ファミ通.comインディーゲーム

家庭用ゲーム機にPC、モバイルなど、近年、幅広いプラットフォームで盛り上がりを見せている“インディーゲーム”。自作・同人ゲーム、フリーゲームなど、いわゆる“インディーゲーム”の中から、担当のアンテナが「これは!」と反応した作品を紹介するコーナー。国内外を問わず、さまざまなタイトルをピックアップ。

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2.5Dで新たな空間認識に目覚める! 回転式シューティングの新境地『REVOLVER360 RE:ACTOR』【ファミ通インディーゲーム】

2014-04-07 10:00:00

●シューティングの新境地! 回転式シューティング『REVOLVER360 RE:ACTOR』

 注目のインディーゲーム作品をご紹介する“ファミ通インディーゲーム”。今回は、2013年・冬のコミックマーケットでリリースされた回転式シューティング『REVOLVER360 RE:ACTOR』をピックアップ!

タイトル:REVOLVER360 RE:ACTOR
開発元:クロスイーグレット
プラットフォーム:PC
ジャンル:シューティング

 個性的なインディーゲームの世界にも、ある種のトレンドというものがある。レトロなドット絵であったり、ボクセルによる3D表現であったりするが、“2.5D”もそういった“インディーゲームのトレンド”のひとつだろう。要するに2次元をベースとしながらも、奥行きのあるビジュアルやゲームデザインを取り込んだ作品に付される言葉である。

 有名どころでは、『FEZ』などが典型的。一見すると2Dのアクションゲームだが、左右のトリガーでステージを3次元的に回転することができる。もちろん、2Dゲームに奥行きの要素を取り入れること自体は、ビデオゲームの草創期から珍しくはない。古典的シューティングとしては『ゼビウス』の“ブラスター”だって2.5Dと言えるのではないか?

 だが、現代の2.5Dの流行は、単なる目新しさを狙っているわけではない。それよりも古典的ゲームジャンルの再解釈という意味合いが強いのだ。つまり、“奥行き”といった要素を取り入れることで、いまでは日の当たらなくなってしまったジャンルを復活させようという意図が強いというわけだ。

 2Dアクションと同じく、(いやそれ以上に)2Dのシューティングゲームはいまや日の目を見ないジャンルになってしまった。新作が発表されること自体が稀であり、その主戦場はほぼインディーや同人ゲームに移ってしまったと言える。だが結果として、同人ゲームからは多くのすぐれたシューティングゲームが誕生している。そして、その中から奥行きを取り入れた2.5Dによって、古典的STGの新境地を切り開くという発想が生まれてもおかしくない。



 そう今回、紹介する『REVOLVER360 RE:ACTOR』こそ、まさに2.5Dによってシューティングゲームの新境地を切り開いた傑作なのだ。

●回避不能な弾幕も回転すれば……

 『REVOLVER360 RE:ACTOR』(以下『RE:ACTOR』)は、2013年の冬のコミックマーケットでリリースされた。開発者のくろろ氏の言を借りると、本作のコンセプトは「避けられそうにない弾幕も、視点を回転させることによって避けられるようになる」というもの。言葉で説明するのはちょっと難しいので、動画や画像を参考にしてほしい。

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▲こんな凶悪な弾幕でも……。

▲見方を変えればこの通り!

 一見避けようがない扇状の弾幕も、自機を中心とした軸を回転させるとあら不思議! 奥行きがある360度の回転操作によって、激しい弾幕にも対処可能になるわけだ。さらに、一部の敵弾はレーザーによって弾消し可能。弾消しするとスコアアイテムが大量に発生するため、慣れたプレイヤーなら敵弾を吐かせた後、“回転→レーザー”という流れで、一気にアイテムを回収することも可能だ。

 この攻守一体となった回転というコンセプトは、前作の段階で既に完成されていた。2010年にXbox Live インディーズからリリースされた前作『REVOLVER360』は、斬新なアイデアとその完成度の高さから、マイクロソフトのXNAゲームソフトウェアコンテスト特別賞を受賞。単なる見た目のギミックに留まらず、初心者は弾幕をかい潜るために、上級者はスコア稼ぎのために回転を駆使するという、極めて洗練された2.5Dシューティングに仕上がっていた。

