こちらの記事でお伝えしている『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』の“マルチプレイヤー プレス ブリーフィング”の翌日には、同作の開発を手掛けるSledgehammer Gamesのスタジオツアーが実施された。ここでは、そのツアーの模様をキーパーソンのインタビューとともに紹介しよう。
Sledgehammer Gamesは、アメリカ・サンフランシスコにある閑静なオフィス街にスタジオを構える。ビルのワンフロアがSledgehammer Gamesのスタジオとなっており、『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』では、約230人が開発に携わったという。その中に日本人ふたりが開発スタッフとして働いていた。スタジオの忙しさはすでにピークを超えたのか、少し落ち着いた雰囲気(開発パートによっては修羅場のところもあったのかもしれないが)。いかにもアメリアのオフィスらしい和気あいあいとした空気が印象的だった。
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ツアーに先駆けて、スタジオ内にあるシアタールームで同スタジオの概要と『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』のキーパーソンが紹介された。以下は、そのキーパーソンが仕事について紹介した内容を抜粋。
・Chris Stone氏(Animation Director)
Chris氏は過去に『Dead Space』の開発に携わり、『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』でもアニメーションディレクターを担当。『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』では映画『アバター』を撮ったスタジオでパフォーマンスキャプチャを行ったという。そこでは筋肉の動きもスキャン(顔のスキャンは数100回行ったとか)。本作に登場する映画俳優Kevin Spaceyもすごく協力的で、いろいろな表情をしてくれたのだとか。「Kevinの圧倒的な表現力には驚きました。本作のキャラクターにピッタリだと思います」(Chris)。また、表情のキャプチャには、HDカメラを使用し、これを使えば従来のドットを打たなくても動きをキャプチャできるのだとか。とても労力がかかるが、そのおかげでリアルなキャラクターを作り上げることができたという。
・Dan氏(Audio Director)
Dan氏もChris氏同様、『Dead Space』の開発に携わり、『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』の開発に携わっている。サウンドに関しても次世代機でできることが増え、ほぼすべてのサウンドを一新したという。『コール オブ デューティ』シリーズでは爆発音や機械音、射撃音などを大量の音のレイヤーを重ねて、ひとつの音を作り出しているという。「『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』は未来が舞台ですがSFではありません。ですので、音もSFにならないように、現実の音を素材にすることが多かったです。たとえば、Walker(多脚戦車?)はスタッフのひとりがゴミ収集車の音にインスパイアされ、それを収録して作ったものです。街に出て『コール オブ デューティ』のサウンド用に録音していいか、と聞いて回るのも我々の仕事のうちのひとつです(笑)」(Dan)。実際の武器の音も収録しているが、それをそのまま使わず、撃った時に感じる音(自分で撃つと骨に伝わる振動もあるので、回りとは若干違う音に聞こえる)を再現するため、いろいろアレンジしているのだとか。
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■ふたりのディレクターにインタビュー†
ツアーの締めくくりには、プロダクト・デベロップメント・ディレクターのAaron Halon氏とクリエイティブ・ディレクターのBret Robbins氏に複数メディアの合同インタビューという形で話を訊くことができた。まずはAaron氏のインタビューからお届け。
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――Activisionや他のスタジオと技術共有はしていのですか?
Aaron もちろんです。ただ、いまは開発に集中しており、スタジオ内の異なる役割のチームどうしで情報交換することのほうが多いですね。とくにゲームエンジンは、さまざまなチームの技術が組み合わさってできていますので、チームどうしのコミュニケーションは重要です。
――次世代機になってグラフィックや描画する技術も高度になり、苦労もあったと想像します。さきほどパフォーマンスキャプチャの話もありましたが。
Aaron 次世代機向けに開発することになったころは、まだ実物がなかったので、PC上で次世代機のスペックを想定したエミュレーションを行いました。最初のころは、グラフィックやオーディオも含め、そこで出来そうなことを検討していきました。次世代機ではリアルなグラフィックが実現できるため、こだわろうと思えば、時間がいくらあっても足りない。チームのみんなはこだわりが強いので、「もうここまでにして、次に移ってもいいんじゃないかな……」と言うのも私の仕事のひとつでした。渋い顔をされるんですけどね(笑)。
――(開発期間の)3年では足りなかったのでは?(笑)
Aaron 完璧のさらに完璧を目指すなら、そうですね(笑)。ただ、開発に5年も10年もかかると、その間に市場の状況も変わり、作り直さなければならないところもいろいろと出てくるでしょう。そうするといつまで経っても開発は終わらないので、3年くらいがいいかと思います。
――InfinityWardとともに開発を手掛けた『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』と比べて、いちばん変わったところは?
Aaron Infinity Wardとの共同開発ではいろいろなことを学びました。『モダン・ウォーフェア3』(以下『MW3』)は3部作の最後の作品でしたから、ストーリー&演出を含め、さまざまな点でシリーズを締めくくるに相応しいものになっていました。一方、今回の『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』は、まったく新しい作品ですので、ストーリーを中心として、『MW』シリーズの枠にはとらわれない作品です。『MW3』では『MW』から大きく外れたものは作れなかったですし、『MW』ファンの意見も集めて、『MW』とは何かを常に考えていました。時間をかけてイチから作ることができたことも『MW3』とは異なるところで、本作の大きな要素のひとつである外骨格も新たな作品だからこそ採用できたものです。
――昨日は小~中規模のマップでしたが。
Aaron 今回公開したマップは、最初からそのつもりで作っていたものです。外骨格を使ったスピーディーな試合展開を楽しんでもらいたかったのですので。
――Xbox One版とPS4版、どちらを先に開発したのですか?
