スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第13回 カプコンの小野義徳氏が語る『deep down』

2014-10-18 00:00:00

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●『deep down』は新しいことへの挑戦ばかり

椿姫彩菜さん(以下、椿姫) 小野さんが現在手掛けていらっしゃるもうひとつの新作、プレイステーション4の新作オンラインゲーム『deep down(ディープダウン)』についても、ここだけのお話が聞けませんか?

小野義徳氏(以下、小野) このゲームについては、何も話せませんよ(笑)。進捗は「試行錯誤のフェイズに入った」という具合でしょうか。

椿姫 F2Pのオンラインゲームということで、『ストリートファイター』シリーズとはまったく異なる分野のゲームです。それにもかかわらず挑戦する理由を教えてください。

小野 『バイオハザード5』や『6』を手掛けたスタッフと新たなプロジェクトを始動することになったんです。そして、最初にチーム内でどんなゲームを制作したいかをヒアリングしたんです。その答えが「新しいゲームを作りたい」でした。それならば新規のハードに向けて制作しよう、新技術を使って制作したい……と、どんどん話が広がった結果が現在の状況、たいへんなことになっています(笑)。

椿姫 F2Pという仕様は小野さんのアイデアだったんですか?

小野 いや、ゲームを制作する過程で、F2Pにしたほうがもっとおもしろくなるのでは? という案がチームから出たんですよ。開発は大阪のチームが進めていたのですが、以降はF2Pのゲーム制作に慣れている東京の開発チームも合流しています。チーム内から出てくる意見は、新しいことへの挑戦ばかりなので、その分コストがかかってしまう(笑)。会社にとっても意義のある挑戦ですから、GOサインを出したんですけどね。

椿姫 ゲームデザインは、現在のオンラインゲームのトレンドを意識したのでしょうか。

小野 そうですね。悪く言えば「いいところ取り」です(笑)。開発チームには「とにかく君たちがいま楽しいと思えるゲームを作りなさい」と言ったんです。もし「これをやりなさい」という指示を出していたら、過去に出したカプコンのゲームの前例に縛られてしまう可能性がありましたから。

椿姫 ゲームを作る人たちが「とにかくおもしろい」と感じる要素を詰め込んで、プレイヤーに楽しんでもらいたいということですね。そういえば、2013年の東京ゲームショウでプレイさせていただきました。

小野 いまは、当時のバージョンから進化していて、操作もかなりシンプルになっています。さらに「ひと目見たら、いろんなことがわかる」ようにもして、プレイしやすくなっていますよ。

椿姫 2014年のE3でも映像が公開されましたよね。

小野 さきほど言ったように、いまは試行錯誤のフェイズにはいったような状態ですから、E3では映像出展だけでした。でも、現地でとても高い評価をいただいて「アメリカでいつ出るんだ?」という問い合わせを多数受けて、逆に困ったことになりました(笑)。

椿姫 とてつもない規模のオンラインゲームですから、開発作業の量もかなりのものでしょうね。

小野 国内で超有名なあのオンラインRPGだって、新しいものを作るのに2年もの時間がかかったほどですからね……。『deep down(ディープダウン)』もそれくらいかかるかもしれません(笑)。でも、「リリースされない」ということは絶対にないので安心してください。どこかでダッシュして、一気に開発が進むときが来ますから。ちなみに開発チームのオフィスのフロア面積は、大阪の開発部門ではもっとも大きいくらい。それだけの大規模なチームで現在、制作を進めています。

椿姫 カプコンファンとしては、『ストリートファイター』シリーズのナンバリング作だけではなく、まったく新しいタイトルが出ることも非常に楽しみです。

小野 開発現場は確かに「3歩進んで4歩下がる」なんですが、その一歩はつねに新しい歩みなんです。まったく新しいものが生まれつつある時間を久し振りに体験している思いです。サラリーマンとしての立場を無視して語ると、側から眺めていて「おもしろいなあ」という気分です(笑)。

