現代のゲーム業界を舞台にくり広げられるお仕事マンガ。第13話まで無料公開中です。また、原作者であるサイバーコネクトツー松山洋(まつやまひろし)社長のエッセイ「デバッグルーム」も必読。マンガが収録されている単行本は、最終巻第7巻まで発売中。気になる方はぜひチェックしてみてください。
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【松山社長の死を予言した男】特別企画『ニーア』シリーズクリエイティブディレクター・ヨコオタロウ氏×『チェイサーゲーム』原作・松山洋社長の対談!
2021-08-16 11:00:00
「『チェイサーゲーム』のラストで松山さんは死にますね」
2年前に松山社長の死を予言した男がいた。
ヨコオタロウ氏その人である。
「その結末予想を聞いたときから、しかるべき時期にヨコオタロウ氏と対談をしたいと思っていたんです」と、松山社長は目を細めた。
ついにその対談が実現する。
ヨコオ氏と松山社長の『チェイサーゲーム』特別対談!
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(以下文中では、ヨコオ、松山)
――おふたりは、どのような関わりがあるのでしょうか。
松山:ヨコオさんといっしょにゲーム制作をしたことはないんです。じゃあどんなご縁かというと、イベントでの共演ですね。パッと思いだすのは、CEDEC+KYUSHU(コンピューターエンターテインメント開発者向けカンファレンス)というイベント内で自分がMCをしているステージにお招きしてお仕事の話を聞いたときや、ファミ通チャンネルでやっているゲームクリエイター座談会などに出演したときですかね。
――お互い、相手に対してどんな印象を抱いていますか。
ヨコオ:僕はずっと、「この人、なんで僕にタメ口を聞くんだろう」って。
松山:同級生やから、ええやん!
ヨコオ:そんなに親しくないでしょ(笑)
松山:今日はヨコオさんにサイバーコネクトツーに来ていただいてるわけですけど、ヨコオさんが到着したとき社員のみんなに
「ヨコオタロウが来たよ~」
って言ったら、ボソッと
「呼び捨てにしてる……」
って言ってたね。
ヨコオ:せめて来客があったときに、代表取締役として紹介の仕方があるのではないかって。それに、そこまで親しくないし……。
――松山さんはいかがですか。
松山:ヨコオさんと自分は同じ70年生まれなんですね。同じ世代のクリエイターは、顔出ししてメディアに出演しているのに、ヨコオさんはご存じのとおりいつもマスクをして、ブランディングに成功してスタイリッシュだなと。
ヨコオ:なんでこうディスられるのか。
松山:ディスってないよ。ブランディングに成功してるって褒めてるの。
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――そんな仲のよさそうな(?) おふたりですが! 以前、飲みの席でヨコオさんから『チェイサーゲーム』のお話をされたとか。
ヨコオ:物語を読んだときに、結末がどうなるか想像するのが好きなんです。ですから、単行本の1巻と2巻が出たときに、『チェイサーゲーム』の結末を予想して飲み屋でとつとつとお話をしたんですね。
松山:よく覚えていたね。
ヨコオ:その答え合わせをしたいので、『チェイサーゲーム』が早く終わってほしいです。
松山:おいっ!
――その時のことは、松山さんは覚えていらっしゃいますか。
松山:『チェイサーゲーム』はきっとこうなるという予想を語っていたのを覚えています。「社長の松山が死んだ後、サイバーコネクトスリーができる」と言われたような。
ヨコオ:僕のなかで、その結末は理論立ったものですね。そもそもドラマなどでは、偉い人が出張ってきて問題を解決、というのはあまりやってはいけない手法なんです。でも『チェイサーゲーム』を読んでいると、松山社長が問題を解決することが多いことに気付くわけです。だから、これは最後に向けての布石なんだろうと思いました。
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ヨコオ:おそらく物語の最後のほうで、松山さんが何かに失敗するのではないか?と予想しました。でも、松山さんは超自分大好き人間なので、「俺が悪かった」という終わりかたには絶対しなくて、おそらく外部的要因によって松山さんは仕方なく退場する形になるのだろうなと。そこで私が予想したのは、第四部あたりから松山さんの挙動がおかしくなり、じつはそれが脳腫瘍のせいだったという展開です。そして、余命いくばくかの松山さんがサイバーコネクトツーの社員に向かってこう言うんです。
「サイバーコネクトツーは俺の代で終わる。お前たちはお前たちで自由に生きろ」と。
そして、松山さんの死後に、遺志をくみ取ったキャラクターがサイバーコネクトツーを閉じて、サイバーコネクトスリーを作るというラストです。どうです!
