スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第16回 スクウェア・エニックス市村龍太郎氏に聞く『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』開発秘話その3

2015-04-24 12:00:00

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんとゲームクリエイターの対談企画第16回。今回のゲストは前回に続いて、プライベートでも椿姫さんと親交の深いスクウェア・エニックスの市村龍太郎氏。市村氏がチーフプロデューサーとして関わる『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』(以下、『DQヒーローズ』)の開発秘話の3回目をお届けします。


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市村龍太郎氏(左)
椿姫彩菜さん(右)

●ボイス収録でリレミト発音問題が解決!?

椿姫 今回は『ドラクエ』シリーズのキャラクターが集結する壮大な物語になっていますが、シナリオをまとめるのもたいへんだったのでは?

市村 シナリオのコンセプトは我々が決めたんですが、執筆自体はω-Forceさんにお願いしました。それで上がってきたものを、堀井さんを含めて細かいところまで監修するという流れだったね。

椿姫 そうだったんですね! シナリオも新しい『ドラクエ』感がありました。

市村 主人公がふたりいて、しかもボイスが入っている。ドラマの見せかたがいままでの『ドラクエ』とまったく違ったよね。堀井さんも監修しながら「あ、こういう『ドラクエ』もありだよね」と、すごく開発にのめり込んでくれました。

椿姫 いままでの『ドラクエ』シリーズでは、堀井さんが「こうしたら?」と言ったものを採用したら、ユーザーに好評だったというエピソードがあったと思うんですけど、今回はそういうものはありましたか?

市村 堀井さんは本編並みにガッツリ関わっていたから、そういったことの積み重ねだったね。シナリオに関しては、毎週長時間に及ぶ監修作業を行っていたんだ。たとえば、「アクトとテリーはキャラクター性が似てしまうから、ライバル関係にしよう」だとかね。もちろんセリフも堀井さんが決めていたし、かなりこだわています。

椿姫 テリーマニアの私としては、『ヒーローズ』はデレ要素が多かったんじゃないかなと。いままでツン9割、デレ1割くらいだったのに、ツン7.5割、デレ2.5割くらいになっていて、「あら、サービスしているのかしら?」と思いました(笑)。

市村 確かに、最初は「お前たちなんでついて来るんだよ」という感じなのに、あっさり仲間になったよね(笑)。そこは、「テリーにはテリーの正義があって、彼も気紛れだから、あっさりでいいんじゃないか」という堀井さんの判断だったんだよね。

椿姫 そうだったんですね!

市村 堀井さんはボイスの収録もほぼすべて立ち会ったんだよ。「もうちょっと若く」、「もっとニヒルに」だとか……その場で台本を書き変えることもあったしね。「台本上ではよかったけど、声優さんの演技を実際に聴いたらこっちのほうがいい」と。

椿姫 すごい。堀井さんも立ち会ったんですね。今回ボイスが収録されるということで、リレミトの発音の問題(※)があると思うんですけど、そこは……?

※リレミトのイントネーションが地域や人によって異なること。「リレ(↓)ミト」、「リレ(↑)ミト」のようにレの発音が下がる人と上がる人がいる。

市村 リレミトだけではなく、マヒャドやスクルト、ラリホーなんかもあるよね。そういった発音は収録のときに気を付けていたんだけど、正確な発音は堀井さんわからないんだよ。だけどここだけの話、堀井さんも収録のときに少し混乱してたかも(笑)。

椿姫 えー(笑)。

市村 実際には「リレ(↓)ミト」が正しいんだけど、「あれ? 堀井さん? この前は下降調だったのに上昇調でいいんですか?」ということがあったりした(笑)。

椿姫 へえー! では、収録で苦労したキャラクターはいますか?

市村 そうだなあ。主人公ふたりは、かなりこだわって修正していた気がするよ。逆に、声優さん(立木文彦さん)にお任せにしていたのはヤンガスかな。ヤンガス語というか、ヤンガスは「ゲスガス」言うじゃん。語尾をゲスで行くかガスで行くかは、立木さんが演技していてしっくりくるほうを採用していったんだよ(笑)。

椿姫 そこはフリーダムだったんですね。

市村 テリーは声優の神谷浩史さんのこだわりがすごかったね。ご本人の中にテリーのイメージがあって、何度も自分でリテイクしていたんだ。だから演者さんと作り上げていった感じがあるね。

椿姫 あと難しいと思うのは、ピサロ。ピサロが動いてしゃべるって相当難しいと思うんですよね。

市村 声優の小野大輔さんがすごくかっこいいから、少しテストしただけで「ピサロハマってる!」となったんだ。彩菜ちゃん的にどうだった?

