スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第21回バンダイナムコエンターテインメント原田勝弘氏その4 観戦者も楽しめる『鉄拳7』(1/2)

2015-08-01 00:00:00

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 タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんとゲームクリエイターの対談企画第20回。バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏。プレイステーション4向けVRヘッドマウントディスプレイ“Project Morpheus”(プロジェクトモーフィアス)を使用したコンテンツ『サマーレッスン』から、好評稼動中のアーケードゲーム『鉄拳7』まで、原田氏が手掛ける作品をお題に、椿姫彩菜さんがゲーマー視点で鋭く迫る。前回に続いて『鉄拳7』の話題を中心にお届けします。

3回目/TN4_5519

椿姫 今回は、『鉄拳7』の内容面についてのお話に移っていいでしょうか? 今回から“パワークラッシュ”、“レイジアーツ”といった新システムが搭載されました。これらは2D対戦格闘ゲームのような要素じゃないですか。導入した理由をお聞きしたいんですよ。

※パワークラッシュ:相手の上・中段攻撃を受けとめながら攻撃する技
※レイジアーツ:体力の少ない状態でくり出せる一発逆転技


原田 2D対戦格闘ゲームのようなというご指摘はさすがですね。パワークラッシュは強力な中段技が放てるというマニアックな部分に迫ったものなんですが、レイジアーツについては2D対戦格闘ゲームのいいところを参考にしているんですよ。レイジアーツ以外のところでは、今回おたがい体力が少ない状態で技を出しあってK.O.になったときにスーパースローになるシステムがありますよね。これは、“ゲームを見ている人”を意識して実装したものです。椿姫さんならこれがどういう意味かわかりますよね?

椿姫 あー、原田さんの言わんとすることはだいたい伝わりますよ(笑)。

原田 超必殺技の発動時など、決めとなるシーンの演出がありますよね。その効果についてなんです。これまでずっと動画で対戦を観戦する人たちや、大会の現場で観客の行動を注目してみて気付いたことがあったんです。それは試合をするプレイヤーの技術のうまい、下手関係なく、決めのシーンの演出が映しだされると一斉に盛り上がるということ。そしてこの盛り上がりがじつは対戦しているプレイヤーにもかなり作用しているということ。

椿姫 はい、確かにその感じは体験的にもわかりますよ!

原田 見られているプレイヤーと見ている人の盛り上がりは、相関関係があってかつとても重要なことなんですよ。ニコニコ生放送で格ゲーの試合を観ていても決めのシーンでは、文字の弾幕が一斉に流れて盛り上がりますよね。この反応って、人間の反応として当たり前といえば当たり前のこと。でも、これまで3D対戦格闘ゲームの中ではこのように「見ている人の反応を誘う仕掛け」がなかったんです。振り返ってみても、3D対戦格闘にはなかったでしょ?

椿姫 えーと……そういえば本当にない!(笑)

原田 3Dのゲームは接近戦ではスピーディーな展開だし、対戦格闘ゲームとしては動きはリアルだし、内容としても2D対戦格闘ゲームにはないおもしろさも当然あります。でも、見ている側や実況者は2Dのほうがヒートアップすることが多いんです。これはどうしてなんだろうな? と。

椿姫 決めのシーンで「ピキーン」と光ったり、背景が暗転したりとなると、見ている側にとって状況がわかりやすいってのはありますよね。

原田 そう、つまりわかりやすいということなんですよ。だから、ゲームをプレイしていない人も盛り上がれる。3D対戦格闘ゲームにはこれが少ない。例えば、実は僕は『バーチャファイター』の対戦動画を見るのが好きなんですよ。なぜかと言うとラウやアキラのうまい人のプレイを観戦していて、このプレイの何がスゴイかがわかるから。見て伝わる強さって、カッコいいし、なかなか無い。でも、そのカッコいいと思うプレイの動画を自分の友だちに見せても、キョトンとしてしまいます。『鉄拳』でも、何かスゴイことをやっているのはわかるけれど、うまいかどうかまではそこまでわからないと言うんですよ。

椿姫 いつの間にか大技で勝負が決まっている……みたいな感覚なんでしょうね。私、『鉄拳』を初めて触ったとき、強い技はボタン操作をためて体が光る技だと思っていたんですよ。2D格ゲーの感覚がありましたから。『鉄拳』の場合は、ガード不能技の演出であって使いどころが難しい種類の技ですよね。

原田 安直に出さないほうがいい技ですね(笑)。

椿姫 「当てるとスゴイ」みたいなロマンあふれる技のような扱いになっているので、2D対戦格闘ゲームとはそもそも考えかたが違うのかな? と思いましたよ。

原田 もともと、接近戦スタイルで本物のボクシングや空手をやっているようなフィジカルな感覚が得られるのが3D対戦格闘ゲーム。さっき言ったように、プレイしている人と、プレイを見ている人の視点が違うことに気づいたので、レイジアーツや超スローモーションになる演出を入れたんです。2D格闘っぽいと言われますが、そのエッセンスをあえて取り入れているからそう思われるのは当然なんですよ。盛り上がりポイントを提示するための演出ですね。

椿姫 いやぁ、『鉄拳7』をプレイすると、その”レイジアーツ”がすっごくおもしろいんです。発動させるコマンドが簡単ということが第一の魅力。派手で、強くて、見ているひともスゴイシーンだってわかるものなのに、簡単にくり出せるのがうれしいポイントだと思います。

原田 出せるチャンスがあるときに、確実に出せることを意識していますからね。でも、そのぶん、上段技だから当たりにくい、中段技だから外したときはスキが大きくなるなど、キャラクターの持つ技によって個性をつけています。さらに、それらに対する攻略もちゃんと用意しています。これはつまり、レイジアーツを発動した瞬間に、観戦している人が「この技、当たるのか?」とエキサイトして思わず前のめりになる状況を作りたかったということなんです。

椿姫 奥深いですねー! 発動して確実に当たるところじゃないのがポイントなんですね。

原田 プレイしている人だけがわかるというのはまずいだろう、という発想から取り入れています。

椿姫 この仕組みよって、いままでの『鉄拳』シリーズの良さを残しつつ、別のゲームのような感覚も得られます。

原田 そうそう。それも狙っていました。おかげさまで『鉄拳7』はプレイしても、見てもおもしろいとおっしゃってくれる方が多いんですよ。