――松山さん、いかがでしょうか。
松山:その時も答えたのですが、合っているところもあれば合っていないところもありますね。じつはですね、第四部のラストで「松山社長が生きていたら」というセリフがあるんです。
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ヨコオ:僕の予想、合っているじゃないですか!
松山:まぁまぁ。まだ死んだと確定したわけではないので、実際にこの後どうなるかは続きをご覧ください。
ヨコオ:でもこれ、誰もが松山さんは死ぬだろうと思います。が、ただ死ぬだけでは芸がないので、おそらく何かギミックが仕込まれていると思うんですよね。その驚かせのギミックは何だろうかと楽しみにしています。どうですか。
松山:答えないよ!!
更木といっしょに働いていた!?
――『チェイサーゲーム』の感想をお聞かせください。
ヨコオ:リアルだなと思うところと、ファンタジーだなと思うところ、両方ありますね。リアルなのは、たとえば更木の話で経理不正の話があったと思うのですが、実際にこんな人いたなとは思いました。
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松山:じつはその人をもとに、自分が出会った複数の人から要素をもらって付け足して作っているんだけどね。
ヨコオ:そうなんですか。実際に自分は更木といっしょに働いていたわけか。
――ファンタジーな要素はどういうところでしょうか。
ヨコオ:龍也たちの幼少期の話はファンタジーだなと思いました。5人の仲間がいて5人とも性格がバラエティーに富んでいるのに、全員がゲーム制作に対する意識が高いところですね。マンガ的な演出が入っているなと。それで思い出しました。これはクレームですが、過去の話が長いです。単行本第3巻で終わると思いきや、第4巻も過去の話だったでしょう? これは1巻に収めるべきですよ。龍也がどうなるかを早く知りたいんです。
身内を描いたコンテンツは正当な評価ができないなと思いました。
――ヨコオさんから何かお話があるとか
ヨコオ:今回お呼びいただいたのは、『チェイサーゲーム』の結末予想をするためだけではなくてですね。僕のことを描いている『真説ゲームクリエイター伝 ヨコオタロウ編』というマンガがあるんです。これを今回の記事の隅っこの方にURLでも載せていただければと思いまして。
――かしこまりました!
松山:自分も『真説ゲームクリエイター伝』をとてもおもしろく読ませていただいていますけれど、こんなところから始まるの?ってところから物語がスタートして、その後もだいぶ詳細に描かれているよね。
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ヨコオ:本来はこんな長くなる予定はなくて、最初は『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のゲームメイキングの話をマンガにしましょうという企画だったのです。それが、いまや半年連載しているのにまだ『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』作り始めてないですしね。
松山:齊藤陽介のような実在するゲームクリエイターのマンガ的なキャラクターとかおもしろいですよね。
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松山:それと、ヨコオさんの苦悩が、頭に増えていく“ひび”で表現されているところなど狂気じみていて、「またブランディングしてるわー」って思ったね。
ヨコオ:マンガができたあとに文字のチェックや事実確認などはしていますが、原作は以前に作家や編集の方と飲み会の場で説明をした自分の生い立ちをもとに構成してもらっているので、自分はマンガ制作にほとんど関わっていないんです。
松山:そうなんだ。
ヨコオ:なぜか作中にワラ人形を打っているシーンとかあるんだけれど、なんで自分は打っているんだろう?って原稿をもらって思ったりしますね。でも、記憶にないけれど、当時おそらく打っていたんだろうなって。
