
須田剛一/SUDA51
株式会社グラスホッパー・マニファクチュア
代表取締役/ゲームデザイナー
1993年にヒューマン株式会社にプランナーとして入社。『スーパーファイヤープロレスリング』シリーズ、『ムーンライトシンドローム』を手がけた後独立し、1998年に株式会社グラスホッパー・マニファクチュアを創立。2013年2月よりガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社のグループ会社となる。
多くの作品でディレクター、脚本、ゲームデザインを務めており、その独特なスタイルで構築される世界観は、国内外を問わず熱烈な支持を集めている。
代表作には『シルバー事件』をはじめ、『killer7』『ノーモア★ヒーローズ』シリーズ、『シャドウ オブ ザ ダムド』『解放少女(GUILD01収録)』『LOLLIPOP CHAINSAW』『KILLER IS DEAD』がある。最新作は2016年予定のPS4専用タイトル「LET IT DIE」。
この他2015年4月に公開となったスタジオカラー×ドワンゴ短編映像シリーズ「日本アニメ(ーター)見本市」第16話『月影のトキオ』は須田剛一原作・脚本による初の本格短編アニメーション作品。また2015年8月より「月刊コミックビーム」で須田剛一原作の漫画『暗闇ダンス』の連載を開始。
代表作:
『シルバー事件』、『killer7』、『ノーモア★ヒーローズ』シリーズ、『シャドウ オブ ザ ダムド』、『解放少女(GUILD01収録)』、『LOLLIPOP CHAINSAW』、『KILLER IS DEAD』、『SHORT PEACE 月極蘭子のいちばん長い日』
Twitter:@suda_51
Facebook:Realsuda51
受賞歴
VIGAMUS Award 2013
新着記事
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #9
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #8
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #7
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #6
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #5
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #4
-
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #3
-
須田剛一による新連載第6回! 【須田寓話】まっ赤な女の子 #2
-
須田剛一による連載新展開!【須田寓話】まっ赤な女の子 #1
-
須田剛一による新連載第4回! 【須田寓話】killer is dead ~殺し屋は死んだ~ #4
類を見ないセンスで国内外のファンから熱狂的に支持されるゲームクリエーター、須田剛一氏によるプロット・中短編・メモなどを断片的に掲げる連載。のちの作品に繋がるもの、エッセンスを残すもの、まったくの未完の欠片など、須田ワールドを形づくる珠玉の原石の数々。SUDA51のアタマの中を覗き込め。
- ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com>
- 企画・連載>
- 須田寓話 51FABLES>
- 須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #4
連載一覧(すべて見る)
須田剛一による書き下ろし連載!【須田寓話】まっ赤な女の子 #4
2016-03-04 18:00:00
![]() |
01.05:301号室
僕は君鹿守。
またまた魔子の話の続き。
市営団地に入っていった本城眞子を追って、
僕も団地の敷地に入り込んだ。
遠くから観察していたから、
本城眞子が3階の部屋に入ったこともばっちり目撃している。
B区の3号棟の301号室だ。
あの部屋が彼女の家なのか?
でもこの団地は人が住んでいる気配が全くないんだ。
ゴースト団地って言っても不思議じゃない。
歩いている人も少なくて、
たまに歩いている住人っぽい人はみんな外国人だ。
そういえば、クラスにもパッキャンがいる。
パッキャンはフィリピンのハーフで、
結構イケメンで女子の人気も高い。
サッカーをやってて、もっぴんの話だと
超うまくて海外のクラブチームから声が掛かっているんだってさ。
スペインに行くとか行かないとか、どっちだよって話なんだけどさ。
あっ、知ってる?
パエリアってマドリードじゃ食べられないからね。
バルセロナとか南の方の食べ物なんだってさ。パッキャンが言ってた。
本場のパエリアはかなり塩っぱいから、
日本で食べるパエリアが一番美味しいんだって。
へえ~だから何? って感じだよね。
最近じゃさ、こういうへえ~だから何? 的なテレビが多いよね。
暮らしのためになるとか、健康なるとか、知識が豊富になるとかさ。
へえ~って思うけど、やっぱりだから何? なんだよね。
うまく整理できていないんだけど、
世の中って無駄で作られていると思うんだ。
人間ってそんなに効率よく上手に生きられないのに、
みんなそんなに効率厨になりたいのかなぁ。
現実でもゲームの世界でも、効率効率、コスパコスパってさ。
人より得するとか、誰も得しないとか、
人が人に得を説くなんておこがましいと思わない?
あっ、今、得を説くってうまい事言っちゃった。
いいよ自由にパクってもらっても。僕が許可する!
でね、何が言いたいかっていうと、
水曜日のダウンタウンは最高って事。
だって、何の為にもならないことを
全力で無駄だらけで大人が作ってるなんて、最高だよ。
誰も得しなくっていいんだよ、人生なんて、って事を教えてくれる。
何で得しなくちゃいけないの?
そんなことより、今を生きろなんだ。
必死に生きるってことを、クロちゃんは教えてくれる。
やっぱりダウンタウンとクロちゃんは神だ。
ふ~ふ~ちょっと熱くなっちゃった。
あれ? 何の話だっけ?
