2023年3月4日に初日を迎える木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』。その制作も佳境に差し掛かった1月某日、舞台の企画・演出、そして主人公ティーダを演じる歌舞伎俳優の尾上菊之助さんと、『ファイナルファンタジーX』のプロデューサーの北瀬佳範氏、イベントディレクターの鳥山 求氏、シナリオライターの野島一成氏(現ステラヴィスタ代表)によるインタビューが実現した。

 プレイステーション2で発売されたオリジナル版『FFX』をかなりやり込んだという菊之助さん。コロナ禍でメッセージ性の強い題材を探していた菊之助さんは、『FFX』の歌舞伎化を思い付き、すぐにスクウェア・エニックスにビデオレターと企画書を作成。そんな菊之助さんの熱意から実現した『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』はどんなものになるのか。座談会では脚本や演出、衣裳などについてのより詳しい話だけでなく、『FFX』の開発当時の裏話も飛び出した。

 なお、『FFX』のキャラクターデザインを務め、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』ではビジュアルなどの監修を務めている野村哲也氏からはコメントをいただいた。

尾上菊之助(おのえ きくのすけ)

歌舞伎俳優。1977年生まれ。1984年2月に『絵本牛若丸』の牛若丸で六代目尾上丑之助を名乗り初舞台。1996年5月には『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助ほかで五代目尾上菊之助を襲名。立役・女方として、時代物、世話物、舞踊と幅広いジャンルで活躍。テレビドラマ出演のおもな作品には、TBS日曜劇場『下町ロケット』や『グランメゾン東京』、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』などがある。
PHOTO:山口真由子

北瀬佳範(きたせ よしのり)

『FFX』プロデューサー。
「ファイナルファンタジー」シリーズには『FFV』から参加。その後、『FFVI』では初のディレクターを務め、以降、『FFVII』シリーズや『FFVIII』、『FFX』など多数のシリーズ作で、ディレクターやプロデューサーとして制作を統括する。

鳥山 求(とりやま もとむ)

『FFX』イベントディレクター。
「ファイナルファンタジー」シリーズには『FFVII』でイベントプランナーとして携わる。その後、『FFX』でイベントディレクター、『FFXIII』シリーズでディレクターを務める。『FFVII リメイク』ではCo-Directorとしてシナリオデザインなどを担当。

野島一成(のじま かずしげ)

『FFX』シナリオ
現ステラヴィスタ代表。スクウェア・エニックス在職中に『FFVII』、『FFVIII』、『FFX』、『FFX-2』などのシナリオを担当。退社後は、『FFVII アドベントチルドレン』や『メビウス FF』、『キングダム ハーツ』シリーズなどのシナリオも担当する。最近は『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』、『FFVII リメイク』などのシナリオも手掛ける。

菊之助さんのゲーム愛、キャラクター愛がストレートに伝わってきたビデオレター

――今回は『FFX』の開発陣との座談会形式のインタビューですが、菊之助さん、少し緊張されていますか?

菊之助それはもう、私の憧れの世界ですから。『FFX』を歌舞伎にさせていただけるというのを、当時プレイしていた自分に伝えたらどれだけビックリするだろうとこの企画が始まってからいつも考えてしまって。打ち合わせなどでスクウェア・エニックス様に訪れる度に緊張しています(笑)。今日はこうしてクリエイターの方々とお話させていただくということで、よりいっそう、胸が熱くなっております。

――まずはこの企画のきっかけは菊之助さんからのビデオレターだったそうですが、それをご覧になったときの感想をお聞かせください。

北瀬ビデオレターは私とチームメンバー数人とで観たんですけど、シンプルな部屋の背景で撮影されたものでした。そのビデオレターがビジネス的な感じではなく、作品に対しての愛、キャラクターに対しての思い入れを語っていただいたうえでの企画の提案でしたので、本当にストレートに思いが伝わってきました。

――では、すんなりとオーケーの返事を?

