スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第15回 スクウェア・エニックス市村龍太郎氏に聞く『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』開発秘話その2

2015-04-17 12:00:00

 タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんとゲームクリエイターの対談企画第15回。今回のゲストは前回に続いて、プライベートでも椿姫さんと親交の深いスクウェア・エニックスの市村龍太郎氏。市村氏がチーフプロデューサーとして関わる『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』(以下、『DQヒーローズ』)の開発秘話の2回目をお届けします。

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市村龍太郎氏(左)
椿姫彩菜さん(右)

●キャラクター選出裏話!

椿姫彩菜(以下、椿姫) キャラクター選出についてお聞かせいただいてもいいですか?

市村龍太郎氏(以下、市村) キャラクターについては、開発の初期段階でものすごく協議されたんだ。ちなみに、今回はキャラクターにボイスが入るから歴代の主人公だけは候補から外れたんだよね。堀井さんも「歴代主人公はプレイヤー自身だからね」と。それで着せ替え用のコスチュームだけに。

椿姫 あー! 確かに、コスチュームは『III』の勇者のものがありますね。

市村 キャラクターの総数は、開発期間などのさまざまな側面からある程度決まっていて、その中で男女比は半々に。それから、なるべくなじみのあるキャラクターを入れたい、というのがあったんだ。だから、今回はシリーズのいいところ取りをしているのよ。

椿姫 うんうん、「このキャラクターは絶対入るよね」というキャラクターが選ばれていますよね。

市村 でしょ? もうちょっと人選を深くすると、ブライ、トルネコ、ライアンといったおじさんが増えてきちゃうんだよ(笑)。

椿姫 あはは(笑)。

市村 あとは、武器や呪文のバランスがうまく取れるラインアップを意識したんだ。その中でギリギリ想定外だったのがフローラ。

椿姫 え!? 私はフローラ派だから出てよかったです。ビアンカだけだったら大炎上しますよ! 「やっぱり公式はビアンカ派なのか!」って(笑)。

市村 本当は各作品から男女を均等に選ぼうと思っていたんだけど、堀井さんが「ビアンカとフローラはセットじゃないとダメだよね」とおっしゃっていたので、入れることになったんだ。

椿姫 個人的にはマリベルも出してほしかったんですけど、『ドラクエ』ブランドを考えたときに、マリベルよりもさきに出さなきゃいけないキャラクターがいると思いました。確かに、私が市村さんの立場だったら出さないかもって(笑)。

市村 これ以上はないギリギリのラインアップでしょ?

椿姫 「このキャラクターは『4』で活躍したよね!」とか、すぐにわかるキャラクターばかりですよね。『4』以降のキャラクターはバックストーリーが濃いから出しやすいのかな。でも、ヤンガスはちょっと意外でした。

市村 それについては、『8』からふたり選ぶという前提があって、ククールはテリーとかぶる……というのがあって、オノはアクションとしてすごくおもしろくなる要素があるから、ヤンガスにしようと。

椿姫 確かに、“オノむそう”だとか“かぶとわり”だとか、オノはゲームにすごくマッチしていておもしろかったです。ヤンガスのオノはわかるんですが、キャラクターの武器はどうやって決めたんでしょう? クリフトの槍とビアンカの弓は苦心されたんじゃないかと思うのですが。

市村 全員違う武器にしないとアクションゲームとしておもしろくならないから、難しい協議になったところだね。主人公とテリーが剣でかぶっていますけど、ここは変えられないじゃない。クリフトは原作で槍を装備できるし、神官として槍を持っている姿に違和感がないからありかなと。難しかったのはビアンカの弓。魔法使いなら杖かなと思うんだけど、そうするとフローラのスティックとの差別化が難しい……。武器のバランスを見直したときに、遠距離から攻撃できる武器を使うのが新キャラクターのジュリエッタしかいなかったんだよ。それで「弓を使うキャラクターがいると、ゲームがすごくおもしろくなる」と、ビアンカには弓を使ってもらうことにしたんだ。だから弓は少し強くしたんだけどね。

椿姫 そう! 弓が強いんですよ! とくに“さみだれうち”がメッチャ強くて。私はフローラ派なのにビアンカをメッチャ使っちゃって、ちょっとフローラに申し訳ない気持ちになっちゃいました(笑)。

市村 我々としては、それぐらい悩んでもらいたかったんだ。

椿姫 フローラは“設置系”で守りがけっこういけるんですけど、ビアンカの弓は遠くの敵にもドンドン攻撃できるし、MP回復のスキルをつけると、最初から最後までずっと“さみだれうち”だけでいいときもあるほど(笑)。

市村 でも、メチャクチャ気持ちいいでしょ? 開発段階で弓を入れたとき、「これだけ気持ちよければ弓はいける」という手応えがあったんだ。

椿姫 逆にフローラはかなりテクニカルですよね。“メイルストロム”や“ミラクルムーン”を設置して、ほかの攻撃と組み合わせて戦うだとか、いわゆる“設置系”のキャラクターじゃないですか。『5』のときにこういう要素はなかったのに、どうやってできたんですか?