そうそう、パッキャンは結構いい奴だよ。
裏表のないスポーツバカでさ、ジョック風を吹かさないんだ。
いっつも新作ギャグを編み出して、みんなを笑わせている。
クリスチアーノのスライディングとか、
クリスチアーノのシミュレーションとか、
クリスチアーノのドヤ顔とか、通な笑いなんだ。
みんな、ネタ元は全然わからないんだけど、
なんかセンスいいんだよね、パッキャンのギャグは。
多分、原西さんレベルだよ、あの笑いは。
凄いんだから、キレッキレで。
今度、動画上げま~す。
スポーツ万能なのに、
パッキャンみたいないい奴ってそんなにいないよ。
だからうちのクラスにはスクールカーストはないから、
結構助かってる。
1組は酷いからね。
男子も女子も階級が決まっていてさ、カーストってなんだか嫌だよね。
カーストの頂点に7人組の男女で、S7って連中がいるんだ。
S7ってのは、スペシャルな7人衆の略でさ、バカでしょ~?
このネーミングのダサさったらさ。ドラマの見過ぎだよ。
勝手にやってろよ、SBM7。
僕らはあいつらの事SBM7って呼んでる。
そう、スペシャルバカ丸出し7人組。
あいつらにはもれなくマモラナイ4号を送ってやったんだ。
マモラナイ4号は、勝手にBluetoothが接続されま~す。
バッテリー、ガンガン食いま~す。
ごめんごめん、またパッキャンの話に戻りま~す。
この間のバレンタインデーのパッキャンのモテっぷりは凄かった。
休み時間に、別のクラスの女子や下の学年の女子も
ゾロゾロ群がってチョコを渡していったんだ。
羨ましいかって?
そりゃもちろん羨ましいけどさ、
散子からもらったからまあいいんだけどさ。
まあ手作りだし、義理だけどね。でも手作りだし。
じゃあまあいいかなって感じで今年は納得している。
散子が他の男子に渡してたのは、買ったチョコだったからね。
僕のは義理でも手作りだから。
お父さんに作ったチョコの余りだって言ってたけど、手作りだから。
別に自慢していないよ。
毎年の屈辱に比べたら、溜飲は下がったよね、正直。
まあ、もっぴんには自慢したけどさ。
まあチョコはどうでもいいんだけどさ。
でも実は、鞠子からチョコをもらったんだ。
鞠子はクラスでも超地味な子なんだけど、
眼鏡の奥の眼が大きくて、
まつげがネイティブで長いことを僕は知ってるんだ。
隠れ美人認定していた鞠子が僕にチョコをくれた。
この真相にはいずれ迫るつもりだ。
勿論、鞠子を尾けてね。
続報を待て。
そろそろ、団地に場面を戻します。
ああ~、思い出したくないけど、思い出して書きます。
本城眞子が入っていった301号室の様子を見ようと、
僕は差し足忍び足で団地を進んだんだ。
「何してるの?」
301号室の部屋の窓から、本城眞子が僕を見下していた。
怖い目だと思った。
初めて除しを怖いと思った。
咄嗟に逃げようと思った。
ここにいちゃマズいと思った。
最悪の事態だって思った。
本城眞子は僕に気付いていたんだ。
僕はひょっとして本城眞子の罠にわざとかかったのだろうか。
まるで、女王蜘蛛に誘い込まれたバッタだ。
僕はピョンピョンと飛んで跳ねて、ここに来た。
でも逃げよう、まだ遅くない。
「逃げなくていいよ」
女王蜘蛛が威厳を帯びた口調で、僕を制した。
本城眞子は部屋の扉を開けて、
ずっと僕を見下しながら階段を降りてくる。
今が最後のチャンスだ。
必死に逃げようと思ったけど、僕は逃げられなかった。
本城眞子の視線で動けなかった。
固まってしまったんだ。
僕の目の前の本城眞子の体には、不思議と血が一滴も無かった。
「約束だよね。私を守って」
「どうすればいいの?」
「部屋に来て」
僕は覚悟して頷いて、本城眞子に従った。
この階段は、天国への階段なのかな~。
僕は、腹を括ったんだ。
【続く】
■編集部解説
いくつもの物語を並行して掲載し、須田氏の混沌を楽しんでいただく“須田寓話”。今回もジュブナイル、“まっ赤な女の子”の第4回をお届けしています。今回はいつも以上に脱線気味ながら、だんだんと核心に近づく君鹿守の語りでした。須田氏によれば、この連載はひとまず6週連続の予定。あと2回で物語はどこに到達するのか、かなり目が離せません!
■須田氏近況
月刊コミックビームに原作を提供し、作画の竹谷州史氏とタッグを組んで好評連載中のコミック、『暗闇ダンス』の単行本1巻が絶賛発売中!
![]() |
時速300kmに挑み生死の境をさまよった男・海道航は、3年間の入院を経て退院。彼が育った街・波道市は大きく様変わりし、航は衝撃を受ける。そんな彼に新たに出来た“王国”から招待状が届き……。この不思議で不可解な旅の物語からも目が離せない!