椿姫 もう最高でした!

市村 それはよかった。特別な裏話としては、当初“進化の秘法”を使う予定はなかったんだよね。だけど収録の際に「ピサロを出すなら変身させたいなあ」と思って、台本になかったけど「進化の秘法!」とセリフを録らせてもらっていたんだよ。それがきっかけで実装することになったの。

椿姫 えー! そうだったんですか!?

市村 あとね。そのときに「ロザリー!」という叫び声も録ったんだけど、採用されたかは未確認なんだ。入ってた? ※製品版に実装されています。

椿姫 私のピサロはやられてないから、まだ聞いてないです(笑)。すぐに確認しないと! ピサロは発売後に配信されるキャラクターとしてはバツグンの人選ですよね。

市村 ピサロは設定的に強すぎるから隠しキャラクターがいいだろうと。

椿姫 あれだけ作り込まれているキャラクターが無料だなんて驚きました。

市村 プレイステーション4本体ごと買っていただくお客様も多いだろうし、ソフト自体も安くはないから。それを考えると追加コンテンツは無料にして、長く遊んでいただくことを選びました。

椿姫 『9』のときもそうでしたけど、クリアー後も長く遊べる仕様になっていますよね。強い状態で最初からもう一度やり直せる“強くてニューゲーム”もあるし。

市村 主人公がふたりいるから、一方の主人公が気になると思うんだよね。もう1度レベル1からやり直すとすごい時間がかかっちゃうから、それならササッとできたほうがいいかなと。そうやって『ドラクエ』に浸ってる時間を増やせば増やすほど、思い出が大きくなっていくと思うし。これが『ドラクエ』ブランドとして大切なことなんだと思うんです。「『DQヒーローズ』はクリアーした! すごくやり込んだ」と、その人の心に残るように。それが将来重要になってくるから。そこはすごくこだわったところかな。

椿姫 オートセーブだけではなくて、冒険の書があるのも親切ですよね。“錬金釜”を使ったアイテムの合成のやり直しがきくし(笑)。

市村 ははは(笑)。合成のためというのもあるし、あとは最近のゲームはオートセーブが主流だから、間違えて電源落としちゃったときなんかのためにもね。

椿姫 合成のやり直しができるというのはわざとなんですか? いわゆる“理論値”が出るまでリセットをくり返すことができるじゃないですか。

市村 完全にガチゲーマーの質問だね(笑)。まあ、いいんじゃない? プレイヤーが少し苦労すればやり直しが効くくらいのほうが、気軽に遊べるでしょ。昔のファミコンもそういうことできたじゃない? オンラインゲームではないし、アクションゲームはテクニックのほうが重要なわけだからね。

椿姫 確かに、装備がいちばん大切というわけじゃないですもんね。あと、本編のアイテムやステータスが、しっかりアクションゲーム仕様になっていたのがすごいと思いました。考えるのたいへんでしたよね?

市村 そこはこだわったね。アイテムは『ドラクエ』にとって重要なものなので、シリーズのゆかりのあるもので揃えたかったんだ。ω-Forceのみなさんが『ドラクエ』のことがすごく好きで、そこはしっかりと考えてくれました。だからファンが作った『ドラクエ』になっていると思うよ。

椿姫 教会のシスターはイメージとちょっと違うというか、すごくかわいすぎませんか?(笑)。

市村 じつは開発段階ではシスターがいまいちだったのよ。メガネのピシっとした感じのお姉様だったの。施設の雰囲気からしたらそういうお姉様が合ってたんだけどね。でもテストプレイをくり返してると、復帰するたびにシスターの前に戻ってくるじゃない? そうしたら、「もっとかわいくお出迎えしてほしいよね?」という意見が出てきたんですよ。

椿姫 あはは(笑)。

市村 それでシスターを複数パターン作って、「どの娘がよろしいでしょうか?」と堀井さんにオーディションしてもらったんだよ。それで堀井さんが「このあたりだな」と。

椿姫 製品版のシスターは堀井さんの好みと考えて……?

