スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第20回バンダイナムコエンターテインメント原田勝弘氏その3 『鉄拳7』でゲーセンが活性化!(1/2)

2015-07-25 00:00:00

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 タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんとゲームクリエイターの対談企画第20回。バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏。プレイステーション4向けVRヘッドマウントディスプレイ“Project Morpheus”(プロジェクトモーフィアス)を使用したコンテンツ『サマーレッスン』から、好評稼動中のアーケードゲーム『鉄拳7』まで、原田氏が手掛ける作品をお題に、椿姫彩菜さんがゲーマー視点で鋭く迫る。今回は、好評稼動中の『鉄拳7』の話題をお届け。


2回目/TN4_5699

椿姫 『鉄拳7』が好評稼動中ですね。私の率直な印象は、思ったよりも新キャラクターが多かったというものでした。

原田 そうですね。新キャラクターが多くて、良い意味で『鉄拳3』のころのような印象を抱く人も多いと思います。『鉄拳』シリーズのプレイヤーは現在、“第4世代”に突入していると我々は見ています。これまでも『鉄拳』はプレイヤーの世代の継承ができているのですが、『鉄拳7』ではゲームのキャラクターを刷新することで、今回もその流れを作っているんです。

椿姫 それは本当にすごいことだと思います。世代の継承は歴史あるゲームシリーズのもっとも難しい部分。私もゲームセンターで対戦することがあるんですが、『鉄拳』は高校生くらいの若い人が相手だったりするんですからね。ほかの対戦格闘ゲームシリーズだと、あまり例のないことなんですよね、これ! 

原田 そう。これまでも『鉄拳』は新たな世代のプレイヤーも広げることにうまく成功していているんです。たとえば、いま椿姫さんがおっしゃったような高校生の世代だと、生まれたときに『鉄拳3』が出たくらい。中学生だと『鉄拳4』や『鉄拳5』が出た時期に生まれています。彼らの世代になると、初代プレイステーションの時代のゲームは知らないんですよね(笑)。

椿姫 確かに、もはやそういう時代に突入していますね(笑)。

原田 無論歴代ファンに遊んでもらいたいんですが、若い世代にも、遊んでほしいという思いがあったんです。『鉄拳3』、『鉄拳5』をリリースしたときに、我々開発陣は“世代の波”が存在することを目の当たりに体験していたんです。『鉄拳3』のときに“第2世代”と我々が呼ぶ人たちが加わったのですが、彼らは『鉄拳3』を実質シリーズの初代という感覚で遊んでいたことがわかったんですよ。

椿姫 なるほどねー! 確かに初代~『鉄拳2』を知っている世代からすると、『鉄拳3』って雰囲気というかゲームの感覚が違いますからね。

原田 そうそう。「『鉄拳3』って、なんか違うな」ということで、当時の若い世代が一気に参入して、プレイヤー数が一気に増えたんです。同じ現象は『鉄拳5』でも起きたんですが、それは別の要因が理由でした。

椿姫 違う要因って? 気になります!

原田 『鉄拳5』では、セガさんと協力して携帯電話上の専用サイトと連動したサービスを始めたんですよ。いまでいう“TEKKEN-NET”ですね。プレイヤーのICカードと、携帯サイトと、ゲームが連動する仕組みはいまでこそ当たり前ですが、当時では新しい試みだったんです。同時に、この時代はちょうど高校生世代がインターネットに対応する携帯電話を個人で持ち始めたころ。日常持っているケータイでカスタマイズやチーム結成などをしてメンバーでゲーセンに集まって……という遊びかたが、当時の高校生に受けたんですよ。

椿姫 ケータイを使ったサービスが、世代のニーズにピッタリはまったと! 

