チェイサーゲーム

現代のゲーム業界を舞台にくり広げられるお仕事マンガ。2週に1度、月曜日配信予定。漫画掲載の翌月曜日には、原作者であるサイバーコネクトツー松山洋(まつやまひろし)社長のエッセイ「デバッグルーム」を配信。単行本1・2巻が好評発売中!

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【マンガの裏側を語る!】『チェイサーゲーム』原作コラム デバッグルーム第25回

2020-04-13 11:00:00

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第25話  “トランスミッション(2)”

オーディション

【オーディションが始まった】

この手のオーディションは頻繁に開催されています。作品に合わせてオーディションを実施することが多く、今回の場合は、“来年の新作アニメのために新人オーディションをやりましょう!”というものです。

作中でカナンたち応募者が手に持っている台本には、『美少女魔法戦隊ぷにきゅ~』というロゴが印刷されています。あくまでも裏設定的な話ですが、来年放送予定の新作アニメのオーディションをカナンたちは受けているということになります。もちろん、『美少女魔法戦隊ぷにきゅ~』というアニメは架空の作品です。

所要時間


【所要時間はひとり『5分』】(“主要時間”と本文で書かれているのは誤字なので単行本収録時に修正します)。

作中でユーキが「たった5分で審査なんてできるもんなのか?」と言っていますが、正直5分もいらないです。

声を出し始めて数秒で実力は判断できます。その人がどれだけ訓練してきて、どれだけ声が出ているのかは一瞬で判断できるということです。ひとりに5分もかけているのは、オーディションという体裁と本人たちに納得感を得てもらうためのある種の儀式だと思ってください。合否の判断は瞬間で終わります。

こぶし


【声優こぶしのぶゆき】

今回取材協力いただいたこぶしのぶゆきさんは実在する声優さんです。声優歴20年のベテランで賢プロダクションに所属しています(社長ではありません)。

取材を通していろいろとお話を伺いました。じつは、こぶしさんはアニメ制作会社で制作進行を数年経験され、それから役者・声優としてデビューされていてちょっと変わった経歴の持ち主です。

「アニメ会社での制作進行を経験していたので、声優として仕事をしていてもその作品にどんな人が携わって制作されているのかがわかる」とおっしゃっていたのが印象的でした。

保護者


【『保護者』なのに何も調べていない】

今回のエピソードでいちばん伝えたいメッセージは、じつはこの部分だったりします。

これは声優という職業に限った話ではありません。すべてのエンタメビジネスに携わる仕事を志望すると。周りの人は「やめておいたほうがいい。できるの? 本当になれるの? きびしい世界だと思うよ?」って言ってきます。しかし、それはほぼイメージだけで発せられた言葉です。

心配しているように見えて、その実態を何も知りません。「何の保証もないんだから厳しくない?」なんて意見は、夢を追っている人に対してのただの侮辱です。また同時に、何かを目指す人はその業界に対する理解を持ち続け、自分の周りにいる人から安心して応援してもらえるような状況を作る必要があるということです。

養成所


【養成所の実態】

意外と知られていない声優業界と養成所の仕組みを、今回の『声優編』では取り上げています。これは取材したこぶしのぶゆきさんの話だけではなく、複数の声優さんから話を聞いたうえで表現させていただいています。

40名

【定員40名】

作中で表現している『こぶしプロダクション』は架空の事務所で、そんなに大きくない規模の会社です。ですからじつは当初は“定員20名程度”で設定していた。しかし、ネームを見たこぶしさんから、「むしろ逆ですよ、定員が少ないと売上(年会費)が稼げず、小さい事務所ほど経営がたいへんですから、やはり40名くらいいないときびしいです」とご指摘をいただき修正しました。

また、作中でも語られていますが、40人いて年間2名ほどしか事務所契約に至らないというケースはありますが、年度によっては20名と契約することもあると伺っています。作中では演出上、極端に少ない実績のほうで表現させていただきました。

40万


【年40万円】

月額だとおよそ33,000円です。この学費を支払いながら、定期的に事務所に通い、レッスンを受け、先輩声優の講義を聞き、オーディションを受けたりするのが養成所に通う人たちの日常です。

もちろん専門学校や大学ほど毎日講義やレッスンのカリキュラムで埋まっているわけではありません。ですから、それ以外の時間はほとんどの人が生活のためにアルバイトをやっています。ただ、養成所に通う人たちが同時に抱えているのが“オーディション問題”。

基本的にオーディションはノーギャラです。オーディションの予定が決まるとアルバイトを休んで参加するわけですから、収入は減ります。生活のためにアルバイトを優先するとオーディションを受けられないし実績も作れないという生活的矛盾を抱えているのです。

気分


【気分だよ】

個人的にはまったく理解できない感覚ですが、これこそが実態です。“養成所に通って声優の卵として夢を追いかけている2年間”を楽しむことでほとんどの人が「もういいや、満足」となってしまうということです。

もちろん、現実のきびしさ知ることで「やっぱり自分には無理かも」と諦める人も多いですが、ほとんどは最初からそれほど本気ではないということです。「夢を追いかけるとはどういうことなのか?」という、本作が根底に持っているテーマは次回以降でさらに掘り下げていきますのでお楽しみに!

26話予告カット


【第26話の予告カットを公開】

予告カットを見ると、こぶしさんに対して、無邪気に声優のことを尋ねているタツヤの姿が。第25話ではまだまだ全貌が見えていない声優業界に関する実情が次回語られることになりそうですね。第26話「トランスミッション(3)」は4月20日(月)公開予定です。お楽しみに!