市村 堀井さんも納得のシスターということ(笑)。


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椿姫 『ドラクエ』の伝統を継承しつつ、挑戦もしていく。そうやって『ドラクエ』ブランドを進化させている市村さんですが、今後こうしていきたいというものはありますか?

市村 ゲームというジャンルは、テクノロジーとともに発展していくものだと思っています、とくに『ドラクエ』は、ファミコン、スーパーファミコン、プレイステーションとハードが進化するたびに、新しいテクノロジーを使った斬新なゲームシステムが加わっていったと思うんだ。“復活の呪文”が“バッテリーバックアップ”になって、『4』ではAIシステムが搭載されてと、僕が遊ぶ側のころから『ドラクエ』はつねに新しいものを見せてくれました。だから自分が関わるんだったら、最新のテクノロジーと、30年近い歴史の中で培った『ドラクエ』のいいところを掛け合わせて、新しい『ドラクエ』を作っていきたいね。そうやらないと新しいユーザーさんに満足していただけないと思うんです。

椿姫 技術と歴史を掛け合わせていくんですね。

市村 新しいこと半分、伝統を守ること半分でね。もちろん、これは『ドラクエ』じゃないと言われるようなものを作るつもりはないよ。「間違いなく『ドラクエ』だったけど、すごく新しかった」と言われるのがいちばんいいよね。

椿姫 新しいことを始めるときには、反対の声もあると思うんですけど、そういったプレッシャーはないんですか?

市村 う~ん、やっぱり反発や疑問のほうが多いよね。『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』は最初は会社の人にも「なんでおもちゃ?」と言われたし、『バトルロード』もなんでわざわざアーケードでやるの?と言われたからね。

椿姫 いまでこそスクウェア・エニックスさんは『ガンスリンガーストラトス』などアーケードに力を入れている印象があるけど、当時はそういう状況ではなかったですもんね。

市村 やったことないことばかりだから勉強もたいへんだったけど、誰かがやらないと。恨まれることはあまり気にしない性格だから、そんなことよりも新しいファンが増えていくのがうれしいですよ。とくにアーケードは、たくさんの子どもが遊んでくれたのを実感できたからね。

椿姫 スーパーでやっている子どもたちを見て、すごいなあと思いましたよ。

市村 『ドラクエ』ファンのコア層は30歳以上だから、このコア層が楽しむためにも若い世代のことは意識しなきゃいけない。だから、女性や子どもも遊べるようなものを作って、ファミリーで楽しめるようにしていかないと。「古き良きものを」という考えを持つ人からはよくないように見えるかもしれないけど、僕は『ドラクエ』のことが大好きだから、そういうことにとらわれずにもっと広げていきたいんだよね。それこそ海外にも。

椿姫 『DQヒーローズ』は海外展開も?

市村 そうだね。アジアや北米欧州向けに翻訳したもので『ドラクエ』を伝えていきたいと思っています。ただ、ゲームの中身を海外向けに作り変えるということはやらないつもりだよ。海外の人を意識してゲームを作り変えることが必ずしも正解とは思っていないんだ。今回は日本で作ったそのものを持って行くほうが素直に伝わるんじゃないかと思っているんだ。海外にも『ドラクエ』ファンはいるし、いままで環境がなくて遊べなかったというユーザーさんも多いと思うんだよ。実際に僕のTwitterに海外のユーザーさんから発売を待ち望んでいるというリプライを、たくさんいただいたんだよ。

椿姫 海外のファンからもリプライが!? すごいですね。

市村 まだまだ『ドラクエ』を広げていくことはできると思うんだ。だからチャレンジし続けるよ。ポイントとしては2016年の『ドラクエ』30周年。この大きな節目のイベントを僕が担当させてもらっているんだけど、盛り上げるためにいろいろ準備してるのでそこは期待していてください!


次回は、市村氏が手掛けるスマートフォン用ゲームアプリ『無限ナイツ』に迫る