北瀬そうですね。企画書ではゲームと歌舞伎をどう融合させるかといった部分にも言及されていて、私としては非常におもしろそうだなと思ったのと同時に、光栄だとも思いました。

――鳥山さん、野島さんが企画について聞かれたのはその後になりますか。

鳥山はい。『ファイナルファンタジー』シリーズは、歌舞伎に限らず、ドラマや映画化の打診がときどきあるんですよね。ですが、企画が立ち上がっても、すぐなくなってしまったりするものも多くて……。

北瀬じつは、知らずに消えていく企画もいっぱいあるんですよ(笑)。

菊之助そうだったんですね……。

鳥山ですので、歌舞伎化の話があったときも、最初のころは半信半疑でした(笑)。

ゲームの物語を再構成することによって、すごく伝わりやすい物語に

――企画がスタートしてからは、シナリオ作りから始めたのでしょうか。

菊之助はい。作品のすばらしさを改めて認識するために、ストーリー全体を文字起こしして、勉強といいますか、感じ直すところから始めました。キャラクターたちの葛藤や、前向きな心と諦めない姿勢、そしてユウナが平和のために祈る“祈り”。ティーダとユウナのあいだに描かれている深い愛と、世界に対する大いなる希望。それらのテーマをいかに損なわずに歌舞伎にできるか、というのをとくに考えて進めました。

――『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』はゲーム全体の物語を前編・後編にわたって大長編歌舞伎として構成するとのことですが、壮大な物語をシナリオ化する作業は相当たいへんだったのでは?

菊之助たいへんでした(苦笑)。歌舞伎化にあたり、ひとりひとりのキャラクターが際立つように見せ場を設けることも考えて、シナリオを作っていきました。

鳥山そのあたりから私が監修に加わった感じですね。

北瀬シナリオを初めて読んだときから、原作をすごくリスペクトし、研究していただいているなと感じました。冒頭のザナルカンドでサインをねだる少年のことも書いてあって「ここからやるんだ!?」と思って驚いたと同時に、すごく細かく忠実に作られているなというのが第一印象でした。

鳥山原作はふつうにプレイすると60~70時間くらいはかかるボリュームのゲームですが、その物語をどうやって収めるのだろうと思っていました。最初にシナリオを読ませていただくと、ゲームの話をうまく再構成することによって、すごく伝わりやすい物語になっているなという印象でした。

菊之助鳥山さんには熱のこもった監修をしていただきました。ゲームは画面の下に字幕が出ますが、舞台ではもちろん字幕は出ませんので、よりキャラクターの心情や感情が出やすいように「ここはこうしたほうがいいのではないですか」と、鳥山さんから細かくアドバイスをいただきました。とくにキマリなどは無口なキャラクターなのですが、役者としてはある程度しゃべらないわけにはいかないので、原作よりはセリフは多めなのですが、その分、鳥山さんに細かく監修していただきました。

鳥山最初はそんなに細かく監修するつもりではなかったんですけどね(笑)。

菊之助本当にうれしかったです。作品に携わり、作り上げられた方々に「これは違いますね」ではなく、「こうしたほうがいいですね」とご提案いただける幸せというのは、作っている側としては本当にありがたいことでした。

鳥山ただ、アニキの登場シーンで、観客がわからない言葉を舞台で表現するのもおもしろそうだなと思い、「アルベド語(アルベド族が使う言語。ゲーム中で“アルベド語辞書”を入手していくことで解読できるようになる)でやってみませんか?」と提案しましたが、「さすがにそれは……」と却下されました(笑)。

――鳥山さんもどんどん前のめりになっていったわけですね(笑)。

鳥山制作初期はお互いにやりたいことを投げ合うほうがいいかなと思ったので、アルベド語はたぶんダメだろうなとは思いながらも提案はしてみました(笑)。制作途中のエンディングがけっこうチャレンジングな内容になっていて、もっといろいろやってもいいかもしれないと、ゲームとリンクするような仕組みも考えてみたり。ちなみに、エンディングは菊之助さんが「絶対に入れたい!」という、こだわりが詰まっています。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

キャラクターごとに深掘りされたエピソードが存在

――野島さんは脚本についてはどのような感想を?

野島私は脚本をいただいたばかりで、前編を読み終えて盛り上がった気分のまま、いまここに来ています(笑)。率直な感想としてはすごくきれいに、うまく構成されていて「ああ、こう描けばよかったのか!」とか「なるほど、なんで当時は思いつかなかったんだろう?」というシーンがいくつかあって(笑)。

鳥山そう! 私もそう思いました(笑)。

――原作に携わった野島さんと鳥山さんも感心する内容になっていると。

鳥山菊之助さんのお話を聞いていると、コンセプトが明確にあって、それを丁寧に脚本の段階で作られている感じを受けました。『FFX』の中で家族を構成する何組かがいるんですけど、全部しっかりと描かれています。原作よりも印象に残るように描かれていると思いました。