 それでは、本作『RE:ACTOR』は前作のコンセプトを引き継いだだけの続編なのか? 確かに新しく付け加わった要素は、全4ステージのアーケードモード、敵機やボス、背景のグラフィックス、細かなシステムなどであり、基本的なコンセプトはまったく変わっていない。しかしながら、『RE:ACTOR』を実際にプレイしてみると、あの完成度の高かった前作がプロトタイプに思えるほど、本作の出来栄えは段違いなのだ!

●ダイナミックなステージ構成で新たな空間認識に目覚める!

 まず、『RE:ACTOR』になって大きく変化したのはステージ構成だ。そもそも前作は、エンドレスのスコアアタックが中心。ステージ構成もシンプルでクリアーという概念もなかった。だが本作のメインは、全4ステージの“RE:ACTOR”というモードだ。明確なストーリーは描かれないが、3Dで作り込まれた背景や巨大なボスキャラの存在から、ハードな世界観が立ち上がってくる。

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▲ネオンの看板が立ち並ぶ中華街。

▲工場のダクトの中に潜入!

 舞台となるのは、巨大な歯車が回転する発電所、ネオン街が立ち並ぶ中華街、ダクトが入り組んだ工場など。これらの巨大建造物が立ち並ぶ近未来的なステージを、横方向だけではなく、360度あらゆる方向にスクロールしていく。正直、初プレイ時はあまりにもダイナミックなカメラワークに着いていくことがままならないほどだ。

 攻撃システムは、基本的には前作を踏襲。通常ショットとレーザーのほか、EMPショット、ホーミングが加わった。とくに自機の周囲のリング内でロックオンするホーミングは重要だ。背景にある3Dの建造物には多くの地上敵機が潜んでいる。接近して重なることで、これらの地上敵機をホーミングで破壊することが可能。

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▲強力なレーザーは防御手段でもある。

▲赤いマーカーは、ロックオンしてホーミングで破壊可能な地上敵だ。

 目まぐるしく変化するステージの中、敵弾を回転操作とレーザーでさばきつつ、カメラをぐるぐると回して地上敵機を探す。この独特なプレイ感は、従来の横スクロールシューティングの体験を大きく踏み越えている。いわばプレイヤーは自機の操作を通して、3D空間にある近未来的都市を平面で切り取って理解していくのだ。そして『REVOLVER360 RE:ACTOR』は、いつしかプレイヤーに新しい空間認識を目覚めさせる!

●初心者から上級者までカバーしたボリューム

 全4ステージというと、STGの中でもボリュームは少なく感じる。実際に通しプレイでも20分くらいでクリアー可能だ。しかしながら、本作にはさまざまなやり込みを可能にする要素がある。第一にいくつかの場面で出現する“分岐”だ。ひとつのステージにも複数のルートが存在するため、実質的なボリュームはステージ数の倍以上あると言ってよい。

 また、この分岐システムは、難易度選択がない本作において、事実上の難易度調整になっている。比較的に簡単なルートを選択してクリアーを目指すのもあり、敵弾が激しいルートを選択してスコアを稼ぐのもあり。プレイヤーは自分の力量に応じたルート選択ができる。

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▲分岐におけるルートの選択は、攻略やスコア稼ぎにおいても重要な部分となる。

▲チュートリアルとともにやり込みが可能なチャレンジモード。

 つぎに挙げられるのが“チャレンジモード”の存在だ。このモードでは、特定の条件をクリアーしていくことで、操作方法からスコア稼ぎの基礎までを学ぶことができる。さらに本編の中には登場しない高難易度のパターンも数多く含まれる。つまり、単なるチュートリアルに留まらず、初心者からスコアラーまでを射程に入れたものとして作られているのだ。ひとつひとつは1分にも満たない長さだが、現段階で40以上のチャレンジ(アップデートでさらに追加予定)が用意されている。

