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描きたかったことはすべてエンディングに集約――シナリオ担当ジャン=リュック氏インタビュー
公開日時:2020-04-08 18:00:00
世界のゲームファンに衝撃を与えたアドベンチャーゲーム『Life is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』の待望の続編『ライフ イズ ストレンジ 2』。そのソフト発売後、ネタバレを含む『ライフ イズ ストレンジ 2』情報第4弾は、開発を手掛けたDONTNOD Entertainmentからシナリオを手掛けたジャン=リュック・カノ(Jean-Luc Cano)氏のインタビューをお届け。
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シナリオライター:ジャン=リュック・カノ氏(文中はジャン=リュック) |
すべてのエンディングに何らかの希望が†
――ジャン=リュックさんは『ライフ イズ ストレンジ』シリーズではおもにシナリオを担当されていますが、『Remember Me』でも開発に?
ジャン=リュック はい。『Remember Me』ではモーションキャプチャーやライティング、脚本、シネマティックのディレクションを行いました。本作でもモーションキャプチャーのディレクターをしています。『Remember Me』が完成したころに、会社から私とミシェル、ラウルの3人で、「何かやりたいゲームを作ってみたら?」といったことを言われ、それが『ライフ イズ ストレンジ』の始まりです。じつは『Remember Me』の制作をしていたときに、私とミシェルが新しいスタッフの面接を行ったのですが、そのときの面接で入ってきたのがラウルなんですよ。
――そうだったんですか。そのラウルさんが、『Remember Me』の記憶を改変する要素が『ライフ イズ ストレンジ』につながったとおっしゃっていました。
ジャン=リュック はい。現実を変えるような要素があったので、それはつぎの作品でも扱いたいと考えました。また、当時のTelltale Gamesの『ウォーキング・デッド』のように、物語を主軸にしたゲームを作ってみたかったですし、テーマとしてはティーンエイジャーの物語にしよう、というアイデアも出てきました。
――そうして制作された『ライフ イズ ストレンジ』は世界中で大きな反響を呼び、各国のアワードも数多く受賞しました。
ジャン=リュック 『ライフ イズ ストレンジ』が大成功したのは驚きでした。何よりうれしかったのは商業的な成功ではなくて、ファンの方々からの「自分の人生がいい方向に変わった」というメッセージでした。ファンのコミュニティもどんどん大きくなって、『ライフ イズ ストレンジ 2』を作るうえでは、プレッシャーにもなりましたけど、やはりうれしかったですね。
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――今回のストーリーでは兄弟がメキシコを目指して旅をします。メキシコ国境に壁を建設するといったトランプ米大統領の公約などで、話題となりましたが、そうした社会情勢も、本作に大きく影響していると思うのですが。
ジャン=リュック 『ライフ イズ ストレンジ』シリーズのコンセプトとして、超能力の存在は別として、“リアルな物語”を描くというのがあります。ファンタジーの世界のまったく別の問題ではなく、現実の世界で起こっている問題と同じようなことを扱うことで、プレイヤーとゲームとをリンクさせたい、というのがコンセプトにあるんです。
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――本作は、選択肢によって物語が変化していきますが、その選択は一方に偏らないものを、ということを意識して作っているのですか?
ジャン=リュック 『ライフ イズ ストレンジ』では、選択結果は偏らなかったのですが、それは狙ったわけではなく、たまたまそうなりました。『ライフ イズ ストレンジ 2』ではエンディングは大きく分けて4種類あって、同じように究極の二択があり、そこからダニエルへの接しかたによってもう1段階の分岐があります。本作でも回答がバランスよくバラけることを望んでいたわけではなく、結果としてはダニエルのモラルが高いほうが多数派になりました。これは、ショーンがダニエルに対してやさしく接していたという結果なので、うれしかったですね。
――それぞれのエンディングは未来がガラッと変わっていて、すごく興味深かったです。
ジャン=リュック そう言っていただけると、すごくうれしいです。どのエンディングもまったく違う内容ですが、共通しているのは、どれもほろ苦いというか、いい部分もあれば悪い部分もあって、完全にいい、完全に悪いといったものはないんです。そこは本当に気を付けて作った部分です。個人的に実現できてよかったと思うのは、4つのエンディングすべてに何かしらの希望を持たせられたことですね。
あのキャラが『2』に登場した理由†
――物語はどのように作っているのですか?