野島それは本当に思いました。

菊之助ありがとうございます。

鳥山攻略本の『アルティマニア』に載っているシーモアと母親のエピソード(※)もうまく入っているんですよね。

野島そうそう!(笑) 脚本を読んでいて思わず泣いちゃいました。

※ヒトとグアド族の混血であるシーモアは、その出自より幼いころから迫害を受け、父親は一族の指導者を優先し、彼と母親を見捨てる。母子は無人の廃墟となったバージ寺院へ送られ、惨めな生活を余儀なくされる。そしてシーモアが10歳のとき、その母親は息子の究極召喚の祈り子になるべく、シーモアの眼前で命を捧げる。

鳥山省くところは省き、原作に入っていなかったシーンも描いてくれているんです。あれが、新エピソードとしてはいちばん目立つところだと思います。シーモア側の、なぜ彼が闇に堕ちたのかが深堀りされていて、歌舞伎だけれど現代的なんですよね。そこがすごいなと思いましたね。

菊之助そこは脚本の八津弘幸さんに膨らませていただきました。ジスカルとシーモアの父子のことを、より皆様に深く感じていただける脚本になっているので、そこは期待していただきたいですね。

鳥山物語を凝縮している分、テンポもすごくよくなっていると思います。言いかたはアレなのですが、ゲーム中のいいシーンだけをチョイスして構成されているところもあるので、前後編ともあっと言う間だと思いますよ。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――ところで、ゲームの物語を凝縮している分、セリフ量はとんでもないことになっていると思うのですが、菊之助さんが演じてきた中でも、かなり多い部類ですか?

菊之助いちばんと言っていいほどのセリフ量です(苦笑)。

鳥山役者の皆さんはそれをどうやって覚えているのですか?

菊之助私は1ページを覚えたら、つぎの1ページを覚えて、前のページに戻ってきて、またつぎの1ページを覚えてというのをずっとくり返しやっております。

鳥山カンペみたいのがあるわけではないんですよね?

菊之助ないです(笑)。

鳥山ティーダはとくにセリフが多いんですよね。だから菊之助さんがいちばんたいへんだなと。

菊之助書いて覚えて、聞いて覚えて、あとは貼って覚えて。ですから、いま家中がティーダのセリフだらけになっています(笑)。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』のためにいたんだ!」と思うほど、20年以上を経てハマッたキャラとは!?

――先ほどキマリがゲームよりはしゃべるキャラクターになっているというお話しがありましたが、歌舞伎ならではといった部分で、演出が変わったキャラクターはいますか?

菊之助まずキマリですが、しゃべると言っても、基本的にはあまりしゃべりません。ですが、ところどころでいいことを言うので、ポツッとしゃべる彼のひと言に注目していただきたいです。

鳥山そこは原作と違う部分ですよね。監修では「キマリはガガゼト山までは無言にしたいんですけど、さすがに役者さんに悪いですよね……」というようなコメントをつけた覚えがあります(笑)。それと、すごくおもしろかったのがシドですかね。シドが原作よりもかっこよくて、やけにしゃべるんですよ(笑)。

菊之助今回、シド役は中村歌六さんが演じられます。演劇や映画では……ゲームでもそうかもしれませんが、役者さんに合わせて当て書(誰か特定の俳優を決めて、その人をイメージして脚本を書くこと)をすることがあります。今回は、中村歌六さんを念頭に置いて脚本を書きました。歌舞伎ならではのシドではあるけれど、原作のシドとかけ離れすぎずに、みんなを見守る応援役として存在する、ということを鳥山さんに相談させていただいて、ご了承いただきました。そうして、シドを少しかっこよく膨らませております。

――さらに頼もしいキャラクターになっていると。

鳥山『FFX』のシドは、粗野でほかの作品よりはワイルドな感じだったので、最初いただいた脚本ではかっこよくなっていて驚きましたね。監修の際に、菊之助さんからいろいろと話をうかがっていくうちに、「それなら、もっとかっこよくするか!」と思い、かっこよくしたバージョンのセリフを追加するなどのやり取りを重ねました。そういった感じでシドやキマリに限らず、ゲームをプレイした方は、原作とどんな違いがあるかも見どころのひとつかなと思いますね。

野島そういえば、シドはユウナの伯父さんなんですが、その設定をすっかり忘れていて、原作でシドとユウナが遭遇したときはすごく素っ気なかったんですよね(笑)。

鳥山そこが歌舞伎ではうまく補強されているんですよ(笑)。

菊之助はい、そうなんです(笑)。

野島原作の足りないところを補強してくれていて、すごくありがたいです(笑)。

菊之助ところで、シドという名前のキャラクターは必ずと言っていいほど『FF』シリーズに登場するのが、おもしろいですよね。『FF』シリーズを開発されている方々は、シドにどういったこだわりがあるのでしょうか?