椿姫 カプコンさんはいつも日本のゲームをけん引しているメーカーさんなんだと実感します。

小野 2014年はハードの世代が切り換わる年でもあります。プレイステーション4という新ハードが現れたことで、従来よりもゲームが作りやすくなり、実現できることも大きく広がりました。それゆえに、開発にはいままで以上にお金とマンパワーが必要になっています。deep down(ディープダウン)』を開発しながら、昔みたいなペースで毎年必ず新タイトルをリリースするということは、今後できるだろうか? という不安も感じています。でも、企業としてはそれじゃいけない。新作がつねにリリースし続けられるための手法を模索しなければならないんです

椿姫 前回はアーケードの未来を語っていただきましたが、家庭用機の分野はどうなるとお思いですか? 最近はPCでゲームを楽しむというスタイルも普及しつつあります。

小野 格闘ゲームの分野だけとっても、オンライン対戦のアクセス状況などからわかるのですが、じつはPCのユーザー数は意外と多いということなんです。日本や北米、ヨーロッパの都市部ではいまも家庭用機が主流ですが、でも地球上のゲームユーザーはその地域だけではありません。全世界を対象に見ると、PCでゲームを楽しむ流れが目立っています

椿姫 日本だけ見ているとなかなか実感できないことですね。

小野 ただ、家庭用機だから得られる利便さや、家庭用機ならではのユーザー間のつながりの強さは絶対にあると思うんです。ユーザーに共通する価値観を受け止めながら、コンシューマーならではのタイトルも継続して出し続ける必要はあると思います。もちろんPCの重要性も把握しつつ、という話です。ビジネス上の理由もありますが、プレイしてくれる人がいる限りは、PCを含めたあらゆるプラットフォームでゲームを展開していきたいと考えています。格闘ゲームにおいては、プラットフォームをまたいで、そして世界共通で自分の強さが図れる仕組みを作りたいですね

椿姫 それはおもしろそうですね! 

小野 自分の強さを共通で提示できる仕組みを構築するのは、将来にとっても大切なことだと思っています。

椿姫 現在は、同じ『ウルIV』でも、機種によってPP(プレイヤーポイント)の数字の価値が少し異なりますからね。これからは強さを示す基準をわかりやすく、世界規模で共有できる仕組みにしたいということですね。

小野 そうです。「こっちのハードのほうが、猛者が多いじゃん」となって、プレイヤーが特定の環境に偏らないような仕組みを作っていきたいですし、ひいてはそれがPCと家庭用機が共存できるカギにもなることでしょう。かなり真面目にしゃべってしまいましたね(笑)。

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椿姫 では最後に記事を読んでいただいているファンへのメッセージをお願いします。

小野 カプコンは今後もさまざまなゲームをを皆さんに提供していきます。近年、ゲームを巡る世界はつねに変化し続けていて、我々もさまざまな取捨選択をしていますが、我々の根本は「ゲームを作る会社である」ということ。少なくとも僕が見ている限り、その姿勢に変わりはありません。今後のカプコンを暖かく見守ってくだされば、と思います。また、ユーザーの皆さんとは格闘ゲームを通じて交流をさせていただいていますが、『ウルIV』以降も格闘ゲームを盛り上げるべくがんばります。今後も応援のほどお願いします。

椿姫 期待しています!

小野 あと、一言いいですか? この場でお伝えしておきたいのですが、僕は日本の市場をいっさい軽視していませんのでご安心ください。僕がいくら日本に1年の半分も滞在していないからといっても、日本に税金を払っている以上は、日本のために働きますから(笑)。

椿姫 頼もしい言葉ですね。もっともっと日本のゲームを盛り上げましょう!

小野 そして椿姫さん。いつまでもずっと、ゲーム好きな椿姫さんでいてください。タレントという立場から長年、格闘ゲームを応援してくださると同時に、ゲームという遊びを深い視点で見てくださっています。ゲーム業界にいる僕らとしては、ゲームの認知度を高めることに貢献してくれていて、本当に心強い存在です。ガチゲーマーという本来の顔を隠し続けた“羊の皮をかぶった狼”の状態で、タレントの立場からゲームの啓蒙活動に勤しんでくれるとうれしい(笑)。あ、ファミ通.comでコラム連載をしている時点で、もう羊じゃないか!

椿姫 私は狼じゃなくて羊ですよ~! 今日はお忙しい中、ありがとうございました!