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『ライフ イズ ストレンジ』シリーズを生み出した“DONTNOD”の社名に込めた意味、今後の目標は――オスカーCEOに訊く
公開日時:2020-04-28 13:00:00
世界のゲームファンに衝撃を与えたアドベンチャーゲーム『Life is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』の待望の続編『ライフ イズ ストレンジ 2』も早いものでソフト発売から約1ヵ月。そんな『ライフ イズ ストレンジ 2』情報第7弾は、開発を手掛けたDONTNOD EntertainmentのCEO オスカー・ギルバート氏(Oskar Guilbert)のインタビューをお届け。
※インタビューは2020年1月に行ったものです。
DONTNOD Entertainment |
社名の由来†
――DONTNODは設立から10年ちょっと経っていますが、どういった経緯で設立されたスタジオなのでしょうか?
オスカー 私を含めた何人かがもともと勤めていたユービーアイソフトを退職して、5人くらいの仲間でDONTNODを立ち上げました。当時のメンバーはプロデューサーとアーティスト、脚本家、デザイナーなどがいて、そのメンバーで作ったのが『Remember Me』です。
――『Remember Me』は日本では未発売なのが残念ですね。
オスカー そうですね。記事でそれを書いてくれれば、(パブリッシャーの)カプコンさんも考えてくれるかもしれませんね(笑)。
――社名の“DONTNOD”は回文のようになっていますが、社名の由来を教えてください。
オスカー おっしゃる通り、どちらから読んでも“DONTNOD”になっています。スタジオ設立当時はメンバーがみんな若かったので、深夜2時くらいまでお酒を飲みながら騒いでいたときに、そういった遊びのある名前にしようと話していたのが理由のひとつです(笑)。いちばんの理由は、“NOD”は頷くという意味なので、“DON'T NOD”、つまり、「頷くな」。何事に対してもイエスマンにはなるな、自分のやりたいことを自分が選んだ道でやれ、という意味を込めています。
――独創的な作品である『ライフ イズ ストレンジ』などに、そのスピリットが込められているように感じます。
オスカー 革新的、創造的であれ、といったコンセプトは一般の作品と異なる部分かもしれませんね。
――スタジオのトップとして、ご自身はどんなCEOだと思いますか?
オスカー 私の部屋には“Final Boss”(ラスボス)と書かれていますが(写真参照)、決して怖がられるようなタイプではなく、自分では気さくなタイプだと思っています(笑)。
フランスのゲームやDONTNODの強み†
――『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの成功や今年発売予定の『Twin Mirror』、『Tell Me Why』など、アドベンチャーゲームに強いスタジオというイメージがあります。やはりスタジオとして得意なジャンルだと意識していますか?
オスカー そうですね。アドベンチャーゲームには強いと思います。ただ、どちらかと言えばアドベンチャーゲームというよりも、“物語”がいちばん強い会社だと思います。『Remember Me』はアクションゲーム、2018年にリリースした『Vampyr』もアクション要素を取り入れた作品で、アドベンチャーゲーム以外も手掛けてきましたが、やはりストーリーが強いということは共通していると思います。
『Vampyr』(日本未発売) |
――フランスにはユービーアイソフトやクアンティック・ドリームなど有名なスタジオがあり、DONTNODも含め、物語性のある作品が得意な傾向にあるように感じますが、ギルバートさんはどう感じていますか?
オスカー 確かに、フランスのゲーム会社は物語に強いというのは、私もまさにそうだと思います。ユービーアイソフトはゲームとしてはオープンワールドの作品が多い印象ですが、そのオープンワールドのゲームにも深い物語を取り込んでいますし、クアンティック・ドリームも『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』や『Detroit:Become Human』などを見ればわかるように、物語がすごく強い。ただ、2000年ごろのフランスのゲーム会社はまた少し状況が違っていて、当時はどちらかと言うとビジュアルなどに力を入れていた印象ですね。そこから、日本のゲーム会社などからゲームデザインや表現、物語などのいい部分を取り入れてきた結果、いまのような状態になっているという感じです。
――DONTNODが作品を作る際に、物語以外に重視しているポイントは何かありますか?
オスカー 設立当時から、ゲームを作るときには大事にしている柱がいくつかあります。作品自体のプロダクション、ビジュアル表現、物語、そしてゲームデザインですね。これらの柱がDONTNODの中でポリシーとなっていて、新しいゲームを作ったりチームを編成したりする際には、各要素の柱となるような人をコアメンバーとして集めています。
――DONTNODの設立から現在までのあいだにあった印象的な出来事があれば教えてください。
オスカー いろいろあるのですが、おもしろいエピソードで言えば、イギリスのブライトンでDevelop Awards 2015に、『ライフ イズ ストレンジ』が2部門でノミネートされていたので、授賞式に私やラウル、ミシェルなどと行ったんですが、「ひとつでもアワードを取れたらすごいね」といった話をしていて、ひとつ賭けをすることにしたんです。そこで私は、「もしアワードをふたつ取ることができたら、(会場近くの)そこの池で泳いでみせるよ」と言ったのですが、アワードをふたつ受賞してしまったんです(笑)。
――実際に泳がれたのですか?(笑)
オスカー はい(笑)。季節的に少し寒い時期だったのですが、ちゃんと泳ぎましたよ。日本ゲーム大賞2016でゲームデザイナーズ大賞を受賞したこともすごくうれしかったですし、『ライフ イズ ストレンジ』が成功したことで、仕事のコネクションも増え、少し前に有限会社から株式会社に変わりました。会社の規模が大きくなったというのも、とても大きな出来事ですね。
今後の作品と目標†
―― 現在、DONTNODの開発ラインはどれくらいあるのですか?
オスカー 現在、5つのタイトルを並行して開発しています。『ライフ イズ ストレンジ 2』のほかには、『Twin Mirror』(日本発売は未定)と『Tell Me Why』、『Vampyr』を開発したときに協力してもらったフランスの会社と企画中のアドベンチャーゲーム、あとは完全に何も言えないタイトル、という感じです。
――今年発売が予定されているふたつのアドベンチャーゲーム『Twin Mirror』と『Tell Me Why』の特徴について、簡単にご説明いただけますか?
オスカー 本来であれば各クリエイティブ・ディレクターが答えるべきですが、私からご説明すると、『Twin Mirror』はサイコロジカルホラーの物語が展開するアドベンチャーゲームです。『ライフ イズ ストレンジ』よりもダークな内容で、対象年齢も少し高めになっています。主人公は30代の男性で、彼は心に何かしらの問題を抱えています。その主人公のまわりで殺人事件などが起き、巻き込まれていくことになります。精神的な問題のせいで、どんどん自分が何者なのかわからなくなっていく。「もしかしたらこの殺人は自分がやったんじゃないか!?」、「いや、真犯人がいるはずだ」という感じの、サスペンス要素、ホラー要素のある作品です。
As Sam navigates the web of fraught relationships he left behind in Basswood, the Double watches with concern. https://t.co/VPL5uqgJgj
— Twin Mirror (@TwinMirrorGame) 2019-01-25 01:30:11
『Tell Me Why』は、若い双子が主人公で、そういう意味では『ライフ イズ ストレンジ』と共通する部分はあるかもしれません。(パブリッシャーの)マイクロソフトが掲げている目標のひとつとして、“Game For Everyone(どんな人でも楽しめるようなゲームを作る)”というものがあって、それはDONTNODとしてもすごく共感できるので、そこを目指して作っているタイトルです。『ライフ イズ ストレンジ』同様に超能力を扱っていて、双子に強力なリンクがあり、それを使うことでお互いの記憶を体験することができます。この超能力を、物語を動かすうえで取り入れている作品になっています。
――DONTNODとして今後やっていきたいことはどんなことですか?
オスカー 直近で言えば、次世代機のリリースが控えていますので、まずはそれに向けて準備を進めるのが目標になると思います。次世代機ではグラフィックやゲームプレイ、ゲームエンジンなどの技術レベルも上がっていくので、そういった部分に対応するための準備は重要ですし、DONTNODにいる優秀なクリエイターたちが自由に作品を作るための予算の確保や環境作りは、これまで通り続けていかないといけないことですね。また、現在はNetflixなどストリーミングでさまざまな場所で手軽にドラマを観る人がどんどん増えてきています。ゲームについても物語を重視した作品は今後も広まっていくと考えられますので、より力を入れていきたいですね。ゲームをどこでもプレイできる、という流れも加速すると思うので、そういった社会の変化みたいなものも考えてスタジオの運用をしていく必要があると思います。
――最後に、日本のゲームファンに向けてひと言いただけますか?
オスカー フランスは日本に次いで大きなマンガの市場で、フランス人の多くは日本の文化に触れて育ってきています。ですので、フランス製のゲームである『ライフ イズ ストレンジ 2』が日本語吹替で日本の皆さんの手に届くことを本当にうれしく思います。我々が日本の文化に触れて感動したように、日本の皆さんにもフランスのゲームを遊んでいただいて、楽しんでいただけたらと心から思っています。
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