須田寓話 51FABLES

類を見ないセンスで国内外のファンから熱狂的に支持されるゲームクリエーター、須田剛一氏によるプロット・中短編・メモなどを断片的に掲げる連載。のちの作品に繋がるもの、エッセンスを残すもの、まったくの未完の欠片など、須田ワールドを形づくる珠玉の原石の数々。SUDA51のアタマの中を覗き込め。

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須田剛一による新連載第2回! 【須田寓話】killer is dead ~殺し屋は死んだ~ #2(1/2)

2016-01-08 17:00:00

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#2:kills 6th

オレは六日後にぬ──。

 名はシゲキ・バーキンだ。希望を失った意味のことわざを知っているか?  [バーキンはクソ]ってコトだ。

 これでも裏の世界じゃ、安打製造機(バットマン)と呼ばれている。

 勘違いするな、あの子ども向けテレビドラマの蝙蝠男(ダークヒーロー)の事じゃねェ。本物(モノホン)のバットだ。これがオレの仕事道具。プロの強打者(スラッガー)と同じ手入れをして、毎日の打席に魂を吹き込む。連中(スラッガー)の相手は名投手(エース)だが、こっちの相手は糞頭(デス)だ。連中(スラッガー)はピンポン玉のように軽々と場外超え(ホームラン)をするが、こっちは柘榴(ボーンヘッド)を木っ端微塵に粉砕して、実(ミソ)があるってもんだ。

 だが、昨夜の実(ミソ)は独特(ブキミ)だった。あの光景は、二度と思い出したくない。最悪の夜に、最悪の奴(クソ)に会っちまった。

 

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7月2日 11:00am
シゲキ・バーキンのアパートメントにて。


サマヨル:的確に狙ってください

サマヨル:そうではないと 貴方(バットマン)に頼んだ意味はないのですから…

 建設現場にこの男は居た。パイプ椅子に座った身体は小さく、細く痩せた顔は鬼気を帯びている。名は、サマヨルとだけ告げた。

サマヨル:顔が判別できないよう 吹き飛ばしてください
最高の直撃(ジャストミート)を私に与えてください

 サマヨルの周辺には、無数のが転がっている。皆、笑ってんでいる。自信はないが東洋人の顔に見える。どのもだ。ある種この仕事には、異常(ワーク)な山と、威常(シュート)な山がある。完璧、威常(シュート)の感覚だ。威常(シュート)の場合、ただ単に命(タマ)が危険に曝されるだけじゃない。念のような強く深く重い鉛を背負う破目になっちまう。永い時間を使ってジワジワと心を追い込み、魂を喰って人をる、ヤバイ鉛だ。

 逃げてェ。けど、逃げられねェ理由(ワケ)がある。

 

バーキン:ここで アンタを打(ト)ればいいのか?

サマヨル:そうです

バーキン:なら簡単な仕事(ミート)だ
目を閉じろ

 

サマヨル:わかりました
彼らを身元抹消(ノック)してからお願いします

 

バーキン:彼ら? こいつらか?

 

サマヨル:はい

 

バーキン:身元抹消(ノック)の意味がわからねぇな
面倒な細工は単価の割りに合わねぇから
先にアンタを身元抹消(ノック)してやるよ

 

サマヨル:約束(ブック)が異なると
楽園(グリーンランド)が待ってます
お望みならば…

 

 そんな理由(ワケ)で、オレは片っ端から身元抹消(ノック)した。

 は、100を超えていたようないないような、あれだけの過酷な強化特訓(キャンプ)は初体験(ヴァージン)の気持ちを連想させる。意識がココになくて、鼓動がバクつき、無駄に体中が火照って、こんな新鮮なドキドキ感覚はめったに巡ってこない。ちょっとした恋愛症状に近い、そんな強化特訓(キャンプ)だった、本当(マジ)な話。つまりは、朱(ブラッド)の世界(ルーム)で、舞踊(トリップ)しちまった、年甲斐にも無く。時間の感覚など、すでに失せてる。肉体と感覚があまりに直結したからか、朱(ブラッド)の色だけが鮮明に目に映り視覚全体を覆った。網膜にピックが突き刺さった時の、そんな時の感覚に近い。存在を色で区分けしない空間は、とても誠実で平等だとは思わないか? 全部、朱(ブラッド)だったら、人と人の違いが薄れて、人同士が諍いを起す理由も減る。名案だろ? 世界を、朱(アカル)くしよう。血(ラブ)に染めた世界で、人と人は自由に自在に理解し合えるぜ。皆が立ち上がればきっとそれは力となり、運動はやがて革命になる。

 

 境界線(ボーダー)を破壊するんだ!
 そして、世界を朱(アカル)くして、光を照らそう!
 色に関係なく、り合おうぜ!

 

 キャッチフレーズが決まったところで、身元抹消(ノック)の動き(テンポ)がよくなり、正気に戻ったら綺麗に抹消完了(デリート)していた。

 

サマヨル:お見事です

 

バーキン:いい試合(スコア)だったろ?

 

サマヨル:最前列の特等席(VIPシート)で観戦できました

 

バーキン:仕事(ミート)するか?

 

サマヨル:ええ 最高の試合(グッドジョブ)の思い出に
場外へ特大の直撃(ホームラン)をお願いします

 

バーキン:一つ聞かせてくれ

 

サマヨル:質問は約束違反ですよ

 

バーキン:それでもだ

 

サマヨル:いいですよ

 

バーキン:この骸(クソ)は何だ?

 

サマヨル:答えを知らされていない質問です

 

バーキン:じゃあ、聞き方を変えよう
 

の身元抹消(ノック)したって事は 照合に危険が孕む
危険の正体は?

 

サマヨル:答えがあると思いますか?

 

バーキン:質問してるのは こっちだ
アンタの番じゃない

 

サマヨル:答えが分かっていますね?

 

バーキン:だからよ 質問すんな

 

サマヨル:自分に自信がありますね?

 

バーキン:質問するなって云ってんだ!

 

サマヨル:怖いでしょ? ココが

 

バーキン:黙れ

 

サマヨル:じゃあ 教えてあげます

 

バーキン:云え

 

サマヨル:貴方の回答は間違っています

 

バーキン:止めろ

 

サマヨル:残念です
答えは教えません

 

バーキン:オマエ 誰だ?

 

サマヨル:サマヨルです

 

バーキン:だから 何者だ?

 

サマヨル:今度は私の質問の番です

 

バーキン:答えろ! 何者だ?

 

サマヨル:どうして バットマンになりたいのですか?

 

バーキン:え?

 

サマヨル:銃を使わない理由を答えてください

 

バーキン:バットが一番使いやすい

 

サマヨル:銃の方が簡単に仕事できます

 

バーキン:人それぞれだ

 

サマヨル:違います
バットマンになった理由があります

 

バーキン:理由など無い
バットの魅力だ

 

サマヨル:貴方はバットマンに憧れていた
本当はヒーローになりたかった
しかし 現実の自分の姿を本質的に知ってしまった
人より賢い貴方は 早熟期に世界を見渡すことができました
そのために 新しいバットマンを作り出すことしかできなかった

 

バーキン:オマエ 誰なんだ?

 

サマヨル:同士です

 

バーキン:ナメてんのか?

 

サマヨル:早くってください

 

バーキン:もういい…

 

サマヨル:楽園(グリーンランド)で待っています

 

 美しい打球(ホームラン)だ。

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7月2日 2:30am
ホラインズン・タワー建築現場にて。

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