原田 そうです。これも新しい世代にバトンタッチする大きなきっかけになりました。それで、話を戻すと『鉄拳7』でもこれらと同様のことを起こしたかったという側面はあります。そのための取り組みとして本作から店舗間通信対戦の機能を付けたんです。わざわざゲームセンターのゲームにも取り入れた最大の理由はここにあります。

椿姫 その視点はちょっと意外でした。

原田 これまでゲームセンターの対戦格闘ゲームに店舗間通信対戦の機能は、普通に考えて家庭用ですでにあるものだから存在していてもおかしくないじゃないですか。それがいままでがなかった理由は、まず技術的なハードルが高かったという事情があります。家庭用ならば、多少通信の遅延が起きても、申し訳ありません……許される部分もあるのですが、アーケードゲームではプレイのたびにお金をいただいているわけですから、より遅延やパケットロスに強い仕組みを作らねばなりません。

椿姫 安定した環境を全国均等に提供するって、かなりすごいことですよね!

原田 突き詰めると本当にしんどいことなんですよ。そして、もうひとつの理由もあるんですよ。

椿姫 何ですか? 気になる!

原田 ゲームセンターはせっかく人が集まれる場所だから、ということ。いまはネットを介してどんな遊びもできる時代。それでもわざわざゲームセンター行く人がいるのは、地元仲間のコミュニティがあったり、みんなでリアルに集まれることを大切にしているからでしょう。だから、ゲームセンターの対戦格闘ゲームにわざわざオンライン対戦を導入しなくても、対戦が楽しめていました。でも、『鉄拳7』で歴代ファンに加えて新しい世代を取り込むとなると、オンライン対戦は必要になるんじゃないか、と作っている途中で気づいたんです。

椿姫 オンライン対戦が当たり前だから?

原田 そういうわけでもないんですよ。『鉄拳7』を作りながら、さまざまなリサーチを通じて気づいたのは、新しい世代の人たちに「対戦で乱入すると、目の前にいる対戦相手のプレイヤーに申し訳ない」、「自分が相手よりうまくて相手をコテンパンに叩きのめしたら申し訳ない」という意識が多いということなんです。これが、「目の前の相手が怖いから、乱入できない」というのなら、我々の世代でもよくわかることなんですけどね。

椿姫 えー、それは予想外!(笑)

原田 なかでも「自分が下手過ぎて申し訳ない」というプレイヤー心理が近年増えていることにも注目です。そんなにうまい具合に自分と同じレベルの相手がいるわけはないですし、妙な気遣いなのか、繊細な意識があるみたいなんですよね。

椿姫 最近の若い子のほうが、気配りの意識が高いと。この話を聞くと、私は古い世代のプレイヤーなんだって実感しちゃいますよ(笑)。つまり、駄菓子屋で並んで対戦していたとか、あらかじめコインを筐体のところに置いて予約する……といった文化を知らないということですよね。

原田 そうなんですよ。「誰がコイツの連勝を止めるんだ。みんなで挑もうぜ!」みたいな感覚じゃないんですよ。もちろん、これまでと同様の感覚で楽しんでいる人もいるにはいるんですが、若い世代……僕らが対戦格闘ゲームの“第4世代”と呼んでいる若い人たちは、そういうのが苦手らしいぞ、ということがリサーチを通じてわかってきたんです。

椿姫 若干、匿名性があったほうが気兼ねなく遊べる、ということですね。

原田 そうそう、まさにそれ! 僕らは店舗間通信対戦を通じて、いくつかの目標を念頭においていました。まず「地方のゲームセンターの活性化」ということ。例えば、どんなゲームでもプレイヤーが朝10時にアーケードに行っても友だちが来ていないから対戦ができない、という意見が地方からはよく寄せられます。これが同じ時間に東京だったらたくさん人がいる。その差を解消したかったんです。もうひとつは「プレイヤーレベルのマッチング」。先ほど述べたように、自分と同じ腕前の人と対戦できる機会なんて、現実的には限られるんですよ。その日、ゲーセンに自分よりはるかにうまい人が3人いたら、その人たちと対戦しつづけなくてはならない(笑)。つまりやられっぱなしになる。これはツラいというので、オンラインを通じて全国規模で極力ふさわしい人を見つけてあげよう、少なからず今までよりは勝ったり負けたり楽しめるようにと。