Aaron 両機種とも並行して開発を進めました。
――昨日のマルチプレイヤーのプレスブリーフィングでの手応えは?
Aaron イベントの前半は参加できませんでしたが、皆さんがプレイしているところを見る限り、皆、楽しんでくれていたと思います。いままでの『コール オブ デューティ』とどう違うのか確かめながらも、ゲームに没入して盛り上がっている方も多く、手応えは感じました。個人的には見ていてとてもエキサイティングでしたよ(笑)。
続いて、Bret Robbins氏のインタビュー。Bret氏はストーリーやレベルデザイン、演出など、キャンペーンを中心にディレクションを担当。
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――本作ではひとりの主人公の視点から物語が進むとのことですが、これは最初から決めていたのですか?
Bret はい。複数の視点だと、いま自分が誰なのか、どこにいるのかがわかりにくくなり、没入感を削ぐことになる。本作はストーリーに力を入れているので、ひとりの主人公で物語を描くことは決めていました。また、物語が進むにつれ、外骨格の性能が上がっていくのですが、主人公がひとりだとパワーアップしていくことが実感できるというのも理由のひとつです。
――外骨格の導入でマップデザインの作りかたも変わったのでは?
Bret そうですね。開発に3年かけられたので、とりあえず試してみて、何度も失敗して、その経験からよりいいものを作ることができました。
――本作の舞台は2054年の世界ということで、現代よりずっと技術が進んでいます。その時代の技術を何を参考に想定したのですか?
Bret 本作の時代の基盤となるテクノロジーは、現在、近い未来を想定したテクノロジーからさらに40年後に実現していそうなものを想定して描いています。主人公のMitchellはアメリカ海軍からスタートして、その後、Atlasと呼ばれる民間軍事会社に入るのですが、Atlasが持っているテクノロジーは海軍よりも進んでいるという設定ですので、それぞれの組織で違った技術を使っているところも見どころのひとつだと思います。
――以前、デルタフォースにいた人にアドバイスをもらっていると聞いたことがありますが、そのような調査はどのくらいゲームに反映させるのですか?
Bret 複数の軍事アドバイザーと相談していて、たとえば、ネイビーシールズにいた方だったりはデルタフォースのコマンダーだった方だったり。言葉や動き、ハンドシグナル、思考など、とにかく本物の兵士に見えるようになんでも相談しています。
――未来の武器についても?
Bret 彼ら(軍隊)は現代の最新技術を使っているので、アイデアを聞いてもらって、未来に実現しそうかどうかアドバイスをもらっています。あとは戦闘においてどういった装備が欲しいかも聞きますね。そういう意味では彼らこそ近未来の技術にもっとも触れていると言ってもいいかと思います。また、未来の戦争について研究していたDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)にいた方からも話を聞きました。テクノロジーがどこに向かって発達するのかだけでなく、近未来には何がきっかけで、どういう戦争が起こりそうかということをうかがいました。それはすごく参考になりましたね。
――トレーラーでフルボディーアーマー(重装備の甲兵)が出てきますが、あれは外骨格から発展したものなのですか?
Bret はい。AST(Armored Security Trooper)と呼ばれるもので、外骨格の技術を進化させたものです。
――印象的なシネマティックシーンはどのように作っているのですか?
Bret 他のゲームや映画でも素晴らしいシーンはたくさんあり、それとは違う新しいものを作るのはいつも大変で苦労しています。「これはあの映画で見たからやめよう」といった判断をすることもありますし。優秀なチームが心血を注いで、多くの試行錯誤の上で作っています。
――ひとつのシーンを作るためにどのくらいのNGアイデアが出るのですか?
Bret 何とも言えませんが、最初はいいと思っても途中でダメになる場合やその逆もよくあります。
――実現しなかったいちばんクレイジーなアイデアは?
Bret 次のチャンスで使いたいので話せません(笑)。
――『コール オブ デューティ』シリーズは、世界各地が舞台になるスケールの大きい物語展開も魅力ですが、それらロケーションはどのように決めているのですか?
Bret 世界中には魅力的な場所は多々ありますが、基準のひとつは他のゲームで使われていない場所を選ぶこと。また、ストーリーにマッチした場所を選ぶことです。物語上、こういうことをさせたいから、この場所がいいだろう、と考えたりします。環境も考慮します。雨が降ったり、ギラギラとした太陽の下を舞台にしたいなら、どこがいいだろう、といった具合に。
――ストーリーからロケーションを選んでいくのですね?
Bret 逆に、このロケーションはおもしろそうだから、そのロケーションへ行くストーリーを考えようということもありますよ。
――いつか日本を舞台にしてください(笑)。
Bret いいですね(笑)。
――作品内で舞台にする場所へは実際に行ってロケハンするのですか?
Bret はい、何人かは実際に行きます。日本にもぜひ行きたいですね(笑)。
――本作は新しい『コール オブ デューティ』になったと思いますが、シリーズ化する予定は?
Bret フランチャイズの未来については何とも言えません。キャラクターや設定は魅力的なので、個人的にはまたどこかで使えるといいなとは思います。
――続編があるというのは、ファンが喜ぶ要因のひとつだと思います。
Bret 確かにそうですね。ただ、ひとつのゲームだけである程度完結していて、プレイヤーを満足させられるようなものにすべきだと、個人的には思います。
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※『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』公式サイト
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