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「『ラグナロクオンライン』に足りないのは、ばかです!」~もしオンラインゲーム運営者がドキュメンタリー番組に出演したら(2/5)

ドキュメンタリー番組に取り上げられると、その業界がとても魅力的に見える。オンラインゲームを盛り上げるヒントが隠されている気がするので、『ラグナロクオンライン』運営チームに協力してもらってドキュメンタリーっぽい記事を作ってみた。

●『RO』に寄り添った連載記事“わくわくラグナロク”

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▲まずはこういう画だよな。

 「ゲーム雑誌の編集者として、いちばんオススメしなきゃならないのは『RO』だ」という使命感に突き動かされ、中村さんは連載記事を始めたいと上長に直訴。

 こうして始まった『RO』記事“わくわくラグナロク”は長期連載企画に成長。ほかにも特集記事やムックの制作もひとりで取り仕切ることになった。


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▲“わくわくラグナロク”はログイン史上最長の連載記事となった。

 中村さんはほかにも多数の担当タイトルを抱えていたため、『RO』のプレイに時間を割けない時期もあった。それでも『RO』に対するモチベーションは下がらない。それはなぜか。

 『RO』に接するうえで、中村さんはあるこだわりを胸に秘めていた。会社ではほとんど『RO』に触れず、プレイするのは自宅に帰ってから。彼にとって、あくまでもプライベートで遊ぶことが大切だったのだ。


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▲「生のプレイを見せたかった」だけにしたら変態みたいになったので“(情報だけだと味気ないから)”を足した。

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▲経費で落としたりはしない。ぐうぜん撮れていた自信満々な顔写真を使用。

 仕事とプライベートを切り分け、ある意味ではドライにゲームと接してきた中村さん。彼がプライベート側に置いた唯一のゲーム、それが『RO』だったのである。


●中村さん「必要ならつぎは私が解説しますよ」

 あるとき、中村さんに転機が訪れる。大規模な対人戦大会“RJC”で、2006年から解説を務めることになったのだ。


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▲中村さんは滑舌がよく、口も達者なので解説に向いているのだ。

 “大量の情報を咀嚼して、理解しやすいように順序よくアウトプットする”という行為は、記事作りにも似ている。大会終了後、広報担当者からメールで感想を問われた中村さんは「もう少し実況と解説で場を盛り上げてみては? 必要ならつぎは私が解説しますよ」と返信したのだという。すごい自信である。

 なお、密着取材している感を出すために、この辺から会議室以外の写真も使用する。「いろいろな場所でインタビューしているんだな」と思い込みながら読んでほしい。


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▲中村さんの出演の裏では多くのスタッフの苦労があったらしいが、それはまた別の話。

 RJC2006でついにプレイヤーの前に姿を現した中村さん。大会の賑やかし要員かと思いきや、知識が豊富でしゃべりも軽快。見ている人は「誰だこいつは」と思っただろう。

 ちなみに、中村さんの『RO』知識量は業界内に知れ渡っていて、取材でいっしょになったライターと雑談していた内容が、そのまま他メディアに載ったこともあるらしい。敵に塩を送りまくりである。


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▲前向き。

●ゲーム雑誌編集者から『RO』運営メンバーへ

 ログインは2008年5月発売号をもって休刊。中村さんはエンターブレインを離れることになり、担当していたメーカー各社に退職の連絡をした。

 この1通のメールがガンホーさんの偉い人の目に留まり、「うちに来てもらおう」という話に発展する。ドラマチックに表現するとこんな感じだろう。


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▲運命とか、仰々しい言葉を使う。

 「運命が、動いた」。日本語として微妙におかしい気もするが、読点を挟むと深い意味のありそうな言葉になる。

◆ボウリングでガターを連発していたが、最後に球の重さを変えた→運命が、動いた
◆目玉焼きにしょうゆをかけた→運命が、動いた
◆アイドルポスターにキスをしていたらお母さんに見られた→運命が、動いた

 悪くない。表現に困ったら今後も使おう。

 閑話休題。その後、さらに偉い人による面接を受けることになった中村さん。「ガンホーに入社してやりたいことは?」に対する回答がまたドキュメンタリー番組っぽくていい。


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▲“写真素材ぱくたそ”さんの素材を使わせていただき、面接を再現。

 ばかは少ないほうがいい気もするが、とにかくガンホー上層部は心を動かされた(それでいいのか)。

無事に入社が決まった中村さんは、エイプリルフール企画を始めとする飛び道具系を担当することになった。変なキャンペーンの陰には中村さんが潜んでいる。

 エイプリルフール企画なんかはゲーム系以外のメディアにも取り上げられやすいし、広報戦略の幅が広がったのは間違いないだろう。ばかが役に立っている。


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▲“写真素材ぱくたそ”さんより。ねぎを持った会社員。いい写真ですね。

 中村さんは入社3日で新施策に関するインタビューを某メディアから受けるなど、いきなり中核メンバー入りを果たしている。信頼を得るのが早すぎだ。

 現在の中村さんのおもな担当分野は、Webサイトやブログといった公式として情報を出す部分。テキスト執筆や情報収集には編集者としての経験がばっちり活きている。

 プレイヤーの動向をブログやSNSでチェックするうえで、重要なのは発言の背景を考えること。「○○みたいなアイテムがほしい」という意見があったとして、“なぜほしいのか”、“何が不満なのか”を突き止めないと、的外れな対応になりかねない。


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▲情報を分析したら、内容をチーム全体で共有。

 それと、もうひとつ気をつけているものがある。言葉だ。人は無意識のうちにネガティブな言葉を使ってしまう。Webサイト用の原稿などでは、可能な限り前向きな言葉に直しているという。

 たとえば、「○○と○○は禁止です」は裏返せば「○○と○○以外はオーケーです」と書ける。「18歳未満立ち入り禁止」よりも「18歳以上の方は入場できます」のほうが明るく感じる。


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▲この画像、バズれ!

 楽しい遊びを届ける業界なんだから、ポジティブな言葉を使いたい。「ばかには自信があります」とか言ってた人の口から出た言葉とは思えない。


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▲中村さんの半生に興味がわいた人はこちら。