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ヨコオ:原作の先生に唯一伝えたのは、自分を美化して描いてほしくないということですね。結果、全力でディスられるマンガになりました。あと、僕にとってこのマンガはおもしろいけれど、それは身内が出ているからであって、一般の人がこのマンガをどう受け止めているのか気になります。身内が出てくるコンテンツのことは冷静に評価できないなと思いました。自分が原作をしてないから、なおさら感じました。
松山:モデルとなっている人のことを知らなくても、「こういう人なんだろうな」と読み手がわかるように描かれているとは思いますけどね。
ヨコオ:ある人に『真説ゲームクリエイター伝 ヨコオタロウ編』と『チェイサーゲーム』には如実に違うところがあると指摘されたことがあります。
「前者はトラブルの原因がすべてヨコオタロウ内部に起因していて、後者は全部外部からもたらされている」と。
それが自分と松山さんを表しているのかなと感じています。松山さんは“正しいものは強い”というようなイデオロギーをお持ちかと感じます。一方、自分は強い人は間違っているという前提で生きていて、ゲームクリエイターとして成功しており、ある程度の立場になっている自分がすることは間違っていると思っているんです。たとえばですが、『チェイサーゲーム』の声優事務所の回で、声優希望の子たちのうちほんのひと握りしか声優になれるわけではないとわかっているのに、養成所などをビジネスとして多くの子からレッスン代などを搾取しているような現状が描かれていました。
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ヨコオ:そうした構造はおかしいと感じているのですが、実際自分も生き残った声優さんと組んでゲーム作っていたりするわけです。他人事じゃないというか。その構造の上に立って自分も仕事をしているなとこの話を読んだときに改めて思いました。なので、『チェイサーゲーム』は自分の内面を掘り下げるのにいいきっかけになると思いました。
松山:私も同じように、ゲームを作ったりマンガを作ったりするけれど、感じかたや表現のしかたは同世代なのに全然違うと感じますね。同じ物語の解釈とかも話していてまったく違うのはおもしろいね。
ーー最後に、今後の『チェイサーゲーム』について思うことがありますでしょうか。
ヨコオ:原作はすでに書き上げているって聞いたけど、それにしてもこのマンガ第7巻で本当に終わるのかなって。と言うのは、以前に自分が『君死ニタマフ事ナカレ』というマンガの原作を書いていたときのことを思い出したんですね。執筆活動って、手を動かしているときには、すでに頭の中で結末が描き終わっているわけですよ。
ーー乱暴な言い方ですが、消化試合をしているような気分ですか?
ヨコオ:消化試合っていうか、最後にまとめる作業が辛いですね……。 松山さんは筆が進まないことはなかったですか。
松山:まったくなかったね。
ヨコオ:ゲーム制作やめてマンガ作ったほうがいいんじゃないですか? それはそれとして、龍也たちの幼少期の話は長すぎでは!?
松山:ちょうーどいいと思いますよ。ほかの人からもけっこう長いって言われたけれどね。
以上、ヨコオ氏と松山社長の特別対談でした。
そして対談の中にも出てきましたが、ヨコオタロウ氏の人生の“リアル”を描いた『真説ゲームクリエイター伝 ヨコオタロウ編』が、無料マンガ配信サービス『サイコミ』にて現在好評連載中です!
ゲーム好きのみなさまなら、実在するゲームクリエイターの方のデフォルメにされた姿に、思わず、
「こんなわけあるかーい」と、
ツッコんでしまいたくなること間違いなし! ぜひチェックしてみてください。
第53話の予告カットを公開!
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司会者「さぁ、最後の告白タイムになりました。おおっと、4番の龍也さんが12番さんの前で立ち止まったー!」
4番の龍也「一目見た時からあなたのことが気になっていました。」
5番の龍也「ちょっと、まったー!」
司会者「おっと、5番の龍也さんが告白に割って入りました~。 さぁ、12番さんの返答はどうなる!?」
緊迫した空気が流れる。
12番の松山「じゃあ4番さんと……。 ってそんなわけあるかーい。てか最後かもしんないんだからこんな茶番やめろ!」
次回『チェイサーゲーム』第53話『チェイサーゲーム(1)』は8月23日(月)配信予定です!