 そのほかにもオンラインランキング、リプレイアップロード、実績、Twitter連動といったSNS・やり込み機能が抱負に取り入れられている。じつのところ、これらの機能は昨今の同人シューティングでは標準的なものだ。とはいえ、シューティング初心者でも実績解除しながら攻略を進め、上級プレイヤーのリプレイ動画を見て、クリアーを目指すことが可能。シューティングに慣れないプレイヤーでも非常に入りやすく、スコア稼ぎに目覚めるきっかけにもなるという懐の深さは魅力的。青を基調としながら回転するUIも世界観とマッチしており、非常に充実した内容になっている。

●2.5Dによってシューティングの新時代を切り開く歴史的傑作

 とはいえ、本作の最大の魅力は本編の通しプレイだ。格段に美しくなった3Dの背景を縦横無尽にスクロールしていくのは、見ているだけでも圧倒的。レーザーのストックが6つに増えたこともあって、破壊の爽快感も向上している。道中のオブジェクトをホーミングで撃破しつつ、敵弾を一気にレーザーで相殺。ヘリコプター、蜘蛛、電車などをモチーフにした迫力満点なボスたちのデザインや登場演出も、シューティング好きにはたまらない。

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▲アイテム稼ぎの要素もあるレーザーの発射は極めて爽快!

▲大迫力の巨大ボスを、全方位から攻撃するのは非常に楽しい。

 しかしながら、そういったビジュアル面にとどまらない新しさが本作にはある。たとえば、ボス戦では画面を回転しながら、各パーツを順番に破壊していく。“パーツ破壊”は、それ自体としてはシューティングゲームの定番中の定番だ。だが、本作は“回転”という斬新なコンセプトを単なるゲームプレイのために採用するだけではなく、“パーツ破壊”という定番の演出と掛け合わせることで、2Dのゲームデザインと3Dグラフィックスを見事に融合させている

 つまり、奥行きを持った回転というアイデアを単なる思い付きやルールのひとつとして実現しているのではなく、“シームレスなゲームプレイを通してストーリーを描写する”というシューティングの本来のありかたまでに昇華させているのだ。この回転システムと緻密なステージ構成によるゲームの統一感は、『斑鳩』といった名作に匹敵する魅力を感じさせる。

 とくに第2ステージの道中は、本作でも屈指の名シーン。入り組んだ狭いビル街を抜けて、巨大なファンが回転する空間に一気に脱出。音楽もそれに合わせてテンションを落としつつも、再びネオンが煌めくビル街に突入して加速していく。プレイヤーはカメラを回転させながら、まさに360度から攻めてくる敵機を破壊して、都市を体で理解していく。ゲームの進行と背景、そして音楽が渾然一体となった『RE:ACTOR』はシューティング本来の喜びにあふれているのだ。

 前作の『REVOLVER360』は、Xbox Live インディーズとともにPC版がダウンロード販売されているが、本作『RE:ACTOR』はいまのところ一部同人ショップでのパッケージ販売のみとなっている。すばらしいゲームであるだけに、より多くのプレイヤーに遊んでもらいたいと思っていたところ、なんと先日のBitSummit 2014でPS4版のリリースが発表された!

 すぐれたインディーゲームがコンソールで遊べるようになるのは、ファンとしては喜ばしい限り。しかしながら、XNAで開発されているため、PS4に移植されてリリースされるのはまだ先の話のようだ。ぜひともいまのうちにPC版をプレイしてもらいたい。ひと足早くやり込んでおけば、PS4版のリリースとともに神プレイ動画を“SHARE”するのも夢じゃない!

※追記:本記事公開後まもなくして、公式サイト上にてPC版のダウンロード販売が開始された。サウンドトラックも収録して1200円とパッケージ版よりも買いやすい値段になっている。

■著者紹介:今井晋
大学院でロックを研究しつつ、音楽やゲームに関して執筆しているフリーランスのライター。インディーゲームと同じくらい同人ゲームも大好き。好きなジャンルはシューティングであるため、同人シューティングには人一倍の興味があります。