、決して竜○士ではない、というところからデザインを起こしてもらった。個人的にはお気に入りのキャラ。(前田氏談) |
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▲アンフィニ(グレーターデーモン)。タイトル画面のグレーターデーモンをモチーフに、角のあるノームの特性を活かしてデザインを起こしてもらった。名前のアンフィニは、おなじみ無限増殖から。(前田氏談) |
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▲ミミック娘。投入できなかったキャラのひとつ。ミミックだけに“箱入り娘”。“お嬢ちゃん”な感じでデザインを起こしてもらった。(前田氏談) |
――前田さんは今後、『ウィザードリィ』関係の作品に携わるご予定は……?
前田 現時点での予定はまったくありませんが、機会があるならばぜひもう一度やってみたいというのはあります。ただ、『ウィザードリィ』というゲームを、もしまたF2Pでやるのならば、相当に再構成しないとプレイヤーが納得できるおもしろいものにならないだろうなと思っています。
――最後に、長い間『ウィズローグ』を楽しんでくれたファンへのメッセージをお願いします。
前田 最後の最後まで遊んでくださった皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。そして、こういう結果になってしまい申し訳ございません、という、そのふたつの言葉しかないです。温かいご意見も、きびしいご意見も、心に刺さりました。本当にありがとうございました。
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