鳥山開発中は、シドはどこかに出るものだとみんなが思っていますね(笑)。どこで、どういう形で、どんな人として出てくるかはわからないけど、シナリオを考えるときは「当然どこかで出るんだろうね」と、アタマの片隅に置いておく感じはあります。逆に「この作品のシドはこうしよう」と初期段階で決めて作っていくこともありますね。

――野島さんは前半の台本を読まれて、気になったキャラクターはいますか?

野島オオアカ屋(スピラを巡る行商人)は、当時は「やりすぎたかな」と思っていたキャラクターが『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』ではピタっとハマって登場していたので、「このためにコイツはいたんだ!」と思いました(笑)。「オオアカ屋」という口上を言うためにいたんだと(笑)。

菊之助そうおっしゃっていだけるとうれしいです。原作でも「オオアカ屋」と言うところが歌舞伎調でしたよね(笑)。

鳥山そうですね。名前が歌舞伎風のオオアカ屋なので、そういう演出にしたのを覚えています。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

納得のキャスティングと高精度な衣裳

――脚本は当て書きされたということですが、配役も菊之助さんが決められたのですよね?

菊之助はい。相談させていただきながら進めていきましたが、「この方にお願いしたいな」という考えは初期段階から持っておりました。

――昨年9月のインタビュー時では、誰が何の役を演じるかは発表されていませんでしたが、中村獅童さんがアーロン役だったり、尾上松也さんがシーモア役だったりと、発表されてみると「なるほど!」という感じでした。

菊之助ありがとうございます。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
  • 尾上菊之助/ティーダ
  • 中村獅童/アーロン
  • 尾上松也/シーモア
  • 中村梅枝/ルールー
  • 中村萬太郎/ルッツ、23代目オオアカ屋
  • 中村米吉/ユウナ
  • 中村橋之助/ワッカ
  • 尾上丑之助/ティーダ(幼少期)、祈り子
  • 上村吉太朗/リュック
  • 中村芝のぶ/ユウナレスカ
  • 坂東彦三郎/キマリ
  • 中村錦之助/ブラスカ
  • 坂東彌十郎/ジェクト
  • 中村歌六/シド

鳥山物語は何幕かに分けられていて、それぞれの幕の終わりに語りのようなものが入るのですが、そのひとつのアーロンがかっこいいんです。アーロンは原作だと無口ですから、最初はどうかとは思ったんですけれど、「獅童さんが演じるならかっこよくなるだろう」と、そのまま進行していただくことにしました。

――そういうのも歌舞伎ならでは感じがしますね。

菊之助そうですね。役者が幕を引く、決め台詞を言って幕を切るというのが歌舞伎ならではです。そこを獅童さんならとおっしゃっていただいたのが非常にうれしいです。

――中村米吉さんもユウナにピッタリな気がします。

菊之助先日、中村米吉さん演じるユウナの“異界送り”のPVが公開されたのですが、『異界送り』の曲も、和楽器で演奏したものにアレンジ(音楽監督の新内多賀太夫氏がアレンジを担当)され、日本舞踊の振り付けで踊ります。原作にある振りも入っています。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――PVではユウナの衣裳もお披露目されていましたが、それぞれのキャラクターの衣裳は野村哲也氏が監修されているのですよね? 何か指摘はありましたか?

菊之助野村さんからはとくに指摘はありませんでした。

鳥山それは出来がいいからだと思いますよ。衣裳の写真、今日初めて見ましたけど、原作にかなり寄せていただいた感じがします。もっと歌舞伎風にアレンジされるのかと思っていたので。

野島髪の色もちゃんとゲーム内のキャラクターの髪の色に合わせるんですね。

菊之助そうなんです。今回は原作のイメージと歌舞伎の和のイメージを融合させつつも、とにかくお客様にはひと目で「あのキャラクターだ」とわかっていただけるように工夫させていただいて、そのデザインを監修していただきました。

北瀬『FFX』はどちらかというと和な感じが強いから、親和性が高くてよかったです。

鳥山そうですね。ぜんぜん浮いていないよね。

菊之助胴の部分や脚まわりにも和のテイストを入れていたりします。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
松竹衣裳:松本勇

――坂東彌十郎さん演じるジェクトなど、肌の露出が多いキャラクターのデザインがどうなるのかも気になります。

菊之助ジェクトはかなりマッチョな筋肉質になって登場しますので、ご期待ください。

――着肉(肉襦袢)という衣裳で筋肉を表現するのでしょうか?

