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須田寓話 51FABLES

類を見ないセンスで国内外のファンから熱狂的に支持されるゲームクリエーター、須田剛一氏によるプロット・中短編・メモなどを断片的に掲げる連載。のちの作品に繋がるもの、エッセンスを残すもの、まったくの未完の欠片など、須田ワールドを形づくる珠玉の原石の数々。SUDA51のアタマの中を覗き込め。

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須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #8(1/2)

2016-04-01 20:00:00

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makka05

01.09:スカイブルー3

僕の名前は君鹿守。

先週の続き。

僕は取り乱した。
春の風と、春の花粉は人を乱すんだ。
気持ちのいい春風には大量の花粉が仕組まれていて、
体の粘膜という粘膜を破壊する。
花粉とはつまりは静かなテロリストだ。
去年まで何もなかったのに、今年から様子が違う。
眼が染みて鼻水ズルズルで鼻声で喉が痛い。
おまけに、顔が痒い。
額はまっ赤にタダれた。
きっと寝ている間に引っ掻いたって、ママが言ってた。

僕の今はこんな状態で~す。
だから先週のご乱心は許してチョンマゲ。
あるよね、誰でもそんな時ってさ。
みんなもあるでしょ?
ココイチの春爛漫カレーが食べたくて、
ワクワクしながらお店に行ったら終了してますって言われたら、
みんなもショックでしょ?
あっ、春爛漫カレーはまだ終わっていないから安心して。

それと大事な告知がありま~す。
URLは閉鎖しませ~ん。
このサイトを続けていきます。
書かなきゃいけない事がまだまだたくさんあるからさ。
テヘペロ。



魔子の話、完結編です。

団地の一室。
まっ赤な血に染まった床。
黒ずんだカーペット。
カレーでキレて父殺し。
死体の消えた部屋。
スカイブルーな本城眞子と僕。
ざっと今の状況だ。

本城眞子は、死体遺棄現場に行こうと僕を誘った。
断れない。
違う、断りたくない。
何が起きてもいい。
本城眞子と一緒にいるこの時間と意識振動を大事にしたい。

そんな僕の繊細な心の揺らぎなどお構いなしに、
本城眞子はつかつかと見事な歩幅で歩き出した。
両足の運びに人間の水準の高さを感じる、そんなウォーキングだ。
自然と美しい脚線美に目がロックオンしてしまう。
それすらもお見通しかのような、足首の表情。
人を寄せ付けない意志を歩きからも察することができる。
顔や表情を見ずとも、
この女が厄介な存在あると勘の悪い奴でも分かるだろう。

う~ん、勘の悪い奴には分からないかな~?
まあ、この厄介に僕は魅了されたんだろうね。
不安よりも期待……期待じゃないんだよね。
不安なんだけど鼓動が高ぶる感じなんだ。
興奮とも違う。微量な喜びに包まれている感じかな。
僕は犬になった気分で、本城眞子の後を歩く。

歩く。
歩く。
とにかく歩く。
たぶん、二駅分は歩いた。

「どこにいくつもり?」
「黙って付いてきて」

幹線道路沿いを歩くと、コンビニとファミレスばかりって事に気付く。
日本はコンビニ王国だって、叔母ちゃんがいってた。
小さい頃から可愛がってくれて、
優しくてお年玉をたくさんくれたり、
ママに内緒でオモチャ買ってくれたりで、結構好きなんだ。
恋愛の相談なんかもたまにする。
どんな内容かは秘密。
まあ、大体は散子の事だけど。
叔母ちゃん、散子の小さい頃も知ってるから
お節介焼くんだよね。
それはちょっとウザイ。いや、かなりかな?
マジでバレるって、分からないのかな~。
そういう感覚がズレてるんだ。
海外長かったからかな?

叔母ちゃんはオックスフォードに留学していて、
向こうで就職して、
結婚して子供産んで、
離婚して、
再婚して、
8年後日本に帰ってきた。
たまに日本に帰ってくると、コンビニ弁当ばっかり食べてた。
馬鹿みたいに、美味い美味いって騒いでいた。
オックスフォードは特に糞不味いお店ばっかりで、
こんな鬱積するような環境だからこそ、
陰湿で悲観的な質の高い音楽が生まれるんだって今も言ってる。
叔母ちゃんが特に好きなのは、
ラジオヘッドって歌手だっていってた。
ラジヘは最高! って叔母ちゃんの口癖。
いつもラジヘの気持ち悪い歌を歌っているんだ。
忘れもしない、クリープって曲を大勢で合唱したいって理由だけで、
オックスフォード小学校を作って校長になって、クリープを校歌にした。
どんな理由で学校作るんだって話だよね。

そうそうお察しの通り、バーミンガム中学に上がる前は、
オックスフォード小学校に通ってました、6年間。
6年間、クリープ歌ってました。
音楽の時間にみんなでウィスパーヴォイスで歌う指導受けてさ。
もうね、サビが気色悪いんだよね。
サビで一気に高揚させて、爆発させるんだ。
こんな感じで、

ラノ~クリープ~
アオ~エ~ヨヨ~
ワナヘバチュリエ~
アロブラビ~

オ~オ
オ~オ

シ~ラ~リラ~
ルラ~ラ~
シ~ラ~リラ~
シ~ラ~ラ~ラ~ラ~ア~
ラ~ア~ア~

生徒全員で眼を閉じて、ラ~ラ~歌うんだよ?
マジで狂ってるよね。
超絶キモイけど、超絶気持ちいいよね。
こんな僕でもちょっと泣けてきちゃってさ。
軽く宗教だね、あれは。
クリープ教の信者です。
クリープ最高!
クリープ大好き!
あっ、勢いで認めちゃった。
僕は小学校卒業の時に、
クリープを否定して生きていこうって決めたんだ。
けど、こうやって書いてるうちにクリープの素晴らしさに触れてしまった。
やっぱいいよね、クリープ。
けど、トム・E・ヨークはキモイで~す。

また脱線しちゃった……。
魔子の話に戻ります。


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