市村 そうだね。まず、フローラをどう差別化すればおもしろくなるかというプランを、ω-Forceさんにいくつか挙げてもらって、トラップ・設置系という提案を受けたんです。で、開発内でのフローラのイメージコンセプトを原作の“イオナズン”が使えるところから“爆裂魔法少女”していたので、爆発系を使うようにしたんだよね。

椿姫 へえー! そうなんですね。どのキャラクターも個性を活かしつつ、『ドラクエ』ブランドを保って、そのうえでアクションゲームとしてもおもしろくするというのはたいへんだったのでは?

市村 バランス調整は最後まで苦労した(笑)。

椿姫 調整といえば、ジュリエッタが玄人向けでたいへんそうなイメージがありました。

市村 確かにブーメランを使うジュリエッタは玄人よりになっちゃったかなあ。ディルクとジュリエッタは新キャラクターなうえに主人公ではないので、目立つ方向に極端に振らないと影に入っちゃうんだよ。ジュリエッタの“パワフルスロー”は最初目立たない技だったので、僕のほうからオーダーを出したんだ。「ブーメランがドンドンデカくなるようにしよう!」と(笑)。だって、見た目が派手なほうがアクションが楽しくなるでしょ? だからディルクは回転しながら飛んで行ったり、“国王会心撃”は知る人ぞ知る必殺技のオマージュだし(笑)。

椿姫 そうそう。ディルクは声優さんも同じ人ですよね(笑)。

市村 そういう要素を散りばめたりして、影に隠れないように個性をつけていったんだ。

椿姫 『モンスターバトルロード』のアクションを参考にしたものもありますよね?

市村 さすが彩菜ちゃん。よく見ているね。実際に『モンスターバトルロード』の技はかなり参考にしているし、そのままトレースしている技もいっぱいあるんだけど。当時お客さんにすごくウケがよかったで「再現できるなら入れてみよう!」と、アリーナ、クリフト、マーニャの技はできるだけ再現したよ。

椿姫 再現といえば、ルーラにもびっくりしました。「実際のルーラってこういう感じなんだ!」って(笑)。

市村 マンガ作品で上空を飛ぶ表現があるからそれをヒントにしたんだけど、今回は『ドラクエ』の呪文や特技をアクションに落とし込んでいくのがテーマのひとつとしてあったんだ。そのなかで、「まさか移動呪文をこう使うとは!?」というものをやりたかったんだよ。一度覚えた拠点にビューンとルーラで飛んでいったら、“なるほど感”があるじゃない。敵の大軍の中にルーラで飛んで助けに行くなんて、すごく興奮するでしょ? 

椿姫 ルーラは、シームレスに飛べるのがすごく気持ちよかったです。

市村 ありがちなのはルーラを使うと少しローディングして、移動先を決めたらまたローディングして……と、あれをシームレスで再現したのはω-Forceさんの技術だね。

椿姫 続編では、ぜひ全キャラクターがルーラを使えるようにしてください(笑)。

市村 一応、全キャラクター分のボイスは収録してあるんだけどね(笑)。

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椿姫 では、市村さんがこのキャラクターを出したかったというのはありますか?

市村 これはね。すっごい裏話なんだけど、じつは最後の最後までピサロとどっちを出すか検討していたキャラクターがいるんですよ。

椿姫 え~!? 誰ですか?

市村 それはね、パパス。すごく悩んだんだけど、武器のバリエーションの関係で出さなかったんだ。それにインパクト的には、ピサロにはかなわないし……。出すとなれば、パパスに関連するストーリーを入れないといけないからね。

椿姫 もしパパスが出たら、ビアンカやフローラと絡むのかな? とかすごく妄想が広がりますよ! 

市村 こういうことを話しているからって、今後パパスが配信されるわけじゃないからね(笑)。

椿姫 あはは(笑)。ではほかに、開発スタッフ内で声が上がっていたキャラクターはいます?

市村 『4』はどのキャラクターも個性的だから、選ぶのが難しかったなあ。だってアリーナとクリフトがいるのに、ブライがいないのはかわいそうじゃない?

椿姫 でもブライはしょうがない(笑)。

市村 あとはゼシカとバーバラで悩んだし、マーニャがいるのにミネアがいないってのもね……。そう考えると今回は本当にいいところどりしたと思うよ。

椿姫 ではつぎに音楽の話題に移りますね。シリーズの名曲を新タイトルでそのまま使うというのは難しかったのでは?

市村 う~ん、意外と問題なかった。ω-Forceさんの『無双』シリーズの音楽はロック調だったから、「オーケストラ調の『ドラクエ』の曲が合うのかな?」という話もあったんだ。でも、まずは『ドラクエ』の曲を実際に入れてテストしてみて、それでダメだったらすぎやまこういち先生にアレンジの相談をしよう、となったんだよ。そうしたらすごくマッチして、「いけるじゃん!」と。それなら当時の想い出もあるだろうし、アレンジせずに行こう!となったの。

椿姫 うんうん。音楽はエンディングがヤバかったです! あそこであの曲が来るなんて。もう泣きましたよー。

市村 あそこは泣ける(笑)。今回のドラマに合っていると思うんだよね。『ドラクエ』はファンファーレ的に終わるエンディング曲が多いなかで、“あの曲”はしっとりとドラマチックなエンディングの要素を持っているじゃん。開発の打ち上げの最後にあの曲をかけたんだけど、涙を流すスタッフも多かったんですよ。そのくらいグッと来る曲だよね。


次回は『DQヒーローズ』のボイス収録秘話をお届け