 

菊之助そうですね。

鳥山筋肉といえば、キマリもそうですよね。(資料を見ながら)顔も……。

野島キマリ……(笑)。すごい再現度じゃないですか!?

北瀬シーモアもいいですね。

野島シーモアの“そのもの感”がすごい。

鳥山原作の再現度が高く、しかもかっこいいものになっていますね。

菊之助アニマをモチーフにした柄はどうかと、衣裳さんと相談してデザインしています。

――アニマ柄!

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
シーモアの究極召喚獣アニマ

鳥山資料を見ながらしっかりデザインしていただけていることがわかります。ルールーの衣裳も美しくなっていますし。

――ルールーの衣裳はベルトを使ったゴシックなイメージもありますが、傾城、花魁の雰囲気もありますよね。

菊之助そうなんです。袘(ふき。袷の着物や綿入れの袖口や裾の部分で、裏地を表に折り返して、表から少し見えるように仕立てた部分)というか、着物の裾の部分を少し厚めにしてボリュームを出しています。また、ユウナも帯に花を付けているのですが(※)、ルールーはユウナの姉のような存在でもあるので、ルールーにも帯にアネモネの花を付けています。アネモネの花言葉には“失った人への思い出”というようなものがあります。

※ユウナの名は“朝な夕な”を表す沖縄の方言から採ったとされている。また、沖縄で“オオハマボウ”という植物を指す言葉でもあり、原作ではその花がユウナのコスチュームにあしらわれている。

――さり気なくなかなか断ち切れないチャップ(ルールーのかつての恋人であり、ワッカの弟)への想いの表現まで……。そうした衣裳の細部は、パンフレットなどでじっくり見られるでしょうか?

菊之助そうですね。ぜひお手に取っていただければと。

――出演される歌舞伎俳優の方々も『FFX』をプレイ済みの方が多いとお聞きしました。

菊之助はい。その体験をどう歌舞伎にしていくか、というのをそれぞれが考えられていると思います。原作を尊重しつつ、歌舞伎と融合させていく。私も新作を作るときにいちばん大事にしていることです。

菊之助さんとティーダの共通点――父親と比較され、その背中を見てきたふたり

――菊之助さんはご自身が演じるティーダについて、どんなキャラクターだとお感じになっていますか?

菊之助セリフを読んでいると、とにかく前向きで岩をも貫くような気持ちの持ち主だと感じます。それは彼の生い立ちとして、ジェクトと同じブリッツボールをして、比べられながら育ってきたということもあるのでは、と想像します。なぜなら私も父(尾上菊五郎氏)と同じ稼業なものですから、若いころは父の背中を見ていました。ですが、父のようにできない自分がいましたし、どうしても父と比べられます。ですので、「比べられたくない!」というティーダの気持ちもすごくよくわかるのです。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――菊之助さんとティーダの立ち位置は似ているのですね。

菊之助そう思います。ジェクトは息子の愛しかたが得意ではなく、愛情表現のしかたがよくわからなかったため、親子のあいだに壁があり、ティーダもある意味、父親を誤解している部分があったと思うんです。私の父も直接言葉をかけたりとか、教えてくれる人ではなかったので、そこも非常によくわかるんです。最近では、父が何も言葉をかけず「見て覚えろ」と言っていたことの意味がわかってきました。その行動が、どれだけ自分で研鑽する意識を高め、自我というか、自分で考える力をつけさせてくれていたのかと、45歳になったいま初めて感じるわけですが……。

 そういうティーダとの共通点があるからか、彼の葛藤もよくわかるのです。私は、ティーダのようにつねに前向きではいられなかったですが、だからこそそんなティーダを演じるにあたって、強く元気に明るく、父親に対する思いを大切に演じられたらと思っています。

――よく親心と言いますが、あのとき厳しく当たられたのは、自分のためを思ってのことだったのか、というのは、やはり年齢を重ねて同じような立場にならないとなかなか実感できない部分ですよね。

菊之助以前、北瀬さんが「開発当初はティーダの気持ちでプレイしていたけれど、父親になってプレイしたときに、ジェクトの気持ちを感じられた」というようなことをおっしゃっていて、私も「そういえば、自分もジェクトやブラスカ、ジスカル、シドという父親の目線で見守る立場になって、当初プレイした感情とはまったく違う感情でこの場にいる」というのに気付かされて、それがまた『FFX』の魅力だと改めて思いました。それを北瀬さんに教えていただきました。

北瀬いえいえ。

――時を経て、当時と違った立場、視点で見ると、感じかたも変わる物語だと。ところで、ティーダといえば「ッス」という口調が特徴的ですが、歌舞伎ではそういった口調によって個性を出すといったことはあったりするんでしょうか?

菊之助口調で個性を出すということは歌舞伎ではないですが、ティーダの「ッス」という口調は要所で活かしています。

――なんと(笑)。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――原作では名前を変えられるために、ティーダという名前がボイスで呼ばれないわけですが、舞台ではどうなるのでしょうか。

鳥山そこは菊之助さんも最初、気にされていたようで、脚本では呼ばない形になっていたのですが、さすがに舞台でそれは不自然な気もするので、ティーダという名前は出すことになりました。別の作品では、プレイヤーの分身とは違う立ち位置なので、ティーダと呼ばれていますし。

北瀬ユウナが「ティーダ」って呼ぶこともある? 原作だと「キミ」だったけど。

鳥山ティーダと呼ぶこともあるけれど、「キミ」と呼ぶのも残っていますね。原作のいいところも残してあるんです。

北瀬それが味だったりもするからね。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

水よりも水らしい表現――テクノロジーと古典の融合

――新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』に続き、今回も大掛かりな企画になりましたが、当初からこの規模を想定されていたのでしょうか?

 

菊之助いえ。当初はふつうの平面の歌舞伎劇場を想定していました。それがTBS様にご協力いただくことになり、IHIステージアラウンド東京という会場が決定してから、プロジェクトが大きくなった感じですね

――IHI ステージアラウンド東京は周囲を取り囲む360度すべてにステージがあり、その中心に巨大な円形の観客席が配置されているという会場ですので、演出プランもさまざまなアイデアが出たのでは?

菊之助そうですね。『FFX』の世界は、水の表現も印象的ですが、その水をどう表現するかという考えがまずありました。最初は水を舞台一面に張って水の世界を作ろうというプランもあったのですが、水をいまのテクノロジーを使って、実際の水よりも水らしく見えるようにしてみようと。そういったテクノロジーと古典とを合わせていったらどうなるか。そういった挑戦もしています。

鳥山もともと『FFX』は水の表現にこだわっていたので、舞台上でどう表現されるのか楽しみですね。

野島当時はプレイステーション2という新ハードで、「すごくキレイに水の表現がきるんじゃないか」と、「水をフィーチャーしたものにしよう」という話があったんですよ。それがいま、舞台でも新しい水の表現に取り組むことになるとは、不思議な因果を感じます(笑)。

鳥山ブリッツボールを使った演出も入っているのですが、スポーツ要素と歌舞伎って成立するんだなと思いました(笑)。

菊之助はい、ブリッツボールの試合もやります。

北瀬シナリオでも“ボールを使った演出”と書いてあるんですけど、どうなるのか想像がつかなくて(笑)。

菊之助ブリッツボールの試合の構想はできているんですが、実際にうまくいくかは舞台でやってみないとわからないところもあります。

鳥山そこは、稽古しながらなんですね。

菊之助はい、稽古しながら「これいけるな」とか、「ここまでにしておこうか」というのもありますし。

鳥山ブリッツボールのシーンから、いきなり歌舞伎の口上が始まる展開があるのですが、とてもかなり斬新で楽しみにしています。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――召喚獣などはどのような演出に?