椿姫 いずれもよくわかるお話ですよね。

原田 そして、最後なんですが……開発当初はプライオリティーが低かったことですが、最終的にはこれが最も高くなりました。それは「乱入しにくいという心理的障壁をなくすこと」。先ほど述べたように若い世代には面と向かった対戦だと乱入するときに壁を感じる人が多いんです。高校生世代の人たちが、これまでシリーズを家で遊んでいたけど『鉄拳7』でゲーセンデビューしてみようかな、という感覚で遊んでくれているのは、オンライン対戦だとやはり目の前の相手や隣の相手に乱入するという心理的障壁がないからということがけっこうデカい。

椿姫 オンライン対戦で、乱入のハードルが下がったからということなんですね。このことに限らずこれまでも『鉄拳』シリーズって、つねに遊ばれかたを考えて作られているな、と思っていました。昔思ったことは、「ほかの格ゲーにはないCPU戦だな」ということでした。鉄拳って、コンピューター戦でも相手は実在のプレイヤーのゴーストとして現れるじゃないですか。最初見たときは、これが本当に斬新でした。

原田 あの対戦をオンライン対戦と思っていた人も当時はいましたね。

椿姫 私も最初はそうでした(笑)。

原田 あれはけっこうおもしろい仕組みなんです。空中コンボは本人がくり出したものを反映しているんですよ。もっと内部的なことをいうと、600リストくらいの項目を用意して本人の動きを記憶させています。特定の空中コンボを出す頻度や、どこで失敗するといったことまでね。もうひとつ言うと、ラウンド開始直後の行動ってあるじゃないですか。すぐバックダッシュするとか、ジャブから始めるとか。そういったプレイヤーの癖や間違いまでフォローしているので、AI(人工知能)としては優れています。だから、擬似対人戦として闘えます。

椿姫 それって、制作する立場からするとめちゃめちゃたいへんなんじゃないですか?

原田 うん。けっこうたいへん。あらゆる行動をデータベースにして、さらに自動化させなければならないわけですから。でも、こうすることで、対戦が怖いと感じる人にとっては、まずこのゴースト戦に勝つことで自信が付きますよね。「昨日、アイツに勝ったよ! ただしゴーストだけどね」でもいいから、ほかのプレイヤーと対戦することのおもしろさを感じてほしいと思って実装した機能なんですよ。

椿姫 一般的な格ゲーだと、特定の行動をするとコンピューターの対戦相手はこう動く……みたいに遊ぶうちにわかってきて、作業っぽくなりがちなんですけど、この仕組みだとそれがないですからね。さらに実在の人の動きを元にしているとなると、本当にリアルに感じられるんです。『鉄拳7』にはまだ導入されていませんが。

原田 今回の『鉄拳7』の店舗間通信対戦にしたって、いまの段階では北海道と沖縄のプレイヤーがマッチングしたということ自体で感動してくれています。まずはそういった単純な感動から楽しんでもらえているのがうれしいですね。たとえば地方の人が東京の有名プレイヤーとマッチングしてツイッターで「今日対戦しましたよね!」とやりとりをしているのを見ると、やってよかったなとつくづく感じますよ。

椿姫 次世代のアーケード格闘ゲームの形ですよね。

原田 まさにおっしゃるとおり。家庭用だとこれまで当たり前にできていたことなんだけど、アーケードでは対戦格闘の分野では前例がなかった。それもあって、実際にやってみたら僕らが知らなかったことが見えてきて、おもしろいですね。

椿姫 でも、実装するにあたって不安はなかったですか? 「家庭用でもできることなんだから、アーケードゲームに取り入れなくてもいいじゃん」と言われそう、とか。

原田 それはありましたよ。でも、作っている途中に、僕らがこれまで知らなかった若い世代特有の嗜好を知ることで「時代に合っているんだ」と思い始めました。