ジャン=リュック 『ライフ イズ ストレンジ』に関して言えば、プロットはほとんど私が書き、『ライフ イズ ストレンジ 2』では、2015年の12月、前作の最終エピソードの配信が終わった直後から、次回はどんな物語にしようか、というのを私のアパートでミシェルやラウルと話し合っていました。
――当時から次回作の構想はあったんですね。
ジャン=リュック はい。そこで3人でアイデアを出し合って、たとえば人の心を読む超能力はどうか、主人公が死んでいて、幽霊になった状態で人や物に働きかけるのはどうか、などのアイデアが出るなかで、ひとまずふたりの兄弟の物語はどうだろうか、という結論に至りました。そこから、兄弟なら主人公は兄で、小さい弟がいて、その弟が超能力を持っている。兄弟がどういう風に誰と出会って、どんな経験をするのか……みたいなことを議論しながら細かく要素を出していき、それをもとに私が最初から最後までひと通りのプロットを書き、そのプロットをまたミシェルやラウルに見せて、議論を重ねてブラッシュアップしていった感じです。
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――たとえばですが、兄弟ではなく姉妹などのパターンは考えましたか?
ジャン=リュック 最初に今回の物語にいちばん合うのは兄弟だ、と決めていたので、そこは変わりませんでした。『ライフ イズ ストレンジ』で最初から女の子ふたりの物語というコンセプトがあったのと同じですね。
――エピソード配信のゲームだと、各エピソードごとに山場を作ったり、ラストはつぎのエピソードへの引きを用意したり、といった部分で苦労があったのでは?
ジャン=リュック そういった苦労はとくにありませんでした。私はもともと映画や連続ドラマの脚本も書いているので、まさに連続ドラマの書きかたをゲームに落とし込んだ形なんです。まず全体の大まかなストーリーがあって、それをひとつひとつのエピソードに区切って、エピソードの中にオープニング、起承転結、そして願わくばエンディングで次回への引きを持たせる。この構成はまさに連続ドラマのエピソードを作る手法で、これまでに経験してきたことだったので、そこまでたいへんではありませんでした。
――エピソード5では前作に登場していた●●●●●が登場しますが、なぜほかのキャラクターでなく彼だったのでしょうか?
ジャン=リュック 彼を選んだ理由は、大きく分けてふたつあります。最初のコンセプトとしては、前作のキャラクターの誰かをサプライズで登場させたいというものがありました。そこで誰を出すかと考えたときに●●●●●を選んだのは、まず彼は前作のどちらのエンディングの場合でも生きている可能性が高いからです。つぎに、エピソード5でカレンがショーンに、まわりの社会や枠組みにとらわれず、自分の生きたいように生きればいい、みたいなことを言いますよね。カレンはそういう立ち位置の人物で、そのカウンターの立場となる人間、人はひとりでは生きていけないから、まわりをまったく気にせずに生きるのはダメだよ、と言える人物が欲しかったんです。そう考えると、そういう性格なのは●●●●●だ、という話になったので、彼が登場することになりました。ショーンとダニエルは、エンディングに向かう直前、カレンと●●●●●という、まったく正反対の立場にいる人間から、人生についてさまざまな助言をもらうんです。ここはすごくおもしろいポイントだと思います。
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――制作中に印象的だったエピソードやお気に入りのシーンなどはありますか?
ジャン=リュック エピソード3でメリルという人物が出てきますが、彼の後半のシーンのモーションキャプチャーは、私が演じています(笑)。お気に入りのシーンは、好きなシーンで言えば、先ほども言った4つのエンディングですね。
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メリル (Jonathan Merrill) CV: 松田健一郎 |
――ラウルさん、ミシェルさんもそうでしたが、エンディングは皆さん、本当に思い入れがあるんですね。当然と言えば当然ですが。
ジャン=リュック そうですね。自分たちが開発初期からやりたかったことのすべてがエンディングに集約されていて、本当に作りたいと思っていたものが作れたので、エンディングは本当に気に入っています。あとは、エピソード1の冒頭部分ですね。ショーンとダニエルがいて、ライラがいて、父親のエステバンがいて、彼らは日常生活を送っていくわけですけど、突如それが打ち切られてしまう。その出来事や流れを含めて、オープニングはすごく好きなシーンです。
――では最後に、発売を迎えた日本のファンにひと言お願いします。
ジャン=リュック 今回、設定をガラッと変えましたし、主人公も変更しました。マックスとクロエが好きだった人はたくさんいると思いますが、制作側としては、ストーリーは前作よりもさらに強いメッセージ性を持ったものになっていると思うので、ぜひ『ライフ イズ ストレンジ 2』をプレイして、過去に皆さんがマックスとクロエを好きになったように、ぜひショーンとダニエルを好きになってほしいですし、きっとそうなるだろうと思っています。
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