菊之助召喚獣は映像で表現する予定なのですが、スクウェア・エニックスさんにご協力いただいています。召喚獣のほか夢のザナルカンドなどのビジュアルもゲームからお借りし、スクリーン映えするようゲーム映像をブラッシュアップして使わせていただいています。映像の担当の方とご相談しながら作り上げていますので、本番にはきっとすごい召喚獣が“召喚”されるのではないかと思っております。また、召喚シーンでは壮大な舞踊もご覧いただけます。ちょうど先日、歌詞も出来上がりまして。そこは義太夫でやろうと思っているんです。義太夫の歌詞もぜひ聞いていただきたいです。

鳥山私も見させてもらったんですけど、歌詞が入ると、急に歌舞伎らしさがグッと上がった感じがします。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――『風の谷のナウシカ』では古典の見どころが満載でしたが、今回の『FFX』では古典と最新技術での表現の割合はどのくらいになりそうでしょうか。

菊之助テクノロジーを使いつつも、古典の手法で新作歌舞伎を作るということを目指しているので、割合としては7対3くらいでしょうか。古典が7割、テクノロジーが3割ですね。

――いよいよ劇場での稽古も始まっていくと思いますが、稽古はどのような流れで進められるのでしょう?

菊之助衣裳、かつら、音楽、映像、脚本と、それぞれの分野で皆さんに準備してもらったものを、稽古場で試してみて、そこからまた試行錯誤を重ねて作り上げていきます。1月中は舞台のロビーで、皆さんとどういう風にやっていくか練っていました。2月からは、実際の舞台に立って稽古させていただき、舞台でないとわからなかった部分を少しずつ埋めていく作業をしていきます。

――本番と同じ舞台を使った稽古というのは、通常の演劇ですと稽古からゲネプロなど、比較的短期間で行われますよね。

菊之助そうですね、大体1週間くらいだと思うのですが、今回は異例なことに、稽古だけで約1ヵ月、IHI ステージアラウンド東京を使わせていただけることになっています。

――それだけ舞台装置や音楽など演出と合わせるための稽古が必要ということですね。360度ステージを使った舞台装置も出来上がってきたころでしょうか?

菊之助はい。おおよそ4面あるので、そこをどう使おうかということを演出の金谷かほりさんたちとともに何度も会議を重ねました。客席が回りますので、転換がない、というのがひとつの特徴ですね。場面によって多種多様なフィールドになる『FFX』は、360度ステージとすごく親和性が高いと思いますので、どんどんストーリーの中にお客様を誘っていけるスピーディーな展開をお見せできると思っています。

100年後の古典になるように

――歌舞伎座では限定的に大向うの掛け声が再開されましたが、『FFX』の舞台ではどうでしょうか。「音羽屋!」(尾上家の屋号)と言いたい歌舞伎ファンもいらっしゃると思うのですが。

菊之助ぜひ入れていただきたいと思っていますが、具体的にはこれから皆さんと相談をして決めたいと思います。

――ところで、『FFX』チームの皆さんは、歌舞伎はご覧になられたことは?

北瀬じつは観たことがなくて。

野島私もないです。

鳥山私も観たことがなかったので、どのぐらいのものが作れるのかと、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』のBlu-rayを参考にさせていただきました。王蟲がちゃんと再現されているのを見て、今回の舞台でもシンや召喚獣の登場もイメージできました。

――これをきっかけに歌舞伎を観る方も増えたらいいですよね。

鳥山知り合いから「『FFX』が歌舞伎になるんだって? 観に行きたい」という話はすごくされます。

菊之助ありがたいですね。

野島私たちと同世代はなかなかゲームをやってくれないんですよ(笑)。こういう形で『FFX』の物語が世にまた出るのがすごくうれしいです。

菊之助ありがとうございます。未知への挑戦ですが、『ファイナルファンタジー』35周年という節目の年に上演できるのも、巡り合わせだなと思っています。そういう時代に私も生きていて、私が憧れて、焦がれた大好きな「ファイナルファンタジー」の世界と、歌舞伎とが文化の交流をさせていただける。そこから、お客様に何かを感じていただけるかもしれない。準備自体はたいへんなのですが、こんな幸せなことはないなと思っています。これから稽古を重ね、舞台に役者が入り、初日が開いてお客様に観ていただいて、ひとまずの完成形となるわけですが、そこから千穐楽まで進化していくと思います。

――それでは、もうすぐ上演ということで『FFX』ファンに向けてひと言をお願いします。

野島台本を読ませいただいて、非常におもしろくて、同時にシナリオライターとして悔しい、という思いもあります。エッセンスをうまく並べて展開していただき、伝えかたも洗練されていて、舞台装置も含めてすごく楽しめるものになるんじゃないかと思っていますので、僕も楽しみにしています。

鳥山『FFX』という膨大な物語がどんなふうに舞台化され、そこにどんな違いがあるのかというのを原作のファンの皆さんにはぜひ注目して観ていただきたいです。それに、あるキャラクターが初めてしゃべるんですよ。そこもぜひご注目ください。

北瀬私もどうなるのか期待している場面がいくつかあるんです。ゲームならではのバトルとか、ブリッツボール、異界送りやマカラーニャの森のシーンとか……。あとは結婚式のシーン。それらが歌舞伎の舞台でどう表現されるのか。ゲームだと最初に絵コンテを描いて、あとはCGで最初のプロット通りに作ろうと思えば作れてしまうんですけど、先ほどのブリッツボールの場面のように、歌舞伎では稽古の中で作り上げていく、ライブ感がありますよね。皆さんで演じながら作り上げていくのがゲームと違うところで、完成がどうなるのか個人的にも楽しみです。ファンの皆さんもゲームでのあのシーンが、どう歌舞伎で表現されているかを期待して観に来ていただけたらなと思います。

菊之助初日を前に、世界中で愛されている『FFX』を歌舞伎でさせていただける幸福、ありがたさを感じています。これまでファンの皆様のご期待に副えるよう、原作に愛を持って制作を進めてまいりました。“パーティメンバー”一丸となって、一幕、一幕作り上げていきますので、千穐楽まで何卒よろしくお願いいたします。『FFX』を大切に末永く、くり返し再演していける作品にしたいと心から願っています。

――たしかに、何回でも演じられるのが歌舞伎のいいところでもありますよね。

菊之助ええ、しっかり監修いただきつつ、心情を深く掘り下げる脚本に仕上がっていますので、読めば読むほど、もし再演して俳優が変わったとしても、より深みを増していける作品になるとつくづく感じております。やる人間が変わっても、演じて深めていけるのが本当の名作だと思っていますし、古典歌舞伎の名作はそうである作品ばかりです。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が50年、100年経ったころには古典歌舞伎として残っている名作となっているよう、がんばっていきたいです。

『FFX』のキャラクターデザインを担当した野村哲也氏に『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』について訊く

 本稿の最後に都合により同席できなかった『FFX』のキャラクターデザインを担当した野村哲也氏にコメントをいただいたので、そちらも掲載する。

――野村さんは衣装やキャラクターのビジュアルの監修をされているとのことですが、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』用の衣装、ビジュアルをご覧になった感想は? また、衣装・ビジュアルでとくに注目のキャラクターはいますか?

野村 ビジュアルを最初に見た時は、「こんなにゲームに寄せるんだな。もっと歌舞伎的なアレンジを加えてもらってもいいのに」と思いました。ビジュアルとしては、ロンゾ族、グアド族、召喚獣やモンスターたちが実際にどう表現されるのか注目しています。

――ティーダとユウナの新規CGビジュアルも監修されているかと思いますが、どういった要望を出されたのでしょうか。

野村 要望はほぼ出していませんが、最初の監修でユウナの特徴的な耳飾りが着いていなかったので、それは着けて欲しいとだけ伝えました。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助×『FFX』開発陣スペシャルインタビュー。テーマを絞り再構築した物語は開発陣も唸る内容に

――上記以外に監修や監修以外で携わっているものはありますか?

野村 登場キャラクターは村人に至るまで監修が届くので、すべてに目を通しています。舞台の映像演出に関しても可否を問われたりしています。かなり多くの要素を見させていただいているので、この舞台に対する熱がいかに強く真剣なものなのか実感しています。

――これまで歌舞伎をご覧になったことはありますか? また、これまでデザイン面などで影響を受けたことはありますか?

野村 実際に舞台を見に行ったことはありませんが、映像では何度か見たことはあります。デザイン面での影響というのは直接的にはないですが、隈取などは興味があって調べたりしたことはありました。

――上演開始まで1ヵ月を切った『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』ですが、最後にひと言お願いします。

野村 自分もこのお話しに驚きましたが、ファンの皆さんも同様だと思います。しかも前編後編の長時間にわたる超大作ということで、相当見応えがある内容になっています。舞台の仕掛けもそうですが、人生でなかなか味わえない体験が出来るのは間違いありません。ファンの皆さんが抱く『FFX』への愛が満たされると思いますし、今回の歌舞伎から『FFX』を初めて知る方にも、満足